ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

意味不明小説(ショートショート)コミュの生き物が逃走する

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ざわめきが路上に溢れている。しわがれた老人が吐き出す、甲高い呼気。母親に抱かれた赤ん坊の泣き声。陰鬱な表情をうかべた二人の男が、ぶつぶつと話していた。頬の赤い少女が時折、立ちどまって咳き込んでいた。小さなノイズが互いに混じり、溶け合って、ひとつの唸りとなる。群集とは、まるでひとつの巨大な生き物のようだ。

いま、ここで、フィルムに刻まれた映像を見ながら、ぼくは思う。撮られた映像は、被写体を「読める」ようにする。情報は簡略化され、生の現実は、混沌の裡から這い出し、理解可能性を付与される。それがフレームによって空間を切り出すことで現出する、「映像」の特性だ。ぼくらは現実を恐れ、その似姿とともに戯れる。

映像にとって、すべての音はノイズである。映像が簡略化した現実、映像によって忘却された、手に余る圧倒的「リアル」の痕跡は、「音」に宿る。どうして映画は「音声」なんていう面倒なものを獲得してしまったのだろう。1927年、アル・ジョルスンが発した、映画史上初の台詞。



お楽しみはこれからだ!



どうやら人間というのは、必ず楽園から逃げ出してしまう生き物であるようだ。人類みんな、マゾヒスト。あの群集はどこに向かったのだろうか、映像という虚構のフレームのなかで、くぐもった唸りを辺りに響かせながら。

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

意味不明小説(ショートショート) 更新情報

意味不明小説(ショートショート)のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング