●●アンチ・オリンピック●●コミュのオリンピック開催を肯定する論拠として「勇気をもらえる」ということがマスコミ等で言われたりするのだが、そこにある違和感を分析してみた。

オリンピックで選手がメダルを獲得した様子を見て、テレビ番組
のコメンテーターが言う常套句として「勇気をもらえた」という
なにか気持ちのわるい違和感をもってしまう言葉がある。
なぜ、ある組織が定めた一定の競技を一定の方法で遂行したその
結果が、たまたま「良かった」からといって、われわれがそれに
「勇気」という全人的な道徳的充足感を抱く必要があるのだろう
か？
＊
たとえば、何らかの反政府活動をしている人が、秘密警察組織に
捕縛され検挙され投獄された場合、その秘密警察の行動に対して
「勇気をもらえる」のは、その政府を支持する者だけに限られる
はずだ。
ただし、その意識を〝勇気〟という道徳的充足感の範疇に入れて
よいのかどうかは別にしてだが・・・。
少なくとも、その政府支持者がもつ感情は、全人的な道徳性を称
えるために使用されるべき〝勇気〟という文言には当て嵌まらな
いと考えたほうがいいのではないだろうか？
＊
仮に、この世界のどこかに〝神の場〟が実際に存在し、そこで誰
もが自分自身の能力を発揮できるという当然のことながら競技種
目など限定しない真の〝オリンピック競技〟が開催されたなら、
そこで優勝したという事実は、たしかに全人的な〝勇気〟をもた
らすだろう。
そういう場合にこそ〝勇気〟という言葉は、ふさわしいはずであ
る。
何度も繰り返して恐縮だが、
むしろとんでもない悪評さえある「組織」が定めている競技を、
そのルールに従い忠実に遂行したその結果が優秀と（その組織に）
認定されたからといって、なぜ、われわれがそこに全人的な道徳
観の充足を得なければならないのだろうか？
気持ち悪くて仕方ないのは自分だけだろうか・・・・。
＊
本当の全人的な道徳観を喪失することが、いかに危険なことであ
るかは、われわれはすでに（ホロコーストなどの）多くの歴史的
事実により学んでいるはずだ。
単に一定のイデオロギーのもとで開催されるに過ぎない競技によ
って「一定の承認欲求が満たされるという脳内作用」を得たから
と言って、それを身体的心的意識的なところで論ずべき〝道徳観〟
と混同するとは、いったい如何なるメンタリティーと人間性なの
だろうか？
その程度の人間が、マスコミには、ウジャウジャと棲息している。
＊
ついでに、もう少し深く、この問題を探ってみよう。
オリンピック的な「承認欲求」の満足という事態と、
全人的な領野で発生する道徳観の充足という事態は、どう違うの
だろうか？
認識の浅い者は、こう思うかもしれない・・・。
それらは両者とも「脳内においてある情報を快楽スイッチへ接続
するか不快スイッチへ接続するかの「理性的プログラム」による
操作に依存していることにおいて同質のものである」と。
つまり、（脳の感覚作用が認識しているだけの）外部から自分の
成果が「承認」されたということを脳内の快楽スイッチに接続する
「理性的プログラム」によって完了する「承認欲求」の満足という
ことも、
（身体的心的意識的な全人的場を意味する）外部から自分自身を
承認しようとするときにだけ発生する道徳観の充足も、その考え方
に従えば同じものだと言うことになる。
＊
はたして、上記の前者と後者の満足感と充足感は同じものなのだ
ろうか？
さらに問えば、前者の「外部」と、後者の外部は、同じ外部なの
だろうか・・・・？
この問題については、また別のトピックで言及しよう。