尾崎翠コミュの創樹社版全集を愛する方々へ

＜写真は８０年刊のアンソロジー『第七官界彷徨』（創樹社）。全集と同じ野中ユリ装釘。＞

　このコミュの写真が、まさしく１９７９年に刊行された最初の尾崎翠全集（創樹社）ですが、この全一巻の全集を作った玉井五一編集長（現･文芸評論家）と、丹念な「校異･解題」を担当した田中禎孝氏（元･岩波書店校閲部）が、映画『こほろぎ嬢』を上映中の「シネマアートン下北沢」に来館し、全集発刊当時のことを語ってくれます。

　翌８０年には、この全集をもとにアンソロジー『第七官界彷徨』が刊行されましたが、ともに野中ユリ装釘の、尾崎翠の世界への入り口にふさわしい造本です。

　この全集の成立には、多くの人が関わりました。創樹社に全集の企画を持ち込んだのが、思想史家の藤田省三氏と田中禎孝氏（氏は未発見の作品探索にも尽力）、「こほろぎ嬢」や「『第七官界彷徨』の構図その他」などを発掘した日出山陽子さんは「年譜」の製作にも従事されています。

　９８年に尾崎翠全集を筑摩書房にトレードした稲垣眞美氏ですが、こうした協力者を排除したワンマン体制となり、「校異･解題」などは２０年前の創樹社版のほうがはるかに詳しいという、おかしな事態が現出しています。また、年譜と解説で事実関係に食い違いが生じるなど、全集としては実にズサンなものです。

　今回の映画『こほろぎ嬢』のロードショーにあたって、玉井五一氏をお招きしたところ、田中禎孝氏とともに来館していただけることになりました。全集成立の経緯や、当時の反響などお聞きしたいと思います。創樹社版全集を愛する方々のご来館をお待ちします。

●日時＝１月１１日（木）１７時３０分の回の上映終了後にトーク＆ディスカッション。

コメント(8)

最初
全て
最新の40件

[1] mixiユーザー 12月26日 23:25

私が初めて尾崎翠を知ったのは、大学生のころ、NHK-FMの朗読の時間という番組でした。「第七官界彷徨」が取り上げられていたのですが、その独特な世界にすっかり魅せられ、大学生協に注文したのが、創樹社刊の『尾崎翠全集』です。注文していた本が届き、手にしたときの喜びは今でも忘れられません。帯に花田清輝が確か「私のヴィーナス」と書いていて、生協の職員の方も興味深げに本をながめていたことを覚えています。本を手にして、こんなにうれしかったのは、あのときが最初で最後のような気がします。1/11はぜひ行きたいです。

[2] mixiユーザー 12月27日 05:58

８年前に『第七官界彷徨･尾崎翠を探して』の製作に取り掛かった頃、思いがけずひんぱんにお電話をいただいたのが、ＦＭの朗読を聞いたという女性たちでした。中には作者が尾崎翠であることも知らず、本は何処で入手できるのか聞かれたりしました。そうか、彼女たちは尾崎翠の小説作品ということでなく、日々の生活の中で、たまたまラジオから流れてきた尾崎翠の言葉そのものに魅せられ、それが時間が経っても全然古くなってないのだと知って、とても嬉しかったです。
「尾崎翠は難しい」「読みながら寝てしまった」などという言葉を聞くたびに思い出すエピソードです。

[3] mixiユーザー 12月27日 07:56

帯の花田清輝の言葉「わたしのミューズ」でした。

[4] mixiユーザー 12月27日 22:55

わたしは花田清輝経由の尾崎翠ファンなのですが、当時の花田は知名度の高い批評家でした。「わたしのミューズ」というフレーズがでてくる、尾崎翠再評価の狼煙になったエッセイは、確か１９６０年ごろに書かれていたと思いますが、今や花田と翠のポジションは逆転し、尾崎翠は知っていても、花田清輝なんて誰も知らないといった状況です。

[5] mixiユーザー 12月27日 23:28

12/25東京新聞夕刊に、10代の終りごろの創樹社版全集との出会いについて書きました。一部を引用します。
〈作家名を知らなかったところに書店で偶然出くわしたこともよかった。ふつうは広告だのその他の文章（たとえば、べつの作家の文庫解説に知らない作家名が出てくるとか）で名前を予め知っていて、しかるのちにその作家の本を手に取るというケースが多いのでしょうが、たまたま、尾崎翠について書かれた文章で私が始めて読んだものは、当の全集の帯文だったのでした。単行本は読んでも雑誌を読まず、また本について話をする友人などという存在もひとりもいなかったので、ほんとうに一対一の出会いだと勘違いしてしまいました。インターネットの時代になると、こんな出会いかたをするのはますます困難なことだと思います。
　もちろん、帯や月報に金井美恵子・種村季弘・山田稔といった、好きな書き手の名前が見えたことも、乏しい可処分所得をはたかせる原動力のひとつであることは間違いありません〉

[6] mixiユーザー 01月07日 11:57

11日の「こおろぎ嬢」上映＆トーク・ディスカッションを楽しみにしていましたが、上映開始時間が17：30ということに気がつき、ショック、会社を早退しないかぎり観に行けません。勤め人はほぼ観に行けない時間では？　ちょっと恨めしい感じです。

[7] mixiユーザー 01月07日 13:11

よろず様
　開始時間の件、大変申し訳なく思っています。劇場が、上映後、深夜の時間帯に貸し館を行なっている関係上、このような時間になってしまうのです。お互いにキビシイ環境のなかで奮闘していることもあり、わがままも言えません。近年、夜の時間帯に映画を観るひとが、全国的に減っているらしく、それも影響しているのでしょう。せっかく楽しみにして頂いたのに、まことに申し訳ありません。役者さんたちのトークのある土曜、日曜に観て頂ければ幸いです。

[8] mixiユーザー 01月08日 00:10

開始時間の件、そういう事情があるのですね。残念ですが、11日はあきらめ、明日、下北沢に行く用事ができたので、その前に『こおろぎ嬢』を観に行くことにしました。可能なら13日の『第七官界彷徨』も観にいきたいと思っています。そこにどんな尾崎翠の世界がまっているのかと思うと、今からわくわくします。

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ