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鳥と魚コミュの#106「トナカイと諍い」

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「立て!お前解ってんのか」

真っ黒なサンタクロースは、雪上に倒れ込む若いトナカイを蹴り付ける。

「こんなんじゃあ世界回るのに何年もかかるじゃねえか!」

たしかにサンタも大変なのである。かつて大勢いたサンタクロース一派ももう彼が最期の砦、肩には地球の重さと世界中の人口を足したに等しい重荷がのしかかっているのである。それに財政難から、トナカイを大勢育てることも出来ず一匹に頼るしか無いのだ。トナカイは小声で言う。

(無理だよ、僕にはできないよ・・・仲間のところに戻りたい・・・)

グリーンランドの、赤毛のカラーリットの少女が住む小さな村からわずか5キロほどの場所に住んでいたトナカイは眼に涙を浮かべる。落ちる涙は雪上に落ちるまでに凍る。

「コメットよ、もう仲間はお前のことなんか忘れてどっかにいっちまったよ。なんでお前がここにいるのかよく考えてみろってんだ!」

唾まき散らしてそういった後、サンタは牧場の隣にある自分の家に戻っていった。

コメットと名付けられた若きトナカイは、今日は飯抜きなのかを心配した後、
昔群れにいたころを思い出す。
温かいトナカイたちの肌。村からやってくる少女がたまに遊んでくれた。のんびりとした暮らし。たまにどこかから鉛の玉が飛んでくるけど、そうめったなことじゃない。そこに真っ白なひげを生やした赤いおじさんがやってきて、スカウトした。コメットは、「世界中を走り回りながら一生を過ごすことが出来るんだぜ。いろんな飯食べれるぜ。温かい暖炉も一年中だ。」そう囁く優しそうなおじさんにについてった。

そこに待ち受けていたのは鬼のようなサンタによるしごきであった。

まもなく世界はクリスマス。
コメットはサンタを乗せて世界の子供たちに笑顔を届け・・・
ふざけんなよ!嘘つきめ!
コメットは沸々と混み上がる怒りを押さえきれずに牧場内を走り回る。
「うるせえうるせえガキのことなんて知ったことか!」
一匹には広すぎる牧場をグルグル走り、ヨダレをまき散らしていると、いつもは閉ざされているゲートが開いていることに気付く。
コメットはそこに目がけて飛び込み、外に逃げ出した。
パカパカパカパカパカパカパカパカ!ヒュウ!
頭にあるのはあのカラーリットの村に住む赤毛の少女である。

「誰か俺に優しくしてくれ!」



マシンガンのような足音で逞しく走り飛んでいったコメット。
それを窓から観て、ブラックサンタは久しぶりに微笑むのだった。そしてゆっくりと古びたソファに身体を沈め、ビールをのどに流し込む。

フウ、これで今年も大丈夫。



>>メリークリスマス。

遅れた!理由は・・・聞かないで!
では次は「雪」。

やった?やっててもこのお題で!

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