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THE かなさし庸子コミュの第17話 「ニューヨーク赤鬼物語」

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第17話

もう何年もニューヨークへは行っていない。
最後に行ったのは四年前のクリスマスシーズンだったかな。この時は生徒さんを連れてのニューヨークツアーだった。毎晩ミュージカルを見たり、ジャズクラブへ行ったり、疲れたけど楽しい旅だった。
どこの街でも大都会とは変化が早いものなので、私が住んでいた今から10年以上前にあったお店も今は無くなっている所がほとんどかもしれない。特にジャズクラブは、私が住んでいる頃から老舗といわれているお店がドンドン消えていった。時代にマッチしていないということなのかな。確かに普通のジャズ、もう死んでしまったジャズなんて、今更聞きたいとは思わない。やはり音楽は生きているものを聴かなければ!

ジャズヴォーカルの勉強を始めて、毎日10時間くらい練習に明け暮れていた庸子少女。少しずつライブ活動も出来るようになってきたけど、一向に人前で歌う時に超緊張するのは直っていない。でも自分が進みたい音楽の方向性は見えてきていたので、それを形にする為の技術習得に日夜練習の日々を過しておりました。

技術の基礎練習は何の迷いもなく出来るんだけど、では、自分の表現は、自分の歌とは・・・というところで詰まってしまった。よくいる日本人のようにアメリカ人の真似をして喜ぶタイプではないので、自分のものといえるものがどうしても欲しい、作りたい、ん〜〜〜〜〜と悩む日々が続いました。
アメリカに暮らして一番思ったことは、オリジナルである。オリジナルとは、オリジナル曲を持つということではなく、例えば、1音を奏でただけでも、あ〜〜これはあの人ね!とわからせるだけの自分の音の世界を持つこと。それなりのレベルのアーティストは、ジャンルを問わずみんなパイオニアであろうとしている。これは日本とのかなりの差だと思う。でも、アメリカにいる人といっても、あくまでもある程度のレベルに達した、ある程度の知能指数のあるアーティストのみの話だと思うけど。

ジャズヴォーカルの勉強したての頃に、ジミー・スコットに出会い、歌の何たるかを教えていただいた。その教えは今も音楽をする上で最も大切なこととしているけど、その表現方法には苦戦。ジミーの真似して歌ってもまったく意味ないしね!もっと自由に、正直に、もっともっと自分らしく、自分を表に出すのにはどうしたらよいのか、庸子少女は深い悩みの沼にはまってしまいました。いろんなCDやライブを聴いたりしながら悶々と過していたのですが、ここでもまたまた、素晴らしい人が助けてくれた。

ジミーのバックでベースを弾いているヒル・グリーン氏。ヒルとは去年の3月横浜でコンサートをした。ジャズのプレイヤーとしても素晴らしいけど、なんといってもフリーをやらせると彼は本領を発揮すると思う。ヒルは、とても正直でカッコをつけない素朴な音を奏でるエネルギッシュな素晴らしい演奏家だ。
悩みの沼にいた庸子少女はヒルに思っていることを聞いてもらいました。そしたら、自分が出演するライブを聴きに来いと誘って下さいました。説明もろくにしてもらえず、とにかく素晴らしいということだけ。でも、庸子少女は毎日悩み苦しみ何か突破口が欲しかったので、すがる思いでのこのこ誘われるがまま聴きに行ってみました。

ヒルからはまったくどんな音楽なのかの説明もなく、とにかく素晴らしいとだけ言われたので、なんの心構えもなく、変な先入観もなく、いったいどんな音楽が聴けるのかワクワクドキドキしながら一人クラブへ足を踏み入れてみました。

お店はダウンタウンにある「ニッティングファクトリー」というクラブ。普通のジャズはやらず、ロック系やフリー系の、ちょっと変わった音楽を専門にやっているお店だった。お客さんは白人ばかり。少しいる黒人も金はないけどちょっとインテリっぽい。ニッティングファクトリーというだけあって、編み掛けの汚いセーターのようなものが天上からぶら下がっていたような気がする。椅子もボロボロだし全然揃ってないし、壁もボロボロ、キレイから程遠い店内。でも、何とも自由な雰囲気がかもし出されていた。お客さんたちは出演者にも寄るんだろうけど、ヒルが出演した日は、芸術に関して一言二言言いたそうな、インテリ臭い、金はないけど気ぐらい高いぞみたいな、小理屈こねくり回すの大好きみたいな人が多かった。

行って大正解!これはすごい!素晴らしい。でも、確かに説明は出来ない。ヒルが素晴らしいと絶賛していたのは、チャールズ・ゲイルという黒人のおっさん。サックスを吹いたりピアノを弾いたり、私には名前もわからない管楽器を吹いたりしていた。いわゆるフリーってやつ。フリージャズと言うのはなんか違う気がする。もうそこにはジャズの片鱗はないような気がするので。いや、もしかしたらこれが本当のジャズなのかもしれない。日本で言うと山下洋輔のような音楽。基本的にはフリー、時々曲らしいこともやるけど私にはわからない。

とにかく驚いた。私の人生の中で音楽を聴いて最も驚いた瞬間だと思う。何に驚いたかというと、どう聞いていいのかわからないことに驚いた。リズムもハーモニーもそんな固定観念はそこには存在しない。もう超越している。黒人なのでエネルギーはものすごい。1時間以上ものすごい音量とエネルギーで演奏し続ける。それにも圧倒された。いったいこれは何なんだ?なんと言う音楽なんだ?まったく別の扉が開かれた瞬間だった。この人が何を言いたいのかはわからなかったけれど、すごいこと、素晴らしいことだけはすぐにわかった。わかったというよりも感じた。身体で感じたんだ。

チャールズ・ゲイルは、その頃60歳くらいに見えたけど、もしかしたらもっと若かったのかもしれない。黒人の年齢はわかりにくい。白いTシャツにジーンズだかチノパンみたいな格好で、まったく飾り気のない服装に気負ったところのない態度。まったく普通のオッサンにしか見えない。ミュージシャンっぽくもないし芸術家っぽくもない。静かになにもしゃべらないで軽く会釈だけしてスーッとステージに現われて、突然ドカ〜〜〜ンと爆弾みたいな演奏を始める。その爆弾演奏が1時間以上は続く。バンドはチャールズの他に、ヒルがベース、名前を覚えていないけどチェロの人がいたかな。この後毎回チャールズのライブには行くようになったけど、そういえばチャールズはバイオリンも弾いていたかもしれない。

実はチャールズ・ゲイルはフリーの世界ではトップの人らしく、かなりの有名人らしい。主にアメリカやヨーロッパで活躍をしているらしい。ヒルいわく、普段のチャールズはとても物静かでインテリでいつも本を読んでいる人なんだって。昔ニューヨーク大学で教鞭もとっていたらしいが、それは彼の触れられたくない過去らしい。長いことホームレス生活もしていたらしいが、それは隠していないみたい。ホームレスをしても自分の音楽にだけはこだわり続けていたらしい。ここらへんがパワーの源であり、自然体でいられる自信に繋がっているんだねきっと。チャールズが今の自分のスタイルに行き着くまでにはかなりの時間を要しただろうし、理解をされなかった期間も長かっただろうけれど、曲げないのね。信じた道を何が何でも突き進む。それが演奏から聞こえて来た。彼が普通のオッサンでいながら、とんでもなくすごい音楽ができるのはその辺が理由なんだろうな。

庸子少女にとってチャールズの音楽との出会いは、とにかくものすごい衝撃で、自分の中で上手く整理がつかなかったんだけど、これはものすごい突破口になった。ピヨピヨヒヨコの駆け出しの庸子少女が深い悩みの沼にはまってしまうのなんて当然のことで、そこからゆっくり考えながら、こだわりながら進んで行けばいいんだって、腹が括れた感じ。長期戦の心構えが出来た。

去年ヒルに会った時にもチャールズはどうしているのか聞いてみた。今も元気に演奏活動をしているとのこと。まだ日本には来たことがないらしいので、何とかして日本に呼びたいものだ。久しぶりに生のチャールズを聴いてみたいし、みんなにもぜひ聴いてもらいたい。

ちなみに、ニッティリングファクトリーは今でもニューヨークにあると思う。チャイナタウンのほうに引越して、お店もきれいになっていた。ライブ会場は大小2つくらいあってバースペースもある。白人の多いお店でロック系のライブが多い。毎年行われる「What is Jazz Festival」は面白い。生きている音楽しましょ!!って感じ。

コメント(20)

待ってましたー。

二人目のミュージシャンとの出会いですね。 ジャズは自由な表現の音楽、と聞くけれど実際すごく違うような、なんだかよくわからないまま歌っています。

結局は自分が「これがいい」と思うように歌うしか。 それが自由にできるすべを、いま学んでいるところ、という感じです。
かなさし庸子様を知る事の出来るお話しだな〜と思いました。
凄い頑張りやさんなんですね。
ジャズってあまり私は、馴染みがありませんでした。
でも、庸子様の歌を去年の『LOVE×2』で聴き・・・驚きました。
この人何者!? こんなにスタイルが良くて、こんなにキャシャなのに凄い発声!!どこから出てるの!?
ジャズって大人が聴く物・・・と思っていました。(十分大人なんですが。。。(><))
こんなに凄い音楽だったんだ〜と思いました。
それからです!!
かなさし庸子様を知りたいって思ったのは。。。
欲を言えばもっと知りたい私です。。。
ホームレス時代のことは隠さなくても、おそらく納得いかない生活だった大学の先生のことは、隠す。すごい人生だと思いました。それだけ信念があるんだな。

赤鬼さまも自分の信念にしたがって歌っていってください
チャールズ・ゲイル大兄、是非聴いてみたい!
ニッティリングファクトリー、強く行ってみたい!

1年前の今頃、日系アメリカ人ホームレスで絵描きの老人を主人公にしたドキュメンタリー映画を観ました。

「ミリキタニの猫」

阿部総理辞任の号外舞う渋谷駅頭で、映画にココロ動いたぼくはこのままNYに行ってしまおうかと思った(笑)。

  http://www.uplink.co.jp/thecatsofmirikitani/
チャールズ・ゲイル、確かにパワフルだわ。




くわまんさま
画像提供ありがとうございます。

チャールズ・ゲイルのフリー
次はどうなるのか予測不能、これって即興?
2度と同じフレーズを繰り返すことなく、フィーリングのまま泳ぐように演奏しているように思えました。

赤鬼様
9/22主張ライブの最後を見届けたいと思います。
そして、その次のシリーズも楽しみにしています。
もしかして、「かなさし庸子のフリー」とか?

チャールズゲイル、このピアノは素晴らしい〜〜〜〜
セシル・テイラーがライバル視するのががわかる!!
ぜひ聴いてください。

赤鬼様
チャールズ・ゲイル氏
ぜひ日本に呼んで下さい。
生で聞いてみたいです。
マグマのように全身からグツグツ出てくる音楽
すごいです。

長期戦の心構えが出来た〜
すごい出会いですね。
どうして出会えるのか〜
私たちは知るすべがないけれど
きっと何かの力が働くのでしょう〜

庸子少女のそれからがまた楽しみです。
ハハマイオニさま

いつもありがとうございます。

確かに、いわゆる日本で演奏されているジャズは、まったく自由なんかではないようです。
ほとんど古典芸能の域に達しています。
死んでいる音楽に聞こえます。

信じるものは自分の感性のみです!
あん様

良い体験をしましたね。
何事も身体で納得しないと本当に自分のものになったとは言えないと思っています。

何とかしてチャールズを日本に呼びたいですね。
小百合ちゃん様

ありがとうございます。
「ニューヨーク赤鬼物語」は、今のところ1話から17話間で書き上げています。
時間のあるときにでも、ぜひぜひ前に書いたのも読んでみて下さい。


ちなみに、私はスタイルよくないです〜〜〜〜
くわまん様

ありがとうございます。
多分、自分の信念に従ってしか生きれない人間というのが、この世には存在しているんだと思います。
自分で自分の人生難しくしちゃうんだけど、これしか生きようがない。体質みたいなものでしょうか。

頑張ります〜〜〜〜
yamazakura様

ありがとうございます。
この映画のことは私も新聞で見て興味を持っていました。
「ミリキタニの猫」もう見れるところはないのでしょうかね?

チャールズはぜひ日本に呼びたいですね。
実現するには時間がかかりそうなので、まずはニューヨークへ行って聴いてみてください。
期待を裏切ることはないと思います!!



くわまん様が見つけてくれたユーチューブのチャールズの後ろでベースを弾いているのがヒル・グリーンです!!
ヒルはいつも身体を大きく左右に揺らして演奏してます!!

rico様

ありがとうございます。
主張ライブは最終回ですが、これは新たな一歩の始まりでもあります。
ぜひ聴きにいらしてください。そして新たな一歩の始まりに立ち会ってください。

フリーは好きです。
でも、チャールズのようなフリーを日本人がやることには疑問があります。
私は草食動物らしいフリーをやります。
ヨウツベ、繰り返して聴いて居ります。

ハートで感じる前に、頭で理解しようとしてる自分がチョト悲しい(笑)。
でも、NY在住時の赤鬼さんと同じシチュエーションで聴いたなら。。。

きっと、グッと来るものがあるに違いない!
yamazakura様

そうなんです。
頭で理解しようとするから、理解できなくてどうしていいかわからなくなるんです。私もそうだったのです!!
身体で感じる、そこにある音をそのまま受け入れる、無心で聴くっていうことなのかな?

ライブで聴くともっと聞きやすいと思います。
ジャスミンさま

いつもありがとうございます。

なんとかしてチャールズを日本に呼びたいですが・・・・・
ん〜〜〜自分でイベント企画するのにはものすごいエネルギーがいるからな!

出会いって縁だと思います。
あとは勘。
勘を働かせて、何処に素晴らしい人がいるかを探り当てます。
時間は有限なので無駄には出来ないのです。
いつもアンテナを張っていると素晴らしい人と出会いますよ誰だって!!
日本にもフリーはいろいろありますね
https://www.youtube.com/watch?v=JAHz5ptRByw
https://www.youtube.com/watch?v=rHJ8sYF9xac

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