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意味不明小説(ショートショート)コミュの化粧

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鏡を見るたび、ため息がこぼれる。

「もうちょっと美人だったら、もっと楽しい人生なんだろうな」

これまで幾度となく繰り返された命題だが、答えが出ない問題だけに、この類の愚痴がこの世から消えることはない。

野田よし子は毎朝化粧に余念がない。

恐らく二時間以上は鏡の前に鎮座することになる。

こんなことだから、毎日が寝不足で、もちろん精神状態もいいはずがない。

近頃は、目の下にはくっきりとしたクマが染みついて消えなくなってきた。

こんなことではだめだ……。

この悪循環に終止符を打つには化粧を止めることが一番いいことぐらいは分かっている。

しかし、それを決断するだけの勇気をよし子は持ち合わせてはいなかった。

だから、今日も目の下のクマを隠すようにコンシーラーを厚く重ねる。



決して自分が美しく見せようなどと言う前向きな考えによって化粧をしているわけではない。

少しでも自分の顔を普通に近づけたい。

よし子にとっての化粧はそんなけなげな思いに由来するものだった。

ただ普通になりたいだけなのに、今は普通がこんなにも難しい。

化粧をする年までこんなことは考えもしなかったのに……。

こういうわけで、よし子にとって毎日の化粧は悩みの種になっていた。



うつうつと毎日を過ごすよし子に朗報が舞い降りた。

ミースー党がその他大勢の野党の反対を押し切り、「美人税法案」を強制可決したのだ。

ざっくりと法案の内容を説明すると、美人には五パーセントの消費税に加えて二十五パーセントの税金が課せられる、というものだ。

まさに狂気の沙汰。

25パーセントという途方もない数字は、これまで不細工であるというだけで虐げられてきたものたちの恨み辛みの賜物と言えよう。

ともかく、よし子はこの福音を聞いて、小躍りした。

もうあんなに毎朝苦労して、化粧する必要もなくなる。

これからは美人が悪になる。

私のような不細工だって、すっぴんで町を大手を振って歩ける時代が来るのだ。

そう思うと、勝手に体が喜びで震えてくる。



数カ月後、法案が施行されると、よし子は有頂天だった。

町には不細工たちが闊歩している。

これまでは極力控えていたショッピングも、誰に気兼ねすることなく行くことができる。

すっぴんだってお構いなしだ。

遊園地にだって行ける。

ラーメン屋にだって。

来週は温泉に行くつもりだ。

よし子は以前のように自分が不細工だと思わなくなった。


ただ、25パーセントの税金はいささか痛いけれど……。

よし子はそれでもいいと思っていた。

なにせ国から美人のお墨付きをもらったのだから。

コメント(6)

コメントありがとうございます!

コメントをもらえるだけで、こんなに感動するなんて……(涙)

僕的にハンサム税は80パーセントを希望ですw
>全自動卵割り機さん、ユティカ・遊悠さん

コメントありがとうございます!掛け値なしにうれしいです。

ちなみに補足しますと、よし子は女です。

でも、ユティカさんのおっしゃる通り、オチが<男性>だった方が面白そうですね……。

ユティカさんは僕より素晴らしい発想力を持ってらっしゃるぴかぴか(新しい)

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