芸術の日本　美術・評論を中心にコミュの「蛇にピアス」と「ナミビアの砂漠」

蛇にピアス　2008年

監督：蜷川幸雄　脚本：宮脇卓也　蜷川幸雄　原作：金原ひとみ(芥川賞受賞作品)

主演：吉高由里子　高良健吾　

井浦新

19歳のルイ(吉高由里子)は、蛇のように先が割れた舌・スプリッドタンのアマ(高良健吾)に出会う。彼に(舌に)興味を持ったルイは同棲を始める。アマは見た目とは違いルイに優しく尽くすが、物足りなさも感じている。アマの紹介で知り合った彫り師シバ(井浦新)の店で、ルイは舌にピアスを開け、背中に入れ墨を彫り、痛みの中で生きている実感を見出す。ルイは、サディストのシバとも関係を持ちSMプレイにハマっていく…

山田詠美は、小説「蛇にピアス」に「小説という手段を必要としている作者のコアな部分が見えるようだ」と批評している。

作者の「精神と身体の乖離」「存在の不確さの苦悩」を、小説を書くことで越えて行こうという事だろう。

作者の小説に向かう真摯さは、舌ピアス、刺青、SMといったダークサイドのモチーフにも関わらず、共感できる、清澄な読後感を与える。

さて、この「蛇にピアス」は明らかに「ナミビアの砂漠」に影響を与えています。主人公の性別、年齢、設定(東京、居場所が無いなど)から「蛇にピアス」がリマインドするのは当然ですね。

21歳のカナは、健気にカナに尽くすホンダと同棲しているが、クリエイターのハヤシとも二股交際をしている。カナとハヤシは、お互いの絆を確かめるため、カナは鼻ピアス、ハヤシは腕にタトゥーを入れる。ホンダと別れたカナは、ハヤシと同棲し、怒りが堪えきれないと、取っ組み合いのケンカをする…

監督・脚本の山中瑶子氏は、金原ひとみ氏のような苦悩を持つ必要はなく、「蛇にピアス」をソフィスティケイテッドすれば事足ります。

それは、現代人の誰もが持つ、社会的格差感、ジェンダー不平等感、不安感、無力感、依存体質、攻撃性に、病名を付けることです。

「ナミビアの砂漠」と「蛇にピアス(小説)」の比較はけっこう
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写真は、①蛇にピアス、ナミビアの砂漠ポスター②蛇にピアス、ルイとアマ、ナミビアの砂漠、カナとハヤシ、ナミは鼻ピアス、ハヤシはタトゥーを入れる③蛇にピアス、ルイとシバのSMプレイ、ナミビアの砂漠、カナとハヤシのケンカ