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意味不明小説(ショートショート)コミュのそろそろとくだる

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砕けた左の距骨は、もうほとんど復元されていて、来週にはギブスを切開するという。退屈な定期診察を終え、ぼくは林に立ち寄った。病院の裏手に広がるこの落葉樹林を、いつも診察室の窓から眺めていたのだ。

ガードレールをくぐって、ブナの木が繁る斜面をすこしずつ、転ばないように下る。踏み込んだ足が地表の落葉を押しつぶし、その下に堆積する腐葉土の、人肌に似た生暖かい感触を伝える。林の体温に守られ、いったいどれだけの生物が冬を越すのだろう。

不自由な左足をかばいながら、途中、ひときわ大きな幹に手をついて休んだ。何気なく振り返ると、ガードレールは斜面の向こうに隠れて見えなくなっていた。樹皮には硬く尖った、ささくれがあり、ぼくの掌に細かな擦り傷を残した。幹から手を離した瞬間、ぴりぴりと冷気が染みた。

ぼくは再び歩きはじめた。あたりの草木がだんだんとその密度を増し、陽光は今では僅かに注ぐばかりだった。さらに少しばかり進んだところで、斜面はそのまま、水の中へと没していた。診療室の窓からは伺えなかったが、雑木林の下には池があったのだ。ところどころに、薄い氷の膜がゆれている。

ぼくは立ちどまって、水の中に沈んでいる木の枝を眺めたり、手近な石ころを投げたりしたあと、もと来た経路を引き返す。斜面の途中で、来週の診察までに、丈夫で軽い長靴を見つけようと考えた。ギブスが取れたらその長靴に足を通して、浅瀬をたどって池の対岸へ渡ろう。まだまだずっと先にだって行けるはずだ。

コメント(2)

>shuさん
コメントありがとうございます。
「スタンド・バイ・ミー」的な小さな冒険みたいな感じをやりたかったんです〜わーい(嬉しい顔)

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