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長島昭久コミュの訪米の報告

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安倍訪米後のブログでの訪米報告は、なかなか読みごたえがあった。以下、その内容。

http://blog.goo.ne.jp/nagashima21

Day 1
ブレント・スコウクロフト将軍(GEN Brent Scowcroft)
部屋に入って来られたときには、ずいぶんお年を召された印象を持ったが、話の内容は相変わらず簡にして要。たった15分で北東アジア情勢からインド、イラン、イラク、イスラエル・パレスティナにいたるユーラシアの東半分についての米国の政策を的確にブリーフしてくれた。ス将軍は、イラク戦争には開戦前から批判的で、いまや弟子の二人が国務、国防長官の要職にあるにもかかわらず、ブッシュ大統領からは遠ざけられている。イラク戦争によって傷ついた米国の国際的なリーダーシップの正当性に話が及ぶと、現実主義の大御所としての苦悩の表情を見せていた。中国とともにインドの戦略的重要性を強調していたが、「米国はインドに恋をしているが、インドはいかなる国とも恋に落ちることはない」との言葉は、独自の世界観、戦略観をもって非同盟の伝統を貫くインドの複線的な対外姿勢を如実に示唆したのが印象的。

ヴィクター・チャ(Dr. Victor Cha)
彼は、この日がホワイトハウス最後の日であったが、緊急にハドリー大統領補佐官とのミーティングが入り、参加できなかった。2月の6者合意の不履行で新たな混迷を見せている北朝鮮情勢について、政権を去る気楽さから率直な見解が聞けると楽しみにしていただけに残念だったが、そこは、すでに政権を去ってかなりの月日がたつ(いまでも政権のアジア政策に一定の影響力をもつ)マイケル・グリーンが詳細なブリーフをしてくれた。焦点は、金正日が本当に核放棄を断行できるのか(意思と能力両面)という疑問。グリーンは、核開発が?金政権の正当性の根拠、?軍掌握の根幹、?対米のみならず対中外交の切り札となっていることから、放棄は困難との見方を示した。これは、今後の交渉が、米国政府はじめ関係国の間で繰り返し言明される「建て前」は裏腹に、すでに開発済みの核爆弾の存在を前提としたもの(つまり、新たな核開発を許さない、あるいは、核拡散を許さない)とならざるを得ないことを強く示唆している。

このことから、北朝鮮の核やミサイルの脅威に対する日米協力の将来像を大胆に予測すれば次のようなものとなろう。?核弾頭としてミサイル搭載が可能となった場合(すでに開発済みとの有力な情報もある!)には、日米共同BMDシステム配備を加速させるだけでは不十分である可能性がある。日米MD共同開発の新たなテーマとしてABLが俎上に上る可能性も。?そこで、まず、米国の拡大核抑止を強化する必要がある。たとえば、1991年に全面廃棄された戦術核兵器の復活により、北東アジア・西太平洋正面に核報復能力を配備することである。(80年代の西欧のように、日米共同管理によって拡大抑止の確証をさらに高める議論も必要かもしれない)?同時に、昨年7月のミサイル連射のような事態に対処するために、策源地攻撃能力を日米間で共有する必要も生じよう。

ほかに気づいたポイントとしては、次の四つ。第一に、すでに再処理を終え、約8発分の兵器級プルトニウムを抽出し、著しく老朽化したヨンビョンの核施設の閉鎖(disablement)は、北朝鮮に何らの痛痒も与えない。したがって、今後のプロセスにおいて、北朝鮮が最大限にディール・スティックに使ってくる可能性が高い。第二に、日本政府の拉致へのこだわりは正当なものだが、6者プロセスが動き出してから試練を迎えることが予見できるので、いまから拉致と核協議のプロセスとのリンケージをめぐる戦略を練っておく必要がある。第三に、核協議が不調に終わった場合の新たな圧力については、日米独自制裁には限度があるので、国連決議1718の履行を国際社会(31カ国)に徹底させることが有力な方策である。第四に、北朝鮮への影響力は中国が、中国への影響力は米国が、それぞれ握っているが、イラクに足をとられて米国からの対中プレッシャーが鈍っていることが北朝鮮を勢いづかせ(韓国の支援が浮き彫りになっ)ている最大の要因。

ジョン・ハムレ(John Hamre, CSIS)
ズビグニュ・ブレジンスキ(Zbigniew Brzezinski, SAIS)
カーラ・ヒルズ(Carla Hills, USTR)
久しぶりに、ブレジンスキ博士と再会。ブッシュ政権のイラク政策に対する歯に衣着せぬ厳しい批判が印象に残った。彼は、もともとイラクとイランを同時に封じ込め(dual containment)イスラエルとパレスティナの平和共存を図る中東和平プロセスの完成(2000年合意、2002年ロードマップの実行)を加速させれば、中東地域の安定化は十分図れる、との現実主義的な主張で、いまさらながら現状の厳しさからその正しさが反証されている。ブ博士によれば、イラク問題は現政権では絶対に片付かず、大統領選挙2008の最大の争点となるから、次期大統領候補は、イラク撤退を実現させる中東地域の戦略環境の安定化とともに米国の国際的リーダーシップへの信頼回復についての現実的で明確な処方箋を示す必要がある。その意味で、近年にない外交中心の見応えある大統領選挙となりそうだ。

ところで、「911ショックで政権発足当初の現実主義的な外交政策から逸脱しイラク攻撃に突入せざるを得なかった、という米政権の説明は正しいか?」との私からの意図的な誘導質問(僭越ながら)に対して、ブ博士はニヤリと笑って「フセインのイラクとシーア派のイランはアルカイダとは何の関係もなかったばかりか、宗教教義的には鋭く反目し合ってきた(つまり、イラク戦争は不必要だった)」と明確に答えてくれた。これは、日本政府の説明とも矛盾するもので、今後の国会論議を通じて厳しく追及していかねばならないポイントだ。

ベイツ・ギル(Bates Gill, CSIS)
ボニー・グレイサー(Bonie Glasser, CSIS)

昨年に引き続き、中国問題でワシントンきっての専門家二人による対中戦略のアップデート。中国をresponsible stakeholderとして国際社会に組み込んでいくことについては異論ないものの、ここでの最大の課題は、その政策目標が現実的かどうかだ。中国は、内に様々な矛盾を抱え、経済成長を持続させるために安定的な国際環境を求め、いまは穏健な対外政策を打ち出している。しかし、内部矛盾(環境やエネルギー効率など)の解消に向けた支援を積極化させた結果、巨大で扱いにくい中華帝国を育成することになり、20-30年後に厄介な課題を突きつけられるのではないか、との懸念も拭いきれない。だからといって、成長を妨害するわけには行かないが、われわれが持つレヴァレッジを効果的に効かせながら望ましい方向へ誘導して行くしかないか・・・。

中国の資源戦略が、マーケットを迂回して資源国と直接二国間を志向していることから、我が国としては安定的な市場の形成に焦点を絞って資源戦略を組み立てる必要がある。たとえば、東シナ海におけるガス油田開発についても、いずれかのタイミングで、過去の政策の失敗を潔く認め、「共同開発」を求める非現実的な政策を転換して、アジアにおける資源市場のメカニズムを構築する(through an Asian Energy Dialog)ことによって「共同利用」を中国に受け入れさせる現実的な方向性を模索すべきではないか。

Day 2
Scenario Game
リチャード・サムエルズ教授(Richard Samuels, MIT)
ラスト・デミング(Rust Deming,元国務次官補代理)
マイケル・マクデヴィッド提督(RADM Mike McDevitt, 元米太平洋軍戦略計画部長)
ケヴィン・ニーラー(Kevin Nealer, 元NSC経済戦略担当補佐官)
チャック・ジョーンズ(Chuck Jones, 元NSCアジア上級部長)

尖閣諸島をめぐる日米中の緊張関係を浮き彫りにした。
設定は、2008年という超近未来。
今秋の中国共産党大会から08五輪に至る過程で、中国の内部矛盾が噴出するとともに、対外姿勢が強硬となり、共同開発の合意を目指す日中協議を拒否・中断。その反作用として、我が国のナショナリズムが刺激を受ける。そこに、右翼団体が尖閣諸島に上陸し、東シナ海のガス油田を窺う。中国は海軍艦艇まで出動して(過剰)対応。日中のナショナリズムが沸騰。米国としては、日米安全保障条約上の尖閣諸島に対するコミットメントについて二つの原則(?日本の領土防衛にはフルコミットメント、しかし、?領土紛争には介入せず)を示して、介入に逡巡。日本では対米感情も悪化する・・・といったシナリオ第一幕。

日本側から対応のシミュレーション開始。これに対する米側の対応について米NSC主要閣僚による協議。内容については、公開を差し控えざるを得ないが、日米で仮想対応している間に、新たな事態が展開されることに。(シナリオ第二幕)

日中がにらみ合う東シナ海の上空で中国の最新鋭戦闘機Su-27と日本の哨戒機P-3Cが衝突事故を起こし両機墜落。P-3C乗組員は現場に展開していた中国艦艇に救助されたが、中国当局は事実関係の究明と称して全員を拘束。日本では対中非難が高まり、米国では、同盟支持派と日中紛争不介入派に国論が分裂し、政府も対応困難に陥る。さらに、東海艦隊を中心とする人民解放軍海軍(PLA Navy)の激しい動きが報じられるなど、日本の対応いかんでは、更なる緊張が高まる事態となった。私たち日米のプレイヤーは、頭を抱えながら事態収拾に向けあるときは協調し、あるときは独力で対処することとなった・・・。

さて、シナリオ・エクササイズ終了後、自分たちの対応を振り返っての自由討議(Cold Washと呼ばれる復習の時間)が持たれる。ここが実はもっとも重要。そもそも、シナリオ・エクササイズというのは、総理、外相、国防相など主要プレイヤーによる各種の対応を通じて問題を解決できたか否かが重要ではない。(上述のとおり、私たちが必死に最善と思われる対処を行っても、それを呑み込むような無理難題が次から次へと繰り出されて、決して問題解決には届かないような仕組みになっている。)重要なのは、解決を目指して努力するプロセスそのもの。それぞれのプレイヤーの意思決定や政策判断、そのリアクションに対する対処方針などなど、お互いに認識することが、本番の緊急事態対処に向けての事前演習の機会を提供するのだ。その意味で、復習の時間こそが鍵を握っている。

私から、感想も含め、2点述べた。第一に、日米同盟の運用を考える場合、これまでは、平時と有事という極端なシナリオに偏ってきた嫌いがあるが、今回のシミュレーションでも浮き彫りにされた、平時から有事にいたる事態の変化には無数の階段(危機のエスカレーション・ラダー)があることを認識すべきだということ。それぞれに対する日米共同、あるいは単独の備えが確立していなければならない。領土紛争に対する米側の微妙な立場や、日中双方の民意の異様な加熱ぶりや、08年を境にした中国の対外姿勢の変化の可能性など、予め認識した上で準備すべきことはいくらでもある。

第二に、やはり自助努力の大切さだ。日米同盟の絆は大切だが、それこそ危機が起こるたびにいちいちワシントンを振り返っているようでは健全な姿とはいえまい。核が持ち出されるような究極のシナリオを除く、その他のあらゆるケースに独力対処できる(あるいは日米対等に協力できる)よう外交力を鍛え、安全保障上の法整備から装備、訓練にいたるまで平素から緊張感をもって臨まねばならない。

ウィリアム・インボーデン(NSC戦略計画担当上級部長)
ピーター・ラフィーヴァ(NSC戦略計画部特別顧問)
米国の国家安全保障会議(National Security Council, NSC)の基本構造および運用について現職のシニア・スタッフから詳細の解説をしてもらう。とくに、ラフィーヴァは、シヴィリアン・コントロール研究で著名な学者で、クリントン政権からブッシュ政権にかけて民主・共和両党のホワイトハウスを経験する稀有な存在でもあり、バランスの取れた現状分析という点で大変参考になった。

リチャード・アーミテイジ(Richard Armitage, 前国務副長官)
チェイニー副大統領との熾烈な権力闘争(未だ継続中といわれる)に嫌気がさして、パウエル国務長官とともに政権を去ったアーミテイジ氏であるが、まだまだ意気軒昂といった様子で安心した。アーミテイジ・ナイ報告の第二弾を公表したばかりとあって、その内容についての意見交換が活発に行われた。

カート・キャンベル(Kurt Campbell, 元国防次官補代理)
エド・ロジャース(Ed Rogers, 新米国安全保障センター所長)
米国では、早くも大統領選挙2008が開幕していることもあり、民主・共和両党の著名な政策・選挙アドヴァイザーの二人に現状分析をしてもらう。

Day 3
ジェームズ・シン(James Shin, 筆頭国防次官補代理(アジア太平洋安全保障担当))
日米同盟の将来像を考える上で、貴重な討議だった。アメリカ人にしては珍しく、哲学的な観点で問題提起してくれたのが印象的。同席したマイケル・グリーンもその点を非常に評価していた。

米下院議員との意見交換
シルヴェスター・レイズ(下院情報委員会委員長)
テリー・エヴァレット(下院議員)
ロバート・アンドリュース(下院議員)
トレント・フランクス(下院議員)
主として、北朝鮮の核、ミサイル問題についての意見交換。

ゴードン・イングランド(国防副長官)
ヘンリー・オヴァリング(国防省ミサイル防衛庁長官)
ジョン・ルード(国務次官(軍備管理・国際安全保障担当))
リキ・エリソン(ミサイル防衛振興連盟所長)
大量破壊兵器の拡散防止、ミサイル防衛システムにおける日米協力についての意見交換。

米上院議員との意見交換
ダイニエル・イノウエ
テッド・スティーヴンス
拉致問題、慰安婦問題を中心に意見交換。

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