人権問題コミュの映画「住井すゑ　百歳の人間宣言」　２月２６日東京文京区で

この映画を観にいこうと思っています。

～現在の社会で、人権は守られているか、人々は平等か、国々は平和か。私達は、９５歳で昇天した彼女の人間宣言を今こそもう一度聞いてみたい。映画の上映を待ちたい。「住井すゑ　百歳の人間宣言」、言い得て妙である。～

映画のサイト
http://www.sumii.net/movie/index.html

2月26日（土）　?10時　?13時　?15:30　（開場は30分前）
文京・シビック（小）
前売　1000円　　当日　1300円　（自由席）
講演　増田れいこ（ジャーナリスト、住井すゑ次女、元毎日新聞論説委員会）
?の上映終了後、?の上映前　に講演があるそうです。

問い合わせ
03-5212-1383 文エンタープライズ
あるいは
03-3811-4245　文京民主商工会内

上映スケジュール
http://www.sumii.net/movie/schedule.html

映画について
http://www.mainichi.co.jp/info/eigacon57/news/0128.html

差別問題を扱った大河小説「橋のない川」で知られる作家、故住井すゑさん（１９０２～９７年）を描いた記録映画「住井すゑ　百歳の人間宣言」（文エンタープライズ製作）が、「第５７回（０２年）毎日映画コンクール」（毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社主催）で記録文化映画賞（長編）に輝いた。作品は生前の講演会の映像や、作家の野坂昭如さんやタレントの永六輔さん、映画監督の山田洋次さんらへのインタビューなどで構成されているが、聖霊女子短大の北条常久教授も住井さんの研究家として出演した。今回の受賞を機に、北条教授に住井さんへの思いを寄稿してもらった。

　住井すゑの名作「橋のない川」は７００万部売れたといわれている。この被差別部落をあつかった名作はまさに国民的大ベストセラーである。

　その住井すゑが９５歳の長寿をまっとうしたのは９７年のことであったが、今度は記録映画でよみがえった。それにしても９５歳で死亡した人間が、「百歳の人間宣言」とは不思議な題名であるが、関係者は少しも不思議とは思っていない。

　私は彼女の葬儀に参列したが、会場の看板には「住井すゑさんと未来を語る会」とあった。死んだ人に未来はあるのか。しかしそんな疑問を会場で言い出せるような雰囲気ではなかった。住井すゑをとりかこむ人々は、誰も彼女が死んだなどと認めたくないのである。後で聞いた話であるが、いちはやくかけつけた葬儀屋が、「先生は死んでなんかいませんよ」と追いかえされたという。

　「作家は死んでも作品は死なない」という言葉があるが、彼女の場合、作家も死なないのかもしれない。そんな住井すゑだ、百歳の人間宣言があってもよいのかもしれない。

　住井すゑは奈良の被差別部落の近くに生まれながら、秋田市土崎に産声を上げた同人誌「種蒔く人」第１６号（大正１２年２月）の「水平社運動」特集号で、差別撤廃が運動として結実していることを知り、自分の文学の方向を部落解放に定めたのである。

　住井すゑの夫、犬田卯（しげる）は、「種蒔く人」の同人小牧近江の「地から生れる芸術の要求」「東京朝日」（大正１１年１０月３～５日）を読んで、農民文学を志す。

　９２年、私は「橋のない川」の第７部を刊行した住井すゑから、「『種蒔く人』の編集を私の家でしていたこともある。当時の話をしてあげるから、時間があったらいらっしゃい」という連絡をもらった。私が著した「種蒔く人研究」という研究書を偶然読んだといい、全く無名の私に声をかけてきたのだ。

　訪ねると、９０歳の住井は喜んで迎えてくれた。有名人であろうとなかろうと関係ないところが住井らしかった。

　そこで、思い出話に花が咲いた。「種蒔く人」の土崎版（大正１０年２、３、４月号で発売禁止。その後、東京版として復刊）からの同人山川亮が、長く住井宅に居候していたので、しばしばそこが編集会議の場になったそうだ。

　それが縁で、私の住井宅詣でが始まり、「住井すゑ　百歳の人間宣言」にもインタビューで登場することになるが、彼女は私の顔を見る度に、人権・平等・平和をくりかえしていた。

　住井すゑの９５歳での人間宣言は、死後６年たった現在、ますます重要性を増している。

　現在の社会で、人権は守られているか、人々は平等か、国々は平和か。私達は、９５歳で昇天した彼女の人間宣言を今こそもう一度聞いてみたい。映画の上映を待ちたい。「住井すゑ　百歳の人間宣言」、言い得て妙である。

（毎日新聞２００３年１月２８日秋田版から）