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意味不明小説(ショートショート)コミュのノックの音

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6/27 雨

搬入が遅れる。今日はこのために、夜眠らずに来た。しかしこれじゃ何のために早く来たのか分からない。
注文してあるのは、真新しいテーブルに、マホガニーの大きな本棚、ローテーブル、作業棚!

キッチンの方に手紙が置いてあった。

"◯◯様、お世話になっております。本日未明搬入に伺ったところ、棚を取り付ける器具を支店に置き忘れてしまい、明日の八時までには再度伺います。御迷惑おかけして、申し訳ございません"

とりあえずは、明日だ。

6/28 雨

午後までに店は出来上がった。僕は釘にひじをひっかけ、血が飛んだ。

クマヒラの金庫がカウンターの下に置かれ、あとは明日の開店までにフライヤーを刷るだけだ。

その後はやることも無く、駅で買ったムラカミハルキの本を読んだ。

夜になって誰かが扉をノックした。

あけると、誰も居なかった。

6/29 曇り

イリアテが来た。彼が開店祝いに持ってきたマリファナは、巨大なタランチュラのように全体が毛に覆われていた。とんでもない品だった!

僕は彼にかなりいい金額を支払って、それを手に入れた。
こんな代物を持ってくるなんて、あいつには軍人なんか、まるで似合わない。
とにかく商売は、幸先よく始まった。

7/9 晴れ

店は表向きは、ローカルなアーティストの工芸品(主に絵画、陶器、それに木工。磁気はオキナワの品だけだ)を置く、街の雑貨屋だ。僕は店の名刺を作り、そこには「○○商店 バイヤー ○○ 」と書かれている。

基本的には絵付の済んだ陶器の店だ。もちろん買うことも出来る。
僕がこの仕事を任されたのは、陶器の目利きが出来るからに他ならない。
しかし、そっちのほうは商売上がったりだ。

今日はとても暑かった。

7/20 晴れ

昨日、フェンタニルの水溶液を買って欲しいという男がやってきた。
僕は退屈しのぎにそれを買ってやった。普通だったらそんなもの、誰も買わないだろう。

僕はリゼル酸ジエチルアミドをごく少量、水溶液に混ぜて、白霧島に混ぜ飲んだ。

反復する物がもつ、時間へと刻まれる軌跡と、そのパターン。鳥の羽ばたき。惑星の遠心力と、啓示的な引力。それは無実のサルを、宇宙空間に打ち上げるぐらいには、僕たちをワクワクさせた。

空。僕は空のコトばかり考えていた。

夜、扉がノックされてた気がするが、僕は眠ってしまった。

8/4 曇りのち雨

朝から嫌なコトがあって、機嫌が悪かった。店の入り口で、猫が死んでいたのだ。小さな猫だった。
もうひとつ。昼の12時、あからさまに異常な顔つきをした男が店に来て、ネパールのマチェットナイフを売りたがった。
僕が断ると、何かうるう年だか、うるう秒だか、進化が行き詰まるとどうなるかだとか、意味不明な事を話しはじめた。
警察を呼ぶと言うと、男は店から出て行った。とりあえず通報し、面相を告げる。

僕が"商売"に関連して、警察に捕まるコトは無い。だれも想像できない程の大物が関わっているからだ。
夕方にその一人、僕のボスから電話があった。
SXが2500錠届くから、そいつを金にしろとのこと。

8/15 雨

毎日とても暑い。

実を言うと、ここに来てから、あまり気分が晴れない日が多い。

連日、商品を味見しては売るの繰り返し。味見。売る。眠る。味見。売る。

商品は売れまくっている。リノ、バークレー、チェンライ、ホーチミン、色々。

人は麻薬に関心が無い。その代わりほとんどの人が、その人に特有である何らかの麻薬的な手段を持っている。例えば仕事、ギャンブル、セックス、瞑想、あるいは安らぎ。

早い話が、みんな脳内物質に痺れる事を望んでいる。どれだけ強烈だとしても、これを規制する術は無い。無いのだ、全く、完全に。

笑っちまうような話だが、大切なのは、人知れず生きることだ。夜中に大声を出したり、街中で不意に立ち止まったり、そういう行動は不必要に自分を目立たせる。まるで、白いドレスにとまったゴキブリみたいに。

SXが届く。2550錠。50錠は、僕の働きに対するご褒美だそうだ。


8/20 晴れ

朝一で、本物のイタリアンチラムを売りに来た爺さんがいて、僕は興奮した。

爺さんは中々やり手だったが、僕もチラムに関してはかなりの場数を踏んでいる。交渉は難航したが、本物の、価値ある骨董品の商談ほど楽しいモノは無い。僕は爺さんに敬意を払い、適正な値段で買い取った。

午後には映画スタジオの男がやってきて、質の高いマリファナをキロ単位で欲しがった。男は向こう3年間は遊んで暮らせる額を支払った。

久しぶりにコーヒーを淹れた。
新聞を読みながらゆっくり飲んだ。
今日はいい日だった。

8/30 曇り

昨日の夜中、また誰かが扉をノックしていた。僕は新しいクリスタルを試したあとで気が立っていて、バットを振り回して、扉を開けた。だがそいつは居なくなっていた。

フリーのプッシャーだろうか?それとも単なる頭の弱い浮浪者?

なんにしろ、気分が良くない。

僕はいつもここに、一人で居なくてはならないからだ。

9/5 曇りのち晴れ

パーティ用にと、エクスタシーとマリファナが大量に売れる。新しい画廊のオープ二ングイベントだそうだ。僕も誘われた。SXを2錠飲んで、今から行くコトにする。

今店に帰って来たら、
陶器の配置が変わっているような気がする。ふざけた店内だ。

とにかく、今日は最高だった!

9/7 晴れ

恐ろしい夢を見る。

夢の中で僕は、キャスター付きの寝台で分娩室に運ばれていく。
僕はもう何度も赤ん坊を出産していて、腹は膨れ上がり、裂けている。裂けた腹には縫合があり、血が滲んでいる。
なぜなら傷が治る間も無くまた赤ん坊を身ごもらされるからだ。
そしてまた分娩室に運ばれていく。それが永久に続くのだ。

誰かが扉をノックする音で目を覚ました。僕は恐怖で叫び出しそうだった。

音は、しばらくすると止んだ。

もう二度と、あんな夢はごめんだ。

9/8 雨

あの夢はなんだったんだろう?
あまりにもリアルで、狂気じみていた。分娩室とは思えないような、まるで毒に感染したような緑色のライト。寝台で、不規則に痙攣している、僕の腕。口にあてがわれる呼吸器から立ち上る、血のにおい。

今日一日で、SXを都合8錠飲んだ。減らさなくてはならない。

今は夜中の2時だが、僕は灯りをつけっぱなしにしている。

眠らないために、コーヒーを入れよう。それと、最後にあと2錠だけ。

9/28 雨

久しぶりに、イリアテが来た。
僕の顔を一目見て、驚いていた。僕がひどく痩せたという。

奴から例の、ヒゲもじゃのクサを5トラ程仕入れた。代わりにSXを30錠ほど買っていく。たまには来てくれよというと、奴は何も言わず僕を見すえ、立ち去った。

SXは飛ぶように売れる。

10/1

今日、ボスに電話をして、仕事をやめたいと告げた。

ボスの反応は、とても静かなものだった。

結局、僕は残るコトになった。

結婚式用に、赤山の花器が数個売れる。久しぶりだった。どうでもいいことだが。

・スパーデックスとフリーベース、それぞれ60枚ずつ仕入れる事。

10/7 雨

テーブルの下の金庫から、金がなくなっているコトに気がつく。

僕は店じゅうを探し回った。
死の恐怖を覚えた。心拍数を下げたくて、売り物だったが、ケタミンを煙草で巻いて吸った。

冷や汗が吹き出し、奥歯がガチガチと鳴った。金が無くなるとヤバい。

ひどい悪寒がした。

僕は店の中を這いずって、もう一度金庫を見にいった。

すると金はそこにあった。

10/7


これを書いている今も、扉を叩く音がする。

ひょっとすると気のせいかもしれない。

あの夢を見るくらいなら、これから一生、起きている事にしよう。

しかし、もうSXが、無くなる寸前だ。

10/19





久しぶりに夢を見ずに済んだ。

洗面所で自分の顔を見て僕はうろたえた。

いつかネパールのナイフを売りに来たあの男。常軌を逸した目つき。僕は、あいつそっくりに見えた。

ボスから電話で、今度から仕入れるらしい新しい商品の話をされるが、何を言ってるのかほどんと理解できなかった。

僕はSXの在庫をたずねた。

ひじの傷はずっと治らない。

SXはもう、どこにも無いらしい。

10/


電話をかける。必要な、

身体がもう、全てのコトをやめたがっている。禁断症状。

またドアがノックされてる。

僕は怖い。どうでもいい。

わからないのは、一体あいつはなぜ入って来ないのか、というコトだ。

SXが欲しい。もう耐えられない。

10/ 20

きのう、電話を壊した。ボスなんざ、くそくらえだ。
少し気分が良くなった。キッチンから悪臭がする。

傷口から絶え間なく出血。

白血球が破壊されているのだろう。

ナイフを買った。次にあいつが来るのを

来た。神様。


10/

あの夢は、

邪悪なのではない。

死や、痛みが、心底無意味なんだ。

だから恐ろしい。

夜になると、必ずあいつが、扉を叩きにくる。マチェットナイフの男。



10/

空。27錠残った。他の商品全て焼いてやった。

27。僕は数えたから、間違いない。間違ってても、大丈夫だ。いっぺんにのめば、きっと十分な量だろう。

夜、ドアを叩いていたのは、僕だった。

もう大丈夫。最後に、母さんに会いたい。

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