ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

意味不明小説(ショートショート)コミュの論考『無限坊主』

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
『坊主が屏風に上手に坊主の絵を描いた』ーー誰しもが知る早口言葉である。
先日の事、筆者は、この早口言葉の後半の箇所、つまり「○○の絵を描いた」の○○に入るワードが思い出せず、職場にて同僚達と喧々諤々、「坊主が屏風に上手に『ジョーズ』の絵を描いただろ」「なんで鮫の絵やねん!しかも英語!」「B'z?」「アホ!なんで坊主が屏風に上手にB'zの稲葉の絵を描くねん!」などなど的はずれなワードを戦わせること10数分なわけであったが、結局、ハリウッドスターの名前が思いだせない時と同じ解決手段、つまり「ネット検索」という安直な方法にて遂に、「○○=坊主」という正解に行き当たったのであります。
激論激論、大荒れに荒れた休憩室に、ようよう静寂が訪れようという頃合いに、筆者「ねぇ、この坊主って誰だろうね?」と、新たな問題を提起、対して一同「は?」と、一様訝しる態度。
筆者「いや、だからこの早口言葉の中には『坊主』ってワードが2回出てくる訳じゃん?分かり易く説明すると、絵の描き手である坊主Aと、絵のモチーフとなった坊主Bがいるわけで、2度目に出てくる坊主つまり『屏風絵に描かれた坊主』、坊主Bって、一体誰よ?」……一同「どうでもいいし!」と、筆者の提供せしトピックス、ひいては筆者自身の存在に一様無関心、そして呆れるように散開していった。残されたのは、筆者と件の坊主、筆者小声で「この坊主……一体誰なんだ?」と、ドラマ探偵が深刻シリアスに推理展開せしトーンで呟いておるのを、1番若いバイトの女の子が、気味悪そうに横目で見ていた、のであります。

筆者は、考える、考えずには居られない。「屏風絵に描かれた坊主……一体何者?」唸る、うんうんもんもんと唸りながら苦悩、「誰だ?」第一案、「同僚の坊主」なるほどあり得る。第二案「ちょと偉い坊主」つまりは和尚様や大僧正的人物
、いやそんな偉い人を「坊主」とは言い表しはしないだろう。第三案「ちょっと気になる可愛い小坊主」つまり、中世におけるBLのはしりである。おお、なんだかドラマティックかも。筆者、お気に入りの三案に縋り、心を落ち着けようとしたその時ーー
「第四案」と、突然の声、振り向けば声の主はバイト女子。ぬぬ?と驚く筆者に女子「自分自身を描いたのかも……知れませんよ」「え?どういうこと?!」「さぁ、後は自分で考えてください。私は商品の前出しをしてきます」ミステリアスな笑みを残像に、女子は休憩室を出て行った。

「自分自身を描く……かっ?!」

なるほど、坊主が屏風に描いた坊主、自分自身という可能性も十分考えられる。つまり坊主A=坊主Bというわけである。かんたんに云えば自画像だ。うむ。しっくりくる案だ。何もBLなんぞという設定を無理くり持ち出さずともよかったのだ。納得中の納得。こうして筆者の懊悩の火焔、ようやく鎮火された。椅子の背凭れにぐうと背を押し付け、目を閉じ、思い描くーー「坊主が屏風に上手に坊主の絵を描いた」なる状景。
筆を手に坊主、自らの姿を描くなり、どういった姿を描いているか?当然「自分が屏風に絵を描いている姿」であろう。そのひと時こそが坊主の没念できる至福の瞬間なのであるから、絵を描いている自分の姿を描くこと、重ねて当然然りである。




「まてよ」

そうするとだ。「坊主が屏風に上手に、『屏風に上手に坊主の絵を描いている坊主』の絵を描いている」という事態になりはしまいか?と……なれば、あゝ、見える……見えるぞ!坊主が絵に描いた屏風には屏風に絵を描こうとしている坊主の姿が描かれている。屏風に描かれた坊主と屏風、その屏風には、坊主が絵を描こうとしている屏風が描かれている。更にその屏風に描かれているものをクローズアップすると、そこにも坊主と屏風が描かれている。更にその絵の中には、やはり坊主と屏風が上手に屏風に描かれているわけで……あゝ、なればこの早口言葉の主体である『真の坊主』とは、一体どの絵に描かれている坊主なる也?あゝあゝあゝ屏風という外殻に入れ込まれた無限なる坊主のマトリョーシカ……

「坊主が屏風に上手に坊主の絵を上手に描こうとしている坊主の屏風の絵を上手に描こうとしている坊主の屏風の絵を上手に描こうとしている坊主の屏風の絵を上手に描こうとしている坊主の屏風の絵を上手に描こうとしている坊主の屏風の絵を上手に描こうとしている坊主の屏風の絵を上手に描こうとしている坊主の屏風の絵を上手に描こうとしている坊主の屏風の絵を上手に描こうとしている坊主の屏風の絵を上手に描こうとしている……………坊主……




描こうと



しているんです」










数分後

 泡を吹いて椅子ごと後倒している筆者を発見したのは、件のバイト女子、曰くーー遂に知ってしまったんですね。宇宙の秘密を……

筆者の鼓膜、ぐわんと揺れて、もう一度気絶した。

コメント(2)

合わせ鏡が思い浮かんだ

私の時代は〇〇=ボールでした
…思い違いだったのかな?

>>[1] なるほど、確かに合わせ鏡っぽいですね^_^ ボールの絵って……○=○ということになっちゃいますねw

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

意味不明小説(ショートショート) 更新情報

意味不明小説(ショートショート)のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング