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wagamama(バンド) な音楽室コミュのwagamama「Strawberry Flavor Sick」レビュー【その1】

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wagamamaの1st EP「Strawberry Flavor Sick」のレビューを書いてみました。
軽く狂気を覚える長さになってしまいましたが、他意はなくて、こういうところが好きだなぁと溢れる想いを思うがままに綴ったものです(本当はRyokoさんの歌についてもっと書きたかったですが、2nd EPのレビューで書こうと思っています)。
誰かに読んでいただくにもお手数掛けるくらい長いですが、このレビューに限らず、ご一緒に、Strawberry Flavor Sickについてどんなことでも語りましょう♪
そして、2nd「PINKY MAGIC SODA」についてもまたスレを上げます。

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【Strawberry Flavor Sickレビュー】

I.F.S.G.

「Strawberry Flavor Sick」と題したwagamamaのデヴュー作は、ゴスペルを髣髴とさせるようなコーラスワークとシンプルなギターリフで幕を開ける。
曲の全体を通じて、疾走感のあるドラムのダンスビートと、そのリズムを豊かに彩るキレのあるスラップベースをサウンドの柱に据え、気の向くまま攻めるような自在なギターと、艶やかな声色に高音域を巧みに効かせた魅力的なヴォーカルで、あっという間に3分35秒が流れてゆく。
その特徴を取り上げれば、ドラム中江太郎の一発目のスネアドラムが4拍目手前の16分裏で始まり、サビを盛り上げるリズムがディスコビート(4つ打ち・裏拍オープンハット)であることや、ベースshizupiのパーカッシブなフレーズが炸裂するスラップのグルーヴとクールなソロパートなど、リズムワークを支える楽器を惜しげもなく全面に押し出し、一方で、そんなリズム隊に対して、隙を縫うような絶妙なタイム感でフレーズを斬り込んでくるギターや、ヴォーカルRyokoの感情を揺さぶるハイトーンなシャウトなど、明らかにwagamamaのサウンドは、グルーヴを強く打ち出したエモーショナルなダンスサウンドである。ゴスペル〜ジャズ・ブルースを祖とするソウル/R&Bから生まれてきた音楽を礎とするサウンドであることを、意識的に、あたかも名刺代わりのようにこの曲で宣言する。
曲全体を彩っている壮麗なコーラスワークについても、同様だ。
wagamamaのコーラスは、主旋律のバッキング、Ryokoといちろーのコールアンドレスポンスとして登場するだけでなく、メンバー全員の混声が共鳴する文字通りのコーラスとして展開され、サビで繰り返される「I Feel So Good」の力強いハーモニーの厚みと一体感には神々しさすらある。バンドサウンドの中におけるコーラスの意義に改めてハッとさせられる。
「I.F.S.G.」の音に身を委ねていると、そのグルーヴに思わず身体が揺れてくる。
美しいコーラスの響きとともに、えもいわれぬ心地よい感情で満たされていく。
ところが、そんな風に思えたI.F.S.G.という感情は、曲のラストで確信的に一変する。

ーーI.F.L.S.(I Feel Like Sick) 何度目の「またひとりじゃん」って想いで気が済むの?

「I.F.S.G.」は、wagamamaがバンドとして産声をあげてから初めて世にリリースしたシングル曲であり、wagamamaの所信表明ともいうべき楽曲だ。
サウンドの表層を聴いていると、この曲はグルーヴを強く押し出しながらもどこか抑えが利いていて、でも、それがなぜかはよく分からず、ただただ「洗練された」「洒落た」ダンスミュージックであるかのように最初は感じる。
その一因は、詞が韻を踏みながら英語のように聴こえる巧みな語感をもって設計されていたり、リズミックな譜割りで日本語詞が構成され、サウンドの中に心地よく溶け込んでいるからだ。
しかし、歌われている詞をきちんと追っていくと、このサウンドが映していた表の顔はたちまち変貌していく。

ーーI.F.S.G. 誰にも言えるワケないheartで
ーーI.F.S.G. 帰るにも また刺さる朝 罪がチラつくの

この主人公が感じているI.F.S.G.とは、背徳的な感情だ。

ーー裏切りたいのまで見え見えの隙
ーー「3年になるあの人のキスもいい」
ーー好きになるとかウソ言えよ
ーー愛が中身から軽く見えるかい
ーー儚げなカラの心抱いて
ーー凍てつく胸の淋しい奥の灯 あっさり解かして入るなよ
ーー遊ばれたがる子供の笑みを恨むよ

この曲で歌われているI.F.S.G.は、身を切るような、自分で自分を騙すような、分かっていてもどうにもできないまま溺れていくような、きっとそんな感情だ。
成就しないことが分かっていながら、心の奥に澱む負の感情を抱えながらも、断つことができず続けてしまっているI.F.S.G.なのだ。
そんな感情に気づいたとき、曲中で効果的に挿入される笑い声や、思わず身体を揺らしてしまうような圧倒的サウンドグルーヴと、詞の深淵な哀しみとの落差に、私たちは初めて直面する。このダンスサウンドに秘められた本当の奥行きが立体になって見えた途端、「洗練された」「お洒落な」という修飾は影をひそめ、「切ない」という感情が一挙にその胸中に流れ込んでくる。
ダンスグルーヴの中に、切ないという感情が湧き上がる衝撃的な瞬間だ。
しかし、この詞とサウンドの落差は、単なるアイロニーやシニカルな表現のための対比が狙いではない。
それは、同じく詞の最後に表れている。
ーーI.F.L.S. (I Feel Like Sick) 何度目の「またひとりじゃん」って想いで気が済むの?
この主人公は、そんな自分のI.F.S.G.を終わらせなければならないことに既に気づき、その矛盾に葛藤している。ここには、苦しみながらも現実と向き合おうと闘っている人生がある。
哀しい感情を称えながらも、wagamamaの音楽は、生きること、愛することの悲喜交々をありのまま受け入れて包み込み、グルーヴィでエモーショナルなサウンドをもって寄り添うように、全身全霊で人生を謳歌する。
いみじくも、この曲の始まりが髣髴とさせるゴスペルがそうであるように。
皆で身体を揺らし、歌うことによって、人々を勇気づけ元気で漲らせたりするような、そんな力をもった音楽であるように。

実は、「I.F.S.G」には、その前日譚と解釈することができる楽曲がある。
それは、wagamama結成前夜。メンバー4人が初めて邂逅を遂げた運命的な楽曲「Do It Right feat. Ryoko」。
いちろー作詞作曲プロデュースになるこの曲は、不義理と愛情との狭間で揺れるエモーショナルな葛藤が、これ以上ない切ない詞と、4人で奏でる初めてのアンサンブル、とは思えないような素晴らしいサウンドによって描かれる。
「I.F.S.G.」を、その後日談、あるいはRyokoの作詞からなるアンサーソングとして捉えるとすれば、ようやく今、愛に葛藤し続けてきた物語の主人公は、この素晴らしいダンスミュージックに包まれながら新たな一歩を踏み出したのだ。

長い夜が明ける。
あくまでもwagamamaに、やりたい音楽をグルーヴィに鳴らして人生を謳歌するという決意を胸に、wagamamaポップはまだ見ぬ世界へ飛び出した。
「Strawberry Flavor Sick」の主人公とともに。


Stand Up

ーーStand up! Are you ready?
ーーStand up! Don't worry

I.F.S.G.の華々しい演奏とは打って変わって、ギター一本、独りつぶやくような歌声に寄り添うタッチで弾き語りのように始まるマイナーコード。
このフレーズで表現されるのは、前曲から引き継がれる感傷。心に傷を負った主人公だ。
だが、それも束の間。
始まって4小節も経たないうちにヴォーカルRyokoの「Dance Dance Dance Dance」のハイトーンシャウトで、一気にダンスサウンドに引き込まれる。

wagamamaのバラードは、傷心の感情を包み込むときでさえも、ダンスなグルーヴとサウンドを貫く。たとえミディアムスローな味付けはされていたとしても、だ。
冒頭の静かな弾き語りで始まるフレーズは、作品全体に流れるストーリーを物語るための布石であるとともに、その直後に始まるダンスサウンドとの振り幅を持たせ、いわゆる一般的なバラード曲と「wagamamaバラード」とのコントラストをより一層引き立てている。
そう。詞にしてみたって、この曲の「Stand up」は、ただのバラード曲のStand upではない。
I.F.S.G.からの流れで聴くと、このStand upは、傷心の主人公が自分自身に向けて「立ち上がれ、私」と歌っているようにも一見思える(もちろん、そう解釈することもできる)が、よくよく聴いていくと、そうではない。「私」というよりも、運命的に(偶然に?)バッタリ出会った「君」に向かって、「私を踊らせて」「恋焦がせて」「終わってしまった恋に鍵をかけて」「忘れるくらいにキスをして」とことばを重ね、挙げ句の果てに、その「君」が「ねぇここまで Stand up for me」私のために立ち上がってよ、「You gotta love me」もう私を愛するしかない、と言い切られてしまう。
傷を負いながらも、決定的なアプローチをかけて、積極的に次のステップに踏み出そうとしている辺りは、どこかちょっぴり危なっかしいが、憎めなくて、人間的で、愛らしい。

「Strawberry Flavor Sick」の物語の流れの中では、Stand Upはこのような解釈ができるが、実は、ライヴでは序盤の方に演奏されることが多く、このEPの中でも2曲目に位置している。
ーーStand up! Are you ready?
ーーStand up! Don't worry
ステージに立つRyokoをフロントとするwagamamaから、そう問いかけられているのは、客席のオーディエンスであり、この作品のリスナー。
ライヴの序盤、客席に向かって、「さぁ立ち上がって」「ダンス!ダンス!」と声を掛け、私たちバンドの「単なるハーモニー 感じて気ままに」「ねぇダーリン」「wagamamaなmeに恋焦がしてよ」と発破を掛け、最後に「もう君は私をーーwagamamaバンドをーー愛するしかないの」と、甘い声で囁かれる。
詞の中の「君」とは、wagamamaの音楽に触れ、今まさに「Strawberry Flavor Sick」を聴いている君なのだ。
wagamamaというバンドの楽曲、その音楽性が素晴らしいものであるという信念と威信に裏打ちされた、求愛アピール溢れるnumberである。
(number(=楽曲)でmemorizeするのに相応しい楽曲だ)

サウンド的には、ゆったりしたテンポとリズムの中に、ハネたスネアのフィルインをアクセントにしたドラムを屋台骨として、前曲と打って変わってヒップホップで韻を踏むように歌い上げるリズミックな主旋律、それと交互にハイトーンを抑えたメロウで艶っぽい表情をみせるヴォーカル(彷徨う心のうつろいと奥底で求める愛を囁くような歌声)、前曲のキレのあるスラップから2フィンガーの指弾きに変え、今度は息をするようなタイム感をもった音、成熟したグルーヴを放つスライドやオクターブ、「満ち足りないwagamamaなme」と視線をくれるようなプリングオフ&プルのフレーズでしっとりした色気を演出するベース、傷心に寄り添うような素直な進行を基軸としながらもソロやフレーズではラテンロックのような情熱的なフィールで、ダンスサウンドの熱量をカッコよく主張してくる鳴きのギターなど、ダンスナンバーながら、グッと年齢が上がったような落ち着いた曲に仕上がっている。
前曲からの流れを汲む詞は、失恋して傷ついて、ヤケ酒でも飲んで、飲み過ぎて少々おいたしちゃったりしながらも、私のことを愛してよと心が彷徨うような、傷心な日々を描くようなバラードに映るはずなのだが、音を聴いていると思わず心地よくて身体が揺れてしまう。音楽に包まれ、心癒され、むしろ温かい気持ちになっている。
wagamamaポップの哲学を、バラードで体現した最初の作品である。

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