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意味不明小説(ショートショート)コミュの派遣社員 大野陽子

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おーい
  
うーん
  
おーーいって
  
わかったってば
  
いい加減起きてくれー
  
っは!
  
仕事してねー昼休み過ぎてるからねー
  
あ・・・はぁい
・・・仕事つまんないなー
でも係長の目は怖いなー
契約更新はないなたぶん
  
傘丸商事で働き始めてまだ半年
あまりにも怠惰な陽子を雇い続ける会社などどこにもなかった
でも派遣会社は機械的に陽子に会社を紹介し続けた
  
事務ってなんで忙しくて退屈なんだろ
みんなよくやるよ・・・
  
予想通り契約更新はなく、陽子は仕事を失った
もはや恒例のニート生活である
  
せっかく長い休みだしネズミの国にでも行くか!
一人で・・・
  
バスツアーでのネズミの国への旅行
平日なのになぜか居るファミリーに囲まれながら陽子は一人でバスに揺られた
DSのなかの中の教授が脳年齢は48歳とか意味の分からない事を言っている
  
脳年齢が41歳まで蘇った頃バスは消灯時間となった
朝がくればもうネズミの国の前だ
  
おなじみの門前の行列
おなじみのキャラクターがお出迎え
ここだけ世界が切り取られたように浮き世離れしているが
柵の向こうには都会の象徴が覗いて現実に引き戻してくれていた
  
  
  
おーい
  
うーん
  
起きてくださーい
  
もう少しだけ
  
ありがちな事を言うなあ
起きてって
  
っは!
ここどこ?
ネズミの国は?!
  
なに言ってるんですか
あなた死んだんですよ
  
え・・・
何かのアトラクション?
ネズミの国なのに夢ないわねえ・・・死亡体験館かなにか?
英語で言うとデス・・・デス・・・いやダイ・・・
  
目の前に立っていたのはゆるキャラ風の青い鬼だった
  
まったく運のない人ですね
まさかペットボトルで死ぬなんて
  
んなバカな
  
本当ですよ
  
鬼のキャラクターなんて居たかしら
いつの間にかそれっぽい服も着てるし
  
若いとそんな反応する人多いですけど
あなた死んでるんですよ
詳しくは言いませんけどペットボトルがぶつかって
当たり所も悪かったのか頭蓋骨陥没骨折だそうで
  
結構痛そうね・・・
  
それどころじゃなく死んでるんですよ・・・
  
そうか・・・
死んだのかあ・・・
まあどうみても三途の川よね
  
お金持ってますか?
  
は?
  
お金持ってますか?
  
え?  え?お金?
  
お金持ってないなら泳いで渡ってもらいますけど
  
え?!そういうシステムなの?!
お財布お財布・・・
今気がついたけどなにこの花と紙屑とは・・・
  
一緒に火葬された物ですよ
  
あ、そうか・・・
お財布お財布う
  
ありそうですか?お金
  
散らかってて見つからないわ
なんでこんな紙屑ばっかり入ってるの
  
本物以外はこの場所まで到達しないのです
大きさから見てもお金の模様が印刷された物だったのでしょう
  
むーん
あ、千円めっけ
これでいい?
  
かまいませんよ
三日ほどかかると思いますがね
  
金額で早さ変わるの?
  
行きましょう
  
答えろよ・・・
  
川岸にから延びる桟橋に足をかけながら、
川の向こうでお婆ちゃんがあっち行きなさいって言ったとかよく聞くけど絶対無理な距離だなあとか
そんなことを考えていた
未だに現実感というものが沸かない
閑散とした石だらけの河原
薄ぼんやりと明るい空
桟橋の先に立つ青い鬼
桟橋付近には船が溜まっていた
川で流れのないところに木の葉が溜まるようにして
どの船も木でできた小さな物だ
手漕ぎのオールはおろか舵すらない
  
コレで行くわけ・・・?
  
そうですよ
  
漕ぐものとかないの?
  
いりませんよ
お金ください
  
え?ああ、うん
  
鬼は釣り竿を出して糸の先に千円札をくくりつけると川へと放った
  
なにが釣れるっていうんだ・・・お金なんかで
  
亡者ですよ
金の亡者
  
大金だとすぐかかるとか言わないでね
  
その通りなんですけどね
気長におまちください
  
あなた名前は無いの?
  
伝八です
  
わたしは陽子
よろしく伝八
  
短い間ですが、よろしく
  
言いながら伝八は桟橋に釣り竿をくくりつけると、その場でごろりと横になった
  
寝て待つの?
  
果報は寝て待てって言うでしょう
まあココには他にやることもないので寝るしか時間のつぶし方を知りません
それがホントのところです
  
風邪引いたりするんじゃない・・・?
  
死んでるんだから病気も何にもないですよ
  
あ、そうか
それじゃ遠慮なく
釣れたら起こしてね
  
今度はすぐに起きてくださいね
  
はいはい・・・
  
陽子は流されづらそうな場所にある船に飛び移ると
すぐに丸まって寝息をたてはじめた
  
怖がったりしないのかね・・・
この人は
  
伝八も瞼を閉じて静かになった
  
  
  
随分と寝た気がしたと思ったらすでに船は川を進んでいた
  
起こしてくれてよかったのに
  
起きなかったからわざわざあんな奥の方の船を出したんですよ・・・
誰かが起きないからね・・・
  
あとどれくらいなの?
  
1時間・・・位でしょう
  
綺麗ね
  
陽子の視線の先には無数の蛍が舞っていた
時々生えている草の間を縫って二人を追うようにゆらめいている
  
記憶を食べる虫ですよ
  
記憶を食べるむしい?
  
おかしいですか?
  
だって何ともないよ
  
古い記憶が好きだから古い記憶から食べていくそうです
いい思い出も早くに無くなると言われています
  
へえ、こんなに綺麗なのに
  
未練とか無いんですか
こんな簡単に三途の川まで渡っちゃって
  
そりゃまあ有るけど
イケメンな彼も欲しかったし
その彼の子供も欲しかったし
小さな一軒家で静かに暮らすの
  
そんな夢のまた夢を・・・
  
いいじゃない!
それに伝八が聞いたんじゃない!?
  
そうでしたね
  
でもいいの
別に明確な目標があるわけでもないし
漠然とした不安を抱えたまま生きてるより
あっさり死んじゃった方が楽かもしれないわ
  
そんなもんですか
  
そんなもんですよ
  
向こう岸が見えてきましたね
どうです
記憶もほとんど無いでしょう
  
まあ思い出すような思い出はほとんど無かったしわかんない
三河童産業の課長にセクハラされた事はまだ思い出せる
  
虫も寄りつかない記憶って・・・
  
ねぇ
このままいったら天国か地獄なの?
  
この先どうなるかはわかりません
私は川を渡すだけまででその先には行ったことがありません
  
地獄はやだなー
暑そうだし、・・・暑そうだし・・・
  
暑い以外のイメージ無いんですか
  
仕方ないでしょ
記憶無くなるんでしょ!
鬼にバカにされる日が来るなんて・・・
  
つきましたよ
  
伝八が言うと同時に川底に船の腹が当たって大きく揺れた
船の先にぶら下げていた千円をくしゃくしゃに丸めて川へ放り投げると
船の下から影のような獣のような物が飛び出して後を追っていった
  
あれが金の亡者・・・
  
そうですけどなにか
  
ああはなりたくないわね・・・
  
対岸も同じような砂利だらけだったが
小さな赤い鳥居があってそこから細い小道がのびている
  
私の仕事は終わりました
  
え?こっから一人?
心細いなー・・・
  
くれぐれも気をつけて
  
死んでるのに気をつけるもなにも
  
餓鬼やら亡者に襲われたら魂の保証もないですよ
  
先に言おうぜそういう大事なことは
まあ、とりあえず行くよ
  
ええ
  
じゃあね伝八
  
ええ
さようなら陽子さん
  
伝八は、すでに歩き出していた陽子の背に聞こえないような小声で言った

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