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おみやの宝石箱コミュのコミカルだよ 1

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主婦の観点から書いたお話です♪ちょっとRPG風〜

第1章『再会』

『換気扇』は『油』を味方につけ私を打ち負かそうとてぐすねをひいていた。

私は戦闘準備もそこそこに『換気扇』の正面に立つ。

不気味に光る換気扇フード。
一枚岩の如く堅固で背が高く私を上から見下ろす。

さぁ、戦闘開始

フードのビスを取り払いはずす。
力強くとも根性がないから直ぐに降参してきた。

続いてそれを守る換気扇取り付けカバー。強い!堅い護りは私の手を煩わせた。

痛みが走る。手が痺れる。ここ迄なのか…いや!頑張らねば…

しばし格闘の末、取り付けカバーを打ち負かす。

フゥ…一息ついたのもつかの間、不気味に光りヌラヌラとした『換気扇』が 全貌を表した。
がっちりとはまりこんだ『換気扇』はなかなか砦を出ようとしない。

渾身の力を込めてひきずりだす。じり…じり…ゆっくりゆっくり明るい光の元に現れる。
薄く細かい羽がびっしりとついている。羽は鋭いナイフの如く私を襲う。

痛い!!手袋が破れ手に傷を負わせた。一筋の血が流れ落ち油にまみれていった。

やっとの思いで引きずりだした『換気扇』
あまりの重さに手が震え、あまりの汚さに全身がおののく。
触れるのもたばかられる。

ゴメンよ。ゴメンよ。ゴメンよ・・・

わたしが君に会いに来なかったから、君はこんなになってしまった。
もう大丈夫だよ。元のピュアな君に戻してあげるから少しの間がまんしてね。そうつぶやく。


いや・・聞こえるはずがない。耳を持たない『換気扇』
虚ろな空間のようなたくさんの『隙間』が私を見つめていた。



第2章「戦い スクレーパー」

私は片手にキッチンペーパーを、片手に洗剤を持ち『換気扇』に向き合った。

約2年。彼に向き合う事はなかった。

ガチガチに固まった油。駄目だ!洗剤じゃ駄目なんだ!
洗剤をおき、スクレーパーに持ちかえる。
痛いかも知れないがゴメンよ。君の為、私の為、ひいては世界の為。
君にまとわりついた『油』を取ってあげるからね。

スクレーパーを細かい羽の一枚に当て、油の塊をこそげとる。

金属と金属の擦れあう嫌な音がした。ギィーギィーギィーギィー
悲鳴のように聞こえる…

「痛いよ!痛いよ!」と訴えるかの如く。
そして「無理だよ!無理だよ!」と私を嘲るかのように・・

大丈夫だよ。綺麗になるからね。
ギィーギィー!悲鳴は続く。

曲面と直線。スクレーパーの直線は曲面に沿わず取り残しが多い。
それは洗剤で取るしかない。

細長い羽が何枚あるんだろう?少なくとも30枚はある。
丁寧に一枚ずつ油を剥がしていく。

一枚の作業は3〜4回。やっと数枚終わった。
キッチンペーパーの上に取り去った油が小山を作る。

ギィーギィー、静かな部屋に金属と金属の擦れ会う音だけが響く。
静かな戦いは続く…

やった!全部の羽の油の塊を除いた。
「少しは楽になったかい?」私は心の中で『換気扇』に尋ねた。
ペーパーの上にある油の塊は沢山の小山を作り出していた。

かつては清純な汚れのない油達。
世間のホコリにまみれ、焼かれ、炙られ、昇天するはずが『換気扇』の羽に絡まり…
いつの間にか団結し、汚れていった。



第3章『戦い 洗剤は強力』

油達が乗っているキッチンペーパーを一瞥し、次の作業に取りかかる。
スクレーパーを置き、洗剤を持ち上げる。
硬化した油を取る専用洗剤。期待しているよ!

トリガーを握りしめた。

泡が…出るはずの泡が出ない!
『換気扇』は微動だにせず、嘲笑うかのごとく私を見上げている。

焦る!
額に汗がにじみ、滴り落ちていく

そうか!「出」にキャップを回さないといけないんだった。

深呼吸をして、『換気扇』に向かい言い放つ。
「いくよ…大丈夫だよ。痛くないからね。大丈夫だよ。。」

プシュと音がして泡が出た。取りきれていない油達に突進していく泡達。
闘いの火蓋が切って落とされた。
薬剤の攻撃から逃れようとする油を洗剤の泡が包み込む。

油が…
あぁ〜油が…溶け出した。黄色とも茶色ともつかぬ色。
白かった泡が色付いて闘いの悲惨さを物語っている。

泡に埋もれていく『換気扇』
助けて!とでも言いたげに私を見上げている。

この洗剤はかなり強力。どうやら両刃の剣のようだ。
普段薬品を使いなれている私の手を、この厚い皮に覆われた手を侵していく。



第4章『戦い 洗剤達の勝利』


痛い…羽で切れた傷に滲み痛む。

アルカリ性の洗剤は後が怖い。苛性ソーダは皮膚を侵し、滲み込み、時には指紋さえ消し去ってしまう。
知っているはずの私が…なんという事をしてしまったのだろう…

以前、中国であった事件を覚えているだろうか?
餃子の具に段ボールを混入させた事件。
段ボールを苛性ソーダで溶かし、餃子の具に混ぜ増量材とした事件を思いだした。
そこまで強力とは言えないが、かなりのものだ。
水で洗っても滑りが落ちない。
明日の私の手は…きっとぼろぼろだろう。

時間だけが流れ去る…しばし…泡が羽全体に廻るのを待った。
色付いた泡が消え、闘いの幕が降りた。

我が身を犠牲にし、油達に立ち向かった泡達、いや洗剤よ…ありがとう。

新しく買った洗剤のボトルは空になっていた。空ボトルは静かに静かに横たわり疲れはていた。

おもむろに水道の蛇口を捻る。
水が滝のように流れ落ち『換気扇』を浄めて行った。
古い友である『換気扇』は…本当に綺麗になった。

水が羽の間を通り抜けるたび、溶けた油が排水口に渦を巻き消えていく。

良かった。本当に良かったんだね。これで…

『換気扇』は、さも気持ちよさそうに水と戯れている。
少し動かすと水が羽に当たり水滴がキラキラと光に反射する。

「冷たいよ!」私は笑いながら『換気扇』に話しかける。
「きもちいい?さっぱりしたかしら…」話しかけても何も言わないけれど『換気扇』の気持ちはよくわかる。

綺麗だよ…『換気扇』綺麗だよ。。。



最終章『別れ…そして』


綺麗になった『換気扇』を元に戻す時間がきた。
まだ全身ずぶ濡れだけど大丈夫だよね。
すぐ乾くよ。綺麗になった『換気扇』に呟く。

又、逢えるよ…すぐにね。
重い『換気扇』を持ち上げ、彼の砦に帰してあげた。
また今度…必ず近いうちに!
綺麗になった『換気扇』と、フード、カバーを元に戻しコンセントをさしこんでスイッチを入れた。

低い唸り声のような回転が始まり、セット完了。

全てが終わった…はずだった。

しまった!!!

換気扇が取り付けてあるフードの底に油が溜まるのを忘れていた。



私は、こののち換気扇をはずすことはなかった…

闘いは続く。
料理を作る限り

闘いは続く
油がこの世にある限り

そして私が『換気扇掃除物語』を忘れない限り

THE END

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