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感動の映画ランキングコミュの「ヒトラーの贋札」「第三の男」「ゆれる」「カルメン」

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『放課後の舞台にて。オレ。』〜後景・1〜
 
私は今なんという大きな舞台にいるのだろうと思う。
 舞台の光景は「放課後の教室」である。
 シーンとした光景に蹲っていた私が、いやいや眼を覚ますと、そこには全てのキャストが居た。我が人生の。我が今の刻の。矢継ぎ早に今まで見た映画が甦る。「ヒトラーの贋札」、「第三の男」、「ゆれる」。それらは交互に情景を作る。そこに「カルメン」が現れる。静かに、全てどけっていうふうに。二拍子、呻き、踊りが始まる。そうだ、舞台はフイエスタなのだ。
 それにしても凄い数のキャストである。
 グレース、ミシェル、パメラが何れも手拍子を打っている。アキラさんがギターを奏でている。私は呻き唄っている、やや低い声でうな垂れて。オレ。
何れの衣装も何か死に装束のよう。
後景に私が捨てた者たち、いや私を捨てた者たちが笑ったり、黙してうな垂れているのが居る。また、私を通過した人々が更にその後ろに居る。色々な民族、肌、喘ぎ、臭い。もの凄い数の人々が林立している。そんな舞台背景。これらはあくまでも後景である。
右の座には、愛すべき識者としての友人たち、フリフカ、hagurin、ウライさんが微笑んでいる。その友人達は言いたいことを懐に隠している。
やや斜めに、もつ焼き屋のママがいる。卑下た言葉で叫んでいる。“やったんだろう、おめーは。あのロシアもアメリカもフィリピーナも・・・”って。
その反対には日本人なのに英語しか話せない娼婦がいて、連綿としてつぶやいている。“Wonderful personality. Strong personality. A mysterious person. Attractive personality.・・・”って。

舞台の光景は「放課後の教室」である。それは5月の鬱陶しい午後。

ふと暗くなり、一条のライトが灯る。私の躍動の刻である。
私は毅然として、静止し、瞬時に我に帰ったように、脚を横に打つ、打つ。タップを踏む。腕を誘うように振る。舞う。回転する。そしてまた静止する。
そのとき、左の裾からSさんが登場する。白いロングドレスで。ゆっくりと歩み、私の前で静止し、毅然とした顔でじっと私の眼を射る。しばし射る。私はやや狼狽しているが、私もSさんの眼を射る。黒い髪、黒い瞳。私の眼は残年にも茶である。
呼吸が整った瞬、ふたりはさっと離れ、互いに脚を踏み、タップする。そして腕を踊らせた後、手拍子を打つ。二拍子で打つ。打つ。
アキラさんはギターを奏でている。そして以外にも、友人たちのフリフカ、hagurin、ウライさんが手拍子を打ちながら唄っている。呻いている。後景の人達も手拍子を打っている。

ああ、いつの間にか、舞台の光景は「アンダルシア」になっている。それは5月の陽が射す午後。

ふたりは踊る、タップを刻む。
しかし、私は躊躇っている。一条の光は、あの初恋のエリカが放っているからだ。アンダルシアで逢おうね、っていう約束。絶対的な約束。プロミス。私の誓い。それが躊躇させる。
エリカは何も言わないが、やや不機嫌なのだ。アンダルシアは私たちふたりのためだけの舞台であったから。
私はいつも懐に匕首を隠して生きてきた。それを顕わにする刻なのだ。
誰を刺す。Sさんか。己か。
ふたりはそれぞれの想い、素性をもって腕をくねる。同調するように。離反するように。決意と疑惑。躊躇の眼を刺しあって。踊る。踊る。踊る。
光は困惑して点滅し始める。
手拍子は止まない。二拍子。呻き。奏で。

こうして第1幕は開けた。オレ。

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