天寿国の末裔・上代史ノート
「 大和岩雄 『 天武天皇論 』 大和書房 」覚書
私的考察のための覚書・抜粋です。安易にコピーしてはなりません！ヾ(▼ﾍ▼；)
「ここ」には、誤字・脱字、私による「勘違い表記」も、あります。 ( ￣っ￣)
☆「図書館で本を借りて、本文・全文に目を通す」しましょうね。♪ (＝⌒▽⌒＝)
★ 前後の脈絡を知らないと誤解するよ！ Ｏｏ｡｡(￣¬￣*)
(＝⌒▽⌒＝)
☆ 筆者（葦原風太郎の「気づき」と「見解」は≪私・……≫として、表記します。
天武天皇論 �機ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
ｐ．９
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○天智・天武の年齢矛盾説をめぐって
「天武天皇は天智天皇の実弟とみるのが、日本古代史の常識である。ところがこの実弟は兄より年上になる。」
「「誄」とは、貴人の死を悼んで、血統や業績などを述べる詞だが、天智天皇は欽明天皇崩御……、六七一年には四六歳である。」
★「天武天皇の年齢については『日本書紀』には記載がない……、『本朝皇胤紹運録』に(崩年)六五歳とある。(四歳年長)」
(・川崎庸之「倒錯」と見る)
ｐ．１０
(・直木孝次郎「五六・六五の誤転記」と見る)
(・日本古典文学大系「日本書紀」頭注、「天武天皇の享年については、一代要記・紹運録に六五歳、神皇正統記などに七三歳とあるが、いずれも兄天智天皇より年長となるので、
今日 欽明三年の誕生とみる説が有力である。)
ｐ．１１
(・坂本太郎「(日本)書紀の記事を否定する力は、これらの後世の書にはないと見るのが史学研究の常識である。」)
ｐ．１２
(・水野祐「……天智天皇十六歳とあるのは、即位年十六歳の誤りとみる。」)
ｐ．１３
(・小林恵子「……、天智の異父兄で高向王を父とする漢皇子を天武天皇とみる。」)
(・佐々克明(天武天皇を金多遂とみる。)」
○天武天皇の年齢と後代資料
（・白崎昭一郎「七百年も後代の史料に如何なる記載があろうとも、それを無視するのが歴史研究の正しい態度であると考える。」）
しかし、この後代史料を使って歴史研究が行われているのは、同時代史料が（他に）ないからである。
ｐ．１４
問題は史料性の評価にある。……、日本書紀や後代史料の「信頼限界」の問題である。
＜「一代要記」・「本朝皇胤紹運録」・「扶桑略記」・「愚管抄」・「神皇正統記」・「皇代記」・「皇年代略記」・「釈日本記」・「水鏡」・「仁寿鏡」（※それぞれ手本）＞
ｐ．１５
『日本史年表』・『日本古代人名事典（４）』→ 天武天皇六五歳説
ｐ．１７
○天智崩年五八歳説と天武崩年七三歳説
ｐ．１８
神皇正統記・天智崩年五八歳
一代要記・天智崩年五三歳
水鏡・天智崩年五二歳
日本書紀・天智崩年四六歳 → 天智は天武の弟になってしまう。
ｐ．２０
(・小林恵子「北畠親房が、従来の天武六五歳説を知らないとは考えられない。では、何故、天武の年齢を変更して、あえて同年にしたのだろうか。天武が年長という伝承が隠されていたからではないだろうか。」
『大百科事典（？）』は天武天皇と、後亀山天皇の生年を記さない。
ｐ．２１
……、天武天皇の出自に謎があることを暗示している。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・要は『「日本書紀」は、後世に何を伝えたいのか』このことが一番大事なことだろうと考える。
天智と天武がいて、どんな「役割・仕事」をしたのだろうか…。などと考えるのですね。
しかし、この書で、古代史学者のさまざまな見解を知ることが出来るので、メモしているのです。
つづく
天寿国の末裔・上代史ノート 「天武天皇論」２．
ｐ．２１
○天武天皇と東漢氏
＜問題提起＞
……、中大兄・大海人皇子の母の、宝（財）皇女（=皇極・斉明天皇＜重祚）は、田村皇子（欽明天皇）と結婚する前に、用命天皇の孫・高向王と結婚し、漢（あや）皇子を産んでいる。
漢皇子は斉明記のトップに斉明天皇の子と記されているだけで、それ以外は全く登場してこないが、天武が天智の兄なら、漢皇子しかいないから、私は、漢皇子は大海人皇子の「別名」であったのを「別人」に換えたのではないだろうか……。
ｐ．２２
＜意見＞
（白崎昭一郎「漢皇子を天武の別名とすれば、天武と漢氏との関係も密接であって然るべきである。しかるに天武は六七七年に、漢氏を激しく叱責する詔を発している。かくも嫌悪感に満ちた招を、自分と親近感系ある氏族に与えるであろうか。天武は元来、漢氏とは無関係だったのだろう。」
＜著者反論＞
第一
・大海人、吉野出奔時の舎人、書直智徳
・高市皇子、付き人、民直大火・大蔵直広隅・坂上直国麻呂
・鈴鹿の関司への使い、路直益人
・古京将軍、大伴吹負の部下、坂上直熊毛「…謀りて、一二の漢直にかたり…」
・漢氏「壬申乱・功臣」坂上直老・倉墻直麻呂・民直小鮪・谷直根麻呂・長尾直墨・蚊屋忌寸木間・書直成覚
……このように多くの人物が大海人皇子側についているのは、……。東漢氏への詔だけを取り上げて、天武天皇は東漢とまったく関係が無いとするのは受け入れがたい。
第二
・「漢氏を激しく叱責する詔」を出すのは異様・異例。
ｐ．２３
第三
・親近氏族・特別な関係だから「発せた」詔。≪トップダウン方式か?!≫
第四
・国際関係との関係から見た見解 ≪百済派・新羅派・高句麗派・大唐派などか?!≫
なおこの問題（天武を漢皇子と見た場合の東漢氏との親近関係）についての補足。
ｐ．２４
一、……。舎人や従者は大海人皇子親近関係にある氏族の師弟で、信頼のできる人物が選ばれる。だから大海人皇子の別名を漢皇子と見なければ、舎人や従者に選ばれている理由の説明がつけにくい。
二、舎人や従者がいるからといって親近関係を証するとはいえない。……、主体性のない皇子ではないから、親近関係を抜きには考えられない。
三、……、特殊な状況の中での舎人・従者であるから、深い親近関係なしには東漢氏の採用は考えられない。
特別な親近関係があったからこそ逆境の皇子の側近として≪吉野≫隠遁地まで付いていったと考えられる。
ｐ．２５
四、……、秘かに挙兵を考えていたのだから、信頼の出来る氏族の師弟から選んだと推測できる。……、一番多いのが東漢氏系である…。
五、高市皇子の従者七人の内、三人が東漢氏系である…。……皇子十八、九歳である。後見人である…。
六、日本書紀の記載従者筆頭、民直大火…。
ｐ．２６
以上六つの具体例から見ても、大海人皇子の別名を漢皇子と見れば、漢氏との親近・信頼関係の謎は解けるのである。
このような東漢氏と天武天皇の関係があったから、天武六年のような詔を出していながら、同じ渡来系氏族より早く、天武十一年…、「連」の姓を贈って優遇している。
六年の詔で抑えたり、十一年の詔で上げたり、東漢氏にのみ天武天皇は特別な扱い方をしているのは、天武天皇とこの氏族との微妙な関係を示している。
≪詔は≫特殊な関係を利用してのさばるな、という警告なのであって、……逆に、特別な関係を証するものである。
つづく
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・…なるほど。トップダウン方式で、「幹部の長に釘を刺す」しておく方法ですね。
確かに、何も知らず書紀を読んでいると「あれ」には驚かされますよね。≫
つづく
天寿国の末裔・上代史ノート 「天武天皇論」３．
ｐ．２８
大海人皇子と漢皇子の回路
……、皇子名は一つに限定されていないから、天武天皇が「大海人」以外に「漢」と呼ばれていたと見ても問題はない。
大海人皇子は大海人（大海・凡海）氏に養育されたから「大海人」という。……大海人宿祢アラ蒲が「壬申の事」の誄…。
(・日本古典文学大系「日本書紀」補注、「姓氏録、右京・摂津の神別に 凡海連 を載せ、綿積命の後とする。……。天武天皇の幼名大海人皇子は、この氏に由来すると思われる。」
（・横田健一・上田正昭は大海宿祢を安曇氏ではなく、尾張氏系と見る。崇神記ー尾張大海媛・意富阿麻（大海）比売ー尾張連の祖としている。『旧事本紀』（天孫本紀）ー火明命（尾張氏の始祖）の七世の孫に大海姫命…。
ｐ．２９
壬申の乱における尾張氏の協力は、「尾張の大海」である「天武帝の乳母・大海氏」の媒介によるものと推測する。
安曇氏系とすれば、壬申の乱の後に、安曇氏系が関わっていて良い。しかし、その形跡がない。
天武天皇の后・尼子娘は宗像君徳善の娘（高市皇子の母）だが、宗像氏の祖も「大海命」という（『筑前国風土記』逸文）から、海人系氏族に共通する呼称から「大海」と、考えられる。
大海人皇子に関わる大海氏が安曇氏系ではなく尾張氏であることは、大海人皇子が漢皇子の別名と見る仮説の裏付けにもなる。……（略）
ｐ．２９〜３０
（・新井喜久夫 阪井郡海部郷に拠点を持っていた尾張氏が、阪井郡高向郷にいた継体天皇との「人的交渉により尾張氏の女を継体が娶ったものと思われる」
漢皇子の父・高向王に関わる「高向」は、大海の尾張氏と結びついている。
ｐ．３１
……、つまり、漢皇子の父・高向王の「高向」と、大海人皇子の「大海」は、回路を持っている。
≪私・後、論証・史料≫
ｐ．３４
○高向臣国押について
高向臣は……、曽我石河宿祢を祖とするが、……、曽我本宗家に密着していない。
≪私・入鹿、法隆寺・山背王襲撃の話≫
「……『僕は天皇の宮を守りて、敢へて外に出でじ」といふ。入鹿すなわち自ら往かむとす。」とあり、高向国押は、入鹿の命令を断っている。
ｐ．３５
皇極四年六月、入鹿が殺されたとき、……。この「皆」の中に、高向国押は、入っていない。
≪私・曽我蝦夷、討伐の話≫
「……、大臣蝦夷も今日明日中に殺されるであろう。……ことごとく罰せられるのは空しい。」……、軍陣から去っている。それを見た漢直らも、国押に従って散り逃げたので、曽我蝦夷は邸宅に火を放ち……。
高向国押は孝徳朝では「刑部尚書」という重職に就き、位も「大花上（正四位上相当）」なのは、……。
ｐ．３６
★ その活躍を『日本書紀』の編者が藤原鎌足にすりかえたと推測している。……。
そのことは、改心政権の国博士高向漢人玄理と大海人皇子の線からも裏付けられる。
乙巳の変で曽我蝦夷の邸宅に武装してとじこもった漢直の眷属が、すべて高向臣国押の言に従ったとあるから、大海人皇子の従者に東漢氏系の子弟が入っているのも、高向臣との関係と見られる。
なお、国押の子、麻呂は、天武十三年には遣新羅大使に任ぜられ、天武朝にも重用されている……。
(＝⌒▽⌒＝)
≪ …なるほどな。このあたりは説得力があるな。「漢皇子＝大海人皇子」この説は面白い。
つづく
天寿国の末裔・上代史ノート 「天武天皇論」４．
ｐ．３６
○「真人」賜姓の謎
「高向王の父は誰か、の推論・略」
ｐ．４１
○当麻真人(公)について
「当麻真人智徳・略」
ｐ．４３
壬申の乱…、吉備国守当麻公広嶋は大海人皇子につく…近江朝廷の刺客…、惨殺……。
当麻真人広麻呂≪の昇叙≫ 直大参から直大壱(正四位上)
天武天皇は……、≪伊勢≫大来皇女を斎王として派遣している。このような伊勢神宮への関心も、三七年間も伊勢神宮の斎王を出していた当麻公（真人）一族との関係によるのではないだろうか。
大宝二年（７０２）に当麻真人橘、慶雲二年（７０５）当麻真人盾が、斎宮頭になっている。
★「八色の姓」を天武天皇が制定した狙いは「真人」をつくることであったが、……、もっとも重視されたのが当麻真人であった。（個人の資質でなく、氏族として重用されている）
……、天武天皇が天智天皇の実弟とすれば、その血統は曽我氏系とは無縁なのに、曽我氏系の中から選ばれている唯一の真人を、十三の真人の中で特に重用・信頼されているのは、天武天皇が用命天皇の孫・高向王を父とする大海人ー漢皇子であったためと考えざるを得ない。
ｐ．４５
○当麻真人智徳が、天武・持統・文武の誄人になっている理由
……、智徳は「諸王・諸臣・誄人」を率いて誄≪儀礼≫をしているのであって、単なる暗誦者ではない。
★★★（・和田萃『殯の基礎的考察』・「曽我氏の系譜のごときものであったらしく、曽我氏の始祖からの系譜を読み上げ、そこに新しく死者の名を付け加えることによって、死者の霊を慰めんとしたものであろう。これによって誄儀礼はすべて完了した。天皇・皇后の葬礼にあっても、誄儀礼の最後に、皇統譜というべき日嗣が読み上げられ、和風諡号が献呈されて、殯儀礼がすべて完了する。」
ｐ．４６
天武が天智と同じに、舒明天皇を父とすれば、母の宝（財）皇女も彦人大兄皇子が祖父なのだから、舒明のときと同じに、当然、息長公系の息長・羽田・山道真人らが、日嗣の誄をすべきである。ところが、当麻真人であることからも、天武が天智の実弟であったことは疑わしい。
ｐ．４７
では、持統・文武の殯宮の日嗣の誄人に、何故なったのだろうか。持統の母は、曽我倉山田石川麻呂の娘で、文武も母は曽我倉山田石川麻呂の娘、姪媛である。いずれも曽我氏の血統だから真人の中で唯一の曽我氏系である当麻真人が選ばれたのであろう。
以上、……、天武天皇は、用命天皇の孫高向王の子である必然性が強い。
つづく
天寿国の末裔・上代史ノート 「天武天皇論」５．
ｐ．４７
○『日本書紀』は、なぜ、竹内宿祢後裔氏族系譜を落としたか
……。
ｐ．４９
竹(武)内宿祢は、許勢臣・曽我臣・平群臣・紀臣・高向臣・波多臣など、雄族の祖なのだから『古事記』のように二七氏も書かなくても、大彦命の後裔のように。雄族だけは載せるべきだろう。
『新撰姓氏録』でも、これらの氏族は、竹内宿祢をとうして、孝元天皇の子・彦太忍信命を祖としている。
それを、まったく落としているのだから、意図して落としたと言わざるを得ない。
では、なぜ、大彦命の子孫は七族もあげているのに、竹内宿祢の子孫については、まったく無視しているのか。理由は、天武を天智の実弟とする説にとって、都合が悪かったためであろう。
ｐ．５０
天智天皇の異父兄・漢皇子は、曽我稲目の娘堅塩姫を母とする用命天皇の曾孫で、父の高向王は高向漢人と関わる。
……、高向王ー漢皇子に関わる氏族は、みな竹内宿祢後裔氏族である。
だから大海人漢皇子を、大海人皇子・漢皇子に分離したため、漢皇子につながる竹内後裔氏族系譜を意図的に落として、大彦命後裔氏族系譜だけを残したのであろう。
そのことを証するのは『古事記』が、……「尾張連等が祖、……、書いている点である。
このように大海人皇子に関わる尾張氏系・大（凡）海氏とも、つながりを持っていることは「大海人」と「漢」とが無関係でないことを示している。
ｐ．５１
また和風諡号の「大倭根子」は孝元天皇や父の考霊天皇についているだけでなく、天武・持統の諡号でもあったが、この諡号を『日本書紀』は改めて「天渟中原瀛真人天皇」・「高天原広野姫天皇」にしている。
この改号の意図は『日本書紀』の孝元天皇の段で、『古事記』とも違って前述の記事を載せなかった意図と共通している。
このように『日本書紀』の孝元天皇の段で、竹内系譜を載せていないのも『日本書紀』の編纂時に、孝元天皇の諡号と同じ「大倭根子」の諡号を改めているのも、天智天皇の異父兄の天武天皇を実弟に変えたのと、同じ意図によるものであろう。
★（・角田文衛 ≪石川・紀、二氏賓号剥奪事件≫「首皇子の立太子」で、石川刀根娘は広世・広成の二皇子を生んだので、藤原不比等が妻の橘三千代と謀り、名族・石川朝臣の腹に生まれた二皇子の皇嗣資格を奪い、宮子娘の子・首皇子を皇位につけるため、二賓の地位を剥奪した。」と、推測≪指摘≫している。
ｐ．５２
石川朝臣は曽我氏が改姓した氏族であるが『新撰姓氏録』には、「孝元天皇の子、彦大忍信命の後なり」と記されている。
★ とすれば、『古事記』に載る曽我石川宿祢を『日本書紀』が無視するのは、孫である首皇子の立太子に執念を燃やしていた藤原不比等が、石川・紀の二賓の称号を剥奪を図った行為と同じ発想である。
★ 文武天皇の皇子でありながら、石川朝臣の血を引く二皇子は、臣籍に降りて、皇位継承権を失い、石川朝臣を名乗り、後に高円朝臣になっている。この結果、文武天皇の皇子は、藤原不比等の孫・首皇子のみになった。
ｐ．５３
★ ……、天武天皇が漢皇子であるなら、天武・持統の両方の血統につながる。とすれば、天武天皇の皇子でも、母が曽我氏系ではない舎人親王や、首皇子の即位に執念を燃やす藤原不比等にとって、天武天皇を曽我氏系としない方がいい。だから漢皇子を切って、天智天皇の実弟にしたのであろう。
このように「大倭（日本）根子」の諡号を持つ孝元天皇の段に『古事記』が載せる曽我石川宿祢後裔氏族系譜を『日本書紀』が載せていないことと、石川氏系の文武天皇皇子の皇位継承権剥奪と、天武天皇から漢皇子を切り離した『日本書紀』の記事は、同じ発想である。
つづく
天寿国の末裔・上代史ノート 「天武天皇論」６．
ｐ．５３
○大海人皇子の別名の漢皇子が別人になった時期
ｐ．５４
……。慶雲四年の詔の段階では、竹内宿祢は石川朝臣や紀朝臣など、文武天皇に后を出している氏族や、高向朝臣などのシンボルであった。
このシンボルが、藤原朝臣のシンボル藤原鎌足に吸収されていく過程が、漢皇子が天武天皇から切り離されていく過程と重なる。
吸収される過程とは、石川刀根娘の生んだ文武天皇が、皇位継承権を剥奪されるような状況の中で、竹内宿祢が★内臣鎌足と似たイメージに変容されていく過程を言うのである。
ｐ．５６
≪石川≫宮麻呂は和銅六年（７１３)に従三位右大弁で亡くなっている。娘と孫の不幸な事件の一ヶ月後なのは、この事件のショックによるものであろうが、≪以後≫宮麻呂の子孫の活躍がまったく見られないことも、石川刀根娘の父が、宮麻呂と推測できる。
……、曽我姓から最初に石川姓を名乗ったのは、宮麻呂であろう。なお、安丸・宮麻呂の姉の媼子は「淡海公室」とあるが…不比等…。媼子は武智麻呂・房前を生んでまもなく亡くなっている。
（・佐伯有清 「石川氏ー河内国石川・錦部の両郡、錦部郡に高向…」
ｐ．５７
（・佐伯有清＋加藤謙吉 「錦部郡高向ー高向臣・高向漢人・高向村主らの本拠地」
ｐ．５７
高向国押の子で天武朝で活躍した高向朝臣麻呂は、慶雲二年（７０５)中納言となり、和銅元年(７０８)従三位中納言兼攝津大夫で没しており、当麻真人智徳も和銅四年(７１１)従四位上で亡くなっている。
★ このような曽我氏系の天武・持統の側近たちの死亡によって、和銅六年(７１３)の石川氏系の皇子達の皇籍剥奪は、可能だったのだろう。
和銅七年(７１４)五月には、壬申の功臣で、不比等の権勢確立に抗しえた大納言大伴安麻呂も没し、六月には首王子が数え年十四歳で元服立太子した。
和銅八年(７１５)七月には、「知太政官事」の曽我赤兄の娘を母とする天武天皇の王子・穂積親王が薨じ、曽我倉山田石川麻呂の娘を母とする草壁王子の妃であった元明天皇も同年九月二日、娘の氷高内親王(元正天皇)に譲位している。
この譲位の原因に、穂積親王の死去がもたらした女帝の疲労感とともに、不人の圧力を(・坂本太郎は )推測している。
ｐ．５８
★ ……、元明天皇・穂積親王・石川宮麻呂は又従兄弟で、いずれも曾我腹だから、元明天皇は孫の首皇子を皇位につけることには賛成でも、その犠牲になった同じ曽我腹の孫たちに心を痛めて、穂積親王の死をキッカケに、譲位したのだろう。
★ 一方、不比等は元正朝になって、いよいよ独裁的地位を確保した。★
★★ 穂積親王が薨じ、養老四年（７２０)八月三日、不比等が亡くなるまでは「知太政官事」につくものはなく、……舎人親王……。この……時期に、★『日本書紀』の総仕上げ★が行われ、不比等が死ぬ……養老四年五月二十一に撰上されている。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・たぶん、「恨みを買って、殺された」と見ている。「良く書かれるか、悪く書かれるか」このことで「一族の盛衰が決定される」こととなる。
悪く書かれたなら「長い間、冷や飯食い」の状況となるのは必至。よって「暗殺」に近い形で「意趣返し」されたのだ。≫
亡くなる二ヶ月ほど前に、（元明）太上天皇は、諡を「其国其郡朝庭馭宇天皇」にし、後世に伝えるよう遺言している。
ｐ．５９
……、不比等らが改号した天武・持統・文武の諡号に賛成していないことと、持統・文武のように「大倭根子」「倭根子」の諡号の送られた後、勝手に改号されてはかなわないと思ったからであろう。
その遺言は守られなかったことも（日本書紀は）記している。……、元明天皇記に「日本根子天津御世豊国成姫天皇」と記しているからである。
ｐ．６０
この「倭（日本）根子」は、平安時代になって、桓武・平城・渟和天皇にもつけられているのは、天皇を意味する一般的呼称だからである。
革命によって新帝国を樹立した、前漢の初代皇帝高祖に、天武天皇は自らを擬していたことは通説だが「瀛（うみ・エイ・ヨウ）真人」は、後漢の光武帝の「白水真人」の意味でつけられた（「白水」は「瀛」の意味）と考えられる。
ｐ．６１
★ 前漢の高祖に比定していた天武天皇に、後漢の光武帝に比定した諡号を『日本書紀』の最終編纂記につけているのは☆☆天武天皇に相応しい「天命開別天皇」☆☆という和風諡号を天智天皇につけているからである。
天智天皇（天命開別天皇）−−東宮大皇弟（天渟中原瀛真人天皇）−−文武天皇（天之真宗豊祖父天皇）
という発想が、『日本書紀』の編纂記につけられた「大倭根子」「倭根子」のつかない、天智・天武・文武の和風諡号である。
この「天命開別天皇−−東宮大皇弟」の発想が、天智天皇の異父兄、大海人漢皇子から、大海人王子を切り離し、天智天皇の実弟、つまり「東宮大皇弟」にしたのであろう。
(＝⌒▽⌒＝)
☆≪私・「大海人皇子＝漢皇子、この辺りは推理小説を読むより面白い。また、日本文化の進化論と考えてもよいだろうね。
藤原不比等は日本書紀において「言葉の意味・力を、『読み替え・書き換え』により発揮した」と見て良いし、未来を規定しようとした。
およそ「文献史学」は、この暗号を読み解かなければ真相・実相は見えてこない。やれやれ…… (w＿−； ≫
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コメント(170)
ｐ．３１２
★ そのような詔によるだけの正実に対して、その正実性と独自性の主張が、異例な「勅語」や「誦習」の表記となったのである。つまり序文筆者は現存『古事記』の独自性と正実性を主張するために「勅語の誦習」を力説したと考えられる。そう考えることによって、同じく異例な「朕聞」の用法も、生きてくるのである。
「朕聞」に多品治の存在を考えたが、博戯に招かれた仲間の内には天武十年の詔による記定事業の筆録者の中臣（藤原）大嶋や、天武十一年に「新字一部四十四巻」を完成した境部石積がいる。
「新字」の事業も天武十年の「国史」の記定事業と無関係ではあるまい。大嶋や石積の仕事は品治もよく知っていたであろう。
★★★ 大嶋がやった「帝紀・旧辞の筆録」。石積がやった漢字の「新字」（国字）化だけでは、古い時代の「朴な言意」を記録できるものではない。
★★ 安易な記録は「正実に違い虚偽を加える」だけであると、多品治が天武天皇に奏上したことを、序文筆者は「朕聞」で表現しようとしたのではなかろうか。
★★★ 古い時代の「朴な言意」に、安易に異国の字をあてはめた記録を国史としてまとめても、それは本来の「朴な言意」と違ったものになってしまう恐れがあることを「聞」かされた「朕」は、帝紀・旧辞の「削㋹偽定㋹実」を稗田阿礼という姓名で暗示されている★猿女君に「勅語」して「誦習」による「フルコトブミ」を作らせた。それが「原・古事記」では、ないだろうか。
ｐ．３１３
現存『古事記』の成立にとって天武天皇の存在は無視できない。そのことを示すため序文筆者は異例の「朕聞」・「勅語」・「誦習」の表記を用いたと考えられる。
『付記』
「原・古事記」は中臣（藤原）大嶋らの筆録による天武十年の国史の記定事業。境部石積による天武十一年の「新字一部四十四巻」の完成以後に着手されたと私は推測するが、この「原・古事記」を『日本書紀』は参考にしていないから、原本が筆者されて流布したとは考えられない。理由は成書化されても、未整理であったためであろう。
多人長が、その「原・古事記」もとに「現存・古事記」を編纂し、序文を付けたとすれば、未整理の「原・古事記」が多（太）氏の家にあったと考えられる。何故あったかと言えば多品治の存在を抜きには考えられない。
・）神田秀夫 太安万侶にかわって、柿本人麻呂。
・）筏勲 ≪太安万侶にかわって≫、山上憶良。
・）梅原猛 ≪太安万侶にかわって≫、藤原不比等。
を、推定するが、人麻呂や憶良や不比等とすれば、なぜ、撰録者に太安万侶が登場するかの説明がつかない。
ｐ．３１４
「原・古事記」から「現存・古事記」へとする過程には天武天皇=多品治の存在があり、そのことが「現存・古事記」序文の太安万侶の登場となり、多人長の『弘仁私記』序に於いて、初めて「現存・古事記」の存在が公表される結果となったのであろう。
（『弘仁私記』序では、天武天皇の稗田阿礼への「勅語」を「勅」としいることからして、『弘仁私記』序は「現存・古事記」を宣伝するため、多人長が書いた『弘仁私記』に、後から多氏に関わる人物が加えた序だろうが、いずれにしても「現存・古事記」の成立は多（太）氏をぬきには考えられない。）
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・古事記は天皇のための「私本・聖書・国書」なのだろうと考えている。「神代の話・国の成り立ち・ご先祖様の苦労」を「後継者に正確に伝えたい」意志があったのだろうね。
しかし他にも「古史・古伝」などもあったりする。そこが面倒で「奈良時代」としたのだけれど、ここもやはり、ややこしいな。でも、この時代に惹かれるんだよね。
兎に角、「日本書紀」「古事記」の成り立ちを諸先生の意見と共に概略を得た気がする。まだまだ原典を読み込む必要があり、学際的な「問い立て」が必要だと言うことだね。 ではでは ≫
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１１３．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
５．天武天皇と『古事記』
ー 原『古事記』・原本『古事記』と天武天皇 −
ｐ．３１６
◎ 『続日本紀』に『古事記』の記載が無いことについて ◎
・）沼田順義 『級長戸風』 ・）中沢見明 『古事記論』 で、古事記を「偽書」とする……。
理由の一つに、、和銅四年九月十八日朝臣・太安万侶に『古事記』の撰録を勅したこと、安万侶が和銅五年正月二十八日『古事記』三巻を献上したことが、序に明記されていながら『続日本紀』には全く記載されていないことを上げている。
★ しかし、『続日本紀』に記載されていないから、撰録の事実が無かったとは言えない。
・）坂本太郎 『資料としての六国史』−『みな官府の信頼すべき資料をもとにして編修せられたものであるから、資料的価値は高い』と、考えられているが『それにも限界がある』として、重要事項でも記載されていない実例をあげ『古事記の撰述のことや、養老律令のことが続日本紀に見えていないのは、その著しい例であって、国史に記事が無いからとて、決して事実の存在を疑わねばならぬものではない。』
ｐ．３１７
そのとおりであろう。
★ 『続日本紀』に『古事記』撰上の記載が無いからといって、その事実がなかったとする理由にはならない。
★ また、養老律令の撰上も記載されていないから『古事記』の秘密文書説、機密文書説も成り立たない。
★★ だから、文献に載っているからといって、その文献が正史であったとしても、全て事実通りだとは言えないのである。
★ だから『古事記』序文の記事を全て事実通りだと断定してしまうのは、いかがなものであろうか。
……、『古事記』偽書説の理由としてあげる『続日本紀』の不記載例に対する反論として、正史の限界と編集者の主観性を上げるなら、同じように『古事記』序文の記事の限界と主観性も、考慮すべきではないか。
ｐ．３１８
『続日本紀』に載っていないことをもって『古事記』は和銅年間に成立したものではないとする偽書説への反論として、『続日本紀』の資料としての限界性・主観性をあげるなら、同じように『古事記』序文の資料としての限界性・主観性も考慮すべきだと、想うのである。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・とにかく「大昔」のことだし、「国書」としても、「時の権力者」の意向も反映（追記）粉飾（書き換え・削除）できるだろうし……。
「これが絶対」は、無いだろうね。要は「どう読み解き、未来に生かすか」ということが大事だよね。まだ、この章は続くからね。 ではでは ≫
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１１４．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
５．天武天皇と『古事記』
ー 原『古事記』・原本『古事記』と天武天皇 −
ｐ．３１８
◎ 原『古事記』について ◎
資料的価値の高い六国史でさえ、編者の主観的意図による取捨選択があるとすれば、『古事記』序文に、六国史以上の客観性を認めることは無理である。
★ 『古事記』序文筆者の編纂意図こそ、序文の文面より汲み取るべきであろう。その意味からしても序文は重要である。
「序」によれば、天武天皇が舎人・稗田阿礼に勅語して、帝皇日継及先代旧辞を誦習せしめたが「運（とき）移り、世異（かわ）りて、未だ其の事を行ひたまわざりき」とある。
ｐ．３１９
・）本居宣長 は、"其事"について『古事記伝』で『天皇崩坐て御世かはりにければ、撰録の事果たし行はれずして、討覈（とうかく）ありし帝紀旧辞は、、いたずらに阿礼が口にのこれり」と書き、"其事"を撰録の事とするが
・）倉野憲司 は、討覈と撰録の事と解する。
"其事"は、元明天皇和銅四年九月十八日「臣安万侶に詔りして」行われたとある。
★ 天武天皇のときは稗田阿礼の誦習だけだが、誦習だけでは"其事"は為されたことにはならない。
とすれば、元明天皇が阿礼の誦習の撰録を太安万侶に命じたように、なぜ、天武天皇は安万侶と同じ役目の人物を阿礼と共に選ばなかったのだろうか。★稗田阿礼のみでは、最初から"其事"は不可能である。
まず、阿礼に誦習させて、次に撰録者を決めるつもりが、天皇が崩じたため実行されなかったので、、元明天皇の時安万侶という撰録者を決めて、漸く『古事記』が完成したとも解釈できるが、★「誦習と撰録」が対でないと"其事"は不可能である。
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
５．天武天皇と『古事記』
ー 原『古事記』・原本『古事記』と天武天皇 −
ｐ．３１６
◎ 『続日本紀』に『古事記』の記載が無いことについて ◎
・）沼田順義 『級長戸風』 ・）中沢見明 『古事記論』 で、古事記を「偽書」とする……。
理由の一つに、、和銅四年九月十八日朝臣・太安万侶に『古事記』の撰録を勅したこと、安万侶が和銅五年正月二十八日『古事記』三巻を献上したことが、序に明記されていながら『続日本紀』には全く記載されていないことを上げている。
★ しかし、『続日本紀』に記載されていないから、撰録の事実が無かったとは言えない。
・）坂本太郎 『資料としての六国史』−『みな官府の信頼すべき資料をもとにして編修せられたものであるから、資料的価値は高い』と、考えられているが『それにも限界がある』として、重要事項でも記載されていない実例をあげ『古事記の撰述のことや、養老律令のことが続日本紀に見えていないのは、その著しい例であって、国史に記事が無いからとて、決して事実の存在を疑わねばならぬものではない。』
ｐ．３１７
そのとおりであろう。
★ 『続日本紀』に『古事記』撰上の記載が無いからといって、その事実がなかったとする理由にはならない。
★ また、養老律令の撰上も記載されていないから『古事記』の秘密文書説、機密文書説も成り立たない。
★★ だから、文献に載っているからといって、その文献が正史であったとしても、全て事実通りだとは言えないのである。
★ だから『古事記』序文の記事を全て事実通りだと断定してしまうのは、いかがなものであろうか。
……、『古事記』偽書説の理由としてあげる『続日本紀』の不記載例に対する反論として、正史の限界と編集者の主観性を上げるなら、同じように『古事記』序文の記事の限界と主観性も、考慮すべきではないか。
ｐ．３１８
『続日本紀』に載っていないことをもって『古事記』は和銅年間に成立したものではないとする偽書説への反論として、『続日本紀』の資料としての限界性・主観性をあげるなら、同じように『古事記』序文の資料としての限界性・主観性も考慮すべきだと、想うのである。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・とにかく「大昔」のことだし、「国書」としても、「時の権力者」の意向も反映（追記）粉飾（書き換え・削除）できるだろうし……。
「これが絶対」は、無いだろうね。要は「どう読み解き、未来に生かすか」ということが大事だよね。まだ、この章は続くからね。 ではでは ≫
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１１４．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
５．天武天皇と『古事記』
ー 原『古事記』・原本『古事記』と天武天皇 −
ｐ．３１８
◎ 原『古事記』について ◎
資料的価値の高い六国史でさえ、編者の主観的意図による取捨選択があるとすれば、『古事記』序文に、六国史以上の客観性を認めることは無理である。
★ 『古事記』序文筆者の編纂意図こそ、序文の文面より汲み取るべきであろう。その意味からしても序文は重要である。
「序」によれば、天武天皇が舎人・稗田阿礼に勅語して、帝皇日継及先代旧辞を誦習せしめたが「運（とき）移り、世異（かわ）りて、未だ其の事を行ひたまわざりき」とある。
ｐ．３１９
・）本居宣長 は、"其事"について『古事記伝』で『天皇崩坐て御世かはりにければ、撰録の事果たし行はれずして、討覈（とうかく）ありし帝紀旧辞は、、いたずらに阿礼が口にのこれり」と書き、"其事"を撰録の事とするが
・）倉野憲司 は、討覈と撰録の事と解する。
"其事"は、元明天皇和銅四年九月十八日「臣安万侶に詔りして」行われたとある。
★ 天武天皇のときは稗田阿礼の誦習だけだが、誦習だけでは"其事"は為されたことにはならない。
とすれば、元明天皇が阿礼の誦習の撰録を太安万侶に命じたように、なぜ、天武天皇は安万侶と同じ役目の人物を阿礼と共に選ばなかったのだろうか。★稗田阿礼のみでは、最初から"其事"は不可能である。
まず、阿礼に誦習させて、次に撰録者を決めるつもりが、天皇が崩じたため実行されなかったので、、元明天皇の時安万侶という撰録者を決めて、漸く『古事記』が完成したとも解釈できるが、★「誦習と撰録」が対でないと"其事"は不可能である。
★ 「撰録」が目的なのだから誦習者と共に撰録者を決めなければおかしい。
そこで阿礼が誦習と撰録を命じられたが、、撰録の段階で天武天皇が崩じたので誦習のみで終わり、元明天皇のときには阿礼が高齢すぎたため、撰録は安万侶があたることになったとする推論や、天武天皇自身に討覈と撰録の意志があったので、天武天皇の時には誦習する人物だけでよかったが、元明天皇の時には太安万侶を必要としたという考え方もあるが、これらの推論は深読み過ぎて無理がある。
ｐ．３２０
天武天皇のときには、稗田阿礼の誦習のみで終わったとする序文の書き方そのものに、…、序文筆者が暗示しようとする『古事記』成立の経過をみる。……。このような書き方は……、原『古事記』が存在していたことを示すものと…、推測する。
★ 原『古事記』の存在については先学達の諸見解がある。
� 仝渋検惴纏�記』の資料になった文献を、漠然と、原『古事記』と称する意見。
�◆仝渋検惴纏�記』以前にあったとされる、やや内容や表記が現存『古事記』と違う『古事記』（複数）を原『古事記』とする意見。
�� 内容と地の文の表記は違わないが、現存『古事記』のように一字一音の仮名に書き換えられていない、単数の『古事記』（『万葉集』引用の『古事記』）を、原『古事記』とする意見。
★ 原『古事記』の定義は、当然、現存『古事記』以前に成立の『古事記』をいうが、現存『古事記』の成立時期に見解の差が有るので、ある論者が異本『古事記』とする『古事記』も、ある論者にとっては原『古事記』となる。
≪筆者≫…、は『古事記成立考』では『万葉集』引用の『古事記』★『琴歌譜』記載の「一（ある）、古事記」や『多氏・古事記』などを含めて、漠然と複数の原『古事記』を考えていたが、やはり、★厳密には序文がから理解する限り、★単数である。≪一つである。≫
ｐ．３２１
しかし『古事記』は固有名詞ではなく、古い記録を『古事記（ふることぶみ））』と言ったのだから、複数の『古事記』≪原資料≫が存在していたであろう。
★★ その中で、天武天皇の命で誦習された『古事記』のみが原『古事記』なのである。そのことは、「序」に書かれている撰録作業の記述からも、推測できる。
★★ 例えば、『亦姓に於きて日下を玖沙訶と謂ひ、名に於きて帯の字を多羅施斯と謂ふ、此くの如き類は、本の隋に改めず」と、序にある。★すでに「日下」「帯」と書いてある「本」があったのである。
これらは「隋本不改」とあるが、この「本」とは★「稗田阿礼所㋹誦之勅語旧辞」のことであろう。つまり、阿礼の誦むところの勅語旧辞が、原『古事記』であり、その原『古事記』にあった「日下」「帯」の如き類は、表記をそのままにしてあらためなかったという意味である。
・）西郷信綱 は、『古事記注釈』の「日下」「帯」の条で、『書紀はこれを"草香""足"に改めている。「隋㋹本不㋹改」は、安万侶の手元に、たんに旧記の類だけでなく、すでに形の相当整った古事記の台本ともいうべきものの存したことを明示する。さもなければ詔を承けて四か月そこそこでは、とても仕上げは出来なかったはずだ。』と、述べている。
★ 原『古事記』があったからこそ、わずか四か月で撰録が可能であったのだろう。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・わてなんか、内容把握だけで難儀しとるのに「学者さん」たちの論争なんて、拝聴するしかない……。もちっと、見てみよう。 ではでは ≫
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１１５．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
５．天武天皇と『古事記』
ー 原『古事記』・原本『古事記』と天武天皇 −
ｐ．３２２
◎ 私的な性格の、原『古事記』 ◎
ところで、序文の天武天皇の詔からすれば『古事記』も『日本書紀』のような公式の修史事業のように読めるが、額面通りには受け取れない。
「斯乃邦家之経緯、王家之鴻基焉」という編纂の基本方針も、序文筆者が参考にしている★『進五経正義表』の「斯乃邦家之基、王家之本者也」から借りてきたものであって、序文特有の形式的用語に過ぎない。
・）山田孝雄 舎人への勅語について『大宝令の制度以後になると、有爵者（五位上）にのみ許される。……舎人などの身分の卑しい人に勅したまふことは、尋常一様のことでない。』と書く。≪天武天皇そのものが尋常一様の人ではない。≫
・）西郷信綱 も、書記の撰修にくらべて『古事記は、少なくとも官僚的な意味での国家事業ではなかった。』と、書いている。
阿礼への勅語が異様であり「国家の事業」とはとれないのに、前文では「国家の事業」としての重さを持った天皇の詔を載せている。
そこで阿礼が誦習と撰録を命じられたが、、撰録の段階で天武天皇が崩じたので誦習のみで終わり、元明天皇のときには阿礼が高齢すぎたため、撰録は安万侶があたることになったとする推論や、天武天皇自身に討覈と撰録の意志があったので、天武天皇の時には誦習する人物だけでよかったが、元明天皇の時には太安万侶を必要としたという考え方もあるが、これらの推論は深読み過ぎて無理がある。
ｐ．３２０
天武天皇のときには、稗田阿礼の誦習のみで終わったとする序文の書き方そのものに、…、序文筆者が暗示しようとする『古事記』成立の経過をみる。……。このような書き方は……、原『古事記』が存在していたことを示すものと…、推測する。
★ 原『古事記』の存在については先学達の諸見解がある。
� 仝渋検惴纏�記』の資料になった文献を、漠然と、原『古事記』と称する意見。
�◆仝渋検惴纏�記』以前にあったとされる、やや内容や表記が現存『古事記』と違う『古事記』（複数）を原『古事記』とする意見。
�� 内容と地の文の表記は違わないが、現存『古事記』のように一字一音の仮名に書き換えられていない、単数の『古事記』（『万葉集』引用の『古事記』）を、原『古事記』とする意見。
★ 原『古事記』の定義は、当然、現存『古事記』以前に成立の『古事記』をいうが、現存『古事記』の成立時期に見解の差が有るので、ある論者が異本『古事記』とする『古事記』も、ある論者にとっては原『古事記』となる。
≪筆者≫…、は『古事記成立考』では『万葉集』引用の『古事記』★『琴歌譜』記載の「一（ある）、古事記」や『多氏・古事記』などを含めて、漠然と複数の原『古事記』を考えていたが、やはり、★厳密には序文がから理解する限り、★単数である。≪一つである。≫
ｐ．３２１
しかし『古事記』は固有名詞ではなく、古い記録を『古事記（ふることぶみ））』と言ったのだから、複数の『古事記』≪原資料≫が存在していたであろう。
★★ その中で、天武天皇の命で誦習された『古事記』のみが原『古事記』なのである。そのことは、「序」に書かれている撰録作業の記述からも、推測できる。
★★ 例えば、『亦姓に於きて日下を玖沙訶と謂ひ、名に於きて帯の字を多羅施斯と謂ふ、此くの如き類は、本の隋に改めず」と、序にある。★すでに「日下」「帯」と書いてある「本」があったのである。
これらは「隋本不改」とあるが、この「本」とは★「稗田阿礼所㋹誦之勅語旧辞」のことであろう。つまり、阿礼の誦むところの勅語旧辞が、原『古事記』であり、その原『古事記』にあった「日下」「帯」の如き類は、表記をそのままにしてあらためなかったという意味である。
・）西郷信綱 は、『古事記注釈』の「日下」「帯」の条で、『書紀はこれを"草香""足"に改めている。「隋㋹本不㋹改」は、安万侶の手元に、たんに旧記の類だけでなく、すでに形の相当整った古事記の台本ともいうべきものの存したことを明示する。さもなければ詔を承けて四か月そこそこでは、とても仕上げは出来なかったはずだ。』と、述べている。
★ 原『古事記』があったからこそ、わずか四か月で撰録が可能であったのだろう。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・わてなんか、内容把握だけで難儀しとるのに「学者さん」たちの論争なんて、拝聴するしかない……。もちっと、見てみよう。 ではでは ≫
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１１５．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
５．天武天皇と『古事記』
ー 原『古事記』・原本『古事記』と天武天皇 −
ｐ．３２２
◎ 私的な性格の、原『古事記』 ◎
ところで、序文の天武天皇の詔からすれば『古事記』も『日本書紀』のような公式の修史事業のように読めるが、額面通りには受け取れない。
「斯乃邦家之経緯、王家之鴻基焉」という編纂の基本方針も、序文筆者が参考にしている★『進五経正義表』の「斯乃邦家之基、王家之本者也」から借りてきたものであって、序文特有の形式的用語に過ぎない。
・）山田孝雄 舎人への勅語について『大宝令の制度以後になると、有爵者（五位上）にのみ許される。……舎人などの身分の卑しい人に勅したまふことは、尋常一様のことでない。』と書く。≪天武天皇そのものが尋常一様の人ではない。≫
・）西郷信綱 も、書記の撰修にくらべて『古事記は、少なくとも官僚的な意味での国家事業ではなかった。』と、書いている。
阿礼への勅語が異様であり「国家の事業」とはとれないのに、前文では「国家の事業」としての重さを持った天皇の詔を載せている。
阿礼への勅語が異様であり「国家の事業」とはとれないのに、前文では「国家の事業」としての重さを持った天皇の詔を載せている。
ｐ．３２３
これを『古事記』権威づけのための序文筆者の作文とするなら、「国家の事業」としてもっと高位の人物に勅語したと書くのが合理的でありそのように作文できたはずである。≪阿礼の記憶能力も、たぶん尋常一様の人ではない。≫
★★ ところで、「国家の事業」と受け取れる天武天皇の詔を受けて登場する人物が舎人・稗田阿礼であることは、「官僚的な意味での国家事業ではなかった」と推察する十分な根拠となる。
……「官僚的」を「公的」という言葉に替えれば、原『古事記』は「私的」な勅語による書といえる。
★★ …、稗田阿礼という姓名は、後宮に奉仕する猿女君系の稗田という姓と、後宮の産育、祭祀儀礼に関わる阿礼という言葉を名にした、序文によってつくられた人物と推測するので「舎人稗田阿礼の誦習」という序の書き方は、★天武朝の後宮で原『古事記』が作られた★ことを暗示していると推測する。
本来『古事記』は固有名詞ではない。それぞれの氏族などの「古事記（ふることぶみ）」をいう。つまり、私的な歴史の書である。しかし、後宮で誦習された原『古事記』は私的なものであっても、他の「古事記（ふることぶみ）」と違って、天武天皇の勅語による。だから、同じ旧辞（ふること）であっても、勅語による旧辞であることを序文筆者は力説している。
元明天皇の詔に「稗田阿礼所㋹誦之勅語旧辞」とある「勅語旧辞」は、「勅��語阿礼�［�㋹誦�⊇�帝皇日継及先代旧辞� 廚鮠蔑�したものだが、
・）山田孝雄 『帝紀よりも旧辞に重点のあるため。』
・）太田善麿 『旧辞というものの、それ相応の重要視、もしくは旧辞というものが素材内容的に枢要なる要素を欠いているものではないという実感。』からの省略と見る。
・）太田晶二郎 『"勅語旧辞"は文字通り旧辞のみと為し、古事記は旧辞に本づいて成ったと見るのである。……"古事記"という名が"旧辞"の方を承けていることも、一般に認められている。』
ただ、この旧辞（原古事記）は、天武天皇の勅語によって稗田阿礼の誦習した旧辞である。
★★★ つまり、天武天皇の命で私的にまとめられたのが、原『古事記』であることを示している。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・やはり天武天皇は賢明な人だね。よっぽど後裔の事を心配して「歴史」を書き残そうとしたんだろうね。たぶん、権力を巡っての「骨肉の争い」を避けたかったのだろうね。
ただし、そうには、ならなかったけれど。「同じ轍を踏むのは馬鹿げている」としての例示を幾つも掲げてあるのに、人はそれを「蹉跌」として踏んでしまう。
ま、今も、昔も、さほど変わりはしないよね。 ではでは ≫
ｐ．３２４
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１１６．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
５．天武天皇と『古事記』
ー 原『古事記』・原本『古事記』と天武天皇 −
ｐ．３２４
◎ 現存『古事記』序文の撰録の意味 ◎
★ 稗田阿礼は、原『古事記』の成立と性格を示すために、序文筆者が造り上げた人物と私は見るが、原『古事記』は★成書としては不十分★なものであったろう。
そこで原『古事記』を撰録して上・中・下の三巻として現存『古事記』が成立したのだが、現存『古事記』は原『古事記』を尊重しての撰録なのだから、
・）中沢見明 すべてが平安初期の書き下し、
とは、いえない。私は『日本書紀』より、成立の新しさを認めても、いわゆる「偽書論者」のように、内容の全てが新しいとは見ない。
ｐ．３２５
……、和銅五年と記す序文と本文が対応するから、いずれも和銅年間に書かれたする「偽書説批判」がある。……。……、序文と本文とは対応する。だからといって、和銅五年に『古事記』が成立したという裏付けにはならない。
なぜなら、本文を撰録した筆者が序文を書いたから対応するのであって、その対応をもって本文と序文が同時期に成立したとは言えないからである。私が序文が重要だと書くのは、成立の経過を序文が記しているからである。（原『古事記』を本に現存『古事記』を撰録したこと。）
★ 原『古事記』は、序文がいうところの天武天皇の勅語の旧辞だから、現存『古事記』の撰録の際には、旧辞にはあまり手を加えなかったであろう。
★★ だから『日本書紀』とは違って、古い旧辞のままの「朴」が残っており、その「朴」に比べて、後から加えられた序文の麗々しさが目につくのである。
★★ 普通の旧辞だったら、撰録の際に自由に手を加えたろうが、それをしなかったのは「勅語」による制約である。
・）太田善麿 『古事記本文の所伝内容に対して、明らかに一家の見解を立てることのできた安万侶が、其れに関わらず、いっさい批判的な立場をとろうとしなかったのは、要するにそれが"勅語"として記定されるべきものであった、そういう実感において対せられるべきものであったと言える。"勅語"ということを再度に渡って明記しているのも、そういう実感を強調する必要を感じたからに、他ならぬであろう。』
ｐ．３２６
撰録者の主な撰録作業は、序に書かれているように、表記の統一整理であったろう。★表記を音訓交用、訓専用に整理し（「一句の中に、音訓を交へ用ゐ、或は一事の内に全く訓を以ちて録しぬ」）、また注を付し（「辞理の見え難きは、注を以ちて明らかにし、意況の解り易きは、更に注せず」）また姓や氏を、原『古事記』のままの表記にする（「亦、姓に於きて日下を玖沙訶と謂ひ、名に於きて帯の字を多羅斯と謂ふ、斯くの如き類は本の隋に改めず」）などの作業を行ったのである。だから、表記に於いても古いものと新しいものとが混じっている。しかし大体において統一整理された混用である。
★★ 原『古事記』にもとづいて、現存『古事記』を撰録した人物は、今で言えば、歴史学者であるより、国語学者である。
ｐ．３２７
・）著者 『古事記成立考』−『……。……、原「古事記」では、『万葉集』巻二のように”モ”の二音が区別されたり、いなかったりの未整理のものであったろう。それを”本の隋”に従って多人長らが古い用法に整然と統一したため、現存古事記は一字の間違いもなく、甲類乙類の二音に区別されているのである。多人長古い音訓のよみに特に留意したことは『弘人私記』序で明らかである。……。この人長らを安万侶とダブルイメージと見ることによって、現存『古事記』の成立の真相は明らかになって来る。』
★ このように、「序」には現存『古事記』撰録の意味が示されている。★だからといって、その具体的な人物名や年月日はストレートに信じるわけにはいかない。★しかし、具体的な名や年月日は、それなりの理由が有って書かれている。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・「疑撰か、真撰か？！」と、問い始めるとキリがない。ただし、鵜呑みにもできない。また、書に全うなことが書かれていても、「私の程度」にしか読み込めない。
その点「学者たち」は、「これでもか…」というほど、読み込んでくれるのが有りがたい。しかし、「何になるの？！」と、問われれば返答に窮する……。
でも「知りたい」が、残るんだよね。 ではでは ≫
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
５．天武天皇と『古事記』
ー 原『古事記』・原本『古事記』と天武天皇 −
ｐ．３２４
◎ 現存『古事記』序文の撰録の意味 ◎
★ 稗田阿礼は、原『古事記』の成立と性格を示すために、序文筆者が造り上げた人物と私は見るが、原『古事記』は★成書としては不十分★なものであったろう。
そこで原『古事記』を撰録して上・中・下の三巻として現存『古事記』が成立したのだが、現存『古事記』は原『古事記』を尊重しての撰録なのだから、
・）中沢見明 すべてが平安初期の書き下し、
とは、いえない。私は『日本書紀』より、成立の新しさを認めても、いわゆる「偽書論者」のように、内容の全てが新しいとは見ない。
ｐ．３２５
……、和銅五年と記す序文と本文が対応するから、いずれも和銅年間に書かれたする「偽書説批判」がある。……。……、序文と本文とは対応する。だからといって、和銅五年に『古事記』が成立したという裏付けにはならない。
なぜなら、本文を撰録した筆者が序文を書いたから対応するのであって、その対応をもって本文と序文が同時期に成立したとは言えないからである。私が序文が重要だと書くのは、成立の経過を序文が記しているからである。（原『古事記』を本に現存『古事記』を撰録したこと。）
★ 原『古事記』は、序文がいうところの天武天皇の勅語の旧辞だから、現存『古事記』の撰録の際には、旧辞にはあまり手を加えなかったであろう。
★★ だから『日本書紀』とは違って、古い旧辞のままの「朴」が残っており、その「朴」に比べて、後から加えられた序文の麗々しさが目につくのである。
★★ 普通の旧辞だったら、撰録の際に自由に手を加えたろうが、それをしなかったのは「勅語」による制約である。
・）太田善麿 『古事記本文の所伝内容に対して、明らかに一家の見解を立てることのできた安万侶が、其れに関わらず、いっさい批判的な立場をとろうとしなかったのは、要するにそれが"勅語"として記定されるべきものであった、そういう実感において対せられるべきものであったと言える。"勅語"ということを再度に渡って明記しているのも、そういう実感を強調する必要を感じたからに、他ならぬであろう。』
ｐ．３２６
撰録者の主な撰録作業は、序に書かれているように、表記の統一整理であったろう。★表記を音訓交用、訓専用に整理し（「一句の中に、音訓を交へ用ゐ、或は一事の内に全く訓を以ちて録しぬ」）、また注を付し（「辞理の見え難きは、注を以ちて明らかにし、意況の解り易きは、更に注せず」）また姓や氏を、原『古事記』のままの表記にする（「亦、姓に於きて日下を玖沙訶と謂ひ、名に於きて帯の字を多羅斯と謂ふ、斯くの如き類は本の隋に改めず」）などの作業を行ったのである。だから、表記に於いても古いものと新しいものとが混じっている。しかし大体において統一整理された混用である。
★★ 原『古事記』にもとづいて、現存『古事記』を撰録した人物は、今で言えば、歴史学者であるより、国語学者である。
ｐ．３２７
・）著者 『古事記成立考』−『……。……、原「古事記」では、『万葉集』巻二のように”モ”の二音が区別されたり、いなかったりの未整理のものであったろう。それを”本の隋”に従って多人長らが古い用法に整然と統一したため、現存古事記は一字の間違いもなく、甲類乙類の二音に区別されているのである。多人長古い音訓のよみに特に留意したことは『弘人私記』序で明らかである。……。この人長らを安万侶とダブルイメージと見ることによって、現存『古事記』の成立の真相は明らかになって来る。』
★ このように、「序」には現存『古事記』撰録の意味が示されている。★だからといって、その具体的な人物名や年月日はストレートに信じるわけにはいかない。★しかし、具体的な名や年月日は、それなりの理由が有って書かれている。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・「疑撰か、真撰か？！」と、問い始めるとキリがない。ただし、鵜呑みにもできない。また、書に全うなことが書かれていても、「私の程度」にしか読み込めない。
その点「学者たち」は、「これでもか…」というほど、読み込んでくれるのが有りがたい。しかし、「何になるの？！」と、問われれば返答に窮する……。
でも「知りたい」が、残るんだよね。 ではでは ≫
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１１７．
天寿国の末裔・上代史ノート
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
５．天武天皇と『古事記』
ー 原『古事記』・原本『古事記』と天武天皇 −
ｐ．３２７
◎ 現存『古事記』の国語学的撰録意図と多人長 ◎
現存『古事記』の真の編集者は太安万侶ではないとして、藤原不比等・柿本人麻呂・山上憶良などの説もあるが、だとすれば、なぜ、太安万侶が撰録者として序にしるされているのか。
ｐ．３２８
・）西宮一民 『もし古事記序文が後世仮託のものなら、何故、和銅五年の太安万侶撰でなければならないのか。』の、素朴な問いに、まず答えるべきだ……。
……、その理由として太安万侶の★父、あるいは同族に、壬申乱の大海人皇子側の将軍、多品治がいるから、『壬申乱ついての記述は安万侶にとっては是非とも必要なことであった言ってよかろう。』
とし、『序文に壬申乱の記述があるといふことが、序文の作者が太安万侶であって少しも破綻を来さないことを示しているのである。』と、書いている。
★ また、太安万侶は『和銅四年四月七日には正五位下であったものが成撰者として正五位上に叙せられている（続日本紀）ので、序文の正五位上（和銅五年）に合ってゐる。』ことも、理由の一つにあげている。
★ しかし、「成撰者として正五位上に叙せられた」のなら、『古事記』撰録を詔された……、『古事記』を撰上した……ことが『続日本紀』に書かれていないのは何故か。★安万侶の事は『続日本紀』に五回も書かれており……、まったく安万侶の『古事記』撰録のことは記されていない。
ｐ．３２９
これも『続日本紀』の編者の主観のによる取捨として、済ますことができるであろうか。……。このように、安万侶でなければならない理由はない。
安万侶には、国語学者的略歴は認められないが、≪多≫人長にはそれが認められるから、最終編者は人長と推測できる。≪？！深読みでは？？≫
多人長は弘仁三年〈８１２）六月参議・紀広浜、陰陽頭・阿部真勝ら十余人に『日本書紀』の講筵を開いている。……。この講筵は歴史学の視点ではなく、国語学の視点、つまり書かれていることは全て正しいとして、書かれていることを正しく読む抗議だから、表記と訓み方に重点を置いている。そのことは、講義を記した『弘仁私記』に詳しい。
★★ この視点は現存『古事記』の序の撰録意図と似ていることから、私は、人長を安万侶に重ねるのである。
★ 原『古事記』に多人長が注目したのは『日本書紀』の講筵の講師になった時であろう。彼はこの講筵の講師としての準備と勉強をしたであろう。≪推測≫
・）友田吉之介 は、『弘仁私記』は和銅七年の国史を参考にしていると考証しているが、
ｐ．３３０
★ 『日本書紀』成立直後の養老年間の講筵以来、約一〇〇年ぶりの講筵だから、見られる限りのあらゆる参考文献を見たであろう。その中には一般の「古事記（ふることぶみ）」もあったろうが、原『古事記』もあったろう
★★ この原『古事記』を見て、人長は、★「埋もらせておくのは惜しい」と思い、★編修しなおして、現存『古事記』を作ったと、私は推論する。
多人長がいくら古語に詳しかったとしても、既に百年以上も前に死滅している上代特殊仮名遣いの「モ」の甲・乙二音の使い分けは不可能だという意見もあるが、原『古事記』に「モ」の書き分けそれを整理することは不可能ではあるまい。
『万葉集」巻五の山上憶良、大伴旅人による「モ」の書き分けは、
・）西宮一民 も、書くように『趣味的なもの』である。
ところが、現存『古事記』は二〇〇有余の用例の内、一字の間違いもなく書き分けられている。★これは原『古事記』の古い「モ」の用法を尊重し、整理した国語学者的書き分けである。
・）西宮一民 は、柿本人麻呂の時代には、その書き分けは既に消滅していたと論証したうえで、『従って、古事記（７１２）に「モ」の二種の書き分けが有ることは、安万侶自身が「モ」の二種の発音の仕分けが出来たからなのではなく、★安万侶の、その音韻を仮名遣い的に再現しようとする意図が有ったからだと理解すべきものであろう。』と、述べている。また『推古朝頃まで「モ」の発音が二つに分かれてゐたから、古事記の内容が推古天皇までであるのと一致させて、せめて書分けておこうという意図を持ったのではないかということである。すなわち★安万侶は<古音>の残存を図ろうとした★に違いないと考えられる。』とも書いている。
天寿国の末裔・上代史ノート
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５．天武天皇と『古事記』
ー 原『古事記』・原本『古事記』と天武天皇 −
ｐ．３２７
◎ 現存『古事記』の国語学的撰録意図と多人長 ◎
現存『古事記』の真の編集者は太安万侶ではないとして、藤原不比等・柿本人麻呂・山上憶良などの説もあるが、だとすれば、なぜ、太安万侶が撰録者として序にしるされているのか。
ｐ．３２８
・）西宮一民 『もし古事記序文が後世仮託のものなら、何故、和銅五年の太安万侶撰でなければならないのか。』の、素朴な問いに、まず答えるべきだ……。
……、その理由として太安万侶の★父、あるいは同族に、壬申乱の大海人皇子側の将軍、多品治がいるから、『壬申乱ついての記述は安万侶にとっては是非とも必要なことであった言ってよかろう。』
とし、『序文に壬申乱の記述があるといふことが、序文の作者が太安万侶であって少しも破綻を来さないことを示しているのである。』と、書いている。
★ また、太安万侶は『和銅四年四月七日には正五位下であったものが成撰者として正五位上に叙せられている（続日本紀）ので、序文の正五位上（和銅五年）に合ってゐる。』ことも、理由の一つにあげている。
★ しかし、「成撰者として正五位上に叙せられた」のなら、『古事記』撰録を詔された……、『古事記』を撰上した……ことが『続日本紀』に書かれていないのは何故か。★安万侶の事は『続日本紀』に五回も書かれており……、まったく安万侶の『古事記』撰録のことは記されていない。
ｐ．３２９
これも『続日本紀』の編者の主観のによる取捨として、済ますことができるであろうか。……。このように、安万侶でなければならない理由はない。
安万侶には、国語学者的略歴は認められないが、≪多≫人長にはそれが認められるから、最終編者は人長と推測できる。≪？！深読みでは？？≫
多人長は弘仁三年〈８１２）六月参議・紀広浜、陰陽頭・阿部真勝ら十余人に『日本書紀』の講筵を開いている。……。この講筵は歴史学の視点ではなく、国語学の視点、つまり書かれていることは全て正しいとして、書かれていることを正しく読む抗議だから、表記と訓み方に重点を置いている。そのことは、講義を記した『弘仁私記』に詳しい。
★★ この視点は現存『古事記』の序の撰録意図と似ていることから、私は、人長を安万侶に重ねるのである。
★ 原『古事記』に多人長が注目したのは『日本書紀』の講筵の講師になった時であろう。彼はこの講筵の講師としての準備と勉強をしたであろう。≪推測≫
・）友田吉之介 は、『弘仁私記』は和銅七年の国史を参考にしていると考証しているが、
ｐ．３３０
★ 『日本書紀』成立直後の養老年間の講筵以来、約一〇〇年ぶりの講筵だから、見られる限りのあらゆる参考文献を見たであろう。その中には一般の「古事記（ふることぶみ）」もあったろうが、原『古事記』もあったろう
★★ この原『古事記』を見て、人長は、★「埋もらせておくのは惜しい」と思い、★編修しなおして、現存『古事記』を作ったと、私は推論する。
多人長がいくら古語に詳しかったとしても、既に百年以上も前に死滅している上代特殊仮名遣いの「モ」の甲・乙二音の使い分けは不可能だという意見もあるが、原『古事記』に「モ」の書き分けそれを整理することは不可能ではあるまい。
『万葉集」巻五の山上憶良、大伴旅人による「モ」の書き分けは、
・）西宮一民 も、書くように『趣味的なもの』である。
ところが、現存『古事記』は二〇〇有余の用例の内、一字の間違いもなく書き分けられている。★これは原『古事記』の古い「モ」の用法を尊重し、整理した国語学者的書き分けである。
・）西宮一民 は、柿本人麻呂の時代には、その書き分けは既に消滅していたと論証したうえで、『従って、古事記（７１２）に「モ」の二種の書き分けが有ることは、安万侶自身が「モ」の二種の発音の仕分けが出来たからなのではなく、★安万侶の、その音韻を仮名遣い的に再現しようとする意図が有ったからだと理解すべきものであろう。』と、述べている。また『推古朝頃まで「モ」の発音が二つに分かれてゐたから、古事記の内容が推古天皇までであるのと一致させて、せめて書分けておこうという意図を持ったのではないかということである。すなわち★安万侶は<古音>の残存を図ろうとした★に違いないと考えられる。』とも書いている。
ｐ．３３１
★ とすれば、安万侶でなくとも、人長でも<古音>の残存を図ろうとする意図が有れば、不可能ではあるまい。
★ 『弘仁私記』によれば、神代の古質の多い語の訓み、つまり神名の倭御のよみ方を重点的に教えたとある。教えたのは多人長である。
・）大野晋 も、『弘仁私記』に奈良時代の上代特殊仮名遣いによる用例が有るから『かかる上代特殊仮名遣い上の事実が見られるのは、弘仁時代以前に、その部分を含む何らかの成書が存在し、それからの引用であろうとことを想像させる。』と書いている。
★★ 多人長は、古い上代特殊仮名遣いの用例を知っており、その<古音>を現存『古事記』に整理して残したのである。
『弘仁私記』でも奈良時代の「成書」から引用して使っているのだから、原『古事記』の「モ」の用法を現存『古事記』に使ったと考えるべきだろう。
いずれにしても、このようなことができるのも、原『古事記』があったからである。
★ では、何故、多人長が原『古事記』を編纂したか、その理由については『新撰姓氏録』に触発されたことと、「薬子の変」の影響が有る……。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・私たちが書店で手にする「古事記」は、ここでいうところの「現存・古事記」なわけで、ほとんどの読者も私も「現代仮名遣い」のものに親しんでいる。実に多くの学者たちの手により「読み物」として、親しんでいるわけだ。
およそ印刷機の無い時代、「経・書・本」は「誰か書く・写す」ことが無ければ「二冊目」は生まれない。増して「皇室の私本」的性格の古事記に在っては、「何冊も筆写される」ことなどもない。よってこの書は「偽書」扱いされた時代もある。
また『日本書紀』と補完し合う関係でもある。動乱に揺れた朝鮮に、この頃の資料は無く、他に中国での諸書が残る。中国でもこの時代の研究は盛んだと聞くが、さてさて、どんなものだろうか。
「日中共同研究」として、この時代の通史などが編纂されると面白いだろうね。また、考古学的に「日・朝・中」の共同研究なども現れると良いね。「喧嘩ばかり」してても、つまらないよ。 ではでは ≫
★ とすれば、安万侶でなくとも、人長でも<古音>の残存を図ろうとする意図が有れば、不可能ではあるまい。
★ 『弘仁私記』によれば、神代の古質の多い語の訓み、つまり神名の倭御のよみ方を重点的に教えたとある。教えたのは多人長である。
・）大野晋 も、『弘仁私記』に奈良時代の上代特殊仮名遣いによる用例が有るから『かかる上代特殊仮名遣い上の事実が見られるのは、弘仁時代以前に、その部分を含む何らかの成書が存在し、それからの引用であろうとことを想像させる。』と書いている。
★★ 多人長は、古い上代特殊仮名遣いの用例を知っており、その<古音>を現存『古事記』に整理して残したのである。
『弘仁私記』でも奈良時代の「成書」から引用して使っているのだから、原『古事記』の「モ」の用法を現存『古事記』に使ったと考えるべきだろう。
いずれにしても、このようなことができるのも、原『古事記』があったからである。
★ では、何故、多人長が原『古事記』を編纂したか、その理由については『新撰姓氏録』に触発されたことと、「薬子の変」の影響が有る……。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・私たちが書店で手にする「古事記」は、ここでいうところの「現存・古事記」なわけで、ほとんどの読者も私も「現代仮名遣い」のものに親しんでいる。実に多くの学者たちの手により「読み物」として、親しんでいるわけだ。
およそ印刷機の無い時代、「経・書・本」は「誰か書く・写す」ことが無ければ「二冊目」は生まれない。増して「皇室の私本」的性格の古事記に在っては、「何冊も筆写される」ことなどもない。よってこの書は「偽書」扱いされた時代もある。
また『日本書紀』と補完し合う関係でもある。動乱に揺れた朝鮮に、この頃の資料は無く、他に中国での諸書が残る。中国でもこの時代の研究は盛んだと聞くが、さてさて、どんなものだろうか。
「日中共同研究」として、この時代の通史などが編纂されると面白いだろうね。また、考古学的に「日・朝・中」の共同研究なども現れると良いね。「喧嘩ばかり」してても、つまらないよ。 ではでは ≫
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
５．天武天皇と『古事記』
ー 原『古事記』・原本『古事記』と天武天皇 −
ｐ．３３２
◎ 原『古事記』と現存『古事記』◎
★★★ 『≪弘仁≫私記』序における姓氏関係の書に対する徹底した批判は、『新撰姓氏録』とその編集者への批判である……、この『姓氏録』に対抗するためにも、原『古事記』の撰録が必要であった。
その結果『日本書紀』や≪新撰≫『姓氏録』と同じ勅撰書に仕立てるために、『舊事本記』の序文ように『古事記』の古さを示す序文を作り上げたのであろう。
★★ 『舊事本記』の序文が偽作であることは既に通説になっているのに、『古事記』序については、まだ、議論の分かれるのは、現存『古事記』が、天武朝の後宮で成立した原『古事記』を母体にした、二段階成立だったからであろう。
そのため、本文は、序文の日付以前の古い要素が多い。だから偽書説否定論者は、本文が『日本書紀』よりも古い面を強調することによって、原『古事記』の統一整理（撰録）による現存『古事記』の新しさを無視するし、一方、偽書論者は「全てが新しい」として、現存『古事記』の持つ古さに目を向けないきらいがある。
★★ 現存『古事記』の内容を尊重した上での議論である以上、何が古く何が新しいかを、まず、検討すべきである。
ｐ．３３３
★ 現存『古事記』が平安初期の成立なら、平安初期の影響を受けた★文体、注の形式、表記法★が、もっとはっきり出ているはずなのに、それが無いから和銅の成立だとする意見が有るが、★原『古事記』尊重する立場に立っての撰録なのだから、古さに合わせるのは当然である。★その古さをもって、成立時期の新しさを否定する理由にはならない。
序文を和銅五年にしたのだから、★本文も序文に対応させているのである。撰録者の同時代の用法を使えば、序文に和銅五年とした意味が無くなるぐらいのことは、当然考え実行したであろう。★それが出来たのは原『古事記』が存在していたからである。
序文の和銅五年の正五位上と『続日本紀』の安万侶の位階が合うのも、多人長が合わせたのであって、このことをもって成撰のための正五位上とするわけにはいかない。
★ 成撰のためとすれば、安万侶の五回にわたる『続日本紀』の記事に★『古事記』のことが全く記されていないのは、不自然ではないか。★
★★★ それよりも太安万侶は、『古事記』を撰録していないから、『続日本紀』にはまったく載っていないと見る方が、自然であろう。★★★
★★ 壬申乱の記事も、先祖の功績は、時代が離れれば離れるほど強くイメージアップするものである。まして、弘仁年間失意の時期にある多氏にとって、壬申乱は特筆大書したいところであったろう。
ｐ．３３４
また、民部卿従四位下まで昇進した安万侶は、多（太）氏にとっては出世頭であった。★★だから『弘仁私記』序では、安万侶が『古事記』と『日本書紀』の編者であったことを真っ先に、特筆大書している。★★このことからも、≪古事記≫序で壬申乱に詳しく触れ、安万侶が撰録者として書かれていることは、★真の撰録者が多人長であったことを暗示している。★
現存『古事記』が最初に紹介されているのは、『弘仁私記』序である。『弘仁私記』の序文は、多人長の『弘仁私記』に、人長の子孫、血縁者、または弟子がつけた序と考えられるが、『弘仁私記』の序に、はじめて現存『古事記』が紹介されていることは、無視できない。
★ 『弘仁私記』序は、『日本書紀』のための「私記」でありながら、太安万侶のと『古事記』の宣伝スペースをとるという、★一見不自然な序になっていることからみても、★現存『古事記』最終成立時期が推測できる。★
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・｢著者」の鋭い洞察力に感服した、というところ。だからといって、「古事記」は「古事記」では無いとするのも早計だろう。上代人を知ることの、やはり一級・資料であることは間違いない。
筆者は、なおも「現存『古事記』最終成立時期が推測できる。」として、その時期を明記しないのも、気になる所。ここまで書くなら書いちゃえば良いのに…。でも、明記しないんだな…。
ただ「真・真実」はどうなのだろうとするところで、躊躇してしまうのは、「しょうがない」か…。そこは「他の資料」で補うしかないだろう。もっともっと、勉強が必要なんだね。 ではでは ≫
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１１９．
５．天武天皇と『古事記』
ー 原『古事記』・原本『古事記』と天武天皇 −
ｐ．３３２
◎ 異本『古事記』について � �
現存『古事記』撰録のさいには、原『古事記』は勿論の事、『日本書紀』や他の『古事記』、つまり異本『古事記』も参照されたであろう。例えば★『万葉集』の編者が参考にした『古事記』がある。
ｐ．３３５
★ この『古事記』を原『古事記』と見るか、異本『古事記』と見るか、平安中期になって現存『古事記』と見て付したしものとみるかは、見解の分かれる処だが、私は、現存『古事記』以前にあった『古事記』と見る。
★ ただ、現存『古事記』の原本となった、厳密な意味での原『古事記』か、いわゆる異本『古事記』かについては、なんとも断定しかねる。
★★ はっきり異本『古事記』と考えられるのは『琴歌譜』記載の「一（ある）古事記」である。
「一古事記云誉田天皇遊猟淡路嶋時之人歌者」と「歌返」の条にあるが、応神天皇が淡路島に猟に行ったという記事は、現存『古事記』には無い。
この「歌返」の歌は、仁徳天皇の歌となっているが、「今校不接於日本古事記」とある。つまり「日本古事記」の仁徳天皇の条には見当たらず「一古事記」では、応神天皇のと『琴歌譜』は記している。
「一古事記」は異本『古事記』だが、「日本古事記」とは、いかなる『古事記』か。通説では「紀」が脱字して「日本紀古事記」だとする。しかし、脱字として良いだろうか。
『琴歌譜』の編者、写本した人物は『日本書紀』がいかに重要な書であるかは知っていたはずである。そのような重要な「紀」を脱字して、二冊の本を一冊の本に写し間違うのは、大変迂闊なことである。
そのような容易に有り得ないことを、簡単に脱字と決めてしまうのは「日本古事記」などという書があるはずがないという、大前提に立っているからである。
ｐ．３３６
『古事記』は本来、普通名詞である。どの『古事記』も「一古事記」である。しかし「一（ある）」とは違う『古事記』を『琴歌譜』の編者は見て「歌返」の歌を残した。それが「日本」の『書紀』と同じ性格の「日本」の古事記である。勅語の旧辞を撰録したとある、序文つきの現存『古事記』こそ「日本古事記」だろう。
『琴歌譜』の編者は、「歌返」の歌を、現存『古事記』と異本『古事記』の二冊で検したので「歌返」のところでは単に『古事記』と知るさず、「日本」と「一」とを冠して区別したのだろう。
『琴歌譜』の異本『古事記』には「一」が付いているが、単に『古事記』と書かれた★異本『古事記』が他にある。★『令集解』巻二職員令、『政治要略』年中行事十一月鎮魂祭の条、などに載っている★「古事記伝」である。
『 古事記云。饒速日命、降㋹自㋹天時、天神授瑞宝十種、息津鏡一、部津鏡一、八握劔一、生玉一、足玉一、死反玉一、道反玉一、蛇比禮一、蜂比禮一、品之物比禮一、教導若有痛處者、、令茲十寶、一二三四五六七八九十云而、布瑠部、由良由良止布瑠部、如此為之者、死人はん㋹生矣。 』
この引用は『政治要略』からだが、『令集解』には「古事穴云」とある。『令集解』の「古事穴」、『政治要略』の「古事記」を、通説では「舊事紀」と解釈する。
ｐ．３３７
・）伴信友 は、『鎮魂伝』で『舊事本紀』に似た内容が有るから、『ふと書き残れるもの』とし、
・）岩橋小弥太 は、『旧辞も古事も同じに訓めるから文字に拘わらずに書いた。』としている。
しかし、「舊事紀」のつもりで「古事記」を書いたとすれば、この時代に『舊事本紀』でなく、『舊事紀』と書かれていたとする前提が必要である。（『令集解』は８５９〜８７６、『政治要略』は９８６〜１００８）
・）倉野憲司 は、そのことについて、『鎌倉室町時代頃までは大体”先代舊事本紀”又は”舊事本紀”と呼ばれていて、”舊事紀”の略称は見えないようである。それが見えるのは江戸時代以後の事と思われる。（中略）令集解に先代舊事本紀がふと古事記と誤り書かれたとか、舊事紀と古事記とが通用していたとかいう説は成り立たなくなり、サキツヨノフルコトノモトツフミ、又は、フルコトノモトツフミ、と、フルコトフミとは、訓みが異なっているのである。従って舊事紀・古事記同訓説や通用接は後世思い付きと言わざるを得ない。 然らば、なぜ舊事本紀の文を”古事記伝”として引用したかということについては、今の処、不明と言わざるをえないが、試みに言えば、先代舊事本紀（固有名詞）を一つの古事記（普通名詞）として引用したのではあるまいか。』と、述べている。
５．天武天皇と『古事記』
ー 原『古事記』・原本『古事記』と天武天皇 −
ｐ．３３２
◎ 異本『古事記』について � �
現存『古事記』撰録のさいには、原『古事記』は勿論の事、『日本書紀』や他の『古事記』、つまり異本『古事記』も参照されたであろう。例えば★『万葉集』の編者が参考にした『古事記』がある。
ｐ．３３５
★ この『古事記』を原『古事記』と見るか、異本『古事記』と見るか、平安中期になって現存『古事記』と見て付したしものとみるかは、見解の分かれる処だが、私は、現存『古事記』以前にあった『古事記』と見る。
★ ただ、現存『古事記』の原本となった、厳密な意味での原『古事記』か、いわゆる異本『古事記』かについては、なんとも断定しかねる。
★★ はっきり異本『古事記』と考えられるのは『琴歌譜』記載の「一（ある）古事記」である。
「一古事記云誉田天皇遊猟淡路嶋時之人歌者」と「歌返」の条にあるが、応神天皇が淡路島に猟に行ったという記事は、現存『古事記』には無い。
この「歌返」の歌は、仁徳天皇の歌となっているが、「今校不接於日本古事記」とある。つまり「日本古事記」の仁徳天皇の条には見当たらず「一古事記」では、応神天皇のと『琴歌譜』は記している。
「一古事記」は異本『古事記』だが、「日本古事記」とは、いかなる『古事記』か。通説では「紀」が脱字して「日本紀古事記」だとする。しかし、脱字として良いだろうか。
『琴歌譜』の編者、写本した人物は『日本書紀』がいかに重要な書であるかは知っていたはずである。そのような重要な「紀」を脱字して、二冊の本を一冊の本に写し間違うのは、大変迂闊なことである。
そのような容易に有り得ないことを、簡単に脱字と決めてしまうのは「日本古事記」などという書があるはずがないという、大前提に立っているからである。
ｐ．３３６
『古事記』は本来、普通名詞である。どの『古事記』も「一古事記」である。しかし「一（ある）」とは違う『古事記』を『琴歌譜』の編者は見て「歌返」の歌を残した。それが「日本」の『書紀』と同じ性格の「日本」の古事記である。勅語の旧辞を撰録したとある、序文つきの現存『古事記』こそ「日本古事記」だろう。
『琴歌譜』の編者は、「歌返」の歌を、現存『古事記』と異本『古事記』の二冊で検したので「歌返」のところでは単に『古事記』と知るさず、「日本」と「一」とを冠して区別したのだろう。
『琴歌譜』の異本『古事記』には「一」が付いているが、単に『古事記』と書かれた★異本『古事記』が他にある。★『令集解』巻二職員令、『政治要略』年中行事十一月鎮魂祭の条、などに載っている★「古事記伝」である。
『 古事記云。饒速日命、降㋹自㋹天時、天神授瑞宝十種、息津鏡一、部津鏡一、八握劔一、生玉一、足玉一、死反玉一、道反玉一、蛇比禮一、蜂比禮一、品之物比禮一、教導若有痛處者、、令茲十寶、一二三四五六七八九十云而、布瑠部、由良由良止布瑠部、如此為之者、死人はん㋹生矣。 』
この引用は『政治要略』からだが、『令集解』には「古事穴云」とある。『令集解』の「古事穴」、『政治要略』の「古事記」を、通説では「舊事紀」と解釈する。
ｐ．３３７
・）伴信友 は、『鎮魂伝』で『舊事本紀』に似た内容が有るから、『ふと書き残れるもの』とし、
・）岩橋小弥太 は、『旧辞も古事も同じに訓めるから文字に拘わらずに書いた。』としている。
しかし、「舊事紀」のつもりで「古事記」を書いたとすれば、この時代に『舊事本紀』でなく、『舊事紀』と書かれていたとする前提が必要である。（『令集解』は８５９〜８７６、『政治要略』は９８６〜１００８）
・）倉野憲司 は、そのことについて、『鎌倉室町時代頃までは大体”先代舊事本紀”又は”舊事本紀”と呼ばれていて、”舊事紀”の略称は見えないようである。それが見えるのは江戸時代以後の事と思われる。（中略）令集解に先代舊事本紀がふと古事記と誤り書かれたとか、舊事紀と古事記とが通用していたとかいう説は成り立たなくなり、サキツヨノフルコトノモトツフミ、又は、フルコトノモトツフミ、と、フルコトフミとは、訓みが異なっているのである。従って舊事紀・古事記同訓説や通用接は後世思い付きと言わざるを得ない。 然らば、なぜ舊事本紀の文を”古事記伝”として引用したかということについては、今の処、不明と言わざるをえないが、試みに言えば、先代舊事本紀（固有名詞）を一つの古事記（普通名詞）として引用したのではあるまいか。』と、述べている。
・）倉野憲司 は、そのことについて、『鎌倉室町時代頃までは大体”先代舊事本紀”又は”舊事本紀”と呼ばれていて、”舊事紀”の略称は見えないようである。それが見えるのは江戸時代以後の事と思われる。（中略）令集解に先代舊事本紀がふと古事記と誤り書かれたとか、舊事紀と古事記とが通用していたとかいう説は成り立たなくなり、サキツヨノフルコトノモトツフミ、又は、フルコトノモトツフミ、と、フルコトフミとは、訓みが異なっているのである。従って舊事紀・古事記同訓説や通用接は後世思い付きと言わざるを得ない。 然らば、なぜ舊事本紀の文を”古事記伝”として引用したかということについては、今の処、不明と言わざるをえないが、試みに言えば、先代舊事本紀（固有名詞）を一つの古事記（普通名詞）として引用したのではあるまいか。』と、述べている。
しかし、現存『古事記』に無い内容が｢古事記伝」として載っているのだから、似た内容の『舊事本紀』のこととしてしまうより『古事記』が普通名詞なら『琴歌譜』の「一古事記」と同じ、異本『古事記』とみる解釈も成り立つ。
ｐ．３３８
『政治要略』の「古事記云」は『令集解』の孫引きとも言われるが、もし『令集解』に「古事穴云」と、あったとすれば、それを「古事記云」に直したことになり『政治要略』の編者は「古事記云」が正しいと見たのである。
『 古事記云百済国主肖古王以牡馬一疋牝馬一疋附阿知吉師貢上 』［ 此阿知吉師者阿直史等元祖 ］と、ある。
また同じような記事が『師光年中行事』八月十六日駒牽事の条に、
『 古事記云百済主背古王以牧馬一疋牝馬一疋附阿知吉師貢上 』云々 と、ある。
これはたぶん『政治要略』よりの孫引きだろう。「百済国主」の「国」が落ち、「肖古王」の「肖」が「背」、「牡馬」が「牧馬」に誤記されている。このような誤記からみても『師光年中行事』は『政治要略』をみて、誤記したと見られるが、『政治要略』は通説のように、現存『古事記』をみての誤記とは考えられない。
なぜなら、「肖古王」の「肖」が「背」になるのは判るが、現存『古事記』の「照古王」の「照」が「肖」と誤記されることは、有り得ないからである。だから『政治要略』の「古事記云」が、現存『古事記』を見ての表記かどうかは疑わしい。
つづく
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１２０．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
５．天武天皇と『古事記』
ー 原『古事記』・原本『古事記』と天武天皇 −
ｐ．３３２
◎ 異本『古事記』について �◆ �
ｐ．３３９
『政治要略』の饒速日命天降りの「古事記云」が、異本『古事記』なのだから、同じ『政治要略』の「肖古王」と記す「古事記云」も、異本『古事記』をみて「肖古王」と書いたと推測できる。
『令集解』は明法博士・惟宗直本が、『政治要略』は明法博士・惟宗允亮が撰している。この間、一三〇年ほどたっているが、惟宗家には『令集解』に引用したような『古事記』が存在したのではなかろうか。事家に無いとしても明法博士の惟宗氏は『令集解』引用の異本『古事記』を見る立場にいたであろうことは考えられる。
★ また、『万葉集』巻二、九〇の歌の題詞「古事記曰」や、巻一三、三二六三の左注の「検古事記曰」」の『古事記』が、現存『古事記』からの引用でないことは、表記の違いからも言える。★ということは『万葉集』の『古事記』記載をもって現存『古事記』を、和銅五年撰録の確証とするわけにはいかないということである。
★ ところで、このような本文の注でなく、頭注、裏書にも、現存『古事記』と違う『古事記』が登場する。『万葉集』の元歴本や西本願寺本、その他の諸本に見える、巻一の一の歌の裏書・頭注ある「見古事記序」が、それである。
ｐ．３４０
『万葉集』の写本では最古といわれる平安時代も末の元歴の写本の裏書には、
『 虚見津山跡之国、神代事也。櫛玉饒速日命、乗天磐船而廻行、虚空之故此国号、虚空見津大和之国、天磐船為也。見古事記序。 』
★★ このような記事は、現存『古事記』の序にも本文にも無い。
しかし、『日本書紀』『舊事本紀』に見えるから、この『古事記』は、『日本書紀』か『舊事本紀』の見間違いとするのが従来の解釈である。★だが、そう簡単に誤写と断定してよいものだろうか。
しかし、現存『古事記』に無い内容が｢古事記伝」として載っているのだから、似た内容の『舊事本紀』のこととしてしまうより『古事記』が普通名詞なら『琴歌譜』の「一古事記」と同じ、異本『古事記』とみる解釈も成り立つ。
ｐ．３３８
『政治要略』の「古事記云」は『令集解』の孫引きとも言われるが、もし『令集解』に「古事穴云」と、あったとすれば、それを「古事記云」に直したことになり『政治要略』の編者は「古事記云」が正しいと見たのである。
『 古事記云百済国主肖古王以牡馬一疋牝馬一疋附阿知吉師貢上 』［ 此阿知吉師者阿直史等元祖 ］と、ある。
また同じような記事が『師光年中行事』八月十六日駒牽事の条に、
『 古事記云百済主背古王以牧馬一疋牝馬一疋附阿知吉師貢上 』云々 と、ある。
これはたぶん『政治要略』よりの孫引きだろう。「百済国主」の「国」が落ち、「肖古王」の「肖」が「背」、「牡馬」が「牧馬」に誤記されている。このような誤記からみても『師光年中行事』は『政治要略』をみて、誤記したと見られるが、『政治要略』は通説のように、現存『古事記』をみての誤記とは考えられない。
なぜなら、「肖古王」の「肖」が「背」になるのは判るが、現存『古事記』の「照古王」の「照」が「肖」と誤記されることは、有り得ないからである。だから『政治要略』の「古事記云」が、現存『古事記』を見ての表記かどうかは疑わしい。
つづく
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１２０．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
５．天武天皇と『古事記』
ー 原『古事記』・原本『古事記』と天武天皇 −
ｐ．３３２
◎ 異本『古事記』について �◆ �
ｐ．３３９
『政治要略』の饒速日命天降りの「古事記云」が、異本『古事記』なのだから、同じ『政治要略』の「肖古王」と記す「古事記云」も、異本『古事記』をみて「肖古王」と書いたと推測できる。
『令集解』は明法博士・惟宗直本が、『政治要略』は明法博士・惟宗允亮が撰している。この間、一三〇年ほどたっているが、惟宗家には『令集解』に引用したような『古事記』が存在したのではなかろうか。事家に無いとしても明法博士の惟宗氏は『令集解』引用の異本『古事記』を見る立場にいたであろうことは考えられる。
★ また、『万葉集』巻二、九〇の歌の題詞「古事記曰」や、巻一三、三二六三の左注の「検古事記曰」」の『古事記』が、現存『古事記』からの引用でないことは、表記の違いからも言える。★ということは『万葉集』の『古事記』記載をもって現存『古事記』を、和銅五年撰録の確証とするわけにはいかないということである。
★ ところで、このような本文の注でなく、頭注、裏書にも、現存『古事記』と違う『古事記』が登場する。『万葉集』の元歴本や西本願寺本、その他の諸本に見える、巻一の一の歌の裏書・頭注ある「見古事記序」が、それである。
ｐ．３４０
『万葉集』の写本では最古といわれる平安時代も末の元歴の写本の裏書には、
『 虚見津山跡之国、神代事也。櫛玉饒速日命、乗天磐船而廻行、虚空之故此国号、虚空見津大和之国、天磐船為也。見古事記序。 』
★★ このような記事は、現存『古事記』の序にも本文にも無い。
しかし、『日本書紀』『舊事本紀』に見えるから、この『古事記』は、『日本書紀』か『舊事本紀』の見間違いとするのが従来の解釈である。★だが、そう簡単に誤写と断定してよいものだろうか。
『日本書紀』神武天皇三一年条、
『饒速日命、乗天磐船、而翔行太虚也、睨是郷而降之、曰虚空見日本国矣。 』
と、あり『舊事本紀』の「天神本紀」の条に、
『饒速日命……所謂乗天磐船、而翔行太虚空、巡睨是郷而、天降坐矣、即謂虚空見日本国、是歟。 』
『万葉集』巻一の一、雄略天皇の長歌の一部に「虚見津山跡之国」とある。だからその表記どおりに「虚見津山跡之国」とまず書き、「見古事記序」によって「虚空見津大和之国」と書いたのだろう。
もし『日本書紀』か『舊事本紀』を見たとすれば「虚空見日本国」と書くべきである。
ｐ．３４１
このように、もっとも大事な点の表記が、全く違うことから見ても『日本書紀』か『舊事本紀』の誤写とは簡単に断定できない。また『日本書紀』も『舊事本紀』も「虚空見日本国」の条では「饒速日命」であって「櫛玉饒速日命」ではない。
もし『日本書紀』か『舊事本紀』に「櫛玉饒速日命」とあって、裏書で「櫛玉」を落として「饒速日命」とあれば、省略したとも考えられる。★だが、その逆だから「櫛玉饒速日命」と書いてある『古事記』を見て「見古事記序」と書いたと考えられる。
『令集解』『政治要略』の「古事記云」も饒速日命降臨の記事であり、『万葉集』の裏書も同じ饒速日命降臨に関わる記事を「見古事記序」として引用している。
これらの『古事記』を現存『古事記』に無い内容だからとして『日本書紀』や『舊事本紀』の誤写とかたづけず、何故「古事記云」「見古事記序」と書かれているかを検討してみる必要があるのではないだろうか。
★★ 例えば、饒速日命の降臨伝承が「除」にも「本文」にも載っている、異本『古事記』があったとする推測が成り立つのではないだろうか。
『琴歌譜』の「一古事記」、『令集解』の「古事記」、『政治要略』の「古事記」も、異本「古事記」といえるが、『釈日本紀』巻一四の一言主神の条に引用の『多氏古事記』『土佐国風土記』逸聞に載る『多氏古事記』も、現存『古事記』とは内容が違う。いわゆる異本『古事記』である。
ｐ．３４２
★★ 以上、文献で見る限り、現存『古事記』以外の『古事記』が、平安期から鎌倉時代の頃まで存在していたことは明らかである。
現存『古事記』の序文筆者が、何故、あのような序文を書いたかを、現存『古事記』以外に、原『古事記』や異本『古事記』の存在を認める立場に立って考え、その成立の疑問について述べてみた…、
私にとっての現存『古事記』は★天武朝の後宮で成立したと推察される原『古事記』とダブルイメージである。
だから、最終成立次期が序文の一〇〇年後としても、現存『古事記』は依然として、日本最古の古典である。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・ ”ひぇー！”〈悲鳴！） ここに至ると「思惟哲学｝的様相を帯びてくる。確かに「推論と検証」の積み重ねであり「観念論」ではないのだけれど…。
さすがに「日本歴史」は奥が深いと言うべきか。私なんて、「♪素人♪」もう、深く拝聴するしかない。だって「古事記」なんて、訳文すら、「ろくに読めない」人だもの。
これで「歴史小説」なんて……、「おこがましいにも、程がある」ということだね。でも「天武天皇」も「聖武天皇」も「魅力的」な男でしょ？！ だから「無理を承知」で、突撃するしかないんだな…。
わっはっはっ！ (＝⌒▽⌒＝) ではでは ≫
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１２１．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
５．天武天皇と『古事記』
ー 原『古事記』・原本『古事記』と天武天皇 −
ｐ．３４２
◎ 「和銅五年正月廿八日」について ◎
では、なぜ、元明天皇の和銅年間の日付が、序文に書かれているのだろうか。
・）西宮一民 は『序文成立は何故和銅五年なのか。』と問い、理由として、次の四ヵ条をあげる。
� ―�文に書かれている天武天皇の記述は、天皇の事績と合っているのに、元明天皇の賛辞は『続日本紀』みてもその事績の裏付けが無い。
ｐ．３４３
・）西宮一民 『その序文を書いた時期がまさしくその時に直面していたのであって、いくら天皇でも即位前、僅かの期間であり該当する事件もないから、むしろ自由に出典文を利用して天皇賛辞を書くことが出来たのだと考える。』
★ しかし、『続日本紀』をよく読めば、大体その賛辞と事績とは合う。
・）倉野憲司 『要するに単なる形式的な提督の賛美ではなくて、事実に基づいた文藻である…。』
とすれば、事実に基づかない賛辞と見るのは、彼≪西宮≫の解釈であって、和銅五年に撰上されたとする積極的理由にはならない。
�◆仝橘静傾鳥深�の中で、祈年祭祝詞の文辞を利用した箇所があるが、天平八年十一月の葛城王等の条表文も、同様にこの文辞を利用している。
・）西宮一民 『これは古事記序文を模して葛城王等の条表文が出来たのであって、その逆ではない。』とする。その理由として『葛城王（橘諸兄）は万葉集・巻一・巻二など古い巻の撰者に擬せられており、巻二・九〇番の歌の注に古事記（下）の引用のある点を考慮すると、葛城王が古事記を繙いたことは想像に難くなく、右の事から、当時すでに序文が存していたことも明らかな事実となる訳である。』
しかし、…、その後の論考『（論文）』……、では、『万葉集』引用の『古事記』を序文のつかない原『古事記』に比定しているのだから……。
ｐ．３４４
もし葛城王の上表文を『古事記』序の関係で取り上げると、天平八年の葛城王の上表文を。序文筆者が模したという説の方が成立しやすくなって、和銅五年成立を否定する論拠になる。
�� 序に漢風諡号を用いていないことを理由に挙げる。漢風諡号は天平宝字七・八年頃、いっせいに撰進されたものだから、このことからも漢風諡号撰進前の序であることを示している≪西宮一民≫とする。
ところが『弘仁私記』序では、『古事記』序と同じく、神武天皇は神倭天皇と書いている。その他の天皇名もすべて漢風諡号を用いていない。★だからといって『弘仁私記』序を天平宝字七・八年頃に書かれたものと言えるだろうか。
�ぁ Α棒承椣賁院 惱�文の末尾に、いわゆる用法についての細かい取り決めと苦心の様が記されている』ことをあげて『<偽作>者は、果たしてかかる機微に触れた記述が出来るとは思えないのである。』とする。『古事記本文を苦心して述作した者のみが知る表記法』を、序文偽作者が書けるはずがないと見るのだが、原『古事記』を本に現存『古事記』を撰録した人物が、序文を書いているのだから、「用字法についての細かい取り決めと苦心の様を記している」のは、ちっともおかしくない。
★★ 序文が用字法についてしか「機微に触れた記述」をしていないことにこそ、現存『古事記』成立の鍵が秘されている。
ｐ．３４５
★ 以上、述べたように、現存『古事記』の成立次期と撰録者について、★和銅五年と太安万侶に固執することは無い。★
では、何故和銅五年になっているかだが、
・）友田吉之介 は、二年引き上げる「干支紀年法」で計算すると、『続日本紀』掲載の「和銅七年二月十日」の国史撰上の日付にピッタリだと証している。とすれば、序文の筆者はそのような「干支紀年法」を使える人物でなけれはならない。
≪ 庚申年よりの計算・略 ≫
ｐ．３４６
……、別の紀年法で計算したのである。★『釈霊実・帝王年代歴』で計算すると、一五五七年になる。★この暦法で計算すれば『古事記』序の★和銅五年正月廿八日は『続日本紀』の国史撰上の「★和銅七年二月十日」になるのである。
★ つまり、『弘仁私記』の序の筆者なら『続日本紀』の「和銅七年二月十日」の日付を別の紀年法で「和銅五年正月廿八日」の日付に替えることが可能なのである。
多（太）氏は、正史以外の「干支紀年法」も使っていたから（そのことは太安万侶の墓誌の紀年からも証される）、『弘仁私記』序筆者の血縁者、または師である多人長が『釈霊実・帝王年代歴』の紀年法を知らなかったとは断定できない。
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
５．天武天皇と『古事記』
ー 原『古事記』・原本『古事記』と天武天皇 −
ｐ．３４２
◎ 「和銅五年正月廿八日」について ◎
では、なぜ、元明天皇の和銅年間の日付が、序文に書かれているのだろうか。
・）西宮一民 は『序文成立は何故和銅五年なのか。』と問い、理由として、次の四ヵ条をあげる。
� ―�文に書かれている天武天皇の記述は、天皇の事績と合っているのに、元明天皇の賛辞は『続日本紀』みてもその事績の裏付けが無い。
ｐ．３４３
・）西宮一民 『その序文を書いた時期がまさしくその時に直面していたのであって、いくら天皇でも即位前、僅かの期間であり該当する事件もないから、むしろ自由に出典文を利用して天皇賛辞を書くことが出来たのだと考える。』
★ しかし、『続日本紀』をよく読めば、大体その賛辞と事績とは合う。
・）倉野憲司 『要するに単なる形式的な提督の賛美ではなくて、事実に基づいた文藻である…。』
とすれば、事実に基づかない賛辞と見るのは、彼≪西宮≫の解釈であって、和銅五年に撰上されたとする積極的理由にはならない。
�◆仝橘静傾鳥深�の中で、祈年祭祝詞の文辞を利用した箇所があるが、天平八年十一月の葛城王等の条表文も、同様にこの文辞を利用している。
・）西宮一民 『これは古事記序文を模して葛城王等の条表文が出来たのであって、その逆ではない。』とする。その理由として『葛城王（橘諸兄）は万葉集・巻一・巻二など古い巻の撰者に擬せられており、巻二・九〇番の歌の注に古事記（下）の引用のある点を考慮すると、葛城王が古事記を繙いたことは想像に難くなく、右の事から、当時すでに序文が存していたことも明らかな事実となる訳である。』
しかし、…、その後の論考『（論文）』……、では、『万葉集』引用の『古事記』を序文のつかない原『古事記』に比定しているのだから……。
ｐ．３４４
もし葛城王の上表文を『古事記』序の関係で取り上げると、天平八年の葛城王の上表文を。序文筆者が模したという説の方が成立しやすくなって、和銅五年成立を否定する論拠になる。
�� 序に漢風諡号を用いていないことを理由に挙げる。漢風諡号は天平宝字七・八年頃、いっせいに撰進されたものだから、このことからも漢風諡号撰進前の序であることを示している≪西宮一民≫とする。
ところが『弘仁私記』序では、『古事記』序と同じく、神武天皇は神倭天皇と書いている。その他の天皇名もすべて漢風諡号を用いていない。★だからといって『弘仁私記』序を天平宝字七・八年頃に書かれたものと言えるだろうか。
�ぁ Α棒承椣賁院 惱�文の末尾に、いわゆる用法についての細かい取り決めと苦心の様が記されている』ことをあげて『<偽作>者は、果たしてかかる機微に触れた記述が出来るとは思えないのである。』とする。『古事記本文を苦心して述作した者のみが知る表記法』を、序文偽作者が書けるはずがないと見るのだが、原『古事記』を本に現存『古事記』を撰録した人物が、序文を書いているのだから、「用字法についての細かい取り決めと苦心の様を記している」のは、ちっともおかしくない。
★★ 序文が用字法についてしか「機微に触れた記述」をしていないことにこそ、現存『古事記』成立の鍵が秘されている。
ｐ．３４５
★ 以上、述べたように、現存『古事記』の成立次期と撰録者について、★和銅五年と太安万侶に固執することは無い。★
では、何故和銅五年になっているかだが、
・）友田吉之介 は、二年引き上げる「干支紀年法」で計算すると、『続日本紀』掲載の「和銅七年二月十日」の国史撰上の日付にピッタリだと証している。とすれば、序文の筆者はそのような「干支紀年法」を使える人物でなけれはならない。
≪ 庚申年よりの計算・略 ≫
ｐ．３４６
……、別の紀年法で計算したのである。★『釈霊実・帝王年代歴』で計算すると、一五五七年になる。★この暦法で計算すれば『古事記』序の★和銅五年正月廿八日は『続日本紀』の国史撰上の「★和銅七年二月十日」になるのである。
★ つまり、『弘仁私記』の序の筆者なら『続日本紀』の「和銅七年二月十日」の日付を別の紀年法で「和銅五年正月廿八日」の日付に替えることが可能なのである。
多（太）氏は、正史以外の「干支紀年法」も使っていたから（そのことは太安万侶の墓誌の紀年からも証される）、『弘仁私記』序筆者の血縁者、または師である多人長が『釈霊実・帝王年代歴』の紀年法を知らなかったとは断定できない。
ｐ．３４７
一方では『古事記』成立の絶対性を主張しながら、一方では当てにならないとしたのでは、ご都合主義と言わざるをえない。
『弘仁私記』序が『日本書紀』の訓詁の私記でありながら、『日本書紀』より『古事記』を重要視していることは、神武天皇の生まれ年を『日本書紀』が庚午にしているのに『弘仁私記』序で庚申としていることからも明らかである。庚申にすれば庚午より一〇年も神武天皇の寿命は延びる。
『日本書紀』が「時年一百廿七裁」と書くのに『古事記』は「御年百参拾漆（なな）歳」と書く。神武天皇の年齢も『弘仁私記』序は『古事記』に合わせている。
★ また『弘仁私記』序は、最初の神を天常立神にしている。『日本書紀』は、本文は勿論一書でも（一書の六以外）国常立尊が、最初の神である。
『先代舊事本紀』では「天之御中主尊、亦云��天常立尊� 僂箸△襪�ら、『弘仁私記』序の書かれた平安初期には天常立神は天之御中主神の意味でもあった。ところで『古事記』では最初の神は、天之御中主神である。
★★ このように『弘仁私記』序の筆者は、最も大事な始祖神名、始祖天皇の誕生年を『日本書紀』には合わせず、『古事記』に合わせている。その『弘仁私記』序が、現存『古事記』紹介の最初の文献である。
ｐ．３４８
このような事例から見ても、現存『古事記』の最終成立次期が推測できる。
★★ 最終成立次期は、和銅五年より一〇〇年も後だとしても、原『古事記』に基づいているのだから、いわゆる偽書説のように、すべて平安時代に書かれた新しい内容とは言えない。だからと言って、全てが古いとは言えない。
★★ 例えば神代巻などは、諸先学がが論述しているように『日本書紀』の本文や一書を、集大成したものであろう。
★★★ このような視点は、……、『古事記』の「天照大神」や「高天原」の強調は、原『古事記』に関わる天武・持統天皇の重視の視点である。
★★★ その点では、神代巻の新しさも、天武天皇という原点強調のためと考えられる。
いずれにせよ現存『古事記』の成立には、原『古事記』は無視できないが、異本『古事記』の存在から見て、『古事記』は『日本書紀』のような固有名詞ではなく「フルコトフミ」という普通名詞であることをわすれてはならない。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・この部分はバッサリ省こうかと思ったけれど、残すことにした。「ずいぶんな道草」だとは思うのだけれど、「知りたい」が先に出る。
この本よりも「日本書紀」の読み込みが大事とは思いはするのだけれどね、、……。やはり、見過ごせなかった。
ただ、「推論」が多く、確証は……。というところか。「良く読んでね・もっと勉強してね」としておこう。 ではでは ｐｓ．わては「食傷気味」や〜♪ ≫
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１２２．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
６．
不改常典と日並知皇子命
−天武天皇と天智天皇ー
◎ 「不改常典」をめぐって � �
「不改常典」は、元明天皇の即位宣命が初見だが、この宣命に二ヵ所でてくる。
まず、藤原宮御宇倭根子天皇が「日並所知皇太子之嫡孫今御宇天皇」に皇位を譲り「並坐而（ならびまして）天下を治めたのは、
是者開モ威キ近江大津宮御宇大倭根子天皇ノ与天地共長、与日月共遠不改常典ト立賜敷賜へリ法……
コハカケマク母カシコ岐アフミオホツノミヤニアメノシタシラシメシシヤマトネコスメラミコト乃アメツチトトモニナガク、ヒツキトトモニトホクアラタムマジキツネノノリ止、タテタマ比シキタマ覇留ノリ
とあり、★持統天皇が文武天皇と「並坐」して天下を統治したのは天智天皇の「不改常典」によるという。
さらに元明天皇は、
又天地之共、長遠不改常典ト立賜へル食国法モ傾事無ク動事無ク、渡将去トナモ所念行サクト詔命、衆聞宣
マタアメツチノムタ、ナガクトホクアラタムマジキツネノノリ止タテタマ覇留ヲスクニノノリ母、カタブクコトナ久ウゴクコトナ久、ワタリユカム止奈母オモホシメ佐久止ノリタマフオホミコト、モロモロキコシメサヘトノル
とあり、この「法」に基づいて即位したとある。
ｐ．３５６
・）田村圓澄 は、この宣命について……注目すべき先駆的論文、『不改常典考』を発表している。
★★★ 元明天皇の即位は「子から母へ」であって、従来の皇位継承の慣行からも、推古以降の女帝が皇后の経歴を持っていたという点からも★二重の意味で異例である。
この異例な即位は、文武天皇と藤原不比等の娘・宮子との間に生まれた「首皇子（聖武天皇）」皇位につけようとする意図の結果と、田村圓澄は見る。
一方では『古事記』成立の絶対性を主張しながら、一方では当てにならないとしたのでは、ご都合主義と言わざるをえない。
『弘仁私記』序が『日本書紀』の訓詁の私記でありながら、『日本書紀』より『古事記』を重要視していることは、神武天皇の生まれ年を『日本書紀』が庚午にしているのに『弘仁私記』序で庚申としていることからも明らかである。庚申にすれば庚午より一〇年も神武天皇の寿命は延びる。
『日本書紀』が「時年一百廿七裁」と書くのに『古事記』は「御年百参拾漆（なな）歳」と書く。神武天皇の年齢も『弘仁私記』序は『古事記』に合わせている。
★ また『弘仁私記』序は、最初の神を天常立神にしている。『日本書紀』は、本文は勿論一書でも（一書の六以外）国常立尊が、最初の神である。
『先代舊事本紀』では「天之御中主尊、亦云��天常立尊� 僂箸△襪�ら、『弘仁私記』序の書かれた平安初期には天常立神は天之御中主神の意味でもあった。ところで『古事記』では最初の神は、天之御中主神である。
★★ このように『弘仁私記』序の筆者は、最も大事な始祖神名、始祖天皇の誕生年を『日本書紀』には合わせず、『古事記』に合わせている。その『弘仁私記』序が、現存『古事記』紹介の最初の文献である。
ｐ．３４８
このような事例から見ても、現存『古事記』の最終成立次期が推測できる。
★★ 最終成立次期は、和銅五年より一〇〇年も後だとしても、原『古事記』に基づいているのだから、いわゆる偽書説のように、すべて平安時代に書かれた新しい内容とは言えない。だからと言って、全てが古いとは言えない。
★★ 例えば神代巻などは、諸先学がが論述しているように『日本書紀』の本文や一書を、集大成したものであろう。
★★★ このような視点は、……、『古事記』の「天照大神」や「高天原」の強調は、原『古事記』に関わる天武・持統天皇の重視の視点である。
★★★ その点では、神代巻の新しさも、天武天皇という原点強調のためと考えられる。
いずれにせよ現存『古事記』の成立には、原『古事記』は無視できないが、異本『古事記』の存在から見て、『古事記』は『日本書紀』のような固有名詞ではなく「フルコトフミ」という普通名詞であることをわすれてはならない。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・この部分はバッサリ省こうかと思ったけれど、残すことにした。「ずいぶんな道草」だとは思うのだけれど、「知りたい」が先に出る。
この本よりも「日本書紀」の読み込みが大事とは思いはするのだけれどね、、……。やはり、見過ごせなかった。
ただ、「推論」が多く、確証は……。というところか。「良く読んでね・もっと勉強してね」としておこう。 ではでは ｐｓ．わては「食傷気味」や〜♪ ≫
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１２２．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
６．
不改常典と日並知皇子命
−天武天皇と天智天皇ー
◎ 「不改常典」をめぐって � �
「不改常典」は、元明天皇の即位宣命が初見だが、この宣命に二ヵ所でてくる。
まず、藤原宮御宇倭根子天皇が「日並所知皇太子之嫡孫今御宇天皇」に皇位を譲り「並坐而（ならびまして）天下を治めたのは、
是者開モ威キ近江大津宮御宇大倭根子天皇ノ与天地共長、与日月共遠不改常典ト立賜敷賜へリ法……
コハカケマク母カシコ岐アフミオホツノミヤニアメノシタシラシメシシヤマトネコスメラミコト乃アメツチトトモニナガク、ヒツキトトモニトホクアラタムマジキツネノノリ止、タテタマ比シキタマ覇留ノリ
とあり、★持統天皇が文武天皇と「並坐」して天下を統治したのは天智天皇の「不改常典」によるという。
さらに元明天皇は、
又天地之共、長遠不改常典ト立賜へル食国法モ傾事無ク動事無ク、渡将去トナモ所念行サクト詔命、衆聞宣
マタアメツチノムタ、ナガクトホクアラタムマジキツネノノリ止タテタマ覇留ヲスクニノノリ母、カタブクコトナ久ウゴクコトナ久、ワタリユカム止奈母オモホシメ佐久止ノリタマフオホミコト、モロモロキコシメサヘトノル
とあり、この「法」に基づいて即位したとある。
ｐ．３５６
・）田村圓澄 は、この宣命について……注目すべき先駆的論文、『不改常典考』を発表している。
★★★ 元明天皇の即位は「子から母へ」であって、従来の皇位継承の慣行からも、推古以降の女帝が皇后の経歴を持っていたという点からも★二重の意味で異例である。
この異例な即位は、文武天皇と藤原不比等の娘・宮子との間に生まれた「首皇子（聖武天皇）」皇位につけようとする意図の結果と、田村圓澄は見る。
元明天皇と藤原不比等の関係は、天智ー鎌足の関係に先蹤が認められるから、天智天皇の子・阿閇（部）皇女を母とする文武天皇が、藤原不比等の娘・宮子を妃にしている関係を踏まえ『元明の即位は、不比等らの支持によって実現した』と推論し、『天皇家と藤原氏との婚戚関係を基調とし、、両者による共同執政＝輔政体制の実現』が「不改常典」の意図とみる。
「不改常典」については、……多くの論考…。≪それらは≫、宣命にあるとおり、天智天皇が制定した「法」という前提で論じられている。
・）上田正昭 『元明女帝が、その即位にあたって、天智帝に仮託して強調した』のが「不改常典」と推定している。
ｐ．３５７
そして ・）田村圓澄 の『藤原氏による輔政を意味する』という、
・）上田正昭 『この指摘は重要である。元明女帝がその即位にあたって、ことさらに天智帝の「改るまじき常の典」を強調したのは、その即位の二か月前に、天智天皇（中大兄皇子）に対する藤原鎌足の功業を讃えて、これを文武帝にたいする藤原不比等の補政と対比した状況に対応するものがあったと考えられる。しかも元明女帝が、次期の皇位継承者として期待したのは、ほかならぬ藤原不比等の娘・宮子の腹になる首皇子であった。奈良時代に於いて「改るまじき常の典」を主張した天皇が、ことごとく藤原氏にゆかりのある天皇であったことも偶然ではなかろう。』と、述べている。
★★★・）上山春平 「不改常典」は、藤原不比等の主導により作為されたものと見ている……。不比等の『外孫の首皇子の皇位継承を親身になって援護してくれそうな皇位継承候補者は、首皇子の祖母にあたる元明以外はには誰もいない。★そうであるならば、万難を排して元明の即位を強行しなければならない。★そのためには、たんに文武の遺詔ということだけでなく、何かもっと★筋の通った大義名分が欲しい。★（中略）、その大義名分として選ばれたのが、皇位継承（★父子相承）の原則であり、これを傍系相承（★兄弟相承）の原則のアンチテーゼとして立てる★ことによって皇位が天武たち≪肉親≫の手に移ることをことを阻止すると同時に、それが★文武から首皇子（聖武）へと継承されねばならぬことを★原理的に正当化することができる。』
と、考えて、「不改常典」を天智天皇に仮託して創作したと推測する。
ｐ．３５８
・）上山説は、、・）田村説が「天皇家と藤原氏」の意図とみるのに対し、藤原不比等にウェイトを置いているが、
・）武田佐知子 は、『「不改常典」はあくまでも天智に仮託された架空の法典』であり、「不改常典」は『藤原氏の圧力を見過ごすべきではない』が、『持統朝に成立した嫡嫡相承の理念の実現の方便として、元明天皇によって唱えられ、元正もこれを受け継いだ』点が無視できないと見る。
だから『……氏が、「不改常典」を天皇家と藤原氏の共同執政・輔政体制の規定と解されたことも理に適っている。』と、書いている。
・）倉住靖彦 は、天皇家に力点を置いて、天皇の権威と地位が唯一最高に位置づけられ、『新しい支配体制が確立された時、皇位継承問題に群臣が関与し、更に場合によっては彼らに左右されることは、最高唯一の権威と権力の所有者である天皇にとって、決して好ましいものではなく、その結果、天皇の意志が貫徹しない危険性も内包していた』から、『皇位継承者の決定に際して群臣協議の慣行、すなわち群臣の関与を排除して、★天皇が自己の天皇としての意志によって決定する、つまり★皇位継承の決定権を天皇大権として位置づける★ために、それを最も痛切に必要とした元明が天智に仮託して創作したもの』と見る。
・）佐藤宗諄 は、『藤原不比等像は藤原仲麻呂によって創作・修飾された部分が決して少なくない。不比等を論ずるに当たっては、まずこのことを大前提としなければならない。』と書き、「不改常典」についての「上山説」について、『文武天皇末年〜元明即位前夜における不比等の権力は、上山氏らが主張されるほどに強大なものとは考えられず』★もっと別の理由があるとする。≪それは何か？！≫
「不改常典」については、……多くの論考…。≪それらは≫、宣命にあるとおり、天智天皇が制定した「法」という前提で論じられている。
・）上田正昭 『元明女帝が、その即位にあたって、天智帝に仮託して強調した』のが「不改常典」と推定している。
ｐ．３５７
そして ・）田村圓澄 の『藤原氏による輔政を意味する』という、
・）上田正昭 『この指摘は重要である。元明女帝がその即位にあたって、ことさらに天智帝の「改るまじき常の典」を強調したのは、その即位の二か月前に、天智天皇（中大兄皇子）に対する藤原鎌足の功業を讃えて、これを文武帝にたいする藤原不比等の補政と対比した状況に対応するものがあったと考えられる。しかも元明女帝が、次期の皇位継承者として期待したのは、ほかならぬ藤原不比等の娘・宮子の腹になる首皇子であった。奈良時代に於いて「改るまじき常の典」を主張した天皇が、ことごとく藤原氏にゆかりのある天皇であったことも偶然ではなかろう。』と、述べている。
★★★・）上山春平 「不改常典」は、藤原不比等の主導により作為されたものと見ている……。不比等の『外孫の首皇子の皇位継承を親身になって援護してくれそうな皇位継承候補者は、首皇子の祖母にあたる元明以外はには誰もいない。★そうであるならば、万難を排して元明の即位を強行しなければならない。★そのためには、たんに文武の遺詔ということだけでなく、何かもっと★筋の通った大義名分が欲しい。★（中略）、その大義名分として選ばれたのが、皇位継承（★父子相承）の原則であり、これを傍系相承（★兄弟相承）の原則のアンチテーゼとして立てる★ことによって皇位が天武たち≪肉親≫の手に移ることをことを阻止すると同時に、それが★文武から首皇子（聖武）へと継承されねばならぬことを★原理的に正当化することができる。』
と、考えて、「不改常典」を天智天皇に仮託して創作したと推測する。
ｐ．３５８
・）上山説は、、・）田村説が「天皇家と藤原氏」の意図とみるのに対し、藤原不比等にウェイトを置いているが、
・）武田佐知子 は、『「不改常典」はあくまでも天智に仮託された架空の法典』であり、「不改常典」は『藤原氏の圧力を見過ごすべきではない』が、『持統朝に成立した嫡嫡相承の理念の実現の方便として、元明天皇によって唱えられ、元正もこれを受け継いだ』点が無視できないと見る。
だから『……氏が、「不改常典」を天皇家と藤原氏の共同執政・輔政体制の規定と解されたことも理に適っている。』と、書いている。
・）倉住靖彦 は、天皇家に力点を置いて、天皇の権威と地位が唯一最高に位置づけられ、『新しい支配体制が確立された時、皇位継承問題に群臣が関与し、更に場合によっては彼らに左右されることは、最高唯一の権威と権力の所有者である天皇にとって、決して好ましいものではなく、その結果、天皇の意志が貫徹しない危険性も内包していた』から、『皇位継承者の決定に際して群臣協議の慣行、すなわち群臣の関与を排除して、★天皇が自己の天皇としての意志によって決定する、つまり★皇位継承の決定権を天皇大権として位置づける★ために、それを最も痛切に必要とした元明が天智に仮託して創作したもの』と見る。
・）佐藤宗諄 は、『藤原不比等像は藤原仲麻呂によって創作・修飾された部分が決して少なくない。不比等を論ずるに当たっては、まずこのことを大前提としなければならない。』と書き、「不改常典」についての「上山説」について、『文武天皇末年〜元明即位前夜における不比等の権力は、上山氏らが主張されるほどに強大なものとは考えられず』★もっと別の理由があるとする。≪それは何か？！≫
しかし「不改常典」は「元明天皇即位詔において仮託・創作された」と見るが、なぜ、元明天皇即位の詔で「仮託・創作」が行われたか、、その理由については、
『詔には前年十一月に文武天皇が病気を理由に譲位するとの詔を出したが、元明がそれを辞退したことが述べられていることである。それは即位詔全体の構成から考えて、元明天皇即位の不可欠の論理的前提を成していると見るべきである。すなわち慶雲三年十一月に文武天皇に元明天皇への譲位の意志のあったということこそが、従来からの女帝即位の慣例からは例外的である元明天皇即位を正当化する論理であったのであり、そのために新たに創作されたのが｢不改常典」であったのではあるまいか。』と推論し、『「不改常典」の創作は貴族勢力の進出を不可避的に予想せざるをえない律令国家機構のもとにおいて、律令に規定の無い皇位継承についての皇権安定策であったと考えるわけであり、その意味では律令権力体系を補完するものであったと考えることもできよう。と書いている。』
・）野村忠夫 倉住氏・佐藤氏意見に『基本的に従う』として『草壁皇太子妃であった元明女帝から、嫡系の首皇子（当時七歳）へ、やがて行われるべき譲位を支える論理が、天智天皇の制定という形をとって示された、と理解しておきたい…。』と述べている。
ｐ．３６０
・）荒木敏夫 『元明朝に作られた皇位継承に関わる一つの強力なイデオロギー」と、考えている。
以上、述べたように「不改常典」は、元明天皇即位の時に、天智天皇に仮託されて作られたとする見解が、かつての天智天皇の制定とする説より強くなっているが、このような説を触発した先駆的論文が田村論文である。
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１２３．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
６．
不改常典と日並知皇子命
−天武天皇と天智天皇ー
◎ 「不改常典」をめぐって �◆ �
ｐ．３６０
「不改常典」は「譲位」を合理化するためと見る佐藤氏は、「不改常典」の制定者を天智天皇に仮託した理由として、『日本書紀』天智天皇十年条の大海人皇子が天智天皇にいった言葉をあげる。
『請ふ、洪業を奉げて、太后に付属けまつらむ。大友王をして、諸政を奉宣はしむ。臣は請願ふ、天皇の奉為に、出家して修道せむ』とまうしたまふ。天皇赦す。
≪佐藤氏は≫この記事について『天智天皇の死後、大后・倭姫王が即位したか、大友皇子が即位したか、あるいはいずれも即位しなかったのか、それは古来論議のあるところであり、いまここで明確な結論を出しえない。しかしながら、もし一つの推測が許されるとすれば、倭姫王が皇位につき、大友皇子がそれを輔弼するという体制が成立したのではないかとおもう。それが事実であるかどうかはさておき、いずれにしても、この年十二月三日に天智天皇が死去する一か月前に、譲位とは言えないまでも、天智天皇の意志に基づいて皇位継承が決定していたことは十分予想されるのところではあるまいか。このような事情を考えてくれば、あるいは譲位ーーあるいはそれに類する事実ーーは、この天智末年に先蹤があったと推測され、そのような事実が「不改常典」制定者を天智天皇に仮託せしめた原因ではなかったかと思われるのである。』と、述べている。
ｐ．３６１
★ この見解に賛成できない。……。一般に言われるように、天智天皇は後継者を大友皇子に決めたから、太政大臣に任命した。この任命こそ天智天皇の意志に基づいている。
★ 大友皇子を皇位につけるという天皇の意志が変わらないことを、大海人皇子は承知していたから出家を願い出たのである。
★ そのとき大后を皇位に付けるよう進言しているが、この進言が聞き入れられないことを承知の進言である。
だから佐藤氏が言うような、大海人皇子の進言を入れて「倭姫王が皇位につき、大友皇子が輔弼するという体制が成立した」とみる推論は無理である。
ｐ．３６２
譲位については
・）田村圓澄 『「不改常典」は譲位に際し、旧天皇が新天皇に授けられることを建前としていた』と書くように、無視できない視点だが、この譲位の法が『律令体制系を補完するものであった。』としても、その律令権力は、……、★公的機関としてすっきりしたものでなく、もっと人間臭いどろどろしたものと考えられる。
『詔には前年十一月に文武天皇が病気を理由に譲位するとの詔を出したが、元明がそれを辞退したことが述べられていることである。それは即位詔全体の構成から考えて、元明天皇即位の不可欠の論理的前提を成していると見るべきである。すなわち慶雲三年十一月に文武天皇に元明天皇への譲位の意志のあったということこそが、従来からの女帝即位の慣例からは例外的である元明天皇即位を正当化する論理であったのであり、そのために新たに創作されたのが｢不改常典」であったのではあるまいか。』と推論し、『「不改常典」の創作は貴族勢力の進出を不可避的に予想せざるをえない律令国家機構のもとにおいて、律令に規定の無い皇位継承についての皇権安定策であったと考えるわけであり、その意味では律令権力体系を補完するものであったと考えることもできよう。と書いている。』
・）野村忠夫 倉住氏・佐藤氏意見に『基本的に従う』として『草壁皇太子妃であった元明女帝から、嫡系の首皇子（当時七歳）へ、やがて行われるべき譲位を支える論理が、天智天皇の制定という形をとって示された、と理解しておきたい…。』と述べている。
ｐ．３６０
・）荒木敏夫 『元明朝に作られた皇位継承に関わる一つの強力なイデオロギー」と、考えている。
以上、述べたように「不改常典」は、元明天皇即位の時に、天智天皇に仮託されて作られたとする見解が、かつての天智天皇の制定とする説より強くなっているが、このような説を触発した先駆的論文が田村論文である。
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１２３．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
６．
不改常典と日並知皇子命
−天武天皇と天智天皇ー
◎ 「不改常典」をめぐって �◆ �
ｐ．３６０
「不改常典」は「譲位」を合理化するためと見る佐藤氏は、「不改常典」の制定者を天智天皇に仮託した理由として、『日本書紀』天智天皇十年条の大海人皇子が天智天皇にいった言葉をあげる。
『請ふ、洪業を奉げて、太后に付属けまつらむ。大友王をして、諸政を奉宣はしむ。臣は請願ふ、天皇の奉為に、出家して修道せむ』とまうしたまふ。天皇赦す。
≪佐藤氏は≫この記事について『天智天皇の死後、大后・倭姫王が即位したか、大友皇子が即位したか、あるいはいずれも即位しなかったのか、それは古来論議のあるところであり、いまここで明確な結論を出しえない。しかしながら、もし一つの推測が許されるとすれば、倭姫王が皇位につき、大友皇子がそれを輔弼するという体制が成立したのではないかとおもう。それが事実であるかどうかはさておき、いずれにしても、この年十二月三日に天智天皇が死去する一か月前に、譲位とは言えないまでも、天智天皇の意志に基づいて皇位継承が決定していたことは十分予想されるのところではあるまいか。このような事情を考えてくれば、あるいは譲位ーーあるいはそれに類する事実ーーは、この天智末年に先蹤があったと推測され、そのような事実が「不改常典」制定者を天智天皇に仮託せしめた原因ではなかったかと思われるのである。』と、述べている。
ｐ．３６１
★ この見解に賛成できない。……。一般に言われるように、天智天皇は後継者を大友皇子に決めたから、太政大臣に任命した。この任命こそ天智天皇の意志に基づいている。
★ 大友皇子を皇位につけるという天皇の意志が変わらないことを、大海人皇子は承知していたから出家を願い出たのである。
★ そのとき大后を皇位に付けるよう進言しているが、この進言が聞き入れられないことを承知の進言である。
だから佐藤氏が言うような、大海人皇子の進言を入れて「倭姫王が皇位につき、大友皇子が輔弼するという体制が成立した」とみる推論は無理である。
ｐ．３６２
譲位については
・）田村圓澄 『「不改常典」は譲位に際し、旧天皇が新天皇に授けられることを建前としていた』と書くように、無視できない視点だが、この譲位の法が『律令体制系を補完するものであった。』としても、その律令権力は、……、★公的機関としてすっきりしたものでなく、もっと人間臭いどろどろしたものと考えられる。
ｐ．３６３
特に、皇位継承にそのことが具体的に表れるから、元明天皇即位の宣命で「不改常典」を持ち出したのだろう。★持ち出したこと自体に、諸氏の言う律令体制の強化をうながした私情がうかがえる。
野村氏・佐藤氏・倉住氏、説は、「不改常典」は律令国家における天皇大権の貫徹のため、元明即位のときに作られたとする推論、……。いずれにしても佐藤氏は「不改常典」に藤原不比等の関与を無視している。私は不比等を過大視するのには同調できないが、無視にも賛成できない。「不改常典」には、……、不比等の関与が有ったと考えられる。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・わて自身は天智天皇の死の間際に「大友皇子」に嫡系相承したのだと考える。そうでないと大海人皇子の「革命・放伐」の意味が、色を失うとも考える。
当然、ここに「大唐の意志」もあるだろう。そのことを近江朝廷の軍臣たちも見ている。よって「大唐排斥・駆逐」の天武の大号令「革命」が、大義としての意味を持つ。無論「命がけ」だよ！
また持統天皇の意志もある。当然、持統天皇は首皇子を唯一の後継者と看做していただろう。よって文武ー元明ー元正ー聖武ラインは、必然だったと見ている。
それにはライバルの排除が必要であり、まず「大津皇子」が排斥され「高市皇子」を黙らせ、また彼の息子「長屋王」の排除へと続いてゆく。
そこには「藤原不比等」の才覚と、中臣大嶋の力もあっただろう。しかし国際情勢として「大唐・新羅」そして日本の位置がある。およそ「対岸の火事」も利用して、一致団結ー皇位のスムーズな移行が、時代として要請されていたとも考えられる。
わては、、そう見るよ。 ではでは ≫
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１２４．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
６．
不改常典と日並知皇子命
−天武天皇と天智天皇ー
ｐ．３６４
◎ 「不改常典」と藤原不比等 ◎
慶雲四年（７０７）四月十五日条に、藤原不比等に「食封五千戸」を与える宣命が出されている。
・）上田正昭 『この宣命の出された日が慶雲四年の四月十五日。元明女帝の即位した日が同年の六月十五日。つまり藤原不比等に食封を与える宣命のあったその二か月の後に、阿部皇女が皇位についた訳だ。（中略）元明女帝がとくに天智帝の「改るまじき常の典」として自らの即位の根拠とした内容は、こうした状況と無関係ではないと考えるからである。』と書いて「不改常典」と藤原不比等の関係を想定している。★≪首皇子六歳≫
★ 問題は「食封五千戸」である。
・）佐藤宗諄 は、「食封五千戸」の賜与記事から『不比等の権力は絶対的なものと見ることはできない』として『慶雲四年の四月の詔の内容についてはそれが全くの架空であったとは言えないまでも「続日本紀」の編纂過程ーーおそらくは仲麻呂によると推定される第一次編纂の折であろうがーーでのかなり大きな加筆が行われたのではないか』と推測している。
★ ≪上記の≫ 理由として、藤原という賜姓になってから十年も経っておらず、不比等の上位に右大臣・石上麻呂が健在であり、いかに持統天皇や文武天皇の信頼を得ていたとはいえ『不比等の経歴から見れば、彼は律令制定と共に政局に進出した新興官僚』で、草創期の律令国家を『否定しうるだけの力量と基盤を持っていたとは考えられない』ことを、まず挙げている。
ｐ．３６５
★ 次に、この宣命に藤原氏の天皇への述べるにあたって、藤原鎌足を建内宿禰に比定しているが、建内宿禰と鎌足の対応関係が明確に意識されるのは、仲麻呂の時代であったと考えられる点からも、この宣命には後代の加筆が有ると推測する。
・）上田正昭 ★『太政大臣でも食封は三千戸であり、左右大臣でも二千戸であった。鎌足の功業があわせたとしても、大納言・不比等に与える食封が五千戸とは、異例であった』と述べている。
★だが、異例だからといって、「食封五千戸」を、…加筆とは見ず『文武天皇は死期の迫りつつあることを予想していた形跡がある。文武天皇の皇太子は未だに決まっていない。慶雲四年の四月十五日に、わざわざ不比等に食封五千戸を与えるという異常の行為は、こうした状況の中で成されたものであった』と、解する。
「食封五千戸」について上田説を採れば、当然三か月後の「不改常典」と無関係とは言えないが、仲麻呂の加筆とする佐藤説は、上田説を批判することによって「不改常典」との関係を否定する。
★★ しかし≪仲麻呂の≫加筆説を認めたとしても、藤原不比等の功業をたたえた宣命が出されたことは事実なのだから、加筆が有っても「不改常典」との関係を否定することは出来ない。
特に、皇位継承にそのことが具体的に表れるから、元明天皇即位の宣命で「不改常典」を持ち出したのだろう。★持ち出したこと自体に、諸氏の言う律令体制の強化をうながした私情がうかがえる。
野村氏・佐藤氏・倉住氏、説は、「不改常典」は律令国家における天皇大権の貫徹のため、元明即位のときに作られたとする推論、……。いずれにしても佐藤氏は「不改常典」に藤原不比等の関与を無視している。私は不比等を過大視するのには同調できないが、無視にも賛成できない。「不改常典」には、……、不比等の関与が有ったと考えられる。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・わて自身は天智天皇の死の間際に「大友皇子」に嫡系相承したのだと考える。そうでないと大海人皇子の「革命・放伐」の意味が、色を失うとも考える。
当然、ここに「大唐の意志」もあるだろう。そのことを近江朝廷の軍臣たちも見ている。よって「大唐排斥・駆逐」の天武の大号令「革命」が、大義としての意味を持つ。無論「命がけ」だよ！
また持統天皇の意志もある。当然、持統天皇は首皇子を唯一の後継者と看做していただろう。よって文武ー元明ー元正ー聖武ラインは、必然だったと見ている。
それにはライバルの排除が必要であり、まず「大津皇子」が排斥され「高市皇子」を黙らせ、また彼の息子「長屋王」の排除へと続いてゆく。
そこには「藤原不比等」の才覚と、中臣大嶋の力もあっただろう。しかし国際情勢として「大唐・新羅」そして日本の位置がある。およそ「対岸の火事」も利用して、一致団結ー皇位のスムーズな移行が、時代として要請されていたとも考えられる。
わては、、そう見るよ。 ではでは ≫
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１２４．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
６．
不改常典と日並知皇子命
−天武天皇と天智天皇ー
ｐ．３６４
◎ 「不改常典」と藤原不比等 ◎
慶雲四年（７０７）四月十五日条に、藤原不比等に「食封五千戸」を与える宣命が出されている。
・）上田正昭 『この宣命の出された日が慶雲四年の四月十五日。元明女帝の即位した日が同年の六月十五日。つまり藤原不比等に食封を与える宣命のあったその二か月の後に、阿部皇女が皇位についた訳だ。（中略）元明女帝がとくに天智帝の「改るまじき常の典」として自らの即位の根拠とした内容は、こうした状況と無関係ではないと考えるからである。』と書いて「不改常典」と藤原不比等の関係を想定している。★≪首皇子六歳≫
★ 問題は「食封五千戸」である。
・）佐藤宗諄 は、「食封五千戸」の賜与記事から『不比等の権力は絶対的なものと見ることはできない』として『慶雲四年の四月の詔の内容についてはそれが全くの架空であったとは言えないまでも「続日本紀」の編纂過程ーーおそらくは仲麻呂によると推定される第一次編纂の折であろうがーーでのかなり大きな加筆が行われたのではないか』と推測している。
★ ≪上記の≫ 理由として、藤原という賜姓になってから十年も経っておらず、不比等の上位に右大臣・石上麻呂が健在であり、いかに持統天皇や文武天皇の信頼を得ていたとはいえ『不比等の経歴から見れば、彼は律令制定と共に政局に進出した新興官僚』で、草創期の律令国家を『否定しうるだけの力量と基盤を持っていたとは考えられない』ことを、まず挙げている。
ｐ．３６５
★ 次に、この宣命に藤原氏の天皇への述べるにあたって、藤原鎌足を建内宿禰に比定しているが、建内宿禰と鎌足の対応関係が明確に意識されるのは、仲麻呂の時代であったと考えられる点からも、この宣命には後代の加筆が有ると推測する。
・）上田正昭 ★『太政大臣でも食封は三千戸であり、左右大臣でも二千戸であった。鎌足の功業があわせたとしても、大納言・不比等に与える食封が五千戸とは、異例であった』と述べている。
★だが、異例だからといって、「食封五千戸」を、…加筆とは見ず『文武天皇は死期の迫りつつあることを予想していた形跡がある。文武天皇の皇太子は未だに決まっていない。慶雲四年の四月十五日に、わざわざ不比等に食封五千戸を与えるという異常の行為は、こうした状況の中で成されたものであった』と、解する。
「食封五千戸」について上田説を採れば、当然三か月後の「不改常典」と無関係とは言えないが、仲麻呂の加筆とする佐藤説は、上田説を批判することによって「不改常典」との関係を否定する。
★★ しかし≪仲麻呂の≫加筆説を認めたとしても、藤原不比等の功業をたたえた宣命が出されたことは事実なのだから、加筆が有っても「不改常典」との関係を否定することは出来ない。
ｐ．３６６
「不改常典」の載る元明天皇即位の慶雲四年七月十七日の宣命には、
去年十一月ニ、威カモ我王朕子天皇詔ツラク朕御身労坐故、暇間得而御病欲治。
コゾノシモツキ尓カシコキ加母ワガオホキミアガコスメラミコト乃ノリタマヒ豆羅久アレミミツカラシクマスガユエニ、イトマエテミヤマヒオサメタマハントス
比ノ天ツ日嗣之位者、大命ニ坐セ、大坐坐而治可賜譲賜命。
コ乃アマ豆ヒツギノクラヰハ、オホミコト尓マ世、オホマシマシテオサメタマフベシ止ユズリタマフオホミコト乎
受被坐賜而答臼ツラク、朕者不堪辞白而受不坐……
ウケタマハリマシテコタエマヲシ豆羅久、アレハタヘジトイナビマウシテウケタマサズ……
とある。去年十一月に病気の天武天皇は、母に譲位したいと告げたが母は辞退したと言うのが、宣命の文意である。
それから五か月後の慶雲四年四月に藤原不比等の功績に報いるためにの食封賜与の宣命が出ている。この宣命は余命いくばくも無い天皇が死後のことを考えて出されたものだら、母の意図も入っていたであろう。その母が、子・文武天皇の死によって即位した。だから元明天皇の即位の宣命と三か月前の不比等の功業をたたえる宣命は無関係とは言えないし、即位の宣命に載る「不改常典」から藤原不比等を排除する訳にはいかないのである。
なお、不比等の功業を述べる宣命には、
又難波大宮御宇掛モ畏天皇命、汝父藤原大臣ノ仕奉ケル状ヲバ、建内宿禰命ノ仕奉ケル事ト同事ゾト勅而、治賜慈賜ケリ……
マタナニハノオホミヤニアメノシタシラシメシシカケマク母カシコ支スメラミコト乃ミマシノチチフジハラノオホオミ乃ツカエタテマツ賣流サマ乎婆、タケノウチスクネノミコト乃ツカエマツリ賣流コト止オナジゴト叙止ノリタマヒテ、オサメタマヒメグミタマヒ賣利……
とある。「汝父藤原大臣」は藤原鎌足をいうが、鎌足は建内宿禰と「同事」と書かれている。
このような対応関係を、
・）佐藤宗諄 は、『「日本書紀」では鎌足は伊尹に比せられていると考えられ、それはかの仲麻呂に恵美押勝の名が与えられた天平宝字二年（７５８）八月二五日詔にみえており、また、ほぼ一年前にあたる天平宝字元年八月一七日に紫微内相・藤原仲麻呂が自らの祖先の鴻業を述べた文章、さらに「家伝（上）」の作者が大師＝仲麻呂であることなどから判断すると、鎌足ーー伊尹ーー建内宿禰という対応関係が明確に意識されるのは仲麻呂の時代であった』
という記述は、『日本書紀』が仲麻呂の時代に成立したか、加筆したことを証明しない限り、納得性が無い。また天平宝字元年八月一七日（閏）条の記事は、鎌足が起こした山階寺の維摩会を興隆したいという記事であって「自らの祖先の鴻業を述べた文章」とは言い難い。
天平宝字二年（７５８）八月二五日の詔には、
其㋹伊尹㋩有華之媵臣ナリ。一タビ佐テ�∪�湯ヲ�／�㊁荷フ��阿衡之号ヲ� �（中略）況ヤ自リ��乃祖近江大津㋨宮㋨内大臣�仝偏團灰離�タ、世有テ�¬斉銑〕祗∧絅�皇室��
とあり、内大臣（鎌足）は「近江大津宮」の重臣として伊尹に比定されている。だから佐藤氏の言う加筆説に立てば「汝父藤原大臣」」（鎌足）は「難波大宮御宇」（孝徳朝）でなくて「近江大宮御宇」でなければならない。
ｐ．３６８
また天平宝字二年の詔の「内大臣」を使用しておらず「藤原大臣」であることからも加筆とは言えない。だから、藤原不比等の功業をたたえる宣命は藤原仲麻呂の加筆だから慶雲四年の時点で宣命どおりの認識を持つのは間違いとする佐藤氏説には同調できない。
私は、この宣命通りに不比等を評価すべきだと思う。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・「仲麻呂による加筆」とすると、彼には出来そうだけれど、果たして「それをしたか」どうかと考えると、「かなり、やりそう」なので、そうすると日本書紀が破天荒で読めなくなる。
また「文武天皇が母に譲位したい」とするのも、おかしな話。ここはやはり「我が子・首皇子に譲位したい」のが本音だろう。ただし「まだ、幼い」よって「過渡期を元明天皇が担当した」」とわては見ている。
なぜ、こんなことが可能かと言えば、大唐では則天武后の時代で、「大唐ｖｓ新羅」はあっても、日本と大唐の関係は悪くない。よって「太平の世」とは違うけれど、それに近い。天武天皇のような「風雲急を告げる」ような時代じゃないのだ。ここで「長屋王」なんかが出てきても可笑しくなさそうなんだけど、出てこない。
「不改常典」の載る元明天皇即位の慶雲四年七月十七日の宣命には、
去年十一月ニ、威カモ我王朕子天皇詔ツラク朕御身労坐故、暇間得而御病欲治。
コゾノシモツキ尓カシコキ加母ワガオホキミアガコスメラミコト乃ノリタマヒ豆羅久アレミミツカラシクマスガユエニ、イトマエテミヤマヒオサメタマハントス
比ノ天ツ日嗣之位者、大命ニ坐セ、大坐坐而治可賜譲賜命。
コ乃アマ豆ヒツギノクラヰハ、オホミコト尓マ世、オホマシマシテオサメタマフベシ止ユズリタマフオホミコト乎
受被坐賜而答臼ツラク、朕者不堪辞白而受不坐……
ウケタマハリマシテコタエマヲシ豆羅久、アレハタヘジトイナビマウシテウケタマサズ……
とある。去年十一月に病気の天武天皇は、母に譲位したいと告げたが母は辞退したと言うのが、宣命の文意である。
それから五か月後の慶雲四年四月に藤原不比等の功績に報いるためにの食封賜与の宣命が出ている。この宣命は余命いくばくも無い天皇が死後のことを考えて出されたものだら、母の意図も入っていたであろう。その母が、子・文武天皇の死によって即位した。だから元明天皇の即位の宣命と三か月前の不比等の功業をたたえる宣命は無関係とは言えないし、即位の宣命に載る「不改常典」から藤原不比等を排除する訳にはいかないのである。
なお、不比等の功業を述べる宣命には、
又難波大宮御宇掛モ畏天皇命、汝父藤原大臣ノ仕奉ケル状ヲバ、建内宿禰命ノ仕奉ケル事ト同事ゾト勅而、治賜慈賜ケリ……
マタナニハノオホミヤニアメノシタシラシメシシカケマク母カシコ支スメラミコト乃ミマシノチチフジハラノオホオミ乃ツカエタテマツ賣流サマ乎婆、タケノウチスクネノミコト乃ツカエマツリ賣流コト止オナジゴト叙止ノリタマヒテ、オサメタマヒメグミタマヒ賣利……
とある。「汝父藤原大臣」は藤原鎌足をいうが、鎌足は建内宿禰と「同事」と書かれている。
このような対応関係を、
・）佐藤宗諄 は、『「日本書紀」では鎌足は伊尹に比せられていると考えられ、それはかの仲麻呂に恵美押勝の名が与えられた天平宝字二年（７５８）八月二五日詔にみえており、また、ほぼ一年前にあたる天平宝字元年八月一七日に紫微内相・藤原仲麻呂が自らの祖先の鴻業を述べた文章、さらに「家伝（上）」の作者が大師＝仲麻呂であることなどから判断すると、鎌足ーー伊尹ーー建内宿禰という対応関係が明確に意識されるのは仲麻呂の時代であった』
という記述は、『日本書紀』が仲麻呂の時代に成立したか、加筆したことを証明しない限り、納得性が無い。また天平宝字元年八月一七日（閏）条の記事は、鎌足が起こした山階寺の維摩会を興隆したいという記事であって「自らの祖先の鴻業を述べた文章」とは言い難い。
天平宝字二年（７５８）八月二五日の詔には、
其㋹伊尹㋩有華之媵臣ナリ。一タビ佐テ�∪�湯ヲ�／�㊁荷フ��阿衡之号ヲ� �（中略）況ヤ自リ��乃祖近江大津㋨宮㋨内大臣�仝偏團灰離�タ、世有テ�¬斉銑〕祗∧絅�皇室��
とあり、内大臣（鎌足）は「近江大津宮」の重臣として伊尹に比定されている。だから佐藤氏の言う加筆説に立てば「汝父藤原大臣」」（鎌足）は「難波大宮御宇」（孝徳朝）でなくて「近江大宮御宇」でなければならない。
ｐ．３６８
また天平宝字二年の詔の「内大臣」を使用しておらず「藤原大臣」であることからも加筆とは言えない。だから、藤原不比等の功業をたたえる宣命は藤原仲麻呂の加筆だから慶雲四年の時点で宣命どおりの認識を持つのは間違いとする佐藤氏説には同調できない。
私は、この宣命通りに不比等を評価すべきだと思う。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・「仲麻呂による加筆」とすると、彼には出来そうだけれど、果たして「それをしたか」どうかと考えると、「かなり、やりそう」なので、そうすると日本書紀が破天荒で読めなくなる。
また「文武天皇が母に譲位したい」とするのも、おかしな話。ここはやはり「我が子・首皇子に譲位したい」のが本音だろう。ただし「まだ、幼い」よって「過渡期を元明天皇が担当した」」とわては見ている。
なぜ、こんなことが可能かと言えば、大唐では則天武后の時代で、「大唐ｖｓ新羅」はあっても、日本と大唐の関係は悪くない。よって「太平の世」とは違うけれど、それに近い。天武天皇のような「風雲急を告げる」ような時代じゃないのだ。ここで「長屋王」なんかが出てきても可笑しくなさそうなんだけど、出てこない。
ここに至って、後継者選びは「家内制手工業」の趣が有る。石上麻呂も「お家の事情」に気兼ねしただろうし……。もし「有力な対抗馬」があるなら「名前が挙がりそう」なのに日本書紀には「誰それ」とも出ていない
それを考えると「書き換えかあったのか…」とも推測できるけれど、「事実は首皇子・聖武天皇の即位」になっている。とすると、あながち「書き換え」も、その必要が無いようにも思ってしまう。
まして不比等を「官僚」と見るから「律儀・小物」に見えてしまう。彼は「政治家」であり、その意味で「策士・フィクサー」でもある。不比等には「皇室に食い込みたい」意図が有る。
その為に「文武帝」に娘・宮子を嫁がせた。そのことはふひとが「文武天皇の義父」になることを意味する。後に彼の孫が「天皇」になる。よって「その前」が、「如何に皇室に接近したのか」が、もっと大きな問題のはずだ。
ま、「批判のできる原・資料」が出てこないと、何とも言えない。全て「確率の高そうな推論」を構成してゆくしかないだろな……。またそれが、事実なのかもしれないしね。ふう……。 ではでは ≫
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１２５．
天寿国の末裔・上代史ノート
「 大和岩雄 『 天武天皇論 』 大和書房 覚書」
私的考察のための覚書・抜粋です。安易にコピーしてはなりません。
！ヾ(▼ﾍ▼；)
「ここ」には、誤字・脱字、私による「勘違い表記」も、あります。
( ￣っ￣)
☆ 図書館で本を借りて、「本文・全文に目を通す」しましょうね。
♪ (＝⌒▽⌒＝)
★ 前後の脈絡を知らないと誤解するよ！ Ｏｏ｡｡(￣¬￣*)
(＝⌒▽⌒＝)
☆ 筆者（葦原風太郎の「気づき」≪ ≫と、「見解」は≪私・……≫として、表記します。
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天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
６．
不改常典と日並知皇子命
−天武天皇と天智天皇ー
◎ 「不改常典」を、なぜ、天智天皇の制定にしたか ◎
壬申乱によって新しい王朝を創始した天武天皇の嫡系が文武天皇であり、天武の皇后が持統太上天皇である。
★ 持統太上天皇と文武天皇が「並び坐して、この天の下を治め賜ひ諧(ととの)へ賜ふ」ための「改む不き常の典」は、天武天皇ではなく天智天皇の制定によるという。
★ なぜ、天武天皇ではなく、天智天皇なのだろうか。
天武以降の皇統は、
持統(天武皇后・天智娘) → 文武(天武孫・天智孫) → 元明(草壁妃・天智娘） → 元正（天武孫・天智孫） → 聖武（天武曾孫・天智曾孫）
ｐ．３６９
・）田村圓澄 『天智（父）−元明（女）の関係が意識されていた』ため『父系の天武よりも、母系の天智の方が重視された』ことと、★元明の父が天智であったためと見ている。
たしかに、元明天皇は天武天皇と血縁上の繋がりは無いし、★不比等も持統朝より登場しており、不比等の父・鎌足は天智の功臣だから、元明も不比等も天武に親近感を持たない。
しかし、親近感だけで天武を排除して天智に仮託するのは「不改常典」のもつ効力からして、説得力が弱い。
★ 『懐風藻』によれば、高市皇子薨じた（６９６・持統十年七月十日）後、天皇は「王公卿士を禁中に引きて、日嗣を立てむことを謀らす。時に群臣各私好を挟みて、衆議紛紜なり」とある。
そのとき、葛野王が「我が国家（みかど）の法（のり）と為（な）る、神代より以來（このかた）子孫相承けて、天位を襲（つ）げり。若（もし）兄弟相及ぼさば則ち乱此より興らむ」というと弓削皇子ががこの発言に反対して何か言おうとした。そこで葛野王が「叱（いさ）び」、弓削皇子は言うのをやめたので、軽皇子が皇位継承者に決まったと『懐風藻』は書く。
だから、・）林陸朗・）田村圓澄・）上田正昭の各氏は、皇位継承法としての「不改常典」は、★持統朝のころには存在しなかった例証にしている。
ｐ．３７０
・）井上光貞 は、この記事について葛野王は★「子孫相承」、弓削皇子は★「兄弟相承」を主張して争ったと見る。そして「子孫相承」について、『記紀の皇位継承法は神代以来「子孫相承」で、「兄弟相承」は仁徳の世代から始まっている（中略）しかし、ここに留意すべきことは、★それは歴史の事実ではなく、記紀の編者の造作に過ぎなかったのであり、兄弟相続こそ知られる限り最も古い継承法であった。』と書いている。
彼は、「不改常典」は宣命で述べるとおり、天智朝に制定されたと見るので「子孫継承」を主張する葛野王の発言に『「不改常典」の精神がここにおいて初めて実現されたことを意味する。』と書く。
★ しかし「不改常典の精神」は、葛野王の発言に見られるのであって、★集まった群臣には無かったのだから、・）林陸朗・）田村圓澄・）上田正昭の各氏は「衆議紛紜」の記事から「不改常典」は無かったと書いている。
・）上山春平 は、葛野王の発言に「不改常典」の観念の芽生えを見ている。
・）武田佐知子 も、「不改常典」の理念が、この発言に正確に写しだされていると見ている。
★★ しかし、問題なのは、群臣が持たない理念を葛野王だけが持っていることである。
・）武田佐知子 は、『ここでこうした発言を要請された葛野王の背後に、持統女帝の姿を見てとるべかである』と書くが、★私は持統と共に不比等の影も見る。
・）井上光貞 は、「不改常典」の★『嫡系主義の主張の背景に律令の継嗣法の精神、さらにそれを規制する中国儒教の観念の影響が、強力に作用していた』と書くが、葛野王に「不改常典の精神」が見られるのは、律令制定に関わっていた藤原不比等の★「律令の継嗣法の精神」を、葛野王に吹き込んでいたからではないだろうか。★勿論、不比等の行動も持統天皇の意を体してのことであるが。
当時は「兄弟相承」が常識であり、天武天皇は★「子孫相承」を武力で破っている。その天武の息子たち（持統十年時点、草壁・大津・高市除く、七人健在）が、多数いるところで『懐風藻』に書かれているような発言のできる人物は★葛野王しかいない。だから持統天皇は白羽の矢を葛野王にあてたのだろう。≪？！≫
★ 葛野王も天武の皇子たち皇孫に囲まれて肩身の狭い思いをしていたろうが、持統天皇をバックにして、壬申乱の批判≪？！≫もできるし、「子孫相承」の力説は亡父の擁護にもなるから積極的に応じただろう。
★★ ……、首皇子の擁立については、祖母の元明天皇については持統天皇ほどの力は無く、まして首皇子の母は不比等の娘の宮子だから、「不改常典」を天智天皇に仮託して持ち出さなくては、天武天皇の皇子・皇女及び皇孫たちの皇位継承権の主張を抑えきれなかったのであろう。
ｐ．３７２
・）田村圓澄 は、「不改常典」を天智制定にしたのは、母系の天智を重視したと見るが、★天智を母系とするのは持統天皇が生んだ皇子・皇孫だけではない。
葛野王の発言に反対意見を言おうとした弓削皇子と兄の長皇子は天智の娘・大江皇女を母とし、舎人皇子は天智の娘・新田部皇女を母とする。
元明即位の時点では、天智を祖父とし天武を父とする草壁皇子も、天智・天武を祖父とする軽皇子（文武）も亡くなっているが、天智を祖父、天武を父とする草壁皇子と同じ立場の長皇子と舎人皇子は健在だった。
★★ だから「不改常典」の天智天皇制定が母系の天智の強調なら、この宣命が出された時点では、長皇子・舎人皇子は阿閇皇女（元明）より、皇位継承の正当性はあった。
★★ 阿閇皇女は天智の子、長皇子・舎人皇子は天智の孫の違いはあっても、阿閇皇女は草壁皇子の妃であって皇后でない点で天智天皇を持ち出しても、長・舎人皇子らの方が有利である。
まして天武天皇との関係になると長・舎人皇子らは天武天皇の子だが、阿閇皇女は草壁の妃でしかない。★★だから天智に仮託した「不改常典」だけでは効力が無いとみて、もう一つの関係を強調した。それが元明天皇の宣命で初めて現れる、草壁皇子との繋がりを皇位継承の重要な条件とした「日並所知皇太子」の表記である。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・やはり天智・天武の子孫たちも「皇位継承問題」で混乱を起こしかけていたんだな…。それを回避し、自らの目的達成のために「知恵」を使う…。その知恵の一つが「不改常典」であるのだけれど、「弱いんじゃないか」と私も考えてた。これが「韓国歴史ドラマ」なんて見てると「紛争の種」で、しっちゃか、めっちゃか大混乱だもんね。
「トンイ」も「チャングム」にも、この問題がテーマの一つ。似たようなことは、どこにでも有るということ。さてさて「日並所知皇太子」とは、どんなだろか。もっと勉強しないとね……。 ではでは ≫
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１２７．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
６．
不改常典と日並知皇子命
−天武天皇と天智天皇ー
◎ 「不改常典」と「日並所知皇太子」 ◎
ｐ．３７３
「不改常典」は、天武系・天智系というより、持統の子の草壁系を皇位に付けるためのものと解すべきだろう。
→
・）武田佐知子 「文武 → 元明 → 元正 → 聖武→考謙 の、系譜は、見方を変えると、草壁子 → 草壁妃 → 草壁女 → 草壁孫 →草壁曾孫 の、系譜として把えることができる。つまり「不改常典」は天武天皇と持統天皇の間の嫡子・草壁皇太子の系統で尊種されているのである。そしてこの皇統の存続が如何に祈願されたかは「岡宮御宇天皇（草壁皇子）の日継はかくして絶えなむとす。女子の継にはあれども、継がしむ。」と孝謙天皇の即位が要請された事情の裏に明らかである。つまり草壁の系統を守ること、直接的には★首皇子の即位が「不改常典」の究極の目的であったのである。』
草壁皇子に「天皇」の尊号が贈られた天平宝字二年（７５８）八月九日の詔に、
日並知皇子命、天下未㋹稱��天皇ト�…畢≪�スルハ尊号� �古今ノ恒典ナリ、自㋹今以後、宣ク㋹奉㋹稱��岡宮ニ御宇ノ天皇ト��
「日並知皇子命」は『続日本紀』には他に五例載る。三例は文武・元明・元正の即位前紀の系譜的説明であり、一例は皇子の忌日を国忌とする記事、一例は吉備内親王が日並皇子命の子と記す記事である。
ｐ．３７４
吉備内親王の記事は性格が違うが、他は★皇統にとって特別な存在、特に文武・元明・元正天皇の皇位継承が正当なものであることを示すために、このが「日並知皇子命」が特別な重みをもった存在として登場している。
『万葉集』にも「日雙斯皇子命」（巻一、四九）、「日並皇子尊」（巻二、一一〇題詞、同一六七題詞）と書かれている。「日雙斯皇子命」は「軽皇子の安騎野に宿りましし時、柿本朝臣人麿の作る歌」と題詞にある長歌と短歌四首の一首に、
日雙斯 皇子命乃 馬副而 御獦立帥斯 時者來向
ひなみしの みこのみことの うまなめて みかりたたしし ときはきむかう
・）工藤力男 は、草壁皇子を「日雙」というのは人麻呂から始まったとみる。 ・）神野志隆光 もこれを支持。 そして『草壁皇子を「日があいならぶ」ような特別な存在として位置づける』ための表現を「日雙」と見て『「高照らす日の皇子」のような、日についての特別な、イデオロギッシュな表現が人麻呂によって確立されたことのなかに、この「日雙」おいてみることができる』とし、『「日があいならぶ」というのは、天武を呼び込むことであった。（中略）皇太子であった草壁を、天武と並ぶところまで上昇させるのが「日雙」に他ならない』と書いている。
なお、「斯」については『続日本紀』が「知」と書くので、一般に「八隅知之＝やすみしし」「天下所知食＝あめのしたしらしめて」の統治の意味に解するが、「斯」と「知」はちがうと、両氏はいう。
ｐ．３７５
・）神野志隆光 は、「御獦立帥斯＝みかりたたしし」の「斯」と同じ『過去を呼び起こすものであった』とし、天武と並ぶ皇子草壁を、正当な皇位継承者である軽皇子をとうして呼び起こしたので「日雙」に「斯」をつけて人麻呂は詠ったと解してる。
『万葉集』草壁皇子の歌（巻二、一一〇）や、人麻呂の挽歌（巻二、一六七）の題詞には、「斯」をとって「日並皇子尊」と書くのは、軽皇子をとおしてでなく、直接、草壁皇子をいうからだろう。
「不改常典」の載る元明天皇の宣命には「日並所知皇太子」とある。
★ 谷森本・兼石本・高松宮本・東山文庫本・金沢文庫本など、現在の写本すべては「所知」とあり、明暦三年刊の版本のみが「所」を取っている。
★ だから「日並所知皇太子が原本の表記である。≪中略≫ 文武天皇即位宣命には「大八嶋国所知天皇」とある。
栗原寺鑢盤銘に「大倭国浄美原宮治天下天皇時日並御宇東宮」とあるが、この銘文は「和銅八年四月」と記されているから、元明朝である。
ｐ．３７６
★★ 「御宇」は「所知」「知天下」と同義で「アメノシタシラシメシシ」または「アメノシタオサメタマヒシ」と訓むが、
・）大野晋 は、天皇の統治行為をいう場合は「アメノシタシラシメシシ」と訓むべきだとする。
栗原寺の鑢盤銘は「不改常典」の出された八年後である。
日並＝日並 所知＝御宇 皇太子＝東宮 と、重なるから、宣命では「日並所知皇太子＝ひなみあめのしたしらしめししひつぎのみこ」であったろう。
『続日本紀』の「日並知皇子命」も「日雙斯皇子命＝ひなみしのみこのみこと」という人麻呂の訓み方でなく、宣命の「日並所知」の意味だから前述の訓み方か「ヒナミシラシメシシミコノミコト」と読むべきであろう。
元明天皇即位の宣命で、初めて「日並」に「所知」がつけられ、この発想が「日並所知」とも表記されたのであり、最終的に「天皇」の尊号を贈られることで「日並」は消えたが、天智に仮託の「不改常典」と「日並所知皇太子（日並御宇東宮）」は、同じ発想で作られたと考える。
人麻呂が草壁皇子を「日並」というのは、日としての天武と並ぶ皇子の意で、★原点に天武天皇がいる。
ｐ．３７７
だから軽皇子の成人式を詠った安騎野の歌（巻一、四九）では、人麻呂は軽皇子の父「日並皇子命」を呼び起こしたが軽皇子にとっては亡き人だから「斯」を付けたのである。
軽皇子の場合は草壁皇子を「日雙斯」とすることによって「日」である天武と結びつければよかった。
しかし★首皇子の場合は天武天皇の曾孫であり、血筋は遠くなる。
とすれば、幼い首皇子を皇位につけるためには、草壁皇子を原点につける必要があるし、そのため繋ぎとして即位した草壁皇子の妃の即位を合理化する必要が有った。
★そこで考えられたのが「日並皇子命」に、新しく★「所知（御宇）」を加え、★天皇に近い存在に上昇させ、草壁皇子の妃は、他の天武天皇の皇子たちの妃と違って、★皇后に近い存在であることを強調したのである。
また「皇子」でなく「皇太子」と書いたのは、同じ天武天皇の皇子でも、草壁は皇太子であったことを強調することで、現在の天武の皇子たちと差を付けるためであったろう。しかし「皇太子」は天武天皇の皇太子だから、天武天皇の皇統を無視しているわけではない。
ただ、他の天武の皇子たちと差を付ける必要が、★皇太子の力説であり★「知天下」の意味の「所知」の付加なのである。
文武天皇については「日並所知皇太子之嫡子、今御宇天皇」と、元明天皇即位の宣命は記す。
ｐ．３７８
「子」でなく「嫡子」と書くことからも、嫡子・嫡孫の皇位継承を主張する「不改常典」が同じ宣命載っていることの意味が鮮明になる。
この「日並所知皇太子」の意味で「日並御宇天皇」は書かれているが、栗原寺路盤銘では、中臣大嶋の誓願により甲牛年（持統五年）に起工し二二年後の和銅八年（７１５）に完成した。「日並御宇東宮」のための寺とある。
大嶋は藤原大嶋とも言うが、持統天皇の大嘗会（持統五年）には神祇伯で天神寿詞を読んでいる。『日本書紀』の持統七年（６９３）三月一一日条には「直大弐葛原朝臣大嶋に賻物賜ふ」とあるから、この頃亡くなったが、藤原不比等の又従兄弟である。
たぶん大嶋の亡きあとは、不比等が、草壁の母である持統天皇、子の文武天皇、妃の元明天皇と共に、造営にあたったであろう。
★ このように草壁皇子の菩提を弔う寺を藤原氏が誓願していること。そして二二年の歳月をかけて和銅八年に完成した時（元明が草壁の娘・元正に譲位した時が、この年）「日並御宇東宮」と刻していることから見て「日並所知皇太子」は「不改常典」と共に、藤原不比等の知恵が入っていることが推測できる。
「不改常典」や「日並所知皇太子」という言葉が、初めて使用された宣命の三か月前、文武天皇の薨じる（慶雲四年六月十五日）二か月前（四月十三日）に★草壁皇子の忌日を「国忌」とする詔が出ている。（草壁皇子は持統三年四月十三日に薨じている）
ｐ．３７８
文武天皇の死が近いことが判った段階で国忌の詔が出たのは「日並皇子命」に「所知」を付加し、★天皇の位置に近づけた表現を用いるための★予告であり、国忌とすることで★草壁皇子の妃を国母（皇后）の即位のように思わせる★準備工作であった。
この国忌の詔の二日後に藤原不比等の功業をたたえ、食封を賜るという宣命が出されている。草壁皇子の忌日を国忌とすることと藤原不比等の功業を称賛することが、元明天皇の即位について必要だったのである。
このような準備の上で元明天皇は即位した。その即位の宣命に載る新しい表現が天智天皇に仮託した「不改常典」や「日並所知皇太子」なのだから、「不改常典」も「日並所知皇太子」も同じ意図による新造語である。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・「草壁の系譜」というよりは「持統の意志」と、私は見る。持統・天武の「血統の永続性」を持統天皇が強く望んだのだと思う。しかし「不改常典」と「日並所知皇太子」と、観念的な「文・言葉」の操作で「誰しもが納得」したのだろうか。この疑問が強く残る。
およそ「古事記・日本書紀」などは、官僚・学者しか見ないだろう。ということは「書かれる以前に、そう在った」のだろう。「そう、在らせた」強権が他にあるのではないだろうか。それは、とりもなおさず、「天武・持統」の影響である。
以前「家内制手工業的」と揶揄したが、「朝廷・宮廷」と言っても歴史は浅い。増して「ラジオ・ＴＶ・新聞・雑誌」のある時代でもない。つまるところ「役人たち・貴族たちの言うこと」を、庶民は有り難く頂戴して、「嫌だ」と言えば槍と刀で尻を突っ突かれることになる。そんな時代のこと。
それよりは「お家騒動」を、皆がタブー視したのではないだろうか。よって「神輿を担ぐ」方が賢いと、他の皇子たちも考えたのではないか。
ある意味「大津皇子の粛清」を、口に出さずとも「みんな知ってる」ことなのかもしれない。悪く言えば「長いものには、進んで、巻かれた方が安全」ということか。ふう……。 ではでは ≫
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１２８．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
６．
不改常典と日並知皇子命
−天武天皇と天智天皇ー
◎ 「東宮大皇帝」と天武天皇 ◎
「日並所知皇太子（御宇東宮）」の皇太子は天武天皇の皇太子を意味するから、★「不改常典」が天智天皇制定とあっても、宣命は天武の系統を無視して、天智の系統を重視しているのではない。
皇統は天武としながらも、単なる「日並」以上の存在として「所知」を付加し、草壁皇子の天皇化をはかり、以後の皇統の原点にしようとしたのは、天武天皇の「天武天皇」の「日並」皇子の系統を重視し、他の天武皇子の系統を排除しようとした発想による。
ｐ．３８０
その発想が「不改常典」の天智制定にもなっているのである。（元明天皇の父が天智であることも一因）
人麻呂の「日並皇子命」に「所知」を付加して草壁皇子のイメージを変えたように、天武天皇のイメージを変えている。そのことは『日本書紀』にもいえる。
・）伴信友 は、『長等の山嵐』で天智紀や壬申紀に天武天皇の即位を正当化するための追記や潤色が多いことを上げている。
・）直木幸次郎 は、伴信友の私的を認めた上で、天武天皇即位前紀の
天命開別天皇の元年に、立ちて東宮と為り賜ふ
の記事は、天智紀に対応する立太子記事が無い事。律令制施行以前に立太子が行われた確証は無く、立太子記事が載っていても、★それは『日本書紀』が編纂された時期の方式を過去に投影し、造作追記したもので歴史的事実でないことを指摘している。
そして、『日本古代において立太子のことが制度化されておらず、かつ「書紀」には立太子記事の追記が多いとすれば、天武前紀にみえる大海人皇子の立太子記事も、天武即位を合理化するための「書紀」編者の潤色と解するのが妥当ではあるまいか。天智紀にみえる「東宮」あるいは「皇太子」、また壬申紀の「皇大弟」の称も、同様の趣旨から出た追記である可能性も大きい』と述べている。
ｐ．３８１
・）本間満 ・）白崎昭一郎 ・）荒木敏夫 も、大海人皇子は、「皇太弟」「東宮」ではなく、立太子記事や「東宮大弟帝」などの表記とともに、『日本書紀』編纂者の追記と見る。
・）太田善麿 ・）横田健一 ・）坂本太郎 らが指摘するように、天智紀、天武天皇即位前紀（壬申紀）・天武期は、編纂担当者がちがう点が、用字法などから証されている。
この壬申紀について、
・）坂本太郎 『壬申乱は近江朝廷の挑発によって起こされた止むを得ない自衛の手段であり、≪皇位≫簒奪をめざしたものでないという天武天皇側の主張を忠実に伝えようとする意図がありありと読み取れる』と書いている。
★ ……、このような記述は『日本書紀』の最終編者の意図によるものであって「天武天皇側」といっても、★天武天皇の意図とは考えられない。その理由は、
１．
柿本人麻呂は草壁皇子の挽歌で、天智天皇の後継者では無く、新王朝を作った創始者として天照日女命が「神下し」した日の御子ニニギと二十映しのイメージで、天武天皇を詠っている。
２．
高市皇子の挽歌でも人麻呂は、天武天皇は和射見ヶ原に「天降りいまして」と詠っている。「神下し」「天降り」という発想には『日本書紀』の「東宮大皇弟」の発想はない。
３．
また、高市皇子挽歌で人麻呂は、壬申乱の時の「幡の靡（なび）きは」「野ごとに 着きてある火の 風の共（なた） 靡かうごとく」であったと詠う。この表現は、赤旗であったことを示している。『古事記』の序文でも、赤旗の意の「絳旗（あけはた）」を、天武の軍が用いたと書いている。 『日本書紀』も天武の軍が「赤色を以て衣の上に着く」と記す。
★★★ 『漢書』高帝紀に、漢の高祖は赤帝子であることを自負し、旗幟に赤を用いたとあるので、
・）井上通泰 は、大海人皇子は自らを漢の高祖に擬したとみる。
この井上説に立って、天武天皇が自らを漢の高祖に擬していたことを他の例証も上げて、・）坂本太郎 ・）直木幸次郎 ・）前川明久 ・）石母田正 ・）西嶋定生 ・）吉川忠夫 の、、諸氏も述べている。
★★★ 漢の高祖は前王朝（秦）を継承したのではない。新王朝の創始者である。
４．
漢の高祖に擬したのは、、壬申乱の時だけではない。
・）西嶋定生 は、「賜爵」の表現が天武朝になって表れるが、この表現は『漢書』に頻出する記事であることから、天武朝を漢王朝に擬した記録上の裏付けとし『日本書紀』の天武天皇四年五月条に載る「大学寮」は、漢代「太学」を意識したものとみる。
ｐ．３８２
・）直木幸次郎 も、天武天皇の死後臨調称制し、その皇位継承についた持統天皇は、皇祖の死後に臨調称制した呂太后に、意識して自から擬し、天武朝末から天武朝末から、その後の政局を処理したと推論している。
★★ 草薙剣の説話の成立事情について、
・）西嶋定生 は、天武十年の『国史編纂事業を契機として、天武朝の宮中に保管されていた宝剣の一つを、鏡と共に、近江朝を滅亡させた天武朝の正当性を示す宝器（レガリア）として意義づけることが当面の課題となり、その意義づけは天武朝を漢王朝に擬定するという志向にもとづいて行われた。この場合に想起されたこと、および天武天皇が自らを漢の高祖に擬していたということであろう。それ故に武力でによって近江朝を滅亡させた天武天皇が、天皇としての正当性を示し、それを後代に継承させるためには、宮中に保管されていた宝剣を漢王朝の★斬蛇剣★に擬して、これを神璽の宝器とすることが有効であったと考えられる。』と述べている。
★★ 天武天皇は自からを漢の高祖に擬していたから、漢王朝の制度を模した。≪？！≫だから天武天皇の皇后は、漢の高祖の皇后・呂太后に自からを擬した。その皇后の即位儀礼（持統称制四年正月）では「神璽の剣・鏡を皇后に奉上る。皇后即天皇（あまつひつぎしろしめ）す」とあるから、西嶋説に立てば「神璽の剣」は斬蛇剣であり、天武天皇は新しい王朝の創始者なのである。
ｐ．３８４
５．
・）井上通泰 は、自からを漢の高祖に擬した天武は、大友皇子を項羽に擬し、
・）坂本太郎 は、秦の始皇帝を天智天皇、大友皇子を二世皇帝に擬している。
６．
・）石母田正 は、『天武が自己の個人的経験を、中国古代の易姓革命を媒介として解釈していること、漢書という史書を通して、彼の特殊、一回的経験は、中国の王朝交代の歴史と観念的に結合されていることを示すものである。』と述べている。
・）早川庄八 は、『天武天皇は、壬申乱において、自らを漢の高祖に見立てたことから知られるよう、大友皇子からの皇位簒奪を易姓革命になぞらえて観念していたらしい』と書いている。
★★★ このような、易姓革命を意識していた天武・持統天皇の革命的行動である壬申の乱の経過を記す壬申紀の冒頭に「立太子」の記事を載せているのは★『日本書紀』最終編纂期の発想であって、★★天武天皇の革命思想を歪曲したものである。★★
７．
『万葉集』に「おほきみは神」とある用例は、天武天皇とその皇子に限られている。（雪山の歌の「おほきみは神」は、私は草壁皇子と見るが、持統と見れば天武の皇后も含まれる。）
・）高木市之助 は、皇子や皇后に用いられていても天武を意識して人麻呂が創作したものと見ているが、「おほきみは神」の用例の上限は「壬申年之乱平定以後」と題詞にある歌（巻十九、四二六〇・四二六一）である。「神ながら」の用法も天皇・皇族に用いられる場合の上限は天武天皇である。
ｐ．３８５
このように天武天皇を新王朝の創立者として「天降り」「神下り」した「神」とみる発想に対し、★★壬申紀に行われもしない「立太子」記事をトップに載せる発想は「東宮大弟帝」と共に、人麻呂の「おほきみは神」の発想の矮小化である。★★
以上、述べたように、天武天皇と皇后は、自からを漢の高祖と呂太后に擬しているのだから、革命によって、新王朝を創始したと考えていた。
但し、中国の革命思想による天命の天を「天照日女命」とし、天子を「日の御子」とし、皇統の一貫性をはかっている点は、易姓革命によって新王朝を樹立した漢の高祖とは違う。
しかし、皇統の一貫性といっても、天武天皇や皇后・持統天皇、柿本人麻呂らの発想は、天武は「天降り」して革命を行い新王朝を創始した天皇だから、★天智天皇の「東宮大皇弟」でなく、★皇祖神に直結する日の御子で、天孫二二ギとダブルイメージ★であった。だから歴代天皇の「おほきみ」に対して「おほきみは神」と詠われたのだろう。
柿本人麻呂は、天照日女命 → 二二ギ → 歴代天皇という系譜は天智天皇で切れたとし、新しく天照日女命 → 天武天皇という発想で、天武天皇と日の御子二二ギを一体化して日並皇子尊挽歌（巻二、一六七）で詠っている。
ｐ．３８６
ここで詠われている「日雙斯皇子命」は、天照日女命 ― 天武天皇 ― 草壁皇子 ― 軽皇子（文武天皇）という関係である。だから草壁は天武の「日雙（並）」なのである。
１．天照日女命 → 二二ギ → 神武天皇 → 歴代天皇
２．天照日女命 → 天武天皇 → 日並（皇子） → 歴代天皇
という発想によって、日並皇子尊挽歌は詠われ、この発想は、高市皇子挽歌（巻二、一九九）にもうかがわれる。
★ 草壁皇子を「日並」と詠った人麻呂の発想は、天武天皇を新王朝の創立者としての「朝日」とみる詩的イメージによる。
こうした発想は持統天皇の亡くなるまであったと思われるのだが、★元明天皇の即位の宣命から変わった。★その例証が「日並所知皇太子」と「不改常典」である。「日並」に「所知（しらしめしし）」を付けることで詩的イメージは現実的なイメージになっている。
草壁皇子の生存中には、現実として有り得ない「所知」を、★二十年ほどたって、現実にあったかの如く仮構した★のが「日並所知皇子命」である。これは天智天皇に仮託した「不改常典」の創作と同じ発想である。
このような天智天皇への仮託は『日本書紀』の最終編纂時点での壬申紀冒頭の「立太子」の記事の付加と、「東宮大皇弟」の創作となって、柿本人麻呂らが詠いあげた新王朝の創立者を、天智天皇の「東宮大皇弟」に矮小化してしまったのであろう。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・ならば何故『日本書紀』は、天武天皇の姿を「矮小化」することが必要だったのだろうか。「皇統の一貫性」のためだろうか。それとも「不改常典」を持ち出して「首皇子・・聖武天皇」を創出するためか。
その両方の為だろう。ある意味「手段を選べない」逼迫した実情がある。自己・親族の「一命に関わる」ことだから。
「骨肉の争い」は、誰しも望まない。「神輿に乗る」には「担ぎ手」が必要なのだ。群臣・皇親たちに望まれずに「皇位」についても落ちるだけ…。
その認識が「改竄」に手を伸ばすことになったのだろうね。「内乱は一度で懲り懲り…」みたいなのがあったのかもしれない。
天武天皇も「大唐・新羅」の国際情勢の波及が近江朝廷に及ばなければ、無理に革命を起こさなかったかもしれない…。あくまで想像だけれど。 ではでは ≫
『万葉集』に「おほきみは神」とある用例は、天武天皇とその皇子に限られている。（雪山の歌の「おほきみは神」は、私は草壁皇子と見るが、持統と見れば天武の皇后も含まれる。）
・）高木市之助 は、皇子や皇后に用いられていても天武を意識して人麻呂が創作したものと見ているが、「おほきみは神」の用例の上限は「壬申年之乱平定以後」と題詞にある歌（巻十九、四二六〇・四二六一）である。「神ながら」の用法も天皇・皇族に用いられる場合の上限は天武天皇である。
ｐ．３８５
このように天武天皇を新王朝の創立者として「天降り」「神下り」した「神」とみる発想に対し、★★壬申紀に行われもしない「立太子」記事をトップに載せる発想は「東宮大弟帝」と共に、人麻呂の「おほきみは神」の発想の矮小化である。★★
以上、述べたように、天武天皇と皇后は、自からを漢の高祖と呂太后に擬しているのだから、革命によって、新王朝を創始したと考えていた。
但し、中国の革命思想による天命の天を「天照日女命」とし、天子を「日の御子」とし、皇統の一貫性をはかっている点は、易姓革命によって新王朝を樹立した漢の高祖とは違う。
しかし、皇統の一貫性といっても、天武天皇や皇后・持統天皇、柿本人麻呂らの発想は、天武は「天降り」して革命を行い新王朝を創始した天皇だから、★天智天皇の「東宮大皇弟」でなく、★皇祖神に直結する日の御子で、天孫二二ギとダブルイメージ★であった。だから歴代天皇の「おほきみ」に対して「おほきみは神」と詠われたのだろう。
柿本人麻呂は、天照日女命 → 二二ギ → 歴代天皇という系譜は天智天皇で切れたとし、新しく天照日女命 → 天武天皇という発想で、天武天皇と日の御子二二ギを一体化して日並皇子尊挽歌（巻二、一六七）で詠っている。
ｐ．３８６
ここで詠われている「日雙斯皇子命」は、天照日女命 ― 天武天皇 ― 草壁皇子 ― 軽皇子（文武天皇）という関係である。だから草壁は天武の「日雙（並）」なのである。
１．天照日女命 → 二二ギ → 神武天皇 → 歴代天皇
２．天照日女命 → 天武天皇 → 日並（皇子） → 歴代天皇
という発想によって、日並皇子尊挽歌は詠われ、この発想は、高市皇子挽歌（巻二、一九九）にもうかがわれる。
★ 草壁皇子を「日並」と詠った人麻呂の発想は、天武天皇を新王朝の創立者としての「朝日」とみる詩的イメージによる。
こうした発想は持統天皇の亡くなるまであったと思われるのだが、★元明天皇の即位の宣命から変わった。★その例証が「日並所知皇太子」と「不改常典」である。「日並」に「所知（しらしめしし）」を付けることで詩的イメージは現実的なイメージになっている。
草壁皇子の生存中には、現実として有り得ない「所知」を、★二十年ほどたって、現実にあったかの如く仮構した★のが「日並所知皇子命」である。これは天智天皇に仮託した「不改常典」の創作と同じ発想である。
このような天智天皇への仮託は『日本書紀』の最終編纂時点での壬申紀冒頭の「立太子」の記事の付加と、「東宮大皇弟」の創作となって、柿本人麻呂らが詠いあげた新王朝の創立者を、天智天皇の「東宮大皇弟」に矮小化してしまったのであろう。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・ならば何故『日本書紀』は、天武天皇の姿を「矮小化」することが必要だったのだろうか。「皇統の一貫性」のためだろうか。それとも「不改常典」を持ち出して「首皇子・・聖武天皇」を創出するためか。
その両方の為だろう。ある意味「手段を選べない」逼迫した実情がある。自己・親族の「一命に関わる」ことだから。
「骨肉の争い」は、誰しも望まない。「神輿に乗る」には「担ぎ手」が必要なのだ。群臣・皇親たちに望まれずに「皇位」についても落ちるだけ…。
その認識が「改竄」に手を伸ばすことになったのだろうね。「内乱は一度で懲り懲り…」みたいなのがあったのかもしれない。
天武天皇も「大唐・新羅」の国際情勢の波及が近江朝廷に及ばなければ、無理に革命を起こさなかったかもしれない…。あくまで想像だけれど。 ではでは ≫
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１２９．
天寿国の末裔・上代史ノート
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
天武天皇の造都計画
−なぜ信濃に都城・代官を造営しようとしたかー
ｐ．３８９
◎ 新城（にいき）と新益京（あらますのみやこ）』 ◎
『日本書紀』の天武天皇一三年二月二八条、
浄広肆広瀬王、小錦中大伴連安万侶、及び判官・録事・陰陽師・工匠等を畿内に遣して、都つくるべき地を視占（み）しめたまふ。
是の日に、三野王・小錦下采女臣筑羅等を信濃に遣して、地形を看しめたまふ。
是の地に都つくらむとするか。
・）坂本太郎 は、「都つくらむとするか」と、疑いをこめて説明するのは『書紀の編者にも、これが素直に受け取れにくいものがあったからではあるまいか。』と書いている。
……、畿内と信濃への造都調査のための派遣記事に続いて、三月九日条には、
天皇、京師に巡行きたまひて、宮室之地（みやどころ）を定めたまふ
とある。この記事について、
・）北山茂夫 は、『離宮を設けるために、土地を探し回ったのではあるまいか。ここにいう「宮室の地」が藤原に相当するのではあるまいか。私にはどうもそういう気がしてならないのである。』（「持統天皇論」）
・）岸俊男 も、『天武が自らが決定したという宮室の地こそ藤原宮であり、このとき藤原京プランも出来上がったが、宮の造営に着手する暇なく天武は崩じてしまった。そして持統即位とともに、天武の意志をついで藤原宮の造営が具体的に進行し始めた。というのが実情ではなかろうか。』（「飛鳥から平城へ」）と書いている。
日本書紀に書かれている、
天武十三年 宮室の地、決定のための行幸
持統四年 藤原の宮地、視察のための行幸
持統六年 藤原の宮地、鎮祭と新宮の完成を、伊勢・大倭・住吉・紀伊の大宮に報告。
持統八年 藤原宮に遷宮
は、一連のものなのである。
ところで、天武五年是条に、
ｐ．３９０
是年、新城に都をつくらむとす。限の内の田園は、公私を問わず、皆耕さずして悉くに荒れぬ。然れども遂に都つくらず。
とあり、天武十一年三月一日条に、
小紫三野王及び宮内官大夫等に命して、新城に遣わして、基の地形を見しむ、仍りて都つくらむとす。
とあり、同年同月一六日条に、
新城に幸いす
とある。この新城について、
「日本古典文学大系・日本書紀（下）」頭注は、奈良県大和郡山市新木とする。
・）岸俊夫 『都城と律令国家』では『従来は大和郡山市新木に比定する説が有力であったが、確たる根拠は無く、むしろ藤原京・平城京などの造都が古道と密接な関係をもとに設定されたことを考えると、成立は困難なように思う』と書き、
『日本書紀』持統三年九月条の石上麻呂に筑紫の「新城を監」させた「新城」は、新設の大宰府都城であり、、神護景雲三年十月条の宣命にある「都城の大宮」は、新都・平城京を意味するので『「新城」は地名ではなく、新しい都城の意』と考えを変えている。
★ そして『難波宮と中国都城制』では、『日本書紀・古事記』では★「藤原宮」という表現はあっても、★「藤原京」という表現は無く★「新益京」と書かれている点に注目して、『「新益京（あらますのみやこ）」は、新たに益した都という意味でしょう★から、そうなれば、やはりそれ以前に京と称すべきものがあって、それに何らかの形で新しく益されたのが藤原京であると思います』と述べ『それ以前の京』を『倭京』と見て、『天武朝の「倭京」と持統・文武のいわゆる藤原京、つまり★「新益京」とを一体化して考えて★もいいのではないか、と思います。かえって両者を区別して考えていることか、問題を複雑化していると所以ではないか、とも思うのです。」と述べている。
★★ 問題は「倭京」と「新城」は、同じか違うかである。
天智紀六年八月条と、壬申紀に「倭京」とあるのは「近江京」に対してであることは「近江京より倭京に至る」と記していることからでも明らかである。また壬申紀は「古京」とも書くが、「古京」は今の京としての「倭京」に対して「近江京」をいう。≪時勢≫だから壬申紀の「倭京」は、……、「新益京」と「一体化して考えてもいい」という「天武朝の倭京とは別である。
ｐ．３９３
岸氏は、「天武朝の倭京」を私は、天武五年・十一年条の「新城」と見る。★この新しい都城が、持統朝の「新益京」（藤原京）になったと考えている。
岸氏は、『万葉集』巻一九の「壬申年之乱平定以後歌二首」と題詞にある、
大君は神にしませば赤駒のはらばふ田居を京師（みやこ）となしつ （巻一九、四二六〇）
大君は神にしませば水鳥の多集（すだ）く水沼を皇都となしつ （巻一九、四二六一）
に、ついて『「京師」「皇都」も、これを単に宮室としての飛鳥浄御原宮と解することは、浄御原宮のあったと推定される当時の飛鳥中心部が、なお「赤駒のはらばふ田居」や「水鳥のすだく水沼」であったとみなければならないから無理と考えられ、やはり壬申乱後において新しく飛鳥に「京」の建設されたことを讃えたものとみるのが良いのではなかろうか』
と書いているが、この『京』の建設は「新城」の建設と考えられるから、
天武五年 新城造営計画（中止）
天武十一年 新城造営開始のための調査と行幸
持統五年 新益京（あらますのみやこ）鎮祭
持統六年 新益京の京路視察の行幸
は、一連のものだろう。
ｐ．３９４
藤原京の範囲は、古道である中ッ道と下ッ道をそれぞれ東西の京極とするが、その間は平坦でなく、京の中央北寄り位置する宮室の地も、東南隅と西北隅では今でも１２ｍの比高差がある。だから、藤原京の在った時にはもっと比高差があったとみられる。
発掘調査によれば、宮の東辺部では建物の柱穴が浅くしか残っていないのは、都が平城京に移った後、田に造成する時さらに削平されたためである。
このように東辺が高いのに対し、西辺は低湿地だから東辺の土を削って盛土している。朝堂院跡の西縁が、西の地形の中で一段高いのも、盛土をして造成したためである。
・）狩野久・木下正史 「飛鳥藤原の都」で『右京の大部分」飛鳥川の左岸になるが、そこには氾濫の痕跡もあって、相当な低湿地だったろうから、右京が街区として完成したかどうかは別にしても、大規模な造成工事が必要だったに違いない。』
両氏は、岸氏と同じく、先の歌を天武五年の新城造営計画地を詠った歌とは見ていない。だがこの歌の題詞には「壬申年之乱平定以後歌二首」とある。
ｐ．３９５
昭和五十二年発掘調査の時、大極殿北方の「宮域内朱雀大路」の東側溝の東に近接して、ほぼ南北に貫通している幅６〜７ｍ、深さ２ｍの大溝を検出した。
この大溝について ・）加納優 ・）狩野久 ・）木下正史 は、宮造営のために使用された運河と見ている。この大溝から約六十点の木簡が出土した。
★ 年紀が記されているものに「壬午年（天武十一年）十月」「癸未年（天武十二年）七月」「甲申年（天武十三年）七月三日」の三点があり、別に天武十四年に制定された「進大肆」という爵位を記す木簡も出土している。
「壬午年十月」の木簡が有ることから見ても、天武十三年の宮室の地決定以前から、造営工事が進んでいたことがわかる。★壬午年（天武十一年）三月一日に、小紫三野王が宮内官大夫等を率いて「都つくらむ」として、新城の地形調査に入っている記事との関連で、この木簡は無視できない。
★ 同年三月一六日に、天武天皇は新城に行幸しているが「壬午年十月」の木簡がすでに捨てられていることから、運河は行幸後作られたのではなく、既に出来ていたか工事中であったであろう。
ところで、この大溝の西に近接して作られている「宮内内朱雀大路」の側溝は、「壬午年（天武十一年）」の木簡の出土した大溝より前に作られているから、小紫三野王の「新城」の地形調査（天武十一年）以前に、すでに工事は開始されていたのであり、★天武朝の「新城」が持統朝の「新益京」であったことを証している。
……。……、天武五年に新城と定めた地の建設計画は中絶の時期もあったが、同じ場所で続いていたのである。その場所が「赤駒のはらばふ田居」や「水鳥のすだく水沼」の地であり、この地の造営は、浄御原律令の編纂が開始された前後の、天武十一年の新城への行幸以、、来本格的に始まったのである。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・太古、奈良盆地には「古奈良湖」が在った。それが「二上山の噴火・爆発」により、大和川となり、湖水の水が流出して盆地が出来たんだよね。よって奈良盆地の地下には「鯨が養える」ほどの地下水が有る。……なんてね。
「飛鳥川の氾濫」これも「藤原京から平城京へ」の、お引越しの理由とされる。「水害の後」には「悪臭・塵埃」が紛々となる。「干物すら、干せない」これは「水害被災地」に行けばわかること。
さてさて、それより藤原京で暮らす人々の「排泄物」も、ここで大きな問題となる。平城京は「水上池」を設けて「浄水・浄化」機能があるんだけれど藤原京には「それ」が無い。
よって飛鳥川は「垂れ流し状態」でもあっただろうと考えられる。「人のする、その程度なら…」なら「自然浄化」できそうにも思うけれど、……、どうかな？！
ただし「疫病の頻発」これがある。「渡来人の流入・人口集中（爆発）」が疫病の飛来であるとは、この頃には考えないだろうけれど……。また「造寺・造佛」による「銅の製錬」による公（鉱）害なんてのも出てくる。
「藤原京の焼芒」には、これらのこともあったのではないだろうか。あーーーー、昔の事って「わからないね〜♪」 ではでは ≫
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１３０．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
天武天皇の造都計画
−なぜ信濃に都城・代官を造営しようとしたかー
ｐ．３９６
◎ 畿内と畿外と信濃の造都計画 ◎
……、天武十二年十二月十七日に、複都制の詔が出された……。
ｐ．３９７
凡そ都城・宮室、一處に非ず。必ず両参造らむ。
故、先ず難波に都つくらむと欲ふ。
是を以て、百寮の者、各往きて宮地を請はれ。
とある。
……、唐では首都・長安の他に、洛陽を倍都とする複都制がとられていた。だから長安に匹敵する首都を創ろうとして、新しい都城（新城）造営を考えたのである。その造営が天武十一年から本格的に始まったので、倍都造営を計画したのが、難波造営の詔である。
耳成山北方まで新益京条坊地割に適合する、東西と南北の道路の交差した遺構が検出されたが、この遺構は新益京の京域外であるから、★唐の長安に匹敵するものを造ろうとする天武天皇の壮大な構想が覗える。
天武天皇は朱鳥元年（６８６）に病気になり、同年九月九日に崩御しているが、先の木簡は天武十一・十二・十三年と爵位を示す十四年の木簡のみで持統朝のものが無い。だからこの木簡の年紀からも天武天皇の崩御で≪一時期≫造営工事は中止したと考えられる。そして持統の即位後、再開されたのである。
★ 天武天皇は大倭と難波だけではなく｢凡そ都城・宮室一處に非ず。必ず両参造らむ」と称して、畿内・信濃に造都計画を持っていた。
ｐ．３９８
畿内については、大化改新の詔に、
凡そ畿内は、東は名墾（なばり）の横川より以来、南は紀伊の兄山（せのやま）より以来、西は明石の櫛淵より以来、北は近江の狭狭波（ささなみ）の合坂（あふさか）山より以来を畿内国とす
とある。しかし大化改新によって畿内制が施行されたのではなく、★天武朝からであることは詔の文章や、その後の歴史的事実から、通説化している。≪！！≫
★ 天武朝の畿内制は大宝令、養老令の、大倭・河内・摂津・山背（城）の四ヵ国を畿内とする国単位の畿内ではない。≪侵略阻止の実際単位≫
大化改新の詔にある名墾の横川（三重県名賀郡の名張川）、紀伊の兄山（和歌山県伊都郡かつらぎ町の兄山）明石の櫛渕（播磨国明石郡だが「櫛渕」は不明、・）吉田東伍 は、摂津国と播磨国の境界、今の神戸市垂水区塩屋町付近を想定）、近江の狭狭波の合坂山（滋賀県の逢坂山）を、東西南北の地理的境界とする畿内国（うちつくに）をいう。
★ 天武四年（６７５）十月、諸王以下初位以上のものに武器を備えることを詔し、天武五年（６７６）九月、王卿を「京及び畿内」に遣わして武装の状況を調べさせている。
この天武五年条に、初めて「京及び畿内」の表記が登場するが、この年「新城」の計画が立てられていることから見ても、★★★新城造営と京畿内制は関連している。★★★
天武五年に京畿内制が定められたことによって、★畿内国（うちつくに）と畿外国（そとつくに）★は、はっきり区別された。
≪私・太古、奈良盆地には「古奈良湖」が在った。それが「二上山の噴火・爆発」により、大和川となり、湖水の水が流出して盆地が出来たんだよね。よって奈良盆地の地下には「鯨が養える」ほどの地下水が有る。……なんてね。
「飛鳥川の氾濫」これも「藤原京から平城京へ」の、お引越しの理由とされる。「水害の後」には「悪臭・塵埃」が紛々となる。「干物すら、干せない」これは「水害被災地」に行けばわかること。
さてさて、それより藤原京で暮らす人々の「排泄物」も、ここで大きな問題となる。平城京は「水上池」を設けて「浄水・浄化」機能があるんだけれど藤原京には「それ」が無い。
よって飛鳥川は「垂れ流し状態」でもあっただろうと考えられる。「人のする、その程度なら…」なら「自然浄化」できそうにも思うけれど、……、どうかな？！
ただし「疫病の頻発」これがある。「渡来人の流入・人口集中（爆発）」が疫病の飛来であるとは、この頃には考えないだろうけれど……。また「造寺・造佛」による「銅の製錬」による公（鉱）害なんてのも出てくる。
「藤原京の焼芒」には、これらのこともあったのではないだろうか。あーーーー、昔の事って「わからないね〜♪」 ではでは ≫
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１３０．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
天武天皇の造都計画
−なぜ信濃に都城・代官を造営しようとしたかー
ｐ．３９６
◎ 畿内と畿外と信濃の造都計画 ◎
……、天武十二年十二月十七日に、複都制の詔が出された……。
ｐ．３９７
凡そ都城・宮室、一處に非ず。必ず両参造らむ。
故、先ず難波に都つくらむと欲ふ。
是を以て、百寮の者、各往きて宮地を請はれ。
とある。
……、唐では首都・長安の他に、洛陽を倍都とする複都制がとられていた。だから長安に匹敵する首都を創ろうとして、新しい都城（新城）造営を考えたのである。その造営が天武十一年から本格的に始まったので、倍都造営を計画したのが、難波造営の詔である。
耳成山北方まで新益京条坊地割に適合する、東西と南北の道路の交差した遺構が検出されたが、この遺構は新益京の京域外であるから、★唐の長安に匹敵するものを造ろうとする天武天皇の壮大な構想が覗える。
天武天皇は朱鳥元年（６８６）に病気になり、同年九月九日に崩御しているが、先の木簡は天武十一・十二・十三年と爵位を示す十四年の木簡のみで持統朝のものが無い。だからこの木簡の年紀からも天武天皇の崩御で≪一時期≫造営工事は中止したと考えられる。そして持統の即位後、再開されたのである。
★ 天武天皇は大倭と難波だけではなく｢凡そ都城・宮室一處に非ず。必ず両参造らむ」と称して、畿内・信濃に造都計画を持っていた。
ｐ．３９８
畿内については、大化改新の詔に、
凡そ畿内は、東は名墾（なばり）の横川より以来、南は紀伊の兄山（せのやま）より以来、西は明石の櫛淵より以来、北は近江の狭狭波（ささなみ）の合坂（あふさか）山より以来を畿内国とす
とある。しかし大化改新によって畿内制が施行されたのではなく、★天武朝からであることは詔の文章や、その後の歴史的事実から、通説化している。≪！！≫
★ 天武朝の畿内制は大宝令、養老令の、大倭・河内・摂津・山背（城）の四ヵ国を畿内とする国単位の畿内ではない。≪侵略阻止の実際単位≫
大化改新の詔にある名墾の横川（三重県名賀郡の名張川）、紀伊の兄山（和歌山県伊都郡かつらぎ町の兄山）明石の櫛渕（播磨国明石郡だが「櫛渕」は不明、・）吉田東伍 は、摂津国と播磨国の境界、今の神戸市垂水区塩屋町付近を想定）、近江の狭狭波の合坂山（滋賀県の逢坂山）を、東西南北の地理的境界とする畿内国（うちつくに）をいう。
★ 天武四年（６７５）十月、諸王以下初位以上のものに武器を備えることを詔し、天武五年（６７６）九月、王卿を「京及び畿内」に遣わして武装の状況を調べさせている。
この天武五年条に、初めて「京及び畿内」の表記が登場するが、この年「新城」の計画が立てられていることから見ても、★★★新城造営と京畿内制は関連している。★★★
天武五年に京畿内制が定められたことによって、★畿内国（うちつくに）と畿外国（そとつくに）★は、はっきり区別された。
ｐ．３９９
同年正月の条に「凡そ国司を任（ま）けむことは畿内及び陸奥・長門国を除（お）きて、以外は皆大山位より以下の人を任けよ」とあり、畿内とはっきり分けている。
また、同年四月の条では
外国（とつくに）の人、進仕（つか）へまつらむと欲（おも）ふ者は、臣・連・伴造の子、及び国司の子をば聴（ゆる）せ。唯（ただ）し以下の庶人と雖（いへど）も、其の才能長しきのみは亦聴せ
と詔し、畿内国に対し「外国」として、名張川より以東、逢坂山より以北、紀州脊山より以南、明石より以西を区別している。
だから壬申乱に功のあった大分君恵尺は「外小紫」、村国連雄依は「外小紫」という★「外」のつく冠位を亡くなった時に送られている。大分君は九州の大分、村国連は美濃国の豪族で、外国のひとだから、冠位も畿内の人に対して「外」が付く。
天武十一年に天武天皇は新都に行幸し、首都の建設が本格化し、天武十二年には倍都の建設を決めて、難波の京の宅地班給の詔を出した。だから天武十三年には首都・倍都以外の地での都城建設を計画し、調査のために畿内国へは広瀬王、外国の信濃へは三野王を派遣した。
天武十三年閏四月一一日の条には、
三野王等、信濃国の圖(かたーズ・ト・はかる)を進(たてまつ)れり
ｐ．４００
とある。そして天武十四年十月十日条に、
軽部朝臣足瀬・高田首新家・荒田尾連麻呂を信濃に派遣して、行宮を造らしむ。蓋し、束間(つかまの)温湯に幸(いでま)せむと擬(おもほ)すか。
とあり、信濃の都城建設計画は、行宮建設計画に変更している。
では、畿内の都城建設計画はどうであろうか。信濃行宮建設計画の記事に続いて、
浄大肆泊瀬王・直広肆巨瀬朝臣馬飼・判官より以下、併せて二十人を以て、畿内の役(えだち)に任す
とある。「畿内の役」について「日本古典文学大系・日本書紀（下）」頭注は、｢都城の地を選ぶ事業か」と書いている。……、同意見である。
翌年になると天武天皇は病気になり、九月に亡くなっているから、畿内の都城も信濃の行宮も造られなかった。★★しかし、存命だったら首都・倍都以外に、畿内の何処かと信濃に、都城と行宮が出来ていたであろう。★★問題なのは畿外国の中で、特に、信濃が選ばれたことである。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・「畿内」は、「大唐」を意識した第一次防衛線、畿央は第二次防衛線だと考えている。天武天皇は日本の防衛方法を考えつつ、首都を建設したから、奈良の橿原の地を選んだ。
飛鳥より南は吉野であり、その南は当時は「人跡未踏」に近い、紀伊半島の「山の王国」だからね（例外が神武天皇）。いざとなれば「山中に潜む」わけだ。よって「南朝」も後にここで生まれる。
「役行者」と天武天皇の繋がりは「ここ」に有ると考えている。行者の「お役」は、この「山の王国」＝「絶対防衛権」の「お守り役」だと考えているんだよ。わたしゃ……。 ではでは ≫
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１３１．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
天武天皇の造都計画
−なぜ信濃に都城・代官を造営しようとしたかー
ｐ．４０１
◎ 信濃造都の一要因� �
・）川崎庸之 は、信濃造都について、≪要約≫『……、もっと積極的に東国を制圧することにおいて、何か、そこによりたしかな勝利のための条件を見たのではなかったか……、東国の経営ということは、……、古代国家の基盤を整える意味では、一つの重要な課題になっていたのではなかったか……。』
・）北山茂夫 は、≪信濃造都は・要約≫『……、新しい都城を造り、東国開拓の一大拠点たらしめようとの観点に立っての都なのである。……。天武の眼光は東国とその以北に向けられていた、と想像したいのである。』
ｐ．４０２
・）金井典美 も、『蝦夷に対する大本営の性格を帯びる都城』を計画したのが信濃の造都計画と見る。
しかし、東国経営の地は信濃でなくてもいいのだから、★信濃が特に選ばれた理由としては、説得力に欠ける。
・）坂本太郎 は、信濃国に天武天皇が関心を持っていたため、特に信濃が選ばれたと見て、『天皇が太子時代に持っていた美濃国の湯沐邑とその長官・多臣品治との関係に基づくのではないか。
同年正月の条に「凡そ国司を任（ま）けむことは畿内及び陸奥・長門国を除（お）きて、以外は皆大山位より以下の人を任けよ」とあり、畿内とはっきり分けている。
また、同年四月の条では
外国（とつくに）の人、進仕（つか）へまつらむと欲（おも）ふ者は、臣・連・伴造の子、及び国司の子をば聴（ゆる）せ。唯（ただ）し以下の庶人と雖（いへど）も、其の才能長しきのみは亦聴せ
と詔し、畿内国に対し「外国」として、名張川より以東、逢坂山より以北、紀州脊山より以南、明石より以西を区別している。
だから壬申乱に功のあった大分君恵尺は「外小紫」、村国連雄依は「外小紫」という★「外」のつく冠位を亡くなった時に送られている。大分君は九州の大分、村国連は美濃国の豪族で、外国のひとだから、冠位も畿内の人に対して「外」が付く。
天武十一年に天武天皇は新都に行幸し、首都の建設が本格化し、天武十二年には倍都の建設を決めて、難波の京の宅地班給の詔を出した。だから天武十三年には首都・倍都以外の地での都城建設を計画し、調査のために畿内国へは広瀬王、外国の信濃へは三野王を派遣した。
天武十三年閏四月一一日の条には、
三野王等、信濃国の圖(かたーズ・ト・はかる)を進(たてまつ)れり
ｐ．４００
とある。そして天武十四年十月十日条に、
軽部朝臣足瀬・高田首新家・荒田尾連麻呂を信濃に派遣して、行宮を造らしむ。蓋し、束間(つかまの)温湯に幸(いでま)せむと擬(おもほ)すか。
とあり、信濃の都城建設計画は、行宮建設計画に変更している。
では、畿内の都城建設計画はどうであろうか。信濃行宮建設計画の記事に続いて、
浄大肆泊瀬王・直広肆巨瀬朝臣馬飼・判官より以下、併せて二十人を以て、畿内の役(えだち)に任す
とある。「畿内の役」について「日本古典文学大系・日本書紀（下）」頭注は、｢都城の地を選ぶ事業か」と書いている。……、同意見である。
翌年になると天武天皇は病気になり、九月に亡くなっているから、畿内の都城も信濃の行宮も造られなかった。★★しかし、存命だったら首都・倍都以外に、畿内の何処かと信濃に、都城と行宮が出来ていたであろう。★★問題なのは畿外国の中で、特に、信濃が選ばれたことである。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・「畿内」は、「大唐」を意識した第一次防衛線、畿央は第二次防衛線だと考えている。天武天皇は日本の防衛方法を考えつつ、首都を建設したから、奈良の橿原の地を選んだ。
飛鳥より南は吉野であり、その南は当時は「人跡未踏」に近い、紀伊半島の「山の王国」だからね（例外が神武天皇）。いざとなれば「山中に潜む」わけだ。よって「南朝」も後にここで生まれる。
「役行者」と天武天皇の繋がりは「ここ」に有ると考えている。行者の「お役」は、この「山の王国」＝「絶対防衛権」の「お守り役」だと考えているんだよ。わたしゃ……。 ではでは ≫
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１３１．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
天武天皇の造都計画
−なぜ信濃に都城・代官を造営しようとしたかー
ｐ．４０１
◎ 信濃造都の一要因� �
・）川崎庸之 は、信濃造都について、≪要約≫『……、もっと積極的に東国を制圧することにおいて、何か、そこによりたしかな勝利のための条件を見たのではなかったか……、東国の経営ということは、……、古代国家の基盤を整える意味では、一つの重要な課題になっていたのではなかったか……。』
・）北山茂夫 は、≪信濃造都は・要約≫『……、新しい都城を造り、東国開拓の一大拠点たらしめようとの観点に立っての都なのである。……。天武の眼光は東国とその以北に向けられていた、と想像したいのである。』
ｐ．４０２
・）金井典美 も、『蝦夷に対する大本営の性格を帯びる都城』を計画したのが信濃の造都計画と見る。
しかし、東国経営の地は信濃でなくてもいいのだから、★信濃が特に選ばれた理由としては、説得力に欠ける。
・）坂本太郎 は、信濃国に天武天皇が関心を持っていたため、特に信濃が選ばれたと見て、『天皇が太子時代に持っていた美濃国の湯沐邑とその長官・多臣品治との関係に基づくのではないか。
≪中略≫ ……、皇子は吉野で挙兵を決意した時、まず美濃の湯沐邑に行ってそこを根拠地にしようとし、六月二十二日に腹心の三人の使いを多臣品治の所にやり、まずその郡の兵を挑発し、次いで国司を動かして諸郡の兵を起こして不和関を塞ぐことを命じた（中略）品治はこの後、伊賀にも転戦して近江朝廷軍を破る功績を立てた。天武十二年には伊賀王らと天下を巡行して諸国の境界を定める任に当たり、持統天皇十年八月には直広壱の位と物を授けられ、"初めより従い奉った功と固く関を守った"こととを特別に褒められている。≪中略≫ 信濃の美しい山河が倍都に相応しいと信じて、これを天皇に進言して、天皇はそれを採りあげる気持ちを起こしたのではないだろうか。≪中略≫』
そして、
ｐ．４０３
『なお信濃は、国造家が多臣と同族の金刺舎人であり、多氏の同族は広く信濃に蔓延していたと推察される点もある。（中略）品治の進言は、信濃在住の同族の支持を背景にしたものであったとも考えられる。』
★ 都城計画は、京畿内制の施行と重なっている。天武朝の畿内国は大宝令の畿内と違って、国が基準にはなっていない、……。
ｐ．４０４
・）長山泰孝 は、「畿内制の成立」で、このような畿内国の創設は★★『軍事的な防衛地域として、また官人供給地域として、国を超えて一体のものと考えられていたからであろう。』★★と書いている。
が、京畿内制の施行された前後の天武四年十月には、諸王・諸臣に武器を備えることを命じ、五年九月には王・卿を畿内に派遣し★武装の状況を調べている。そしてこの年に新しい都城建設の計画がなされているのだから、都城建設には軍事的な面があったと考えられる。
畿内と畿外の信濃に都城を建設するために、広瀬王と三野王が派遣された天武十三年という年には、文武の官人に武装と調練を果たしている（閏四月）。
また、翌年の九月には、広瀬王や美努（三野）王らは京畿内に派遣され武器を調査している。
★ ……。私は信濃の地が特に選ばれた理由として、★馬をあげた。（「日本古代試論」）
★★ 『延喜式』左馬寮の御牧の条に三二の牧の名があがっているが、そのうち信濃国一六、上野国九、武蔵国四、甲斐国三で、半数は信濃に集中している。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・「天武十二年（６８３）」には唐の高宗が亡くなって則天武后が執政を開始するんだよね。このことを大和氏は「知っている」とは思うのだけれど……、なぜ、書かないのかな。
「世界地図」を逆さまにして見てごらん。日本列島は「大陸に半輪」を描く「島嶼」でしかない。このことを天武天皇は良く知っているんだろうね。「大きさの比較」などは出来ないだろうけれど「国力の差・文化程度の差」は、深く自覚していただろう。
よって「日本海の防波堤」と「第一次・第二次、撤退ライン」として畿外・畿内を想定して「絶対防衛権」として紀伊半島を想定したのだろうね。「役の行者」や修験者たちは「絶対防衛圏」の「道案内・僧（神）兵」的役割だったんだと見ているよ。
これは�，世�ら�△任癲∀辰鯊海韻襪茵� ではでは ≫
そして、
ｐ．４０３
『なお信濃は、国造家が多臣と同族の金刺舎人であり、多氏の同族は広く信濃に蔓延していたと推察される点もある。（中略）品治の進言は、信濃在住の同族の支持を背景にしたものであったとも考えられる。』
★ 都城計画は、京畿内制の施行と重なっている。天武朝の畿内国は大宝令の畿内と違って、国が基準にはなっていない、……。
ｐ．４０４
・）長山泰孝 は、「畿内制の成立」で、このような畿内国の創設は★★『軍事的な防衛地域として、また官人供給地域として、国を超えて一体のものと考えられていたからであろう。』★★と書いている。
が、京畿内制の施行された前後の天武四年十月には、諸王・諸臣に武器を備えることを命じ、五年九月には王・卿を畿内に派遣し★武装の状況を調べている。そしてこの年に新しい都城建設の計画がなされているのだから、都城建設には軍事的な面があったと考えられる。
畿内と畿外の信濃に都城を建設するために、広瀬王と三野王が派遣された天武十三年という年には、文武の官人に武装と調練を果たしている（閏四月）。
また、翌年の九月には、広瀬王や美努（三野）王らは京畿内に派遣され武器を調査している。
★ ……。私は信濃の地が特に選ばれた理由として、★馬をあげた。（「日本古代試論」）
★★ 『延喜式』左馬寮の御牧の条に三二の牧の名があがっているが、そのうち信濃国一六、上野国九、武蔵国四、甲斐国三で、半数は信濃に集中している。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・「天武十二年（６８３）」には唐の高宗が亡くなって則天武后が執政を開始するんだよね。このことを大和氏は「知っている」とは思うのだけれど……、なぜ、書かないのかな。
「世界地図」を逆さまにして見てごらん。日本列島は「大陸に半輪」を描く「島嶼」でしかない。このことを天武天皇は良く知っているんだろうね。「大きさの比較」などは出来ないだろうけれど「国力の差・文化程度の差」は、深く自覚していただろう。
よって「日本海の防波堤」と「第一次・第二次、撤退ライン」として畿外・畿内を想定して「絶対防衛権」として紀伊半島を想定したのだろうね。「役の行者」や修験者たちは「絶対防衛圏」の「道案内・僧（神）兵」的役割だったんだと見ているよ。
これは�，世�ら�△任癲∀辰鯊海韻襪茵� ではでは ≫
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１３２．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
天武天皇の造都計画
−なぜ信濃に都城・代官を造営しようとしたかー
◎ 信濃造都の一要因�◆ �
ｐ．４０５
★★ 近江朝廷側で、唯一人、活躍している将軍に、田辺小隅がいる。
・）水野裕 は、田辺小隅の活躍は騎馬隊を率いていたためと見て、理由として『彼はその姓からして帰化人であり、田辺史の一族であろう。この氏は河内を本貫として、田辺氏には有名な応神陵にまつわる土馬の伝説（「日本書紀・雄略紀九年七月条」）があり、馬との関係が深い』ことをあげる。
の
田辺小隅は田中足麻呂の野営地を襲っているが、そのとき「梅（くちき）を御（くく）み」と壬申紀は書く。「日本古典文学大系・日本書紀（下）」頭注は、「梅は枚（ひら）に同じ。箸状のものを口に含ませ、進軍中の談話や馬の嘶きを防ぐ」と書くが、馬の嘶きを防ぐために用いたと思われる。とすれば、騎馬の兵がいたことが推測できる。
この田辺小隅の軍は、田中足麻呂の軍を破ると、次に多品治の軍を攻撃しようとした。ところが逆に「追ひ撃たれ」て、「小隅、独り免れて走げぬ」とある。壬申紀は「三千の精兵」を将軍・多品治が率いたと書くが、田辺小隅の軍を「追い撃った三千の精兵」の中に、騎兵が含まれていたであろう。
田中足麻呂は伊賀の湯沐令だから、倉歴道（くらふのみち、伊賀・近江国境の要路）を守ったのは伊賀の兵だが、騎兵はいなかったか少なかったため、田辺小隅の軍に敗れたと思われる。
ｐ．４０６
大海人皇子は、六月二十二日、美濃国安八磨郡の湯沐令の多品治に「当郡の兵を発せ」という報せを、吉野から派遣した村国男依に伝えさせている。その令を受けた品治は、不破道を塞いだ。そして七月二日、紀阿閉麻呂・三輪子首・置始莵と共に倭京へ向かい、七月五日、莿萩野で田辺小隅の軍と戦っている。この倭京に向かった軍には置始莵の率いる「千余騎」の騎馬隊が含まれていたのだから、多品治の率いる「三千の精兵」に騎馬隊がいなかったとはいえない。
★ 置始莵の「千余騎」の中に、甲斐の勇者がいて騎兵として活躍したと壬申紀は書くが、信濃の兵が参加していたことを『釈日本紀』は壬申乱に参加した安斗智徳の日記を引用して書いている。
だから、多品治の率いる「三千の精兵」の中に、信濃の兵記に書かれている信濃の兵を募兵したと推測しているが、 ・）坂本太郎 も、多品治は信濃の同族（国造家が多臣と同族の金刺舎人）と繋がりがあったと見ている。
★ いずれにしても壬申乱で、大海人皇子の側の★「騎馬隊」が、戦闘において勝利の要因になっていたことは、 ・）水野祐 ・）直木幸次郎 が、述べている。
ｐ．４０７
★ 騎馬に長じていたのは★「牧」の所在地の人々である。とすれば古代において、最も優れた騎馬隊は信濃の兵であった。
天武紀八年二月条に、二年後に馬を検校するから、そのために馬を調達して準備せよと詔し、十年十月、軽の市で「装束せる鞍馬（かざりうま）」を検校している。八年八月には、軍卿の「細馬（よきうま）」を迹見駅家で競争させ、それを見ている。また、九年九月九日には朝妻に行幸し、大山位以下の乗る馬を、長柄の杜で観閲し、騎射を行っている。九月九日は重陽の節句だが、十年十月の鞍馬の検校も、小錦位以上は「皆樹の下に列なり坐（なべ）り」、大山位以下は「皆親（みずか）ら乗り」大路を「南より北に行く」とあるから、二年前から準備していた祭儀である。
★★ 馬は戦闘用だけでなく儀礼用にも重要だが、このような貴重な馬の生産地が信濃である。≪郷土史調べ必要!!≫このことが、畿外の中でも特に信濃が選ばれた理由ではないかと、私は推測する。
★★ 章俊卿の『山堂群書後索』兵問部馬政総論に「天を行くには竜にしくものはなく、地上を行くには馬にまさるものなし。馬は用兵の根本にして、国の大用なり」とある。
★ 古代では馬の持つ軍事的威力が勝敗を決した。そのことを壬申乱で痛感した天武天皇にとって、伊勢の地とは違った意味で、信濃の地は現実的な神威の地であった。だから伊勢神宮の重視と共に、信濃に都城の計画をしたと考えられる。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・大唐「高宗・則天武后」は執拗に朝鮮半島に、その手を伸ばそうとしていた。それが「いつ、日本に向けられるのか」などは、判ったもんじゃない。
大唐海軍が必ずしも「筑紫」に来るとは、想われない。海軍ならば海岸線の接岸可能な処を他にも探すだろう。ここで「水際作戦」を展開するには「機動力」が欠かせない。
それは、この時代には、やはり馬であるのだろう。いずれにせよ「馬」は欲しい。 ではでは ≫
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１３３．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
天武天皇の造都計画
−なぜ信濃に都城・代官を造営しようとしたかー
◎ 信濃に都城・行宮を造営した意図 ◎
ｐ．４０８
信濃に派遣された三野王らは、二ヵ月余りたって、信濃国の地図を上進している。それから一年半たって行宮造営のための派遣記事が載る。たぶん都城建設が無理であることがわかって、行宮に変更したのだろう。それにしても、★天武天皇の信濃への執着は異常である。
≪中略≫
ｐ．４１０
『日本書紀』の天武天皇の即位前紀に「天文・遁甲に能し」と書かれているが、壬申乱の時、伊賀の横川（名張川）で、天武天皇は自ら「式（ちく）」をとって占術を行っており、天武四年には占星台を建てている。信濃への関心は天皇のこの知識が無視できない。畿内と信濃への都城造営調査のために派遣された役人の中には陰陽師も含まれている。
ｐ．４１１
……。もし判官以下を伴っていなかったら、地図は上進できなかっただろう。畿内・信濃に「王を主席とする重い使者群」が派遣されたと解すべきである。
「地形を見る」とは、現在の地形調査みたいなものでなく、陰陽師による方位観に立った適地選定であり、地図も陰陽師的視点で利用する面があった。（工匠は技術的観点に立つ）
……、現在も方位・家相など、陰陽五行の影響が見られるのだから天文・遁甲に長じていた天武天皇が造都の地として選び、造都が無理だとわかっても行宮を造ろうとした信濃への執着は≪天武天皇を火徳・火の君とする≫ ・）吉野裕子説の視点が無視できない。
天武十三年の都城調査のため、信濃へ派遣された三野王は、畿内に派遣された広瀬王には「浄広肆」という官位がついているのに、何も書かれていない。……、三野王の官位欠落を最初からの欠落とすれば問題である。★壬申乱の時、筑紫太宰であった栗隈王の子であった三野王と、宇陀の甘羅村で大海人皇子に従った美濃王（三野王）の、二人いるからである。
≪中略≫
ｐ．４１４
……、信濃派遣の三野王は、小紫三野王と断定できないが、通説のように天武十一年の造都調査のときの三野王が、小紫三野王だから、信濃造都調査にも、小紫三野王が派遣されたと見る方が、妥当性がある。
信濃は南北に長い国だが、信濃の方位を陰陽五行の方位観でいえば、寅方位である。……、、寅方位は、★「三合の理」でいえば「火は寅に生ず」で、火徳王・天武の生気の地である。★「相生の理」でも寅方位は火徳王の生気の地になる。
火徳王の天武天皇がプランを建て、建設を始めた新城（後の新益京）の宮地からの寅方位に三輪山があるから、この山の生気（心霊）を受けるのに相応しい地に、火徳王の宮室及び新しい都城を建設したとも考えられる。
ｐ．４１５
★★ 藤原宮の大極殿から、三輪山・香久山・畝傍山・耳成山の山頂が、寅・辰・申・子の方位にほぼ位置するのは偶然ではない。★★天武十三年三月、天皇が行幸して決めた「宮室之地」は三輪山だけでなく、大和三山にも関わる土地を選んだのである。
寅・卯・辰は、木気である。相生の理では、「木生火」で、火気を生むのが木気だから、火徳王の生気である。★★この木気の寅・辰方位に三輪山と香久山が位置し、卯方位には伊勢神宮がある。天武朝からの伊勢神宮の重視は、この視点からも無視できない。
★★★ 卯方位の伊勢重視の発想が、寅方位の信濃重視となり、信濃に都城（後に行宮）造営を考えたのだろう。
畝傍山は申方位だが、寅と申は、子と午と共に陰陽五行の基本軸である。だから午方位に耳成山がある。藤原宮を中心として、子午軸の子は耳成山、午は天武・持統陵となり、寅申軸は三輪山・畝傍山となる。寅は木気（東・春）の生だから、旧暦正月の月とされ、冬至から夏至までを言い、申は金気の（西・秋）の生で、夏至から冬至までを言う。寅も申も、物事の始めとされるから、例えば諏訪大社の御柱祭も、寅年と申年に行われる。
★★★ 冬至・夏至の陰陽五行の観点とは別に、新城の宮室の位置からは、寅方位の三輪山に夏至の朝日が昇り、夕日は畝傍山の申方位に堕ちる。
ｐ．４１６
★★★ また冬至の朝日は香久山の辰方位から昇る。日の御子としての天皇即位儀礼の大嘗祭が冬至に行われるように、実際の冬至重視が香久山重視となり、木気の香久山と三輪山は、天つ神と国つ神を代表する山となった。
★★★ そして香久山は高天原の山と観念され、三輪山は出雲とイメージが重ねられたのであろう。だから三輪山とダブルイメージの信濃の神は（建御名方神）も、出雲系の神に分類され、大神（おおみわ）の神（大物主神・大国主神）の子とされたのだろう。（大神神社には建御名方神も祀られてており『和名抄』には諏訪湖に美和郷が「神名帖」には水内郡に美和神社がみえる）
諏訪の神の『日本書紀』の登場は、持統天皇五年八月辛酉（二三日）条の、
使者を遣わして、竜田風神、信濃の須波、水内等の神を祭らしむ
である。
ｐ．４１７
この風神は（奈良県斑鳩町）龍田に祀られているが、龍田は新城の宮地から亥の方位にある。三合の理では寅・午・亥は、火気・火徳の三合で、寅が生気・午が旺気・亥が墓気となるが、信濃（寅）、飛鳥（午）、龍田（亥）は方位として、火気・火徳の三合であり、また、亥と辰（龍）は、子と午、寅と申と同じ、対局の軸だからである。
新益京の宮地は、龍田に対して辰方位であり、この延長線上に大官大寺があり、更に吉野の宮滝が有る。大官大寺は龍田の神と対である。≪?!≫
★ この大官大寺の造司も、龍田の神を最初に祀ったのも小紫三野（美濃）王である。（新益京の大官大寺は、三野王が造司であった大官大寺を持統朝に移転したようである）
★★ この三野王が、新城の造都や信濃の造都にも関わっているのは偶然とはいえない。（信濃派遣の三野王も小紫三野王のようである）
新城の地形を小紫三野王に見させたのは、前述したような新城の宮室の位置から見て、三野王が天武天皇と同じように、陰陽五行に長じていたからである。
★★ 信濃の造都計画には宗教的な意味があった。だから三野王が派遣され、三野王が最初に祀った龍田の神と同じ意図で、信濃の神も祀られたのであろう。
ｐ．４１８
古代の大建造物の造営には宗教的意義が込められている。
天武天皇の信濃造都の発意には東国経営という現実的意味もあったろうが、造都建設が無理と判っても行宮を造ろうとして強く信濃に執着したのは、信濃の馬や山河への関心も勿論だが、信濃が三輪山と共に、火徳王・天武天皇にとって生気の地であったからと考えられる。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・ありゃりゃ…、「火徳王・天武天皇」とするなら、もっと「豪放磊落」であって欲しい気がするな。全て「宗教色・意味づけ」してしまうと、私的には「つまんない奴だな」と思ってしまう。
逆に信濃で「馬を乗り廻す」天武天皇の雄姿を拝みたいと、私は想う。その方が「カッコイイ!」だろ?!
先にも書いたけれど「則天武后」が執政を握り、新たな朝鮮支配を目論んでいる。これの反動で「大祚栄・渤海国」なんて出てくる。その手がいつ日本に伸びてくるかなんて、判ったもんじゃない。
その時に「馬」は機動力だろうと思う。筑紫ばかりが港じゃないし、「急襲」するなら「港」でなくともよく「小舟」を用意すればなんとかなるさ。用は「補給路の確保」で、この当てがないから「大唐」は日本進出に二の足を踏むのだろうさ。
しかし、いずれ「日唐の蜜月」も訪れる。このことには「遣唐使・間者」も情報活動をやっていたんだろうね。たぶん……。 ではでは ≫
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１３４．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
火徳の漢帝国と天武天皇
◎ 天武天皇と火徳王朝の漢の高祖と光武帝 ◎
『日本書紀』の天武天皇元年（６７３）七月二日条に、大友皇子の近江軍と識別するため、大海人皇子の軍は「赤色を以て衣の上に着く」とあり、『古事記・序』には天武天皇の功業を述べて「絳旗（あけのはた・赤旗）兵（つわもの）を輝かして、兇徒瓦のごと解けつ」とあり、柿本人麻呂は、壬申乱における高市皇子の戦功を讃めて、挽歌（『万葉集』巻二、一九九）で旗は野火ように風になびいたと詠んでいるから、赤色の軍衣・赤旗が大海人皇子の軍を示している。
天武天皇は、天武十五年（６８６）九月九日に崩じている。干支にすると、丙戌年戌月丙午である。「丙」は十干では「火の兄（ひのえ）」で火気をいい、十二支では午で五行の「火」に配される。方位では午は南だが、南も火である。
崩御日が「丙午」で九月九日が重用の節句だから、 ・）吉野裕子 は、天武天皇の火徳に合わせて、呪術的に決められたものとみている。私も、賛同する。
ｐ．４２２
天武・持統の合葬陵は、藤原宮の太極（太一）殿の南（火）にあり天武の縁者の陵（文武天皇陵など）も、藤原宮の南に位置している。また「朱鳥元年」の改元は『日本書紀』の記す、天武天皇の崩御日の四十九日前だが、この日は七月二十日で「戊午」である。やはり、「火」の「午」の日に改元している。その上、元号が「朱」つまり赤で「火」を示している。五神では「朱雀」が「火」にあたるので、朱雀の意味で朱鳥とつけたとも考えられる。
これらの「火」重視は持統が行ったものだが、壬申乱で既に赤色を使用しているように、天武自身が自分の王朝を火徳と見て、重要な行動や儀式には「火」の午の日を選んでいる。出家して吉野に入った日も壬午であり、挙兵の日も壬午である。
「五行」の火は……、「五色」が赤、「五方」が南であり、五帝では「赤帝」である。赤帝は炎帝とも書く。
『白虎通』五行には「炎天者太陽也」とある。古代中国では火と日は親近性を持ち★★太陽神の原初的性格は火神である……。 ≪図略≫
★ ・）御手洗勝 の★「帝堯の伝説について」★「神農と豈尤」★「義和の始原的性格ー古代中国における『太陽の御者』伝説」★に、詳述されている。
ｐ．４２３
赤（炎）帝は、太陽神・火神である祝融とも一体化している。『礼記』日令には「盂夏之月、其天炎帝、其神祝融」とあり、『故事成語考』歳時には、「南方神曰�⊇僕鮫 �居㋹離而司㋹夏、丙丁属㋹火、則旺��干夏� �其色赤、故夏帝曰�∪崢覘 廚箸△襦�
・）御手洗勝 は、太陽神祝融は、『竜を御して天空を飛行するという観想』を持っていたと書く。
いずれにしても、火徳王は、太陽王のイメージを持っている。
★★★ 天武天皇が『日本書紀』の書くような「東宮大皇弟」でないことは、自らを火徳王の漢の高祖に例えていることからもいえる。皇祖・劉邦は、秦皇帝の「東宮」でも「大皇弟」でもない。
『漢書』高帝紀に、高帝（皇祖）が旗幟にみな赤を用いたとあるので、
・）井上通泰 は、大海人皇子を漢の高祖、大友皇子を項羽に擬している。
・）坂本太郎 は、大海人皇子が赤旗を使用したのは、天智天皇が法治主義者であったので、秦の始皇帝に擬し、その子の大友皇子を二世皇帝に比し、自らを漢の高祖になぞらえて、乱に処する決意と将来の抱負を示したものと見る。
ｐ．４２４
・）直木幸次郎 も、天武＝皇祖説を認め「朱鳥」の年号などもその例にあげ、天武天皇の死後臨調称制し、その後皇位についた持統天皇を、皇祖の死後臨調称制した呂太后に擬し、持統天皇自らがそれを意識して、天武朝末からその後の政局を処理したと推論している。
・）前川明久 は、皇祖が出身地沛を湯沐邑としたのと、天武天皇が美濃に湯沐邑をつくった類似性を指摘している。
・）西嶋定生 は、天武朝になって表れる「賜爵」の表現は『漢書』に頻出することから、天武朝を漢王朝に擬した裏付けになるとみる。また、『日本書紀』の天武天皇四年五月条に載る「大学寮」も漢代の「太学」を意識したものとみる。さらに★『漢王朝において皇祖が白蛇を斬ったという斬蛇剣が即位儀礼に於いて伝授される宝器のひとつであったこと』と、わが国の皇位継承の記として、鏡・剣・玉のうち、剣が「草薙剣」と言われることに注目して、この草薙県は『漢王朝の斬蛇剣に擬した』と見ている。
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
火徳の漢帝国と天武天皇
◎ 天武天皇と火徳王朝の漢の高祖と光武帝 ◎
『日本書紀』の天武天皇元年（６７３）七月二日条に、大友皇子の近江軍と識別するため、大海人皇子の軍は「赤色を以て衣の上に着く」とあり、『古事記・序』には天武天皇の功業を述べて「絳旗（あけのはた・赤旗）兵（つわもの）を輝かして、兇徒瓦のごと解けつ」とあり、柿本人麻呂は、壬申乱における高市皇子の戦功を讃めて、挽歌（『万葉集』巻二、一九九）で旗は野火ように風になびいたと詠んでいるから、赤色の軍衣・赤旗が大海人皇子の軍を示している。
天武天皇は、天武十五年（６８６）九月九日に崩じている。干支にすると、丙戌年戌月丙午である。「丙」は十干では「火の兄（ひのえ）」で火気をいい、十二支では午で五行の「火」に配される。方位では午は南だが、南も火である。
崩御日が「丙午」で九月九日が重用の節句だから、 ・）吉野裕子 は、天武天皇の火徳に合わせて、呪術的に決められたものとみている。私も、賛同する。
ｐ．４２２
天武・持統の合葬陵は、藤原宮の太極（太一）殿の南（火）にあり天武の縁者の陵（文武天皇陵など）も、藤原宮の南に位置している。また「朱鳥元年」の改元は『日本書紀』の記す、天武天皇の崩御日の四十九日前だが、この日は七月二十日で「戊午」である。やはり、「火」の「午」の日に改元している。その上、元号が「朱」つまり赤で「火」を示している。五神では「朱雀」が「火」にあたるので、朱雀の意味で朱鳥とつけたとも考えられる。
これらの「火」重視は持統が行ったものだが、壬申乱で既に赤色を使用しているように、天武自身が自分の王朝を火徳と見て、重要な行動や儀式には「火」の午の日を選んでいる。出家して吉野に入った日も壬午であり、挙兵の日も壬午である。
「五行」の火は……、「五色」が赤、「五方」が南であり、五帝では「赤帝」である。赤帝は炎帝とも書く。
『白虎通』五行には「炎天者太陽也」とある。古代中国では火と日は親近性を持ち★★太陽神の原初的性格は火神である……。 ≪図略≫
★ ・）御手洗勝 の★「帝堯の伝説について」★「神農と豈尤」★「義和の始原的性格ー古代中国における『太陽の御者』伝説」★に、詳述されている。
ｐ．４２３
赤（炎）帝は、太陽神・火神である祝融とも一体化している。『礼記』日令には「盂夏之月、其天炎帝、其神祝融」とあり、『故事成語考』歳時には、「南方神曰�⊇僕鮫 �居㋹離而司㋹夏、丙丁属㋹火、則旺��干夏� �其色赤、故夏帝曰�∪崢覘 廚箸△襦�
・）御手洗勝 は、太陽神祝融は、『竜を御して天空を飛行するという観想』を持っていたと書く。
いずれにしても、火徳王は、太陽王のイメージを持っている。
★★★ 天武天皇が『日本書紀』の書くような「東宮大皇弟」でないことは、自らを火徳王の漢の高祖に例えていることからもいえる。皇祖・劉邦は、秦皇帝の「東宮」でも「大皇弟」でもない。
『漢書』高帝紀に、高帝（皇祖）が旗幟にみな赤を用いたとあるので、
・）井上通泰 は、大海人皇子を漢の高祖、大友皇子を項羽に擬している。
・）坂本太郎 は、大海人皇子が赤旗を使用したのは、天智天皇が法治主義者であったので、秦の始皇帝に擬し、その子の大友皇子を二世皇帝に比し、自らを漢の高祖になぞらえて、乱に処する決意と将来の抱負を示したものと見る。
ｐ．４２４
・）直木幸次郎 も、天武＝皇祖説を認め「朱鳥」の年号などもその例にあげ、天武天皇の死後臨調称制し、その後皇位についた持統天皇を、皇祖の死後臨調称制した呂太后に擬し、持統天皇自らがそれを意識して、天武朝末からその後の政局を処理したと推論している。
・）前川明久 は、皇祖が出身地沛を湯沐邑としたのと、天武天皇が美濃に湯沐邑をつくった類似性を指摘している。
・）西嶋定生 は、天武朝になって表れる「賜爵」の表現は『漢書』に頻出することから、天武朝を漢王朝に擬した裏付けになるとみる。また、『日本書紀』の天武天皇四年五月条に載る「大学寮」も漢代の「太学」を意識したものとみる。さらに★『漢王朝において皇祖が白蛇を斬ったという斬蛇剣が即位儀礼に於いて伝授される宝器のひとつであったこと』と、わが国の皇位継承の記として、鏡・剣・玉のうち、剣が「草薙剣」と言われることに注目して、この草薙県は『漢王朝の斬蛇剣に擬した』と見ている。
・）西嶋定生 の言う「白蛇」は、蛇に化した「白帝子」である。白帝子を赤帝子が斬ったと『史記』皇祖本記や封禅書、『漢書』高帝紀に記されているが、漢の高祖を「赤帝子」という。
★★★ 藤原京の大極殿の真南に天武陵が作られたのは、天武天皇を「南方赤帝」の子と見て、「赤帝子」に火徳の王朝、皇都を守ってもらうためである。★★★
ｐ．４２４
このように大海人皇子が火徳の赤帝子なら、大友皇子は金徳の白帝子である。「五行相剋」では「火剋金（火は金に剋つ）」である。★大友皇子の軍が、合言葉に「金」と言ったと壬申紀は書く。★これは大友皇子を白帝子（金徳）と見ての記事である。
・石母田正 は、天武天皇が漢の高祖に自らを擬していることについて『天武が自己の個人的経験を、中国古代の易姓革命を媒介として解釈していること、漢書という史書を通して、彼の特殊一回的経験は、中国の王朝交替の歴史と観念的に結合されていることを示すものである。』と述べている。
★★★ 天武天皇十年の修史事業の詔も、『漢書』を意識してのものだろうが、★「易姓革命」の認識を天武天皇が持っていたとしたら、これは歴代天皇には無い特別な認識★であり、そのような「革命」認識を持った天皇だから、歴代天皇が意図しなかった★国号変更（易姓）★という行動をとったのだろう。
★★★ このように、天武天皇には「東宮大皇弟」の意識は無い。
高祖・劉邦は中流農家の出身で、秦の始皇帝病死した翌年、沛にて兵を興しているが、ライバルの項羽が戦国旧諸侯の代表とすれば、劉邦は一般農家・商工民・中小地主の代表であった。この劉邦に擬していることから見ても、天武天皇の出自は、私が繰り返し書いているように、『日本書紀』に書かれているような舒明天皇の子ではなく高向王の子であることが推測できる。
ｐ．４２６
天智天皇とその子大友皇子の二代を秦帝国の二代に擬し、秦帝国を倒した農民出身の漢帝国の創始者に≪天武天皇は≫自分を重ねたのであろう。とすると始皇帝の出自（戦国時代の秦の荘襄王の子）と、皇祖・劉邦の出自の違いは、天智の父は舒明天皇なのに自分の父は天皇では天皇ではないことを意識していたためではないだろうか。
★ 天武天皇を、前漢の高祖・劉邦に擬する説以外に、後漢の光武帝・劉秀に比定する説が有る。天武天皇の和風諡号「天渟中原瀛真人天皇」の「瀛真人」と「白水真人」という劉秀が重なるからである。
「白水」がつくのは劉秀が属する春陵侯家劉氏（劉秀は、高祖九世の孫）の故宅が、南陽の白水郷にあったからだが、この地の漁人を「白水郎」という。
『日本書紀』允恭天皇十四年条に海人（あま）のことを「白水郎」と書き『和名抄』でも「白水郎」を和名「阿万」と書くように、海の意の「瀛」と同義だからである。
天武王朝が漢王朝と同じ火徳であることは、当時の宮廷人、特に皇親の人たちは承知していたであろう。とすれば当然、天武天皇と高祖は、革命の王者としてダブルイメージであった。
ｐ．４２７
★★★ ところが『日本書紀』は、王朝の交代（革命）ではなく、★王朝の継続★として「天命開別天皇ー東宮大皇弟」という構図を創作した。★★★
この構図は天武・持統の描いた火徳王朝の王権とは違う。
そこで天武天皇の和風諡号に「瀛真人」を付けることで「白水真人」の光武帝に擬したと考えられる。（天武、天智の和風諡号は、書記最終編纂期につけられた……・）山田英雄・）黛弘道）
「天命開別天皇」の「東宮大皇弟」という構図を作っても壬申乱は否定できないので『日本書紀』編纂者は、天武天皇は自らを皇祖に比定していたのに、大友皇子を王莽に比定し王莽を討った、後漢帝国の創始者・光武帝に天武天皇を比定し「東宮大皇弟」に擬したのであろう。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・「革命家」を「万世一系」のトップには置けないということだね。「大王→天皇」ということで「king of kingdOm」として、また「King of kings」の「王の中の王」として位置づけたい訳だ。それも「諸王の平和的な合議制」として。
「それで、良いじゃない？！」でしょうか。「革命」には流血が憑き物で夥しい人命が失われる。
政治決断・政治意志が波動していては「国は治まらない」から。それよりは｢強権」が必要なのだろうね。しかし「鞭で叩いて、槍で突いて、銃で撃ち殺す」ことで「世の中」が収まるだろうか。
だとすると、「天武革命」は成功したんだろうね。この国の歴史にも途中いろいろとあるけれどね……。 ではでは ≫
★★★ 藤原京の大極殿の真南に天武陵が作られたのは、天武天皇を「南方赤帝」の子と見て、「赤帝子」に火徳の王朝、皇都を守ってもらうためである。★★★
ｐ．４２４
このように大海人皇子が火徳の赤帝子なら、大友皇子は金徳の白帝子である。「五行相剋」では「火剋金（火は金に剋つ）」である。★大友皇子の軍が、合言葉に「金」と言ったと壬申紀は書く。★これは大友皇子を白帝子（金徳）と見ての記事である。
・石母田正 は、天武天皇が漢の高祖に自らを擬していることについて『天武が自己の個人的経験を、中国古代の易姓革命を媒介として解釈していること、漢書という史書を通して、彼の特殊一回的経験は、中国の王朝交替の歴史と観念的に結合されていることを示すものである。』と述べている。
★★★ 天武天皇十年の修史事業の詔も、『漢書』を意識してのものだろうが、★「易姓革命」の認識を天武天皇が持っていたとしたら、これは歴代天皇には無い特別な認識★であり、そのような「革命」認識を持った天皇だから、歴代天皇が意図しなかった★国号変更（易姓）★という行動をとったのだろう。
★★★ このように、天武天皇には「東宮大皇弟」の意識は無い。
高祖・劉邦は中流農家の出身で、秦の始皇帝病死した翌年、沛にて兵を興しているが、ライバルの項羽が戦国旧諸侯の代表とすれば、劉邦は一般農家・商工民・中小地主の代表であった。この劉邦に擬していることから見ても、天武天皇の出自は、私が繰り返し書いているように、『日本書紀』に書かれているような舒明天皇の子ではなく高向王の子であることが推測できる。
ｐ．４２６
天智天皇とその子大友皇子の二代を秦帝国の二代に擬し、秦帝国を倒した農民出身の漢帝国の創始者に≪天武天皇は≫自分を重ねたのであろう。とすると始皇帝の出自（戦国時代の秦の荘襄王の子）と、皇祖・劉邦の出自の違いは、天智の父は舒明天皇なのに自分の父は天皇では天皇ではないことを意識していたためではないだろうか。
★ 天武天皇を、前漢の高祖・劉邦に擬する説以外に、後漢の光武帝・劉秀に比定する説が有る。天武天皇の和風諡号「天渟中原瀛真人天皇」の「瀛真人」と「白水真人」という劉秀が重なるからである。
「白水」がつくのは劉秀が属する春陵侯家劉氏（劉秀は、高祖九世の孫）の故宅が、南陽の白水郷にあったからだが、この地の漁人を「白水郎」という。
『日本書紀』允恭天皇十四年条に海人（あま）のことを「白水郎」と書き『和名抄』でも「白水郎」を和名「阿万」と書くように、海の意の「瀛」と同義だからである。
天武王朝が漢王朝と同じ火徳であることは、当時の宮廷人、特に皇親の人たちは承知していたであろう。とすれば当然、天武天皇と高祖は、革命の王者としてダブルイメージであった。
ｐ．４２７
★★★ ところが『日本書紀』は、王朝の交代（革命）ではなく、★王朝の継続★として「天命開別天皇ー東宮大皇弟」という構図を創作した。★★★
この構図は天武・持統の描いた火徳王朝の王権とは違う。
そこで天武天皇の和風諡号に「瀛真人」を付けることで「白水真人」の光武帝に擬したと考えられる。（天武、天智の和風諡号は、書記最終編纂期につけられた……・）山田英雄・）黛弘道）
「天命開別天皇」の「東宮大皇弟」という構図を作っても壬申乱は否定できないので『日本書紀』編纂者は、天武天皇は自らを皇祖に比定していたのに、大友皇子を王莽に比定し王莽を討った、後漢帝国の創始者・光武帝に天武天皇を比定し「東宮大皇弟」に擬したのであろう。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・「革命家」を「万世一系」のトップには置けないということだね。「大王→天皇」ということで「king of kingdOm」として、また「King of kings」の「王の中の王」として位置づけたい訳だ。それも「諸王の平和的な合議制」として。
「それで、良いじゃない？！」でしょうか。「革命」には流血が憑き物で夥しい人命が失われる。
政治決断・政治意志が波動していては「国は治まらない」から。それよりは｢強権」が必要なのだろうね。しかし「鞭で叩いて、槍で突いて、銃で撃ち殺す」ことで「世の中」が収まるだろうか。
だとすると、「天武革命」は成功したんだろうね。この国の歴史にも途中いろいろとあるけれどね……。 ではでは ≫
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１３５．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
火徳の漢帝国と天武天皇
◎ 『古事記・序文』の火徳王・天武天皇 ◎
『古事記・序文』は、天武天皇の徳を讃えて、
握��乾符�ー��悪∀珊膈 �
（乾符（けんぷ）を握（と）りて六合を�亜覆后砲戞�
得��天統�ー�包��八荒� �
（天統を得て八荒を包（か）ぬ）
と、七字二句の対句で書く。「握��乾符� 廚砲弔い董�
・）山田孝雄 は、「古事記序文講義」で『文選』の東都賦に載る、
於㋹是聖皇乃握��乾符
に、関係あるとみる。
ｐ．４２８
東都符との関係は、既に、
・）亀田鶯谷 が、「古事記序解」で述べているが、……、この用法は後漢の光武帝のときからと見て、次のように書く。
握��乾符�．蓮∧諺�ノ東都ノ賦ニ見エテ、後漢ノ光武起ル時ニ、儒生彊華カ自リ��関中�（凜轡騰∪嵒�符�〃悒襯髪哨觴永献鮖悒好淵蝓�
漢ハ火徳ナレハ、火ヲ為ル㋹主トヲ云フ。
此文ハ仮テ我カ天ツ璽ノ神シ宝ヲ指奉ルヘシ。
東都は後漢の都をいうから、聖光は光武帝である。『文選』の注に乾符は、赤伏符とあるが、・）鶯谷 の引用する「識文」は『後漢書』光武紀に載る次の文章である。
光武先在��長安�〇�、同舎生彊華、自��関中�（���伏符�】�劉秀発㋹兵捕�↓�不道� ∋涌弍製検⇔尭�㋹野、四七之際火為㋹主、群臣因複奉曰、受命之符。
赤伏符には「劉秀」から「火為王」までの文句があったのである。赤伏符を乾符といったのは「乾」は易で帝王の徳を示すからである。
光武帝の即位に、天子の印である乾符が現れたのを、序文筆者が天武天皇の即位に使っているのは、赤伏符が火徳王の印であることを意識していたからであろう。
ｐ．４２９
また「乾符」の対句の「天統」も『史記』皇祖紀の讃に、次のように書かれている。
漢興承㋹敝易一㋹変使�⊃揺圻�㋹倦得��天統�≠�
また『漢書』高帝紀の賛には、
漢承�♯￣伸‘巣�己盛断㋹蛇著㋹符、旗幟上㋹赤協�◆∪蕾估銑 ⊆�然鷹得��天統�≠磧、禪躾◆δ�正す≫
とあり、「天統」も火徳の天統なのである。
このように天武天皇の即位の記事で、天皇の徳を讃えているが、その文句は「火徳」を讃えているのである。
そのことは序文に、
杖矛挙㋹威 猛士烟起
（杖矛威（じょうぼういきおい）を挙げて、猛士烟（けむり）のごとく起こり）
絳旗耀㋹兵 凶徒瓦解
（絳旗兵（こうきつわものを）耀かして、凶徒瓦のごとく解けき）
と、対句で書かれていることからも言える。
『文選』の東京賦に
高祖膺㋹籙受㋹図、順㋹天行㋹誅、杖�⊆覺��ー�建��大号��
とあるが、この注に「漢書高祖立為�⊥鏝�� ４�幟皆赤、故曰㋹朱也」と書かれている。
このように「絳旗（朱旗）」は、火徳王の高祖の印だから、光武帝に赤伏符（乾符）として、現れたのである。
ｐ．４３０
この「絳旗輝兵」の対句の「杖矛挙威」の「杖矛」について、
・）山田孝雄 は、『古事記序文講義』で『史記』朱建伝に、沛公（皇祖）が「矛」を「杖」として、酈食其と面会した話と関連があるとみて『天武天皇は美濃の穴八郡に湯沐邑を有したまひ、そこに入って東国の兵を集められた。現在でも美濃尾張は中央では最も米が多く富力の中心である。信長、秀吉、家康、皆この美濃尾張を元にして興った。天武天皇は濃尾の兵を率いて近江を攻められたのである。沛公もまた同様の意味で富力の中心である陳留に拠った。だから「杖矛」という文字は沛公が酈食其にあったと同様のことを天武天皇がおやりなされたといふ意味であらふと思う。そのことを匂わせて書いたのである。初め沛公は儒者のへりくつを云ってきたと思って断り、次いで酒飲と聞いて矛を杖つき威を示して客を引見した。これは天武天皇が伊勢の桑名の郡家で、軍の相談をなされた時、近江の京では恐れ騒いだ。そのへんのことを想像させるために杖矛挙威の文字を用い来ったのであらう』と書いている。
そして「杖矛挙威」に続く「猛士」について、漢高祖の大風歌に（『史記』皇祖紀）
安得猛士兮四方
とあるから、
・）山田孝雄 『これは杖矛と共に漢高祖に関係が有る。天武天皇を沛公に比べて、譬喩にしようとしたものと思われる』と述べている。
ｐ．４３１
・）倉野憲司 は、『……。但し、次の「猛士」や「絳旗」の語が、何れも漢の高祖と関係があるようであるから、ここの「杖矛」の文字も沛公と関係が有ると見て差し支えあるまい』と書いている。
なお、「猛士」の用例は『後漢書』光武紀に、
選�⇔�武衛� ‐鍬∧臾垰劉�
とある。
このように『古事記・序文』の文章に、漢の高祖や、後漢の光武帝に関わる文句を使用していることから見ても、漢の火徳を天武天皇に重ねていたことが推測できる。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・「お手本」なり「参考資料」に眼を通していたこともあるけれど、「他国の歴史」も研究していたんだろうね。よってこのように「書くことができる」ということだろうね。
ここでは「比喩・譬喩」としているけれど、ここまでくれば「メッセージ」だよね？！
およそ『日本書紀』では「天武天皇を讃える」はずだったのだろうけれど、それは「近い未来」のために「首皇子擁立」に向けて、編纂し直すことにしたんだろうね。
なんたって「大陸の、東海の、島嶼」だものね。朝鮮三国のように「血で血を洗う」事態は是非、避けたい。それがある。
ま、権力交代劇には、しばしば「流血騒ぎ」が伴うのだけれどね。
ある意味日本の民主主義は「民主主義革命」なんて知らずに、ＧＨＱのタナボタだからね。
なまじ「民族の実存・意味・存在意義」→「国体の本義」・「国家改造法案」なんてこっちゃ、大変だったでしょ？！
要は「知的（教育）水準＋民主主義」かな。これを維持することが、「この国の形」となるような気がする。 ではでは ≫
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１３６．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
火徳の漢帝国と天武天皇
◎ 柿本人麻呂の天武天皇像 ◎
『古事記・序文』筆者は天武天皇を、革命者の高祖、再興者の光武帝の両方に重ねているが、壬申乱を詠った柿本人麻呂にとって天武天皇は漢の高祖であり、革命を成し遂げた王者、現人神であった。
ｐ．４３２
柿本人麻呂は日並（草壁」皇子尊挽歌（巻二・一六七）では、
天地の 始めの時の ひさかたの 天の河原に 八百万 千万神（ちよろずかみ）の 神集ひ
集ひいまして 神はかり はかりし時に 天照らす 日女の命 天をば 知らしめすと 葦原の
瑞穂の国を 天地の 寄り合ひの極み 知らしめす 神の命と 天雲の 八重かきわけて 神下し
いませまつりし 高照らす 日の皇子は 飛ぶ鳥の 清御原の宮に ……
と詠い、天武天皇をニニギと重ね合わせ、飛鳥浄御原宮へ天降った日の皇子としての天皇と見ている。
つまり「天照らす日女の命ー高照らす日の皇子（ニニギ・天武天皇）」という構図であって、「天命開別天皇ー東宮大皇弟」という、『日本書紀』の構図ではない。
また、高市皇子の挽歌（巻二・一九七）では、天武天皇を
和射見が原の 行宮に 天降りいまして 天の下 治めたまひ
と詠っている。（和射見が原＝関ヶ原）
・）土橋寛 は、この歌について、人麻呂は天武天皇を『ニニギノミコトと一体をなす神話的存在』と見ていたから、壬申乱の時の天武天皇を「天降りいまして」と詠ったとみる。
ｐ．４３３
・）伊藤博 は、「高照らす日の皇子」は『ニニギノミコトに天武を重ねた表現でなくて、天武天皇にニニギノミコトのイメージを重ねた表現と見るべきで、そこにこそ白鳳宮廷歌人・人麻呂らしい神話があると思われる。さきにも一言したように、この歌では天武は「神」であって「天皇」ではないのだ』と書いている。
「おほきみは神」と詠われているのは天武天皇と皇后と皇子たちに限られている。このような存在の天武天皇は『日本書紀』の書く「天命開別天皇ー東宮大皇弟」とは異質である。
★ 天武天皇こそ「天命開別天皇」である。この柿本人麻呂の天武天皇像から推測しても、天武天皇を天智天皇の「東宮大皇弟」に限定した『日本書紀』の発想に作為を感じる。
★★★ 漢の高祖に自からを擬した天武天皇を『日本書紀』は金徳王朝の「東宮大皇弟」と書くが、≪天武天皇は≫金徳王朝を継いだわけではない。金徳王朝を倒し、火徳王朝を樹立した初代天皇だから天降りした天皇といわれ、国号も改め「日本」としたのである。だから漢の高祖に擬したのだが、その天皇を「東宮大皇弟」してしまったので、その合理化を「白水真人」の後漢の光武帝に比定したが、光武帝では人麻呂の天武天皇像とは合わない。天降りした天武天皇は、漢の高祖こそが相応しい。
・）倉野憲司 は、『……。但し、次の「猛士」や「絳旗」の語が、何れも漢の高祖と関係があるようであるから、ここの「杖矛」の文字も沛公と関係が有ると見て差し支えあるまい』と書いている。
なお、「猛士」の用例は『後漢書』光武紀に、
選�⇔�武衛� ‐鍬∧臾垰劉�
とある。
このように『古事記・序文』の文章に、漢の高祖や、後漢の光武帝に関わる文句を使用していることから見ても、漢の火徳を天武天皇に重ねていたことが推測できる。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・「お手本」なり「参考資料」に眼を通していたこともあるけれど、「他国の歴史」も研究していたんだろうね。よってこのように「書くことができる」ということだろうね。
ここでは「比喩・譬喩」としているけれど、ここまでくれば「メッセージ」だよね？！
およそ『日本書紀』では「天武天皇を讃える」はずだったのだろうけれど、それは「近い未来」のために「首皇子擁立」に向けて、編纂し直すことにしたんだろうね。
なんたって「大陸の、東海の、島嶼」だものね。朝鮮三国のように「血で血を洗う」事態は是非、避けたい。それがある。
ま、権力交代劇には、しばしば「流血騒ぎ」が伴うのだけれどね。
ある意味日本の民主主義は「民主主義革命」なんて知らずに、ＧＨＱのタナボタだからね。
なまじ「民族の実存・意味・存在意義」→「国体の本義」・「国家改造法案」なんてこっちゃ、大変だったでしょ？！
要は「知的（教育）水準＋民主主義」かな。これを維持することが、「この国の形」となるような気がする。 ではでは ≫
天寿国の末裔・上代史ノート「天武天皇論」１３６．
天武天皇論 �供ァ ‖舅卒簍此 ‖舅遜駛�
火徳の漢帝国と天武天皇
◎ 柿本人麻呂の天武天皇像 ◎
『古事記・序文』筆者は天武天皇を、革命者の高祖、再興者の光武帝の両方に重ねているが、壬申乱を詠った柿本人麻呂にとって天武天皇は漢の高祖であり、革命を成し遂げた王者、現人神であった。
ｐ．４３２
柿本人麻呂は日並（草壁」皇子尊挽歌（巻二・一六七）では、
天地の 始めの時の ひさかたの 天の河原に 八百万 千万神（ちよろずかみ）の 神集ひ
集ひいまして 神はかり はかりし時に 天照らす 日女の命 天をば 知らしめすと 葦原の
瑞穂の国を 天地の 寄り合ひの極み 知らしめす 神の命と 天雲の 八重かきわけて 神下し
いませまつりし 高照らす 日の皇子は 飛ぶ鳥の 清御原の宮に ……
と詠い、天武天皇をニニギと重ね合わせ、飛鳥浄御原宮へ天降った日の皇子としての天皇と見ている。
つまり「天照らす日女の命ー高照らす日の皇子（ニニギ・天武天皇）」という構図であって、「天命開別天皇ー東宮大皇弟」という、『日本書紀』の構図ではない。
また、高市皇子の挽歌（巻二・一九七）では、天武天皇を
和射見が原の 行宮に 天降りいまして 天の下 治めたまひ
と詠っている。（和射見が原＝関ヶ原）
・）土橋寛 は、この歌について、人麻呂は天武天皇を『ニニギノミコトと一体をなす神話的存在』と見ていたから、壬申乱の時の天武天皇を「天降りいまして」と詠ったとみる。
ｐ．４３３
・）伊藤博 は、「高照らす日の皇子」は『ニニギノミコトに天武を重ねた表現でなくて、天武天皇にニニギノミコトのイメージを重ねた表現と見るべきで、そこにこそ白鳳宮廷歌人・人麻呂らしい神話があると思われる。さきにも一言したように、この歌では天武は「神」であって「天皇」ではないのだ』と書いている。
「おほきみは神」と詠われているのは天武天皇と皇后と皇子たちに限られている。このような存在の天武天皇は『日本書紀』の書く「天命開別天皇ー東宮大皇弟」とは異質である。
★ 天武天皇こそ「天命開別天皇」である。この柿本人麻呂の天武天皇像から推測しても、天武天皇を天智天皇の「東宮大皇弟」に限定した『日本書紀』の発想に作為を感じる。
★★★ 漢の高祖に自からを擬した天武天皇を『日本書紀』は金徳王朝の「東宮大皇弟」と書くが、≪天武天皇は≫金徳王朝を継いだわけではない。金徳王朝を倒し、火徳王朝を樹立した初代天皇だから天降りした天皇といわれ、国号も改め「日本」としたのである。だから漢の高祖に擬したのだが、その天皇を「東宮大皇弟」してしまったので、その合理化を「白水真人」の後漢の光武帝に比定したが、光武帝では人麻呂の天武天皇像とは合わない。天降りした天武天皇は、漢の高祖こそが相応しい。
柿本人麻呂が天武天皇を火徳王と見ていたことは、高市皇子挽歌（巻二・一九七）で、
ｐ．４３４
指挙（ささ）げたる 旗の靡きは 冬ごもり 春さり来れば 野毎に 著きてある火の 風のむた 靡くが如く
と詠っていることからも言える。
・）山田孝雄 は、『古事記・序文』の「絳旗耀兵」が『事実であって飾り言葉ではない』理由として、この人麻呂の歌をあげ『火の燃えるような赤い色、赤い旗、赤い印、これが耀兵によく合うのである』と書くが、・）倉野憲司 ・）西郷信綱 も、「絳旗耀兵」の例として、この歌を上げている。
・）西郷信綱 は、『旗が赤々と野火のように靡いているさまを詠じたもの』と書く。
★ 人麻呂が中国思想に造詣が深いことは、……で述べたが、旗の赤色を燃えている火に例えているところから見ても「火為王」の意識をもって靡く旗を表現したといえる。
以上、述べたように天武天皇の火徳は、火徳王朝の漢帝国の創始者・高祖に擬したからだが、漢の高祖に擬したのは、★自らの王権を革命王権と見ていたからである。
このような革命王権の樹立者が、柿本人麻呂の詠う「天降り」した「日の皇子」なのである。
★ 革命こそが、天命によって国を開くことなのだから、「天命開別天皇」は天武天皇こそ相応しい。
★★ その和風諡号を天智天皇に付け、天武天皇は天智天皇の「東宮大皇弟」にしてしまった。
★★★ この天武天皇像を矮小化した『日本書紀』の発想と、柿本人麻呂や『古事記』のイメージにある火徳王としての天武天皇とは重ならないのである。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・「ひえー、長かったナ…」ようやく、入力し終えたよ。まさかこんなに写すとは思わなかった。もっと要約しようとも考えたけれど、「作品」だからね。
でも、飛ばした所も多々あるからね。「原本を読もう」ね。誤写もあるかもね。
でも、天武天皇は、ただの「革命児」じゃないよ。
「大唐」・「新羅」との国際関係の中で「敗戦国・戦後賠償をチャラにする」そのための「革命劇・出来レース」だったかもしれないよ！ ま、こんなの言ってるのは「私だけ…」
よって「私」にとっての天武天皇は「救国の革命児」だよ。
２０世紀「敗戦後」・「戦後第一の革命期」に、これほどの「男」は、誰一人いなかったよね。
「国を立て直すチャンス！」だったんだよね。だから戦後、「労・農・学」が連帯して、大きなムーブメントが起きたよね。
でも「そのこと」が解るようになったのは、私もこの歳になってから……。ははは……、笑うしかない。ケセラセラ…せらせらなんてね。 ではでは ≫
ｐ．４３４
指挙（ささ）げたる 旗の靡きは 冬ごもり 春さり来れば 野毎に 著きてある火の 風のむた 靡くが如く
と詠っていることからも言える。
・）山田孝雄 は、『古事記・序文』の「絳旗耀兵」が『事実であって飾り言葉ではない』理由として、この人麻呂の歌をあげ『火の燃えるような赤い色、赤い旗、赤い印、これが耀兵によく合うのである』と書くが、・）倉野憲司 ・）西郷信綱 も、「絳旗耀兵」の例として、この歌を上げている。
・）西郷信綱 は、『旗が赤々と野火のように靡いているさまを詠じたもの』と書く。
★ 人麻呂が中国思想に造詣が深いことは、……で述べたが、旗の赤色を燃えている火に例えているところから見ても「火為王」の意識をもって靡く旗を表現したといえる。
以上、述べたように天武天皇の火徳は、火徳王朝の漢帝国の創始者・高祖に擬したからだが、漢の高祖に擬したのは、★自らの王権を革命王権と見ていたからである。
このような革命王権の樹立者が、柿本人麻呂の詠う「天降り」した「日の皇子」なのである。
★ 革命こそが、天命によって国を開くことなのだから、「天命開別天皇」は天武天皇こそ相応しい。
★★ その和風諡号を天智天皇に付け、天武天皇は天智天皇の「東宮大皇弟」にしてしまった。
★★★ この天武天皇像を矮小化した『日本書紀』の発想と、柿本人麻呂や『古事記』のイメージにある火徳王としての天武天皇とは重ならないのである。
(＝⌒▽⌒＝)
≪私・「ひえー、長かったナ…」ようやく、入力し終えたよ。まさかこんなに写すとは思わなかった。もっと要約しようとも考えたけれど、「作品」だからね。
でも、飛ばした所も多々あるからね。「原本を読もう」ね。誤写もあるかもね。
でも、天武天皇は、ただの「革命児」じゃないよ。
「大唐」・「新羅」との国際関係の中で「敗戦国・戦後賠償をチャラにする」そのための「革命劇・出来レース」だったかもしれないよ！ ま、こんなの言ってるのは「私だけ…」
よって「私」にとっての天武天皇は「救国の革命児」だよ。
２０世紀「敗戦後」・「戦後第一の革命期」に、これほどの「男」は、誰一人いなかったよね。
「国を立て直すチャンス！」だったんだよね。だから戦後、「労・農・学」が連帯して、大きなムーブメントが起きたよね。
でも「そのこと」が解るようになったのは、私もこの歳になってから……。ははは……、笑うしかない。ケセラセラ…せらせらなんてね。 ではでは ≫
大和岩雄 氏の 『天武天皇論』について 『 読後感 』
この書の読後感を少し…。
いや、まいったね。「これ↑」に至っては「天武天皇について」の哲学に近い。
まさかここで「道教」をやるとは考えてなかったし、またそれほどに「神道」が影響を受けていたとは考えてもいなかった。
私自身は日本の神道は「祖霊崇拝・アニミズム」的なものと考えていたから……。
しかし「豊かな話し言葉」の文化が、「先に根付いていた」から「渡来文化」を吸収しても、逆に「包摂される」ことは無かった訳だね。
或は「知的・教養人」の稀少さが、幸いしたのかもしれないな。だって「この頃」に「文字が読めて、書ける」のは渡来人か、または「特権階級」の人たちだからね。
その意味では「天武天皇」も「特権階級の人たち」だよね。しかし「謎の人」だから……、ね。だから「何者？！論争」なんてのが有ったりする。
私の場合は深く詮索しないけれど、私にとっての「英雄」には違いない。
「聖武天皇を描きたい」ことから歴史の勉強を始めた訳だけれど、「この国の形」の始原となったのが、私の場合は「この人」だったんだね。
何故なら、「元明・元正」を規定づけた（？！）のは持統天皇に違いなく、そして持統天皇を牽引したのは天武天皇に違いないから。
藤原不比等も「２４才・士官」するまでは、全く「不明」だものね。その辺りは「想像力」でカバーするしかない。
しかし、自作品を「トンデモ本」「超レキシモノ」にはしたくないから、「史実」を出来るだけ拾いたいのがある。
だって歴史モノの読者は「本当の歴史はどうだったのか・真実はどうなのか」これを知りたいと思うから、だから「歴史小説」なども「読んでみようかな」なんて思うのだろうしね。
「おいおい、おまえのやってることは『★著作権侵害だぞ！！』の意見もあるだろうね。
しかし、『「ネットが頼り」の者も大勢いるんだよ！！』と、反論しよう。
著作者は、どんな形であれ「自作品を、読者に知ってもらいたい」はずだ。それとも「図書館・古本屋」で著作物が埃まみれになって「忘れ去られる」のが良いのかい？！
（わたしゃ「善良な読者」として、出来れば「青空文庫」にだって参加したい方なんだよ!）
何故なら、大事なことは「知的生産」であり、「正しい歴史認識」だろう。
逆を言えば、「ここ」を「ブックレビュー」でちゃっかり宣伝してるのは誰なんだい？！
私は「良い論文を知ってほしい」この本の「読者になってほしい」ことから「ここ」に載せている。作者も出版社だって巻頭にあげているよ!
尚も「学んだこと」は、出来るだけ自作品にも解き落としてみたいものさ。
しかし、こんなにやっても「天武天皇の謎」は深まるばかりって……、なんてこったい？！
『日本書紀』は天武天皇を高く評価しながらも、その正体を隠そうとしているじゃないか。
そして天智天皇を持ち上げている。これは「首皇子・聖武天皇」を「天皇たらしめる」ための作為だという。
「すっきりしない！ なにか、ひっかかる？！」
日本歴史を学ぶには「古事記・日本書紀」は欠かせない。尚も「中国・朝鮮」の歴史を学ぶことも大事だよ。
「歴史を正しく知る」てのは大事なことさ。『日・韓・中・印』のアジア文化圏の歴史は古い。ここを間違うから「戦争」も「ヘイトスピーチ」も起こるのさ。
「己を知る」ことは「他者も」含まれるだろ？！ ええっ？！ そうじゃないの？？
考えてごらん。「他者と自己」の関係なしに、君は生きていけるかい？！ それは「無視・排除」じゃないかい。それじゃ「世間・了見」が狭いだろ？！
「人」は、無人島に在るのでなければ、常に「社会的存在」て゜あり「世界内存在」さ。
嫌が負うにも「父母の実在」が無ければ、「君」は生まれ出られない。そう「君」のＤＮＡは、連綿と続いているよ。
その歴史的関心が、私の場合は、それが奈良時代で、「それ以前」の勉強も確かに必要なことだし、「明治・大正・昭和」の近代史にも「今」にも、大きな関心が有る。
しかし「初老・初学者」の私に時間はそれほど有る訳でもないだろう。
これは「仏教」についても言えること。「有り難く」戴いても、「根っから、信心・深甚」していた訳でもなさそうだ。
「そのまんま」じゃわかんない・理解できないから、「解るように、ばらして、組み立てなおす」して、理解して吸収していたんだね。およそ「真似・真似び・学び」な訳だ。
この書の読後感を少し…。
いや、まいったね。「これ↑」に至っては「天武天皇について」の哲学に近い。
まさかここで「道教」をやるとは考えてなかったし、またそれほどに「神道」が影響を受けていたとは考えてもいなかった。
私自身は日本の神道は「祖霊崇拝・アニミズム」的なものと考えていたから……。
しかし「豊かな話し言葉」の文化が、「先に根付いていた」から「渡来文化」を吸収しても、逆に「包摂される」ことは無かった訳だね。
或は「知的・教養人」の稀少さが、幸いしたのかもしれないな。だって「この頃」に「文字が読めて、書ける」のは渡来人か、または「特権階級」の人たちだからね。
その意味では「天武天皇」も「特権階級の人たち」だよね。しかし「謎の人」だから……、ね。だから「何者？！論争」なんてのが有ったりする。
私の場合は深く詮索しないけれど、私にとっての「英雄」には違いない。
「聖武天皇を描きたい」ことから歴史の勉強を始めた訳だけれど、「この国の形」の始原となったのが、私の場合は「この人」だったんだね。
何故なら、「元明・元正」を規定づけた（？！）のは持統天皇に違いなく、そして持統天皇を牽引したのは天武天皇に違いないから。
藤原不比等も「２４才・士官」するまでは、全く「不明」だものね。その辺りは「想像力」でカバーするしかない。
しかし、自作品を「トンデモ本」「超レキシモノ」にはしたくないから、「史実」を出来るだけ拾いたいのがある。
だって歴史モノの読者は「本当の歴史はどうだったのか・真実はどうなのか」これを知りたいと思うから、だから「歴史小説」なども「読んでみようかな」なんて思うのだろうしね。
「おいおい、おまえのやってることは『★著作権侵害だぞ！！』の意見もあるだろうね。
しかし、『「ネットが頼り」の者も大勢いるんだよ！！』と、反論しよう。
著作者は、どんな形であれ「自作品を、読者に知ってもらいたい」はずだ。それとも「図書館・古本屋」で著作物が埃まみれになって「忘れ去られる」のが良いのかい？！
（わたしゃ「善良な読者」として、出来れば「青空文庫」にだって参加したい方なんだよ!）
何故なら、大事なことは「知的生産」であり、「正しい歴史認識」だろう。
逆を言えば、「ここ」を「ブックレビュー」でちゃっかり宣伝してるのは誰なんだい？！
私は「良い論文を知ってほしい」この本の「読者になってほしい」ことから「ここ」に載せている。作者も出版社だって巻頭にあげているよ!
尚も「学んだこと」は、出来るだけ自作品にも解き落としてみたいものさ。
しかし、こんなにやっても「天武天皇の謎」は深まるばかりって……、なんてこったい？！
『日本書紀』は天武天皇を高く評価しながらも、その正体を隠そうとしているじゃないか。
そして天智天皇を持ち上げている。これは「首皇子・聖武天皇」を「天皇たらしめる」ための作為だという。
「すっきりしない！ なにか、ひっかかる？！」
日本歴史を学ぶには「古事記・日本書紀」は欠かせない。尚も「中国・朝鮮」の歴史を学ぶことも大事だよ。
「歴史を正しく知る」てのは大事なことさ。『日・韓・中・印』のアジア文化圏の歴史は古い。ここを間違うから「戦争」も「ヘイトスピーチ」も起こるのさ。
「己を知る」ことは「他者も」含まれるだろ？！ ええっ？！ そうじゃないの？？
考えてごらん。「他者と自己」の関係なしに、君は生きていけるかい？！ それは「無視・排除」じゃないかい。それじゃ「世間・了見」が狭いだろ？！
「人」は、無人島に在るのでなければ、常に「社会的存在」て゜あり「世界内存在」さ。
嫌が負うにも「父母の実在」が無ければ、「君」は生まれ出られない。そう「君」のＤＮＡは、連綿と続いているよ。
その歴史的関心が、私の場合は、それが奈良時代で、「それ以前」の勉強も確かに必要なことだし、「明治・大正・昭和」の近代史にも「今」にも、大きな関心が有る。
しかし「初老・初学者」の私に時間はそれほど有る訳でもないだろう。
これは「仏教」についても言えること。「有り難く」戴いても、「根っから、信心・深甚」していた訳でもなさそうだ。
「そのまんま」じゃわかんない・理解できないから、「解るように、ばらして、組み立てなおす」して、理解して吸収していたんだね。およそ「真似・真似び・学び」な訳だ。
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