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意味不明小説(ショートショート)コミュのあたらしい空

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あたらしい空がやって来たんだ! 玄関にしゃがんでコンバースの靴ひもを結びながら、ぼくは予感していた。チューブからひねり出したばかりの新鮮な水彩絵の具のような真夏の空も、見つめれば体重を失って、どこまでも上がってゆけそうな秋の空も、ぼくは好きだ。もちろんその次に訪れる空も。もっと言うなら、それまでの季節の空から、あたらしい季節の空へ、切り替わる特別な朝を、ぼくは待ち望んでいるのだ。

その日の朝を迎えると、まるでカーテンを模様替えするみたいに、空がすっかり入れ替わっているのだから、不思議だ。でもそれは人間、というか日本人が勝手に「季節は春、夏、秋、冬の4つだ」と決めているに過ぎなくて、地球の立場からしたらそんなのはこじつけだと言うかも知れないが、地球的規模で物事を考えるのは、今はやめておく。ぼくはかなり平凡な部類の、日本の一市民としての発見を喜びたいのだ。

コンバースの紐をしっかりと結んでしまってから、台所のテーブルのうえに明治おいしい牛乳を出しっぱなしにしていることに気づく。どうしようかと少し考えたが、戻るのはやめることにした。ぼくの予感が正しければ、もう今日からは牛乳がすぐに酸っぱくなってしまうこともないはずだ。

だからぼくは振り返らずに、ドアのノブをまわす。高揚した気分を少しも隠すことなく扉を開けると、やっぱりそうだ。玄関のすぐ傍らに立っている、数年後には地下に埋められてしまう予定の電信柱に尋ねたい。夜どおし外にいたのなら、空の変わる瞬間を見たかどうかを聞いてみたい。輝くタチウオのようなの銀の空。薄雲流れる冬の空。それがどのようにしてやって来たのかを。

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