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意味不明小説(ショートショート)コミュの「タピオと河と小さな太陽」

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タピオは岩に座り、腰まで伸びた長く白い髪を櫛でとかしながら、肩に乗った鳥猫に尋ねた。


――セオ、今日はどこへ行こうか、何をしようか――

――タピオ、君の行きたい処へ行くといいよ、僕はついていく。

大きな岩の向こうに、緩やかに流れる銀の河。2つの太陽の光に照らされて水面がきらきらと輝いている。


――セオ、今日は厚くなるかい?
――2つの太陽のうちひとつはもうじき地に沈むからそのあとは涼しくなるよ。

タピオは銀の河のさらに向こう、2つの太陽を目を細めて見た。大きい方の太陽は大地を照らすのに疲れたように、じわりと地に落ちていく。残る小さい太陽の方は大きい方のぶんまで世界を照らそうとばかりに眩い光と暖かいぬくもりを大地へ河へ送り届ける。

――セオ、太陽が一つになってなんだか寂しそうだよ。僕らが行ってあの小さな太陽を慰めてあげよう

鳥猫のセオは言葉を発せず背中の翼をぶるるっと震わせた。そして立ち上がったタピオの後を低空飛行で飛んでゆく。
タピオの褐色の足が銀の河の水面に入り波紋を産んだ。波紋まで日の光を含んで輝きながら辺りへ広がってゆく。
タピオは腰まで河に浸かり、両腕を大きく伸ばして水中をかいた。
タピオの足元に小さなものがたくさんぶつかってきた。水面から見るとそれは羽魚の群れ。
タピオの身体を辿るように羽魚が水中を上昇し、水面からぴちぴちと音を立てて飛びあがってゆく。

――河には不思議な魚がいるんだね。ごらんセオ、あの飛ぶ魚たちを。

羽魚は羽ばたきいくつもの波紋を描いてタピオのずっと向こうへ飛んで行った。セオはタピオの頭の上に着地した。

――タピオ、残念だけど太陽の元までは近づけないよ。この河の先には大きな滝があるんだ。そこへ踏み込めば地の底まで真っ逆さまだよ。

――そうなんだ。それでさっきの魚たちも空中を泳いでいったんだね。滝から落ちないように。

――友達を失いたくないから、もうしばらく泳いで、それから陸に戻ろう。そろそろ陸の方で巨人のドゥイーゴがやってくる頃だよ。

――ドゥイーゴ。セオと同じくらい大切な仲間。いつか3人で太陽に手が届くといいのに。そしたらひとりぼっちになった太陽も寂しくないだろうに。


タピオは河の中に潜って水の中の光景を見た。まだ見たこともないような魚が泳いでいる。底のほうにはきらきらした宝石のようなものがいくつも転がっている。底の砂を手で掬うとさらさらと優しく指の間からこぼれる。

――セオ、もう僕は河から陸に上がるよ。いいものを見つけたんだ。

先に陸地に上がっていたセオに、タピオは赤く輝く小石を見せた。

――これは僕が拾った太陽だよ。大切にしよう。

陸に上がったタピオとセオは太陽に照らされて身体を乾かす。遠くから巨人のずしん、ずしんという足音が聞こえてくる。ドゥイーゴにも見せてあげようと、タピオは手の中の小石を髪で拭った。


(終)





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