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意味不明小説(ショートショート)コミュのミッドナイト・イン・奈良(3)

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静まり返った大仏殿では、大仏様と韋駄天がうなだれていました。
「文殊さん、行っちゃいましたね」と、韋駄天は言いました。
「おまえが、いつまでも悟らないからいけないんだろ?」と、大仏様は言いました。
「いやいや、夜中に起こされた方の身にもなってくださいよ」
「仕方ない、俺たちだけでクリスマスるぞ」
「え、文殊さんなしでですか?」
「大丈夫だよ、やり方は教わったろ?そりに乗って、赤い衣着て、玩具を配る。それだけ」
「でも、そりや赤い衣はまだしも、玩具はどうするんですか?」
「韋駄天、とってこいよ」
「え、それって盗んでこいってことですか?」
「うん」
「いや、それはダメでしょ。仏として」
「えー、じゃあ、やっぱ俺の法力で出すしかないか……」
「ンことできるなら、最初から盗ませようとしないでくださいよ」
「だって、あれ、すっげー疲れんだもん」
「たまには大仏らしいとこ、見せてくださいよ」
「じゃあ、俺が玩具出すから、韋駄天が配れよな、足早いんだし」
「いやいや、足は関係ないですよ、そりに乗るんですから……」
「じゃ、誰が行くのよ?」
「そうですね……千手観音(せんじゅかんのん)さんは、どうです?」
「え、千手?」
「手が千本あるから、仕事が早そうだし」
「なるほどね」
「それに、衆生を漏らさず救いたいって、いつも口癖のように言ってるじゃないですか」
「ああ、あいつ偽善者だからな……」
「だから、そこを利用してやるんですよ」
「韋駄天……お主も悪よのぉ」
「いえいえ、お大仏様ほどじゃありませんよ……」
大仏殿に、高笑いが鳴り響きました。
「っと……千手さんとこ、行ってきましたー」と、息を弾ませている韋駄天。
「ええー、もう!?」
「こういうのは、早い方が良いですから」
「で、なんだって?」
「ま、最初はちょっと渋りましたけど、口癖のこと言ったら、馬頭観音(ばとうかんのん)みたいに顔を真っ赤にしながら、分かりましたって……ぷぷぷ……」
「ははは、千手観音が、馬頭観音みたいって……冗談きついな、それ」
「だから、赤い帽子のこと説明してる時も、心の中では……おいおい、そんなに顔が赤くちゃ、帽子いらねーじゃんって……ぎゃははは!」と、韋駄天は爆笑しました。
「……おまえが味方でよかったよ」
「じゃ、そういうことなんで、あとはよろしくお願いしますね」
大仏様は、もんどりを打とうする韋駄天の腕をつかみながら「おいおいおいおい、待てって」と、言いました。
「え、なんですか?」
「そりは、どうすんだよ?」
「そりですか?大仏様が、法力で出してくださいよ」
「そうじゃなくて、お前がそりを曳くんだよ」
「絶対やですよ!」
「なんで?おまえ、足早いじゃん」
「だからって、仏がそり曳いちゃダメでしょ!」
「衆生が見たら、ひいちゃうって?」
「そういうの、いいですから!それに、そりを曳くのはトナカイだって、文殊さん言ってませんでした?」
「となかいって?」
「いや、僕も知りませんよ、そんなの日本にいませんし……」
「じゃ、調べてきてよ」
「言うと思ってましたよ……。でも、もっと良い方法があるんです」
「なによ?」
「ほら、奈良公園には、おあつらえ向きなのがいるじゃないですか……」
「え、まさか……?」
「そうですよ!鹿にそりを曳かせるんです。こういうのって、やっぱイメージが大事じゃないですか?我々のクリスマスが成功したとしても、他の寺に参拝客が流れちゃっても意味ないですよね?だから、鹿を使って奈良の印象を強くしとくんです。そうすれば、遠方の参拝客も増えるってわけです」
「なるほどね。これだけ苦労してんだから、うまみがないとな……」
「そうそう」
「ぐふふふ……鎌倉の大仏、悔しがるだろうな〜」
「あの、大仏様?……それ、仏がしていい顔じゃないです」
「でも鹿のやつ、ちゃんとやるかな?」
「あんなもん、鹿せんべいでもやっときゃ、飛びついてきますって」
「そっか、そうだな!よーし、じゃあ、鹿呼んできて」
「もう、呼んでありまーす!」
「韋駄天、早ーい!」

(続)

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