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意味不明小説(ショートショート)コミュの件(くだん)

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 朝目がさめて窓を見ると雪が降っていた。今日はクリスマスで、外では恋人たちが楽しそうに歩いているのだろう。
 やることもないのでもう一眠りしようかと蒲団をかぶると、足元の方で何かの気配を感じた。蒲団の中をのぞくと青白い女の顔が暗闇の中にぼんやりと浮かんでいる。

 人ではなかった。女の体は牛の姿をしている。件だなと思った。以前読んだ内田百けんの小説が頭の中に浮かんだ。
 件は私の体を這うようにして近づいてくる。ずっしりとした重みが体に伝わる。女の香りと牛の体臭が奇妙に混ざって鼻腔を刺激した。
 件の顔が目の前まで迫ってきた。鼻息が顔にかかった。件は私の眼をじっと見つめる。目をそらすことができなかった。体がぴくりとも動かない。件が乗っているせいだなと思った。寒気がした。

 件が口をあけた。紫色の舌が目に映った。何かが腐ったような臭いがした。喉の奥まではっきりと見えた。件が何かを叫ぶ。人の声ではない。耳をふさぎたくなったが体はあいかわらず動かない。
 件は叫び続ける。私は恐ろしくなって必死で逃げようとする。無駄だった。件が叫んでいるのは私の未来だった。私の身にこれから訪れる何かを件は叫んでいるのだ。

 しばらくして私は目覚めた。件はすでにいなかった。冬だというのに私の体は汗でびっしょりと濡れていた。件の言っていたことを思い出そうとした。
 しかしどれだけ思い出そうとしても無理だった。ただ何か恐ろしいことが起きるのだということだけははっきりとわかった。
 雪はまだ降り続いている。これからどうなるのだろうかと思うと少し憂鬱になる。

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