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意味不明小説(ショートショート)コミュの考える猫

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狭い路地を一匹の黒猫が歩いている。
それを見た赤猫が大声で言った。

「おい、見てみろよ!黒猫だ、黒猫がいるぞ!」

好戦的な目つきで、黒猫が歩くのを見ている。
青猫と緑猫は、欠伸を噛み殺して、赤猫に従って黒猫の悪口を言い合った。

「いつも陰気な黒猫だ」

「夜の色にそっくりで気味が悪い」

黄猫と茶猫がそこに通りがかった。
黄猫も茶猫も、温和な性格であったから、黒猫の悪口なんか決して言わない。
赤猫がまたも大きな声で言った。

「おい、黄猫に茶猫!そこにいるのは黒猫だぞ、何か言ってやれよ」

いきなりの大声に、二匹の猫はしどろもどろになってしまった。
もともと内気な性格だから尚更だ。
いつもはにこにこしている黄猫も、今は恐怖に顔が強張っている。

「まったくどいつも情けない。あの黒猫は今にも、俺たち猫を呪うつもりに違いないんだ」

そんな根拠のないことまでいう始末の赤猫。
でも、誰も赤猫には逆らえない。
一番強いのは赤猫だから。

「お前も何か言えよ」

今度は僕が指名された。

「僕は何にも染まらないよ。だから君の言うことも聞けないな」

思い切ってそう言うと赤猫は、

「まあ、白猫のお前なら仕方ないか……」

と言って、半分諦めたかの様な表情をした。
僕は白猫。
どんな色にも染まらない、白い猫だ。
でも、言い換えればどんな色にも染まることが出来ない猫なのだ。
個性がない。
いや、個性がない、という個性なのかも知れない。
僕は黒猫がひどく羨ましい。
地味で陰気だけれども、それが彼の個性だ。
僕はいったい何なのだろう。
この頃、良く考える。
考えても、答えなんか出ない。
ただただ、僕はいつまで経っても、きっと死ぬまで白猫なのだ。

赤猫の号令で、僕たちは歩き出した。
隣を歩く水色猫にそっと話しかけた。

「君は、自分とは何か、考えたことがあるかい?」

怪訝そうな顔で、水色猫は言った。

「何を言っているんだい。僕は水色猫さ。それ以上でもそれ以下でもないよ」

僕には納得できない答えだった。
まるで何も考えてなどいないかのような……
そうか。
僕は何なのか、たった今、解った。
そうだったのだ。
仲間の猫たちは、考えることをしない。
それぞれ自分の色をまっとうするのみだ。

でも、僕は違う。
僕は考える猫だ。
毎日、毎日、必死に小さな脳みそを稼動させて考えて生きている。
僕は考える猫なのである。
ちなみに、名前はまだない。
さあ、名前でも考えてみようか。

コメント(4)

イッパイアッテナを推薦します!(古い)
もう少し白以外の猫に個性が欲しい気がします。
黄色や水色といった特異な色を使ったことが空回りしてるというか、名前負けのような感じがします。
この内容なら三毛猫とかぶちとか現実にそこらをうろついてる毛色だけでもいいんじゃないかと思えてしまいますね。
まぁ、掘り下げてしまうと分量が増えてしまうでしょうけど。。。
>たぬき教さん
イッパイアッテナ……!懐かしいです。名前だけ知ってますが、読んだことがないという。。。
猫の話なんですよね。(アバウトすぎ?
今度図書館で探してみよう。

>ひぃさん
案外、何も考えずに流されていったほうが、今の世の中では長生きできるのかも知れません。
でも、それは本当に生きていると言えるのだろうか、と。そんなことを考えて一日が終わっても良いと思うのです。

>黎さん
ご指摘有難うございます。
色のイメージは人それぞれなので、あまり限定したくなかったというのが本音です。読み手の頭の中で自由に想像して貰いたくて。
特異な色を使ったのは異世界観を出したかった為です。だって、三毛猫もぶちも喋りませんもの。

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