ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

意味不明小説(ショートショート)コミュの夢線機

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
今日もあの人に会いに行こう

今晩もどこにもないあの公園で一緒に遊ぼう

そこには大理石でできた遊具もあるし、赤ワインの出る水飲み場もある。


…ねえ。

「タバコを吸ってばかりいると、肌がニコチンの色になっちゃうわ」

君はそう言ってからから笑う。


そこには小学生の時に作ったトーテムポールが陽に色褪せて
ジャングルジムの天辺に立ってもいるし、


1日に一便しかこないバス停の、コカコーラの広告が載った赤いベンチが、
ブランコと砂場の間。公園のど真ん中に座ってもいる。


…ねえ。

「お〜い、今日もサボりか?そんなことばっかだから、乗り遅れちゃうんだぞ」

学ランを着た中学のクラスメイトが、そう茶化しながら、
ぴかびかの自転車で通りすぎていった。


奥手な僕は君の肩に手を回すと、そのまま立ち上がって、
羽毛の敷き詰められた砂場の上へ駆け、二人のからだを投げ出した。

うずめた僕らの周りに、真っ白な空気がふわりと立ち上って、
君が「ふふふ」と笑うから、脇の桔梗がくすり、とそよいだ。

寝返りをうって見上げると、
夕焼けの赤に紫の雲がカクテルを作っていた。

…ねえ。

「雲が紫だから、今晩は綺麗な満月なのでしょうね」

…そんな悲しいことを言わないでおくれ。


僕は視界の端に映るトーテムポールがぽきりと折れて、
ジャングルジムの骨格に飲まれて行くさまを見た。

頭を預けた羽毛の山が、少しずつ熱を持ち始め、僕は別れの匂いを嗅ぎとった。

…ねえ。

「なあに?」

首元の君は恋人を見つめるようなまなざしで僕に微笑んだ。

セキレイがきぃ、と鳴いた。

「君は、だれ?」

真っ赤なコカコーラ色のバスが到着して、
僕は羽毛の上で目を閉じた。

そのうちバスが僕を載せて行き、あのつまらない部屋へと届けてくれるのだろう。

大好きな知らない君も。
赤ワインの出る水飲み場も。
紫色に瞬く遠くの星や街灯も。

これでさよならだ。


世界の端々が黒く塗りつぶされていく。
ぴかぴかの自転車がくしゃくしゃにつぶされていく。



残ったのはただ、微笑んだ君のシルエットと、
後頭部に残る柔らかなまくらの感覚だけになった。


窓の青空から雀の鳴き声とバスが行ってしまう音が聞こえる。


一人ぼっちの僕は目も開けず、悲しみを誤魔化すかのように体をただ捩った。


…ねえ。


…ねえ。

コメント(4)

>くるせさん
・・・気付かなかった・・・
うわーすごくいいですね。これ。鳥肌が立ってしまった
>もこさん
ありがとうございます。
あまり何も考えずに作った文章なもので、同じようなものはもう二度と書けないかもしれませんが・・・笑

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

意味不明小説(ショートショート) 更新情報

意味不明小説(ショートショート)のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング