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意味不明小説(ショートショート)コミュのgunslinger level40

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「あー、どっかに時給6億のバイトねぇかなぁ」
 と呟き、カップラーメンにウズラの卵を落とす。生きたくて生きてるというより、死にたくはないから生きてる。そんな実感。アルミのペラい蓋に閉じ込められた熱闇で、無精卵のウズラが濁ってゆく、のを透視する。
 窓を開け、手すりにさばり、一畳くらいのベランダに半身を乗り出す。肌寒い空、どこかで桜の悲鳴、「どうして今年はこんなに人がいないの?」ため息、返事する。「君は去年と同じで綺麗だけど、なんというか今年は色々と複雑なんだ」
 麺がいい感じになるまでまだ時間がある。いつものように世界を救うとしよう。空を見る。凝視する。透明なモワモワが、歪みのように空を這う。モワモワ、プランクトンのように内蔵を透かしている。細長いのや丸いのや形は色々。目を凝らし焦点を合わそうとすると、びょんと跳ね視界の隅に逃げる。
「逃がすものか」
 右手を差し出し青空にニュッと手を突っ込む。弄る。ひんやりとした感触に当たる。その感触を引き出す。ボクの右手、銃を握っている。透明な銃、銘は『ギャラガ』。由来は小3の時に嵌まったゲームの名前。ボクにしか見えない銃。ボクだけの銃。
 モワモワは敵だ。モワモワ一個が地面に触れると、世界が少し破壊される。ボクは銃をくるくる回し、空に向ける。「世界はボクが守る」
 透明なトリガーを引く。モワモワが砕け散る。
「まだまだぁ」
 銃口をスライドさせ、ダーゲットに重ね、素早くトリガーを引く。透明な弾丸が音もなく空を走り、モワモワが砕け散る。透明な破片がビルの屋上に刺さる。モワモワは、敵だ。世界中でボクにしか見えない敵。ボクにしか見えないのだから、ボクがやるしかない。敵も武器も、透明すぎてボクにしか見えないんだ。ボクの戦いは透明な戦い。世界中でボクしか知らない戦い。
「そろそろボスが出てくる」
 目を閉じ、額に銃身を押し当て瞑想。
(ステファニー、ボクは死に時を間違えたのかもしれない)
 刮目。
「麺がいい感じになる前に終わらせてやる!」
 青空をおおきく撓めて、巨大なモワモワが現れた。毛の生えた巨大な目玉。先月しとめ損ねた奴だ!ギロリとボクを睨み、巨大なウインクをすると、透明な毛がミサイルのように発射され、ベランダに向けて飛んで来た。
「ギャラガ−」
 ボクは叫びながらトリガーを引く。毛を撃ち落とす。乱射乱射、すべての毛を撃ち落とす。その勢いでボスにも一発ぶち込んだがボスが巨大すぎて、ぷちっとしたダメージしか与えられない。
「くそっ、こうなったら『ゼビウス』を使うしかない」
 でもその前に腹拵え。ウズラの卵も煮えている。カップラーメンに閉じこめられた闇もまた、ボクが守るべき世界の一つなのだ。
 透明な戦いは続く。

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