アクターズプレイハウスコミュの【ＡＰＨ特集】

「山篭りレポート」


APHが休みとなった今年のお盆。
その二週間を「歩く事を集中してする」期間にしようと決めて、
福島県のとある山に六日間篭りました。

篭ったと言っても、実際は親の旅行に同行し、自分だけ別行動を取ったという
のがホントのところですが、
そこは“集中する場所”という意味ではこれ以上無い環境だったのです。

まず、圧倒される程の静寂がありました。
標高１０００メートル以上の場所では、熱中症で人が倒れまくっているらしい
今年の夏ですら、
朝はストーブを点けないと寒いと感じるほど。
その冷たさの中、小高いウッドデッキの上から聞こえるのは、ウグイスの鳴き声のみ。
遠くの方から走ってくる車の音がはっきりと判るほどの無音がそこにありました。
　
そんな中で念頭に置いた事は、とにかくゆっくり歩き続けようということでした。
それまでのAPHセッションの中で気づいた点が…

１：足首で処理しようとしても足は開かない。
２：大股で移動しようとすると、体がバラバラになる感覚がある。
３：足元を気にするあまり、上体との連動が起こっていない。
　
…だったのですが、正直「歩かなすぎだな」と感じていたので、
長い時間を確保でき、且つそうせざる負えない状況を作ったというわけです。

実際に歩く道のりには、緩やかな傾斜が続く曲がりくねった車道を選びました。
スタートが山の上のペンションで、ゴールが５０メートルほど下ったところにある土産物屋。
片道３キロ程度の道を歩き、そしてまたペンションに戻るを繰り返しました。
　
一往復でだいたい一時間くらいの所要時間。
最初はそれでも大したことはありませんでしたが、
三週目あたりからダメージの蓄積が起こり始めました。
主に踵が痛くなったのですが、これが“歩けていない”証拠であることが後に分かってきます。
　
一日目、二日目と続けていく内に、そういえばセッション時、
代表が摺り足のような動作をしていたことを思い出しました。
足の甲を立てて、ススス、とゆっくりとした動作で足を運んでいたことを思い出し、
その動作がどうもしっくりこなくて頭を捻ったのが三日目。
そしてそれが、重心が高すぎるからではないかと疑いだしたのが四日目の一往復目でした。

体の中心から恥骨の上あたり、力を込めようとしても入れづらい場所。
ここに全神経を集中しながら歩いてみると、
それまで上下に大きく動いていた体が一定の高さで安定したような
（下腹部から水平に板が突き出して、それが固定されて動かないような）
感覚が起こりました。

いや、ビックリ。
これ以降、まったく足が痛くならなくなりましたね。
目線が上下しづらくなり、
地面をスライドしながら移動しているような感覚をなんとなく感じるようになりました
（特に傾斜が強い場所でも、
それに合わせてピタリと張り付いているように感じる瞬間があったのは面白い経験でした）。

こうなると単純に体が楽になってくるので、
ハマッている間はどんどんテンションが上がっていきます。

そこからはじめたのが、歩きながら声を出すこと。
人目を憚る必要すらない山道なので、ノーブレーキで大声を出しまくりました。
最初は単発の「あー」の音階。そこから好きな歌を好きなだけ。
途中、大声にビックリした犬に吠えられたりしつつも、
これほど気持ちいいものかと思うほど無理無く声を出せる環境と状況が幸せでたまりませんでした。

そして、普段の生活で如何に声を出すことに
無意識のブレーキをかけているかにゾッとしてしまった次第です。
いや、考えればまるで泥の中にいるかのような気分です。
これが妨げになっているとすれば、全力で立ち向かわなければならないと感じましたね。
　
非常に実りと実感のある六日間でした。
…が。「絶対こうだ！」と思っていたことが
その後のAPHでまったく見当違いであったことが分かったりと恥ずかしい思いもありました。。。

たかだか六日ではやはりこの程度！…と思いつつも、
ほんのり何かが掴めた、そんな５０ｋｍの道程。


以上。