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意味不明小説(ショートショート)コミュのhere we go...

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青いタイルに水が流れていくのを見下ろしている。髪をつたう水が縒れた糸のように落下していく。明り取りの窓からの西日が肌を焼く。柔かい肌を。西日は、タイルの上に比較的大きな長方形を作る。水と光と虫の羽音の愛撫するのに任せる。

シャワーから上がるとちゃんとタオルが用意されていた。黄色くてよれよれでごわごわのタオル。体を拭きながらHちゃんに声をかけるが返事がない。部屋に青いゴミ袋がよく映えている。
羽虫が身体に触れないように服を着て部屋の方に行くとHちゃんがコーヒーを入れていた。
コーヒーより黒くドロドロになった流しの周辺を見ないようにして、窓辺に座る。

白いビニール袋のようなものが一面に散らばっていて歩くと何かしら踏まなくてはならない。
時々ワッと羽虫が飛び立つ。両手にカップを持ったHちゃんが、足でそういったものを慎重によけながら窓辺まで来る。

友達の葬式でHちゃんに久しぶりに会った。僕は死んだ奴の事を考えていた。
彼のおふくろと少し話した時も、彼の父親が、皆の前で故人の思い出を語った時も、彼らがいったい誰について語っているのか理解できなかった。僕の知る彼と、彼らの口を付いて出るそれは、大きく食い違っている。なにか、知らない間にすり替えが起きたのではないか、そもそも誰の葬式に参列しているのか。
彼の父親が、とても暑いな、と呟いてネクタイを緩め寿司を口に押し込んだ。

飲んだのかもしれない。はっきりとは思い出せないが、参列していたHちゃんは何か、ビニール紐を束ねて裂いたような、無機的でそれでいて不潔に感じるもの、を連想させた。


「寒くない?」

ちょうどよい具合だよ、と重金属のようなコーヒーをすすり答える。むしろ暑いぐらいだ。皮膚の表面に汗の膜が覆っている。
沖縄で目のない魚を釣る。沖合いにはそういったものが沢山跳ねている。道路の中央でそういった魚の死体が跡を残して転がっている。釣ったものを観光客が捨てていくのだ。
なるべく記憶のどこにも引っかからない会話に勤める。まどろむようで眠りを知らない。ような。そういった話をHちゃんは歌うように話す。

テーブルの隅に転がっている変色したりんごを、今にも切り分けてくるような気がし始めたので、そろそろ時間も時間だし、という旨を伝えると、Hちゃんは駅まで送ってくれるという。

外は既に暗くなっている。雨が降ったのだろうか、路面が濡れていて、信号の赤を反射している。Hちゃんが靴を脱いで裸足になる。僕も真似をして素足で歩いてみるが、濡れた路面はぬるぬるとして期待していたものよりずっと不快だった。
信号が点滅し、赤が地面を埋め尽くす。そのなかで一塊の石のようなもののシルエットが浮かんだ。道路の中央に岩でも置かれているのだろうか。

近くで見るまでは分からなかったが、その塊は一匹の陸亀であった。陸亀が濡れた路面に爪を立てているのだ。じっと動かない亀を闇の中で僕らは息を殺して観ていた。路面に反射する光とその不在。また信号が点滅し、赤が埋め尽くす。

それから、電柱の影ですこしキスして、僕はHちゃんと別れた。









コメント(5)

はじめて投稿します。よろしくお願いします。
なんとなくひにちじょうてきだけど
なんともなまなましいふんいきがすきです
ありがとうございます。
もっとなまなましくありたいもんだ、と思います。現実も。
ひとつひとつのエピソードが組合わされて
想像をかきたてられます。
全体に流れるけだるいようなトーンがいいです。
すみません。放置してました。ありがとうございます。
ストーリー考えるのが苦手なんでなにか妄想の羅列と情景描写だけになってしまいます。どうしても。

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