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意味不明小説(ショートショート)コミュの人形

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冬の寒空の下を私は歩いていた。
校則違反ギリギリの丈のスカートの所為で、いつもよりひどく寒く感じられた。
ひゅうっと木枯らしが吹いて、思わず身を固めてしまった。
寒い。
そう思ったが、今の風は違う寒さだった。
私はなぜかは分からないが、そそくさといつも通っている道を歩いた。

早く帰りたいと思った、その時だった。
脇の電柱の下のところに段ボール箱が落ちていた。
いや、置いてあったのかもしれない。何か張り紙が張ってある。
どうせ捨て猫だか捨て犬だろうと思って、私は張り紙に書いてあることを読んだ。

「えーっと……なになに……『ひろってください』?なーんだ、やっぱりか」

私はそう言って中をひょいと覗きこんだ。
しかしそこには動物などおらず、フランス人形が横たわっていた。
金色の髪を持つフランス人形の目は、青く澄んでいてとても魅力的だった。
私はその瞳の不思議な魔力のようなものに惹かれて、フランス人形を手にした。

しかし、薄気味が悪かったので元に戻して帰ることにした。
家に帰るまでが非常に長く感じられた。
冬なのに私はいつの間にか汗をかいていた。
いやな汗だった。
あの青い瞳が頭から離れなかったのだ。


家に着くとホッと一息ついた。
さっきの事は忘れよう。
二階に上がり自室へと入る。
いくら忘れようと思っても、全然頭から離れることはなく、フランス人形の目が私をじーっと見ているような感覚に陥った。

「きゃあっ」

部屋に入った私は机の上にあるものを見て思わず悲鳴を上げた。
机の上にはさっきのフランス人形が座っていた。
こちらをじーっと見ている。
実際には見ていないのだが、無言でこちらを向いている様は異様だった。

「なん、で……?」

その時人形の口が、ぱかっと開いてこう言った。

「ワタシハ呪イノ人形デス……ワタシノ体ヲキズツケレバ、キライナ人ヲ呪エマス」

「呪いの……人形?……誰でも呪えるの?」

「ハイ、アナタノ憎シミノ気持チガ強ケレバ強イホド、キキメハ上ガリマス。ワタシハ呪イノ人形デス……ダレヲ呪イマスカ?」

私は少しの間考えたが、気づくと人形に言っていた。

「じゃあ、まずは……」


次の日、私はいつもどおりに学校へ行った。
しかし、友達との話も身が入らなかった。
早くホームルームが始まって欲しかった。

十分後、ホームルームが始まった。
しかし、担任の鈴村の代わりに副担任の佐賀先生が来た。
佐賀先生はおっとりした性格の先生で、生徒たちからも結構人気があった。

「今日は鈴村先生はお休みなので私が来ました。先生は昨日ひどい事故にあって当分学校には来れないそうなのです」

教室のそこかしこから小さくよっしゃ、という声が聞こえた。
鈴村はひどく嫌われている。
禿げていて、規則にもいちいちうるさいからだ。

「それでは出席を取ります……」

佐賀先生が出席を取り始めたそばで、私は口元にいやな笑いを貼り付けていた。


帰宅すると私は早速、自室に向かい例のフランス人形を手に取った。
フランス人形の左腕はズタズタに切り裂かれ、右足は異様な角度で折れ曲がっていた。
私がしばらく眺めているとフランス人形が言った。

「スゴイデショウ?次ハダレニスルノ、次ハダレニスルノ?」

私は今日学校で自分が友達に言った言葉を思い出した。

「明日ぐらいには鈴村のやつ、死ぬんじゃない?」

みんなも笑って死ね、とかほんとウザいよね、とか言っていた。
だから私は決めた。
別にこれが犯罪になるとは思えなかった。
それに、ばれる要素がない。

「次ハダレニスルノ?」

フランス人形が先を促す。
私はサラッと言ってのけた。

「あなたを使って殺すこともできるのよね?」

「モチロン!」

「じゃあ、ちょっと待ってて」

そう言って私は机の中からはさみを取り出した。
鈍く光るその銀色に私の残忍な笑顔が映し出されていた。
一瞬ドキッとしたが、これが私の使命のように思えた。
はさみを握る手が汗ばんできた。
ぎゅっと握り直してフランス人形を見据える。

「鈴村トイウ男デイインダネ?」

「もちろん!」

そう言って私はフランス人形の胸に深々とはさみを突き刺した。ぐしゅっといういやな音がした。

「キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ」

その甲高い笑い声は私のものなのか、それともフランス人形の声なのか私には分からなかった。


次の日、特に先生方から鈴村についての情報はなかった。
その次の日も、次の日もなかった。

始めのうちは先生方はただ隠しているだけなのだろうと思っていたが、そうでもないらしい。
普通に笑っていやがる。

フランス人形はあの日から姿を消していた。
一回しか人を殺せないのかもしれない。
三回しか願い事を叶えられない魔人と同じだ。
だから、死んだのかどうか確かめる術がなかった。

しかしとうとう、一週間ほど経ったある日、鈴村が復活した。

どういうことなのだろう。
鈴村は死んだはずじゃないのだろうか。
左手には包帯を巻いているし、歩き方もぎこちなかったが、ぴんぴんしていた。
死にそうもなかった。

帰宅途中、初めてフランス人形にあった場所を通った。
なぜか、ここを通れば会えるような気がしたからだ。
しかし、ダンボールは消えているし、どこを見回してもいなかった。
諦めて帰ろうとした時、

「鈴村ハ殺セタ?」

私は後ろを振り返った。
そこには青い目をしたフランス人形がいて、宙に浮いてこちらを見ていた。

「殺せたかって?死んでないじゃない!どうしてよ!私はあの時確かにはさみであなたの胸を……」

フランス人形の不敵な笑いに、私の言葉はつまってしまった。

「どう、したのよ?」

「人間ハオモシロイ!人間ハオモシロイ!マンマトダマサレルンダモノ」

「どういうこと?」

「ワタシノ力ハ、アナタニ説明シタノトハ微妙ニ違ウノ。本当ハ人間ノ憎シミノ力ヲモラッテ、魔力ヲ使ウダケ」

「……つまり、あなたの左手をはさみで切っても、直接鈴村が傷つくわけじゃないってこと?」

「ソウイウコト。アナタヲ信ジコマセルタメニ、ワザワザヤッタノ。オモシロカッタデショウ?」

「全然面白くない!なんで鈴村が死なないのよ!今まで通りやってくれればいいのに!」

私はさっきから怒鳴りっぱなしだった。
でも仕方がなかった。
イライラは募るばかりだった。
そして、フランス人形の最後の言葉で私はキレた。

「アナタノソノ、悔シガル、情ケナイ顔ガ見タカッタノ。人間ノ苦痛ニ歪ム顔ハ、イツ見テモ快感ダモノ」

「それだけのために!?」

フランス人形はふふふと笑っていた。
私は思わずフランス人形を掴んでいた。

そして、駆け出す。
私は学校へ引き返した。
このむかつく人形に罰を与えたかった。
私の心は憎しみに支配されていた。

学校はまだ部活動はやっているものの、人数は少なかった。
私は焼却炉に向かった。
火はついていたが、そばに人はいなかった。
チャンスだと思った。

「ワタシヲ燃ヤスノ?」

「そうよ。そのむかつく顔を二度と見ないようにね!」

私が焼却炉に人形を投げ込もうとした瞬間、

「キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ」

といつか聞いた奇怪な叫び声がこだました。
それはフランス人形が発していた。
あの時のもこいつだったのだ。
私の笑顔が悔しさに歪むだろう日を思い描いて、私を嘲笑っていたのだろう。
だが、そのむかつく笑い声もここで終わる。

「じゃあね、短い付き合いだったけど!」

そう言って私はフランス人形を焼却炉に投げ入れた。
最後に見たのは魔力を秘めた青い瞳だった。



次の日の朝、新聞の見出しにはこう書かれることとなる。
「県立S高校で相次ぐ死体! 昨日午後六時三十分頃、都内の星架高校で死体が発見された。一つは教室で、教師の鈴村彰浩さん(48)で胸にはさみが刺さって死んでいた。はさみからは女生徒の指紋が検出されている。
 そして、二つ目の死体が驚くべきことに、その女生徒だと判明した。女生徒の死体は焼却炉の横に遺棄されており、全身が焼け焦げていて最初本人とは―――

コメント(7)

>未知さん
夢に出たらごめんなさい(汗
見かけても拾わなければ大丈夫ですよ。多分。

>ふらと絵梨さん
人形の怖さと、人間の心の裏側に潜む怖さを書いてみました。
夏にはまだはやいのにゾクッときました。人形って昔から怖い。
>草介さん
人形って、なんとなくこっちを見ているように感じてしまいますよね。
フランス人形もそうですけど、和人形も地味に怖いです。。。
>キーさん
コメント有難うございます!
カタカナは意識しました。上手く喋れてない感じが出てたら良いです。

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