●●アンチ・オリンピック●●コミュのコロナ禍で国民の命よりも目先の経済活動を優先するというイギリスの国営放送局（ＢＢＣ）が、ワリエワ問題について「近年のスポーツの記憶の中で最も不快で不愉快」と言うのだが言い過ぎだと思う。

オリンピック的なメンタリティ―　＝　ひとりの英雄をつくるた
めに多くの人間を「ふるい落とす」という発想自体に嫌悪感をも
つ自分としては、ＢＢＣの標記の発言は、チャンチャラ可笑しい
ものでしかない。
そういう原始的で野蛮な行為を当然のように受け容れている者が
不快で不愉快というのは、まるで、おのれの体臭でマーキングを
する動物が、その体臭を落とされることになる「身体を洗う」と
いうことを不快で不愉快に感じるようなものではないだろうか？
＊
スポーツがなにかとても素晴らしいことであるかのような感じを
もつのは、実は単純な誤解（脳内で発生する情報のコピーミス）
によっているのである。
スポーツが、「一定の効果を目指して身体を効率的に動かす作業」
を意味するかぎり、それはたしかに素晴らしいことには違いない。
自分自身、体力を保つために個人的にトレーニングを欠かすこと
はないし、身体（すなわち心的意識的なものの母体）は、動かさ
ねば衰えてしまうことは確かなのである。
＊
そのスポーツすることの重要性は、脳内の「感情的プログラム」
を刺激し「理性的プログラム」において体系化されることになる。
その際、「一定の効果を目指して身体を効率的に動かす作業」が、
なぜか自己の身体（すなわち心的意識的なものの母体）のために
行われる目的性を逸脱し、「理性的プログラム」の中のひとつの
作用にコピーされてしまうのだ。
その作用とは、「ランキング」するというはたらきである。
＊
その結果、
スポーツは、人間の（身体の細胞を民衆に喩えれば専制君主のよう
な）脳内において、自分自身のために行われることであるよりも、
むしろ、「競い」「ふるい落とし」「勝者を決める」という傲慢かつ
不遜な事象に変貌を遂げる。
そして、自分自身の身体のためであれば〝素晴らしいこと〟であ
るという意識だけが、その暴君化した脳内の「理性的プログラム」
を肯定してしまうことになるのだ。
＊
それは、あたかも、神の権威を着た暴君のようなものである。
＊
人間に対する洞察が限りなく薄っぺらいＢＢＣ（イギリス国営放
送）の不快さ不愉快さとは真逆に、自分はこのワリエワ問題を、
むしろ当たり前のことのように捉えている。
なぜなら、この件により、オリンピックという歪んだスポーツの
祭典に潜む「ふるい落とし」の暗黒面がはからずも露呈し、スポ
ーツとは本来何であるべきかを問い直す切っ掛けが与えられたこ
とは間違いないのだから。
キレイゴトかもしれないが、
われわれが今なすべきことは、「ランキング」という「理性的プロ
グラム」の中でも浅ましい部類に入る脳内活動によって、１５歳
の少女をその世界から「ふるい落とす」ことに血道をあげること
ではなく、彼女が今後出来ることを彼女に寄り添い彼女と共に考
えていくことではないのだろうか？　と、ＢＢＣには言いたいの
である。