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徹真斎の妄想徒然草子コミュの仮面ライダーD.V.L vol.16

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「てめぇ… ゴールの改造人間だったのか」
喉の奥から絞り出す様な大輔の声に竜崎は高らかに答えた。
「ほぅ 我等が神の御名を知っているとは感心だな しかし 改造人間とはなんだね改造人間とは?! 私は神に選ばれしゴールの民にあって特殊な訓練を積み、特別な力を授かった 言わばエリート中のエリート!改造 人間等という前時代的な言葉で愚弄するものではない !!」
声高に喋る竜崎を他所に大輔はしかし竜崎を睨み付けたまま口の中で噛み殺す様に呟いた。
「そうか… てめぇはそうだったのか… どうりで、どうりで強ぇはずだぜ」
大輔は既に気付いていたはずだった。
改良人間である己の全力を以ってなお互角に闘える竜崎の力が普通の人間のモノではない事に。
しかし 深夜の街、通りすがり、そして酒による酩酊 そういった様々な状況が大輔の判断を鈍らせたのかも知れない。
ー くそッ しくじったぜ 酔いがこんな処に効いてくるとはな…
相手は本来の姿ではない人間体、得体の知れない敵である 今ここでデスに変身して手の内を見せるわけにはいかない。
更には今はまだデスの正体が自分である事をゴールに知られるわけにはいかない という思いが大輔にはあった。
「ふふふ… そうとわかりゃ遠慮は要らねぇってか…」
口の中で小さく呟く大輔を見ながら、竜崎もまた 大輔の常人を遥かに凌駕する力に気付いていた。
ー この男 エリート中のエリートである私に伍する実力を持つとは一体…? ともあれ ここはなんとしても倒して本部の研究チームに引き渡して調べねば… うまく教育すれば我がゴールの力となろう…
その時、竜崎は爪先に当たる物に気付いた。
「?!」
それは小石であった。
竜崎の革靴の爪先辺りに小さな子供の握り拳大の石があった。
建材用砕石、或はバラスト等と呼ばれる小石があったのだ。
ー 小石… フン "試合"ではないと言ったな!ならばこれは "仕合" 命をかけた卑怯もへったくれもない、最後に立っていた者だけが勝利者を名乗れる闘い そういう事 だな…
頭の中で考えを巡らせながら 竜崎は大輔の注意を上半身に引き付けておくための動き、次の一手の為の布石を打つ。
「ゴールのエリートたる私の拳を受けるがいいッ!!」
構えを次々と変えながらその爪先に力を込める。
ー よし ヤツは気付いていない!
「ぃいえぁぁッ!」
次の瞬間、鋭い蹴りが放たれると共に竜崎は一瞬早く爪先の小石を蹴りあげていた。
「!」
深夜である。
しかも工事現場、常夜灯の灯りはあるものの 街の灯りは当然届かない。
その暗がりの中 常人ならば避ける事すら難しい速さの蹴り、そしてその蹴りより一瞬早く蹴りあげられた小石。
その小石になんと大輔は気付いたのである。
いや 正確に小石であると認識したわけではないが。
"蹴りの前に何かが来る?!"
竜崎のあからさまな誘いの動きから蹴りが来る事を悟 り、同時に何かが蹴りあげられた事に気付いたのであ る。
ー チッ 左右どちらに躱しても次の一手が読めねぇッ! ならば前に出て間合いを潰すか?!
しかしそれでは蹴りあげられた小石を躱せない。
相手がゴールの改造人間である以上、この攻撃を受け る事は致命的だと言っていい。
そこまでの思考を瞬時に終えた大輔は半歩踏み出して いた!
小石が当たると見えたその刹那!!
大輔は左に体を開いて躱す!
ひゅッ!
小石が顔の横を恐るべき速度で過ぎ行く。
そして間を置かず鋭い蹴りが疾り抜ける!
ー 今度は俺の番だ!
そう思った瞬間、大輔の全身が総毛立つ!
ぞわゎッ
「!」
蹴り抜けた足で大きく踏み込んだ竜崎は必殺の一撃を振るう!
大輔の死角、見えない角度から顔の輪郭線に沿うように竜崎の手が延びて来たのだ!
親指一本貫手。
その技はそう呼ばれていた。
視界の外側、真下から大輔の眼球をえぐりだすべく放たれた竜崎の目突きであった。
じゃッ
しかし竜崎の親指は大輔の頬を数センチ裂いて上方に疾り抜けた。
からくも必殺の貫手を躱した大輔は急遽後方に飛びすさって竜崎との距離をとる。
「ッぶねぇ 危うく片目になっちまうところだぜ」
背中に冷たい汗を感じながら大輔は再び構えをとる。
「ほぅ これを躱すかよ… 」
飛び退いた大輔を目で追いながら小さく呟いた竜崎もまた構えを取り直す。
「この背を電気か何かがちりちりと疾り抜けるようだな 楽しいぞ若者よ」
品行方正… そう言って差し支えなかったこれまでの態度が一変、唇の端を不気味に吊り上げて笑う竜崎の姿がそこにあった。
小石を蹴り上げ、目を狙う攻撃で大輔はこの闘いが" 命のやり取りをしている"ものである事を改めて思い 知った。
ー てめぇで 吹っ掛けといてアレだが、ちょいと分が悪ぃな…
格闘技術はほぼ互角と思われる。
ならば改造人間、或は改良人間としてのスペックが高い方が確実に有利である。
変身してしまえばスーツの力でなんとかなるかも知れ ない、しかし 今はまだゴールに正体を知られるわけにはいかない。
まして 変身出来るのは自分だけとは限らない。
そう 竜崎も変身出来るかも知れないのだ。
ここで迂闊な真似は出来ない。
ー どうにか隙を作ってズラかるか…
とにかく たとえ一瞬でも竜崎を怯ませて逃走するチャンスを作らねばならない。
頭を低くして間合いを詰める竜崎に大輔は渾身の左上 段蹴りを放つ!
だが竜崎の紙一重の見切りによって その蹴りは空を蹴る。
だが大輔は止まらない!
竜崎の頭上に疾り抜けた蹴りは踵落としとなってその首筋を襲う!
しかし竜崎の十字受けにダメージは半減する。
ー かかった!
刹那!
足を止めた竜崎の首筋に蹴り足を引っ掛けて大輔は軸 足を翻し、その踵を竜崎の膝頭に叩き込んだ!
ぐきゃっ
不気味な音が響いたかと思うと
「ぐぬぉッ!」
低く呻く竜崎の声。
ー 折ったか?!
大輔は飛び退きながら右足踵の感触と手応えを確信していた。
見れば竜崎の左足は膝から下があらぬ方向に曲がっている。
「ぐふぅ やるな若者よ! しかし膝関節脱臼ごときで 私に勝ったと思わぬ事だ!」
ごぐん
高らかに謳う竜崎が鈍い音と共に脱臼した膝関節をは め直し、よろけながらも立ち上がった時 既に大輔の姿はそこになかった。
「チッ! 逃したか…」
工事現場から少し離れたビルの路地裏通りからは見えない場所に大輔は膝をついていた。
「ちくしょう… あんなバケモノが居やがったのか… クソ ッ」
小さく漏らしながら肩で息をする大輔は 己を包む闇を見ていた。

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