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意味不明小説(ショートショート)コミュの12月のカキフライ

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12月最初の土曜日。運転席に乗込むと助手席にカキフライ5つ。
平鉢の上に千切りキャベツ、トマト、レモンと共に乗っている。

カキフライは12月が一番うまい。
私はカキフライをひとつまみ、口に放りこもうと。

すると、別のカキフライ2つが、レモンを挟んで飛び上がり、
私の眼を目掛けて、レモンをしぶきかけた。
しみる。むっちゃ眼にしみる。思わずカキフライから手を離す。
レモン汁は服にもかかった。はあ。クリーニング出したばかりなのに。

私はレモン汁をウエットティッシュで拭き取り、運転を始める。
カキフライは小刻みに飛び跳ねている。どうやらドライブが楽しんでる様子。

カーステレオから夏の音楽。さっきカキフライが選曲した。
今12月なんだが。大体夏はお前の季節ではなかろうに。

今日はこないだ合コンで知り合った女と初デート。
私とカキフライを乗せた車は、待合せ場所へ到着。

私は助手席の鍵を開ける、が、カキフライが閉める。
開ける、閉めるを五回繰返すと、女は怪訝な顔。

このややこしい状況をどうにか説明しようと助手席の窓を開ける。
女が中を覗いた途端、カキフライは女の眼にレモン汁をしぶき、
おののいた顔に千切りキャベツを投げつけ頭からトマトを絞った。

ようやく目を開けた赤みどりの女、キャベツをこっちに投げつけてきた…
時、既に遅く、キャベツは閉じられた窓にべっとり。はあ。洗車したばかりなのに。

どうしようもない。彼女に連絡したいが、カキフライが携帯の上に乗っている。
あきらめてその場を立ち去った。

カキフライはさっきよりも大きく跳ね舞っている。
太陽の光射すパン粉が宙にキラキラ舞ってとても綺麗。
はあ。車内清掃したばかりなのに。

私はもう帰るつもり。なのにカキフライは、
カーナビを水族館へ向ける。やれやれ。

道中、カキフライは後部座席から、
まな板と包丁を取り出し、キャベツの千切りを始める。

水族館到着の頃、盛付けは整った。
皿は、平鉢からノリタケのプレートに変わっていた。よそ行きか。

私は左手のひらにカキフライプレートをのせ、入場ゲートをくぐる。

カキフライはプレートの上ではしゃいでいた。
たまに私の頬や口元をどついてきた。そんなに海が懐かしいか。

カキフライはペンギンに夢中でなかなか離れようとしない。
周りの子供の視線はカキフライをなかなか離れようとしない。ああ帰りたい。

車に戻ると、カキフライは平鉢に乗り換えた。部屋着か。

私はいよいよ帰るつもりだった。
なのにカキフライは、カーナビをアウトレットモールへ。さてさて。

その後、ゲームセンター→カラオケ

カラオケでは夏の曲ばかり歌うよう指示された。今12月なんだ。
カキフライはさっきUFOキャッチャーで取ったペンギンのぬいぐるみと踊っていた。

1人で熱唱120分。もう声でない。
空腹だが、カキフライ連れでは食堂入りづらい。

カキフライはカーナビの目的地を、特に何もない場所へ向ける。どこなんだここは。
静かなところで私は襲われるかも知れない。揚げられるのかも知れない。

-----------

梅雨の盛り、アキは怒り狂っていた。

「なんでオープン8月なのよ!プラネタリウムの旬って七夕でしょ!!
 なんで7月に間に合わせないのよ!!!」
「しょうがないじゃん、いろいろあったんだよきっと」

「とにかく8月8日のオープンの日、絶対、ぜーったい行くんだからね!」

アキは、お手製チョコクロワッサンの食べかすを、
我が家の絨毯にぽろぽろ落としながら怒っていた。
何を生き急いでるんだ。あああ。今朝掃除したばかりなのに。。。

8月8日当日、アキの実家まで車で迎えに行く。アキは乗り込むなり、カーナビを操作。
いつもながら、最初に行き先履歴をチェックするのは勘弁してほしい。

アキはひと通り確認ののち、カーナビに行き先を設定する。

「あれ、今日はプラネタリウム行くんじゃないの?」
「ばっかじゃないの!プラネタリウムは夜行くもんでしょ!!」

なんだかわからない理屈に圧倒され、動物園へ向かった。

「チョコデニッシュ食べる?今朝焼いてきたんだ」
「ああ、ありがとう。今日は何を作ってきてくれたの?」

「えとねー。サンドウィッチ、おにぎり、おむすび、おいなりさん。えとそれと、
 からあげ、豚の生姜焼き、エビフライ、きんぴらごぼう、ポテトサラダ、玉子焼き、餃子・・・だけかな」

「むっちゃ朝早くおきたんちゃう?」
「うん。全部作るのに30分もかかったよ」

二日断食した甲斐あった。アキの料理は世界一。
私はアキとのデートで食堂に入ったことがない。
「ちゃんと栄養をつけて健康でいて欲しい」と、アキは言う。

動物園到着。アキはお弁当の詰まったスーツケースを片手でひきずり、
もう一方の手で私の手を握る。たまに私の頬をどつくようにキスをしてくる。

焼きそば片手の女子高生とすれ違う。私の視線は自然とそちらへ、
するとアキはスーツケースで殴りかかる。まったく油断ならない。
あたりに焼きそばが散乱している。

パンダ、ライオン、象、園長、女子高生7人を一通り楽しんで、
ペンギンの前で昼食。盛り付けは全く崩れていない。

「あ、やっぱりカキフライはないんだ…」
「だから前からずっと言ってんじゃん!カキフライがおいしいのは12月!!」

「でも、ファミレスとか年中無休でカキフライやってんじゃん!」
「あんなの冷凍に決まってんでしょばか!ばかばかばか!ばか!」

「なんだとてめえ!うめえな!この伊勢海老フライ最高だな!!」

カキフライを巡る戦いは、5月から付合い始めて8度目。私もここだけは妥協できない。

陽が傾く。ペンギンさん達に別れを告げ、私たちは満腹と空のスーツケースを抱え車へ。
アキの設定したカーナビの行き先は、何も無いところを指示している。
本日オープンのプラネタリウムがカーナビに登録されているはずもなく。

アキははしゃぎ過ぎて疲れたのか、助手席でぐっすり。

夕焼けに映える安心しきった横顔、とても愛おしい。
私はこの寝顔を一生守ってやらなければならないと心に誓った。

陽が暮れかけたコンビニの駐車場。
私はアキを小さな声をかける。が、反応はない。肩を叩いても眠ったまま。

少しあやしんで、アキの口元に私の耳を寄せる。あれ、息、してない。

-----------

カキフライに導かれプラネタリウムへ。玄関には、

「サイレントナイト・愛と欲望の流星群」

というポスター。そうか、もうクリスマスか。
座席に着くと、カキフライ2つがレモンを携え、どこかへ消えた。

そのまま会場は暗くなり、導入のナレーション。

「さて、夕陽も沈み、星が瞬きはじめました。
 天体の真ん中を通るのが天の川。その川岸に向かい合うベガとアルタイル・・・」

七夕だ。紛れもなく七夕だ。
さっきどっか行ったカキフライ2つが堂々の凱旋。レモンを携えてはいない。
お題目が織姫と彦星に変わったわけを理解した。恐ろしい。

満天の星空を眺めながら、
今日のカキフライのひとつひとつの仕草を思い出す。ふと涙がこぼれた。

アキにはずっと「男は泣くもんじゃない」と強く言われていた。
だから私は、彼女が死んだときにだって涙は流さなかった。

でも今は暗闇の中。ちょっとくらい泣いてもばれやしない。
遠慮なく涙を流したそのときだった。

カキフライが私の頭をなで目元の涙をぬぐった。痛い。ちくちく痛い。
そして、くちびるにカキフライ自身を押し付けてきた。痛い。ふんわり磯の香りがする。
暗闇の間、私はずっとこのままでいた。ずっとこのままでいたかった。

七夕天体ショーは終演を迎え、顔中にまとわりついたパン粉を払いながら駐車場へ向かう。

助手席前のダッシュボードケースに入れっぱなしだった、
いつかプレゼントするつもりの指輪を取り出し、カキフライの上に乗せた。
カキフライは少し震えていた。

今日は本当に疲れた。私は少し眠った。

30分くらいして目を覚まし、助手席を確認。
角盆の上にあたたかな山盛りご飯と豚汁。平鉢にはカキフライ20個が乗っている。
カキフライには既に、ソース、タルタル、レモンがかかっている。

カキフライに動く様子はない。私は「今夜くらいいいよな」と、
グラスに用意された白ワインへ手を伸ばした。

コメント(14)

うおぉ、カキフライ喰いてぇっっっ!
でも、こんなややこしいカキフライはごめんだぁっっっ!
ぱらださん家、こんなややこしい牛飼ってんのにかっっ!

http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=57399724&comm_id=637360
みっちーありがとう!

来年は生がきを躍らせてみせま・・・・
ややこしい牛は、俺んちじゃねぇ、孝之くんちだぁっっっ!
男がどんなにがんばって戦っても、
やっぱりカキフライの魅力には敵わないと思うの。ああ愛してる。明日買ってこよ。

飲酒運転→交通事故死。ストーリーが邪悪なものに変わっていく。。。
孝之≠ぱらだ 

誤解のないように。
こんなに私がカキフライとペンギンを愛しているのにかっ!
白ワイングラスを置いたのは、カキフライではなく、
合コン女だった。。。
ごはんどんが、愛しているペンギンとは、これ↓かぁっっっ!
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=8244958&comm_id=637360

とすると、ペンギンの隣のイケメンは、ごはんどん、ちみだったのかぁっっっ!
私の愛するペンギンさんは落書きなんかじゃないんだ↓

http://mixi.jp/view_community.pl?id=174661

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