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意味不明小説(ショートショート)コミュの壁に耳あり。

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 障子というのは歴史が浅い。平安時代に始まってまだ1000年ほどのものだし、そもそも日本に限定したものだ。でも壁は違う。いつの時代、どこの国へ行っても家がある限り壁はある。猿が進化し、『壁』という概念が誕生したときから壁がない時代はこの世にない。したがって『耳』の歴史は古く、じつに多様に進化しているわけだ。障子が減っているため急速に数を減らし、ワシントン条約で保護されている『目』とは違い、『耳』は世界各地に分布している。レンガの壁、和室の砂壁に適応したものや檜にしか生息できないもの、アフリカでの牛糞の壁からイヌイットが住む氷の壁まで多種多様。いまや世界中で『耳』が生息しない場所を探す方が難しい。

 そしてその例に漏れず、僕の部屋の壁にも『耳』がいる。僕の部屋は6畳弱の洋室で、床はフローリング、壁紙は白。入って右側にベッド、奥には窓、ベッドと反対の壁にガラスのデスク。デスクの隣にメタルラックがあり、そこにはCDプレイヤーが置いてある。『耳』は右側の壁の中央、ベッドの上50cmくらいの場所に位置しており、白い壁に溶け込んでいる。ベッドの上で電話する僕の声と、正面に位置したプレイヤーの音を効率よく聞ける場所を選んだようだ。もっとも、電話をするときは『耳』に耳栓をするのだが。不思議なことだが『耳』のやつは口が軽く、『耳』に聞かれた話はなぜか翌日みんなが知っている。以前失恋でやけ酒した後に『耳』を相手に愚痴り明かし、翌日大変なことになってことがあるのだ。この件以来、僕は耳栓を徹底している。

 だがそんなことがあっても僕は『耳』のことが嫌いではない。色白で小ぶりな『耳』はとても女性的で美しく、耳たぶのほくろがアクセントとして大人の魅力を与えている。また、耳の裏を撫でてやると真っ赤になって恥らうあたりも可愛らしい。いたずらに息を吹きかけたりすると『耳』はピクンと身をよじらせ、ちょっと不機嫌になる。その様子もまた好きだったりする。稀にピアスでも付けてあげようかと思うこともあるが、その案は毎回すぐかき消される。エゴイスティックな愛情を押し付けるより、もっと大切な事がある。『耳』はペットではないのだ。

 そんなわけで、ベッドに寝転んで『耳』を撫でてたりするとちょっとムラムラした気分になることもある。右手は『耳』の縁から溝に沿って指を這わせ、左手はズボンを下ろそうと動き出す。だが、なにぶん相手は『耳』である。ギリギリの自制心が危うい感情を押さえこみ、代わりにクラシックな音楽をかけて一緒に耳を傾けたりなんかする。僕が大好きな時間の一つだ。

 この間はふと思い立って耳掃除をしてあげた。初めての耳掃除ということで結構な量のアカが取れ、なかなかの快感。『耳』はたまに痛そうにしながらも、概ねリラックスしているようだった。僕はその様子を見てたまらなく幸せな気持ちになれるのだ。耳掃除を終えると僕は軽くキスをしてから電気を消したが、暗い部屋の中でも『耳』が真っ赤に染まるのが感じられた。

 そんなプラトニックな僕と『耳』の関係。

コメント(11)

これだけ耳があると、いよいよ芳一は浮かばれませんね。
確かに。霊が間違えて壁の耳でも剥がしていけば芳一は助かったでしょうが。
>(#゚Д゚)<おおかわ さん
実はいるかもしれませんよ?コンセントの裏とかに・・・

>ミコトさん
そう思っていただけると嬉しいです!
大仏の耳だったら、なんか縁起が良さそうです。
あと熱いものに触ったときにも、耳たぶが大きいので掴みやすいという利点があります。
コンポの側や電話の側を探すとすぐに見つかりますよ。
仲良くしてあげてください〜。
ヒナキチさん
『耳』が嫌がらなければ、挑戦してみようかと思います。

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