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意味不明小説(ショートショート)コミュの穏やかな伝染・午後編

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「フジムラはスイカが好きだったよ。夏は嫌いだって言ってたけどさ。」

「フジムラ?...ああ、あいつか、『レンダー』の。話したことは無いよ。何か...気持ち悪いやつだったからさ。いつも赤い服着てんだぜ。」

「あいつここにいないよ。さばくをあるくんだってさ。」

「あ〜、いい人でしたよ、フジさん。月に3度はうちに寄ってってくれましたよ。タチメタが好きでね。なかなかの腕でしたよ。」

「フジムラ?知りませんよそんな人。もういいですか?」



キャスターが一つだけのスーツケースを引きずって女は
受話器をつかんだ。
  
忘れていない。いつも頭で繰り返していた。

つながるまでの間に流れる電子音を聞いていると笑いがこみ上げてきた。
こらえるつもりは無かったから、そのまま笑った。
かすれた空気に自分の笑い声が消えてゆく。
それが何を意味しているかなんて、知りたくは無かったけれど、体が泣いていた。


電子音が途切れて、低い返事が聞こえた。



女は歌を歌った。歌を歌った。


女は受話器を置いて出て行った。

スーツケースはひとり



「太陽が嫌いなフジムラくん。」

「フジムラか、懐かしいな。昔よく一緒に遊んでましたよ。私とユウと三人で。今何してるか知ってるんですか?彼。」

「え?私もフジムラですけど。あ、そうですか、いえいえ。ええ、知らないです。」



灰色の砂嵐が照らす部屋で電話が鳴った。
誰からか分かっていたから、切れるまで待った。
絶えられないのも、分かっていた。



はい。



沈黙は時を戻す。

耳に流れこむ歌で自分がわかる。

灰色の砂嵐が部屋を照らしている。



「最近ぜんぜん会って無いんです。あんな事があった後だったから...。」

「フジムラサンハ、アメガスキデス。デモ、ホントウハ、カミナリモスキデス。」

「フジムラは同じクラスですけど...はぁ、まぁ...かわいいッスよ。違うよ、好きじゃねえよ、バカ。ウルセぇ。」

「フジムラ君は、授業中にしょっちゅう私に意地悪します。この間、先生に言いつけてやったら、怒られて泣いてました、あははははは。」

コメント(4)

んー
意味不明。

このシリーズのファンであります!
午後の伝染は、悲しげでありミステリアスでありますね。
しんみりです。
改めドロップさんには雰囲気がありますよね。
表面的には脈絡のない、意味不明なストーリーなんだけど、
ストーリーよりも大切ななにかがその背後にある。
それを私は雰囲気と呼んだんだけど、そう、現実世界では
ありえない、異質な空間が存在しているように、私には
思えるのです。

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