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意味不明小説(ショートショート)コミュのゴミ箱でキス

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大学に入ると中学で一緒だった淳子と同じ学部だった。
淳子は久しぶり、と言った後、最近わたしはごみ箱の中を眺めるのに凝ってると言った。

「なんでごみ箱?」
「ごみ箱の中の雑多なごみの絶妙な配置、とかを見てると面白いの」
「ふうん、変わってるね、と言うかおかしいよそれ」
「例えば、そこにあるごみ箱見てみようか?」

そう言って淳子はキャンパス内の庭園のベンチのそばのごみ箱を指差した。一緒にごみ箱に近づいていくと淳子が、ほう・・、なかなか・・とつぶやいた。

「これはなかなか、通な状態よ」
「通な?どこが」
「まず見て、この少年漫画雑誌、普通の状態で捨てられているならまだしも、なぜか表紙やなんかがビリビリに破かれてる。青春の懊悩ね。しかもその上に覆いかぶさっているのは破れたストッキング。何故、ストッキング?と思うけど、こんなもん大して驚くに値しない。ナプキンとかよりはね。問題はこのストッキングが絡みつく対象が懊悩の象徴、破れ果てた少年ジャンプってことよ」
「あぁ、なんか、悩ましいね。翻弄されるウブな少年のこころ」
「分かってきたわね、この、舞台がごみ箱っていうところが退廃的でいいのよ」

淳子とはよく遊んだりするグループの中のふたりだったけど、恋愛とかを考えるような多感な時期でもなかった中学時代を経て、高校で離れて疎遠になった。その知られざる高校時代でいろんな酸いも甘いも経験してきたあげく、こんなちょっと歪んだ観察行為を身に付けたんだろうか。

「あぁ、見てこの打ち捨てられたティッシュが示してるのは・・・」

そんなことをまだ言っている淳子を眺め、黙ってりゃ可愛いんだけどな、と思いながらとりあえず次の授業があるから、とその場をそそくさと後にしようとしたが、淳子もぼくと同じ学科で次の授業は必修科目だ。問答無用で一緒に教室を目指すことになった。


同じサークルに入ったぼくらは、それなりに一緒に遊んでいたころのノリを取り戻し大学生なりの生活を楽しんだ。サークルの会室にはひとつ、淳子がどこかの雑貨屋で買ってきた少し大きめのごみ箱が設置されていて、それをぼくらはたまに眺めて楽しんだりしていた。お菓子の空き箱、煙草の吸殻、丸めて捨てられた過去問、油とり紙、誰かが書いて丸めて捨てた謎のポエム、彼氏に振られた先輩がみんなの前で公開処刑と言って切り刻んで捨てたプリクラのかけら・・みんなの青春がこんなごみ箱にもあふれているねえ、などと言ったりした。

「みてみて、コーラのペットボトル、絶対ヒロシ先輩だよね。あの人いっつもコーラだもん。わたしとチューさせちゃおう」

そういって淳子は自分の飲み終わった豆乳のパックの穴から出ているストローの先がペットボトルの飲み口に入り込むように、それを捨てようとした。
ぼくは、その前にそのコーラのペットボトルをなんとなく拾い上げた。

「ったく、ペットボトルの分別なってねえなー」
「あー、そうだね、ふふふ」



大学生活最初の長い夏休みが終わってから久しぶりに会った淳子には彼氏がいた。淳子は少し照れたような、いっぱしの乙女気取りみたいなしぐさをしながら、ヒロシ先輩がね、ヒロシ先輩はさあ、とまくし立てた。それを見ながらぼくは、なにか言い知れぬ、なんともいえない気持ちになった。なんだろう。心情を表現しようと試みると、浮かぶのはビリビリに破れた少年ジャンプだった。なんで少年ジャンプが破れてんだ?すっかり忘れていた、入学したてのころ淳子と一緒にごみ箱を眺めた時のことが思い出された。

「そんでおまえ、最近はごみ箱とか眺めてないんだ?」
「え?あぁ、いやいや、眺める意味がわかんない、なにそれ」

淳子がヒロシ先輩とデートに行くといって会室を出て行ってから、ぼくは久しぶりに部屋の片隅のごみ箱を覗いてみた。豆乳のパックがあった。おまえだっていっつも豆乳じゃん。
ぼくはちょっと自販機までお茶を買いに行き、そのペットボトルを勢いよく飲み干して、ちょっと気持ち悪いな、と思いながらも、豆乳の先から出ているストローをペットボトルで覆い被せるようにして、それをそっと捨てた。

ごみ箱でのキス。だいぶ退廃的で、とても根暗な儀式。
想いをごみ箱に捨てるちょっとさみしい儀式。しかも150円で済む。
窓の外を眺めると淳子とヒロシ先輩が手をつないで歩いているのが見えた。
それを見ながら軽くごみ箱を蹴飛ばし、ストローから外れたペットボトルを拾い上げた。
想いをごみ場に捨てるってのもあんまりだな。外に出ることにした。

さて、俺もこんな気持ち悪いことしてないで、青春しなきゃね。


http://book.jorudan.co.jp/cgi-bin/browse.cgi?action=7&param=euxeuune3u1u7u4u6

コメント(3)

すごい
衝撃作です。
ごみ箱って退廃的で素敵だったんだ…。
新しい世界、こんにちわ、です。
あ!とてもうれしいです
ありがとうございます

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