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意味不明小説(ショートショート)コミュのそう、スイート

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もうこんな所にまで来てしまったのだろうか。周りは薄暗いが、木々は微かに輝いていた。
その場の勢いとは怖いものだ。ものすごい力を持っている。
私はそんな力に後押しされて、ひょいひょいとここまで来てしまった。
時計を見ると、もう六時をとうに過ぎていた。



私は、その日は気分が悪かった。天気のせいもあるのだろうか、妙に体が重かった。
ミツルが大声で私の名前を叫んでいる。
「ああ、またか」と思ったが、声のする方へ体を向かわせた。
ミツルは怒っていた。理由は思い出せないのだけれど。彼はよく小さな事を気にするのだ。
毎回、理由を覚えていたら頭がパンクしてしまいそうなので体が自然に対処をしていた。

私が素直に謝ればよかったものの、気分のせいで強く言い返してしまった。
それから数十分も言い争ったのちに、私は思った。
「もう出ていこう」
思い立ったら早いもので、私はジャケットとバイクのキーを握り締めて玄関を飛び出していった。



飛び出したものの、どうしたら良いのか分からなかった私は、バイクの前で立往生していた。
そして、ふと朝のニュースを思い出し、
「そうだ。そうしよう」
私は紅葉を見るためにバイクを走らせた。



小一時間走らせると、景色は都会から田舎に変わり、緑が広がっていった。
出発した時は明るかったのに、もう夕日が差し込んでいる。
求めた景色はこれだったのだろうか、木々は風に吹かれる度、葉を数枚落としていた。
たぶん違ったのだろう、私は帰る事にした。



季節はもう冬に差し掛かっていて、少し肌寒かった。
急に暖かい飲み物が欲しくなり近くのコンビニに入った。
店内は暖かく、光に満ちあふれていた。
季節を先取りしているのか、おでんや肉まんが売り出されていた。

そこで私は不思議のものを見た。
リュックを背負い制服を着ている普通の学生なのだが、私には不思議な存在でしかなかった。

その学生は飴を選んでいた。頷いたり、ぶつくさと呟きながら吟味していた。
私が彼を観察していると、こちらをくるりと向いた。
私と目が合ったのだが、何事も無かったかのように飴選びを続けた。
私は懐かしい感じに襲われて、彼に声をかけた。
「何がおいしいの。」
彼は驚きもせず私に言う、
「お姉さんは甘いの好きな方ですか。」
私は「お姉さん」と呼ばれた事と、予想していなかった質問をされた事に焦り、
「す、好きです。」
変な敬語になっていたし、どちらかと言うと甘いのは苦手だった。

「そっか。そうなるとねぇ。」
と彼は言うと、二つ三つ飴を手に取り、私に「一番甘いヤツ」を教えてくれた。

彼に勧められた飴を私は買う事にした。
私は彼からもう少し話を聞こうとしたのだが、私がレジを済ましている時には彼は自転車にまたがっていた。
私は彼の所に駆け寄り
「ありがとう。」
ただ一言だけ声を掛けた。
彼は屈託のない笑顔で
「寒いから気を付けて帰ってね。」
そう言い残して去っていった。


残された私は袋の中から飴を取出し口に放り込んだ。
予想をしていたよりも甘く、喉が焼けるようだったが、嫌な感じでも無かった。

私は彼の表情なのか飴のせいなのか、妙な懐かしさを思い出していた。
以前にもこの飴を舐めたのだろうか。
そんな気さえしていた。


「そうだ。そうだ。」
私は懐かしさを思い出していた。
きっと彼と飴のせいだろう。
私はまだ若い頃のように、心が弾んでいた。


何か暖かいものを手にした私は、バイクの横に落ちていた赤く染まった落ち葉を広い家路を急いでいた。


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