♡ ＡＴＴ♡コミュのＡＴＴバトルロワイアル　第五十二話【ホスト神拳ｖｓニート鳳凰拳】

刻は２０ＸＸ年。

世がニートで乱るる時、一人のホストが世界を救うと言う。

ここに刻まれるのは世紀末（？）を掛け抜けた男達の熱き救世主伝説である。







ピラミッドをバックに二人の男が睨みあっている。

その様子を時折光る雷がフラッシュを焚いたように露にしていた。





勝と出村。





二人の男の激突はもう避けようが無かった。











出村「将星堕ちるべしッ！！」





出村は目の前に現れた勝に向かって人差し指を突きたてながらそう言い放つ。











勝「ほう・・・・・でかくなったな小僧・・・・・・・・・・・（態度的な意味で）」





その言葉に勝は呆れと余裕を重ね合わせたような表情で答える。

そして自分の言葉に続けるように勝ち誇った口調で話し出した。








勝「フハハハハ、何やらいきがっているようだが、お前ごときではこの俺は倒せんよッ！」








大きく開いた右手の掌を出村に突きつける勝。

その言葉に反論するかのように出村が相手に左肩を真っ直ぐに向けるようにして構えを取る。








出村「・・・・オカツ。・・・・お前のような社会不適合者に負ける俺ではない。」




鋭く刺すような視線を勝に向けた出村。

すると出村の視線に応えるかのように視線の先の勝がその両目をカッと見開いた。









勝「フフ、ならばお前と俺の実力差を見せ付けてくれようかぁぁぁぁぁッ！！！！！」









そう叫ぶと両足で地面を蹴り、一気に出村に向かって飛び掛っていった。

これが二人の開戦の合図となる。









勝「フハハハハッ！！」









突然出村の懐の下から顔を出す勝。

勝はその驚異の脚力により、一瞬で相手の真下まで潜り込んでいた。

出村の位置から見れば瞬間移動をしたように見えたかもしれない。

お互いの体が激しく交錯する。









出村「ホワッタァァァァァァーーーーー！！！！」

勝「フハハハハハハハッ！！！」









ドガガガガガガガガッ！！！！！










二人が放つ拳の連打が激しく音を響かせる。

そのスピードは常人では肉眼で捉えることも難しいだろう。

拳と拳のぶつかり合いに息つく暇も与えない。

どちらも退く事のない攻撃の応酬に決着が着かないかと思われたその時。









出村「アタァァァァァーーーーーーッ！！！！！」







勝「ぐぉッ！！」










出村の渾身の蹴りが勝の腹部にヒットした。

そして次の瞬間。









出村「アッタタタタタタタタタタッ！！！！！！！」









ドガガガガガガガガッ！！！！







一気に追い討ちの拳を叩き付ける。

出村の放つ拳の連打を全て喰らってしまう勝。

彼の体が大きく後方へ弾き飛ばされ地面に叩きつけられようとした。

だが、その更に次の瞬間。










ズシャァァァァァァ！！！！！










地面を激しく削る音が轟いた。

出村から見て真っ直ぐの方向に二本の筋が地面を辿る。

そしてその二本の筋を追いかけるようにして砂埃が巻き上がっている。








出村「・・・・・・・！？」








砂埃の影を目で追っていた出村は驚いた。



何と勝はあれだけの攻撃を喰らいながら倒れる事無くその足と腹筋だけで体を支えていた。










勝「ヌッフフゥ・・・効かぬなぁ！！」








組んでいた腕を広げ、やれやれといったようなジャスチャーを見せる。








勝「出村よ・・・・、俺とお前には決定的な差があるのだ。その差に気付かなければお前は俺の前にひれ伏す事になるのだよ！！」






出村「・・・・なんだと？」








再び二人の視線が交錯する。

出村と勝の決定的な違い。

考えられないような年数の留年を繰り返した二人。

本来出会うはずの無い後輩達と一緒に大学へと通っていた二人。

歴代のＡＴＴを見ても彼らほど、ダメな部分で共通点の多い人物もいないだろう。

では、勝の言う二人の決定的な違いとは一体何なのであろうか？

答えが見つからない出村に対して見下しながら勝が再び口を開いた。









勝「フフ、・・・分からぬか、分からぬのならお前にとって最も重要な数字を数えてやろう！！」







そう言うと勝は数字を数え始めた。









勝「ひとーーーーつ！」









勝「ふたーーーーつ！」









勝「・・・・むぅーーーーーつ！」








彼が数字を六つまで数えたその時だった。













ブシャァァァァァッ！！！










突如出村の右肩の筋肉が大きく盛り上がり地を噴出しながら破裂した。

肩を押さえながら膝を突く出村。









出村「ぐあぁぁぁッ！！・・・・そ、それは・・・・俺の残り単位数！！」









苦しそうに悶える出村。

その様子を上から見ながら勝は大きな声で高笑いを始めた。









勝「フハハハハハッ！！そうよ！！俺とお前の決定的な差！！それは【卒業】をしているかしていないかと言う事だッ！！大学も卒業できないお前と、社会と言う大海に船出した俺とではその力の差を天と地！！お前が俺に勝てる要素など一寸たりとも見出せぬわッ！！！！！」









勝の勝ち誇った言葉を聞きながら肩で息をする出村。

屈辱と痛みで表情を歪めながらゆっくりと顔を上げる。










勝「・・・・・・ん？」









勝が顔を上げた出村の表情を見た時だった。

その表情に若干の違和感を感じた。

屈辱に塗れた表情の中に何故か余裕めいたものを見て取れる。









勝「・・・・何だその顔は？」









勝が問いかけた時、出村は震える膝でゆっくりと立ち上がると相手を睨みつけ口を開いた。











出村「・・・・・いや、既に見出している」










出村がそう答えた瞬間。











ブシャァァァァァァッ！！！！！











今度は勝の額から血が噴き出した。









勝「ぐぁぁぁぁぁッ！！何だとッ！？」










大きく体を仰け反られた勝。

彼に向かって出村は人差し指を突きつけ言葉を続けた。








出村「・・・・・卒業した後も定職に就かないどころかアルバイトもせず親の金で生活し、自宅警備と称し自由な睡眠とパソコンばかり弄っていることに加え、妹はもう既に就職しており日に日に自宅にすら居場所が無くなっているお前にこの俺は倒せん！！！」










勝「貴様ッ！！俺の家庭環境の謎をッ！！」







震える声でそう答える勝。

額を押さえながら怒りの形相を見せる。

その怒りが彼に戦いの決着を決意させた。









勝「よかろう！ならばその身に受けるが良い！！・・・・ニート鳳凰拳奥義・・・・・・天翔十字鳳を！！！」









そう叫ぶと大きく後方へジャンプした勝はピラミッドの頂上に降り立った。

大きく両腕を広げると磔にされたキリストを髣髴とさせる構えを見せる。

巌流・燕返しを会得したさっつーを一撃の下、葬り去った技である。

頂上に君臨する彼の後ろに技に共鳴しているかのような一際大きな雷が落ちた。








青白く光る相手を頭上に見上げながら出村もゆっくりと構えを作る。

彼の構えには北斗七星の並びが浮き上がって見えた。










出村「・・・・・来い」










勉学を疎かにしたホストとニート。

二人の決着の刻が今ここに訪れようとしていた。











【残り　４１名】




続く