意味不明小説(ショートショート)コミュの春はあげもの

え～、昔から「春はあけぼの」と申しますが、私の古くからの友人に陳君という海外からの留学生がおりまして、彼は大変な親日家でして、おまけに非常に勉強熱心な愛すべき人物なんですが、少々変わったところも御座いまして、先日もこんな事を聞かれたんです。

「おい、dash。ちょっとお前、教えろ！日本には“食欲の秋”という言葉あるだろ」
「えぇ、ありますね。･･･って、また随分と季節はずれな話題ですね。もうじき春ですよ」
「仕方ないある。お前がちっともオチを思い付かなかったのが悪いある」
「陳君、そういう大人の事情はね、口にしちゃ駄目です。それで、“食欲の秋”がどうかしましたか？」
「人間の欲求、三欲あるね。食欲が秋なら性欲と睡眠欲はいつあるか？」
「ホッホッホ！陳君、良い質問ですね。･･･って、何か前とキャラ変わりました？」
「仕方ないある。久々でどんなキャラだったか忘れたあるね。誰も気付いてないあるよ」
「まあ良いでしょう。気を取り直して、この私がズバリとそのご質問にお答えしましょう！」
「手短に頼むぞ。お前の話、前置き長い。オチ無い」
「････フン、良いんだ、良いんだ。どーせ、あたしの話なんて誰も聞いちゃいなんだし･･･」
「泣き落としか･･･つくづく女々しいヤツだ。早くしろ。飽きがくる前に冬が来る」
「分かりましたよ。それじゃあ順番に行きますよ。まずは春。春はもちろん、睡眠欲です」
「ナルホド。孟浩然の春暁。“春眠暁を覚えず”か。分かた」
「その通り！次に夏。夏と言えば、白い砂浜と水着のお姉さん･･･と来ればモチロン！」
「そうか。夏は海水浴か」
「･･･せ、正解です。どうして分かったんですか」
「お前の考えそうな事くらいお見通しだ。夏は性欲と言うと思たか。このドスケベ！」
「まあ良いでしょう。春、夏、秋と来て残るは冬。冬と言えば、人肌恋しい季節ですね」
「そうだな。独り身には辛い季節だな」
「街はクリスマスや初詣で賑わうカップルばかり。さて、冬はズバリ何でしょう？」
「そうか。冬は何かと出費がかさむから、金欲か。分かた」
「･･･せ、正解です。話の流れ上“禁欲”って事にしてもらっても構わないんですけど･･･」
「ところで、一応聞くが、性欲はどうした？」
「そうでしょう。そうでしょうとも！！そうこなくっちゃ。性欲はですね･･･」
「断っておくが、色欲だけに“四季を通じて”というオチは無いぞ！」
「あ、当たり前じゃないですか。な、何を馬鹿な事を。ふ、冬は･･･そう、雪が降りますね」
「東京ではあまり雪は降らないな」
「良いんです！冬といえば雪やこんこで、軽快なステップでワンダフルにネコふんじゃうんです」
「まあ良い、好きにしろ。それで？」
「雪が降ったら、何を作りますか？そう、かまくら！！かまくらを作りますよね！？」
「普通は雪だるまだろ。違うのか？」
「何ッスか普通って。誰が決めたんッスか！あーた、神奈川県民、敵に回すつもりでしょ！」
「それは鎌倉だ。鬱陶しいヤツめ。１０人中８人は雪だるまと答えるだろ」
「いえ、雪でかまくらです。いえ、雪でかまくらです。いえ、雪でかまくらです。大事なとこなんで３回言いました！」
「そろそろオチが来るという訳か。分かた。いつでも良いぞ」
「いえ、雪でかまくらです、いえ、スノーでかまくらです･･･ＹＥＳ／ＮＯ枕です！」
「･･･････それで、オチはいつ来るんだ？」
「いや、あの、分かんないですかね。ＹＥＳ／ＮＯ枕といえば、ほら･･･あの･･･」
「そうか。“夏は夜”で性欲か。分かた」
「およよ」