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森毅コミュの数学の歴史

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以下は、使いまわし意で申し訳ありませんけれども、某出版社の採用に際して、1200字以内でなんでもいいから書評を書けと言われてやったものです。

森毅『数学の歴史』(講談社学術文庫)
 「十八世紀は、数学にとって、事実の世紀だったのである。ついでに、この種の標語づくりを、比較のために試みれば、十七世紀は原理の世紀であり、十九世紀は体系の世紀とでもいうことになろうか。後代の人たちは、二十世紀をなんとよぶだろう。現代人のなかにはそれを方法の世紀とよびたがる人もあろうが、まあ、それはこれからの問題である」と森毅は言っている。これは数学のみならず、歴史記述においても適用できる。G・W・F・ヘーゲルの『歴史哲学』のような体系を構築する歴史学に代わって、二〇世紀の歴史学は方法論を志向している。科学史といったかつてはマイナーな歴史研究が、アレキサンダー・コイレの「プロブレマティーク」やトマス・クーンの「パラダイム」が科学史の枠を超えて使われているように、歴史記述全体を改変している。今日、数学への認識は思想を理解するには欠かせない。ミシェル・セールのような積極的に数学を用いる思想家だけでなく、ミシェル・フーコーの手法はルベク積分、ジル・ドゥルーズが微分方程式、ジャック・デリダは差分方程式に譬えることができる。「今では、すでに数学は社会構造の一部である」。
 二〇世紀後半、歴史記述はよりオルタネイティヴの方法論を模索している。一九七〇年に出版された本書も西洋を中心とした連続的な正史に対する脱構築的試みである。森毅は古典時代がいかに後のヨーロッパと断絶している反面、イスラム文化が寄与していることを強調する。ただ、諸制約によりエスニック数学や非線形数学などに関する記述は限定的である。とは言うものの、この作品では、読者を数学研究者や愛好者に限定させたくないために、「エンターテインメントのつもり」であることもあって、優れたキャッチ・コピーに溢れている。時代の気質を読みとる際に、それらは示唆的である。ブルバキに触れつつ、二〇世紀を「集団的匿名」の時代だと呼んでいる。もはや英雄時代は終わっている。基礎研究と応用数学が矛盾なく融合し、大衆化したコンピューターはこの世紀にふさわしい。
 時代・数学者・同時代人・無関係な地域の同時代人という四つの欄の年表が各章に付けられている。しかし、二〇世紀になると、第四欄が空白になっている。これは、大衆の世紀では、世界が完全にシンクロされているという意味であり、グローバリゼーションはその一つの帰結である。
 本書は引用を多用しているなど通常の森毅の文体とは異なっている。彼は花田清輝から強烈な影響を受けているため、彼にはとてもかなわないという意識が強く、引用を積極的に導入する花田のスタイルを避けている。数学の比喩を歴史・文化の記述に使っている花田の『復興期の精神』を念頭にし、逆に、文化や歴史の比喩を数学史に援用している花田に捧げられたオマージュであると言えよう。

この時代定義は素晴らしい!これ以上の時代への命名を私は知らない。

コメント(3)

おっしゃる通りです。その見立ては、実に、示唆的ですね。一種の二重螺旋という感じが歴史の面白さですね。
私見ですが、前世紀は「抽象構造の世紀」あるいは「Topologyの世紀」「無限次元の世紀」「アルゴリズムを捨てた世紀」等々だと思います。集団匿名というのは数学に限りませんね〜2ちゃんねるとか…(ω)
ブルバキは位相の第一巻だけ持っています、森先生が編集委員だったはず。

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