ドラマ&劇場映画『信長協奏曲』コミュのインタビュー#10『羽柴秀吉役山田孝之』

ご出演にあたって原作『信長協奏曲』は読まれましたか？
「制作発表でも言いましたけど、（小栗）旬くんから出演オフォーをもらって、その時に“原作が面白いから読んでおいて”と言われたので読みました。僕、歴史は全然わからないんですけど、マンガとして本当に面白い作品でした。また、自分が演じるのが、後に秀吉となる伝次郎とも聞いていて、信長と対面した時と、そうではない時の二面性がわかりやすく描かれていたので、実際に演じた時には楽しめるんじゃないかな？　と、思いました」
小栗さんが演じることになったサブローについては？
「原作、ドラマでもタイムスリップするまでをさっと済ませています。そこが、この作品の良い部分ではないでしょうか。戦国時代で、サブローがどうなるのか？　というテーマがハッキリします。現代を描きすぎると、タイプスリップ後の感情、現代との対比などに誌面や時間が割かれすぎてしまいますから」
では、ドラマ台本を読まれた時は？
「原作とは、だいぶ思い切って変えて来たな？　と、思いましたが、原作はマンガだからこそ成立する描写もあるので…。例えば、主人公のサブローは、原作ではさっと気持ちを入れ替えます。実写で生きている役者があっさりと演じてしまうと、視聴者が感情移入しにくくなると思うんです。ですので、ドラマではサブローの揺れる気持ちが描かれることで、より愛おしいキャラクターになっていました。帰蝶（柴咲コウ）のキャラクターも大きく変わっています。原作の帰蝶は、信長がサブローに入れ替わった事への疑問はあまり描かれていません。これは実写だと“さすがに気づくじゃん！”って、なります。　ドラマでは微妙な違和感を持たせつつ、徐々に距離を縮めて行くようになっています。実際に、演じている柴咲さんの芝居のバランスも絶妙です。６、7話ぐらいまで少しずつ詰めて来て、ようやくサブローに心を…という芝居が素敵ですね」
ご自身が演じる秀吉は？
「秀吉も、ドラマでは“織田家への恨み”が強く描かれています。“目の前で村を焼かれ、家族を殺された”という一生ぬぐえない怨念ですね。秀吉の感情を…特に恨みの表情を出す上では、どれだけ酷いことをされたのか？　が、ベースになりますから助かっています。信長に“死ぬより辛い目に遭わせてやる”と思っているのは、秀吉自身が“死ぬより辛い目に遭わされた”からこそ。“あの時、家族と一緒に…”という無念を引きずっていることも、秀吉の性格をかなり曲げていますよね」
そんな秀吉を演じることについては？
「秀吉は、初めに伝次郎として登場し、馬番となって家臣へと、徐々に信長に近づいて行きます。その過程で信長に恨みを持つ者として、どこまで演じるか？　は、常に悩んでいます。まだ伝次郎や馬番までは、今川や段蔵（早乙女太一）の前だけ本心を見せて、それ以外は芝居をしている…と、わかりやすかったんです。家臣になってしまうと“裏の顔”があまり出せなくなりました。最初は、秀吉は“家臣たちの前では常に芝居をしている”と演じていたんですけど、みなさんには伝わりにくいんですよね」

確かに、難しいですね…。
「大きな芝居をすれば良いというわけでもないですから。気づいて下さる方がいれば嬉しいですけど、今は軍議などでも他の家臣が見てない場面では冷たい目をしていたりとか、逆に“裏の顔”を見せて良い場面…誰もいない場面などでは、なるべく大きい芝居にしようとしています。そんな中、藤木（直人）さんが演じる半兵衛がいてくれるのは心強いですね。半兵衛の“怪しんでいる”という仕草があるので、秀吉の“秘めた気持ち”が更に視聴者に伝わります」
小栗さんとのお芝居は？
「最初のころは役もありますけど、そんなに芝居での絡みが無くて…。最近やっと家臣になったんですけど、やっぱり思ったほどの絡みはありません（笑）。どうしても、サブロー対家臣たちですから、芝居的にはそれぞれが一言ずつのやりとりになります。でも、明智と秀吉の芝居は楽しかったです。“何かいいね？”という感じでした。旬くんは、ひょうひょうとしたサブローと、裏がある明智の芝居の切り替えを楽しみつつも苦労しているようにも見えます」

共演者のみなさんで印象的な方は？
「髙嶋（政宏）さんは面白い方です。第一印象で人を性格などで大きく４つぐらいにわけたら、僕と同じところに分類される方だと思いました。先輩に失礼ですけど、どこか親近感があって…。そのせいか収録合間などで、髙嶋さんが何か言う時に必ず僕の方を見ているんですよ。だいたいおかしなことなんですけど（笑）。ずっと気になっていて、先日ついに“何で僕ばかりみるんですか？”と聞いたら“いやいや…”と恐縮されてしまって…。ちょっと突き放してしまったのかな？　と後悔したり（笑）。そんな微妙な距離感が楽しい方です」
時代劇ならでは…のご苦労は？
「まずロケが大変です。単純に移動にも大きな時間がとられてしまいます。でも、一番大変と言うか難しいのは時代のセリフですね。僕たちの言葉より、かなり遠回しですから。しかも、今回は月９ということもあって“どこまで時代の言葉を出すか？”というバランスの問題もあるんです。あまり聞き慣れない言い回しばかりにすると、月９を見て下さっている若い世代のみなさんに通じないかもしれません。そこで、現代っぽい言葉も混ぜた台本になっています。しかも僕たちが崩しすぎるとサブローとの対比が出なくなってしまいます。作ることと見せることのバランスが非常に難しいです」
印象に残っているシーンはありますか？
「７話の夜に半兵衛と対峙したシーンですね。すでに半兵衛は藤吉郎に疑いを持っている。藤吉郎もそれに気づいていて…という場面。最後に秀吉が“いかにも”と静かに答えるんです。ここは半兵衛が背後にいるため“声だけ”の芝居をしています。でも、放送を見たら、いまいちでした。もう少し眉間のシワを深くすれば良かったのかな？　と実力不足を痛感したシーンだったので印象に残っています。」

史実としての戦国時代に興味はありましたか？
「全くありませんでした。歴史観はホントにサブローぐらいだと思います。小学校３、４年生ぐらいの時に“なんで昔のことを覚えなくちゃいけないんだ？”と、最初に放棄してしまった教科です。でも、大人になると少しだけ興味が湧いてきました。今は自分が演じていることもあって、秀吉に興味があります。そうなると、秀吉は信長からの流れだから、その後の家康まで行くのかな？　そう思うと『信長協奏曲』は僕みたいに早々に見切った人や、若い人たちが歴史を知るきっかけになっているかも知れませんね（笑）」
では、興味を持ちつつある戦国にタイムスリップして、サブローのように誰かになれるとしたら？
「あの時代の武将って、みんなすぐに死んじゃうんですよね。短命でも内容の濃い生き方ならいいですけど…。だったら、本当に人に知られてないような里の農民がいい。　戦国とかメンドクサイじゃないですか？　４～５人ぐらいの村で、自分の領主もわからないような…戦いに巻き込まれないところが良いですね」
ドラマも佳境に入ろうとしています。ご覧のみなさんにメッセージをお願いいたします。
「秀吉は家臣としての地位を確立して、そのキャラクターも定着していると思います。ここから、秀吉はどうやって“死ぬほど辛い思い”を信長に行おうとするのか？　衝撃の展開が待っていると思いますので、最終回まで是非、ご覧下さい」