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孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの【色平哲郎氏からのご紹介】 まさか現代世界で疾病による「ロックダウン(都市封鎖)」が行われようとは想像もしていなかった

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【色平哲郎氏からのご紹介】
まさか現代世界で疾病による「ロックダウン(都市封鎖)」が行われようとは想像もしていなかった。
せいぜい小説の話ぐらいにしか思っていなかったのに、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが起きるや、国際的な大都市が次々と鎖(とざ)される。
一挙に「政治」と「生活」の距離が縮まった。

日本では、感染症専門家が「これから1、2週間が瀬戸際」と警告すると、安倍晋三首相(当時)は「一斉休校」を宣言。疫学者は人と人との接触8割減らせと言う。指導層が雲の上から「国民のみなさん」に向けて「神々の目線」で語りだした。アベノマスクに緊急事態宣言ときて、憂苦がつのる。

現場に当たって書こうと決めた。首相官邸と専門家を含めた霞が関周辺の政治が「歴史の審判」を受けるには、最前線でコロナとたたかう医療従事者、保健師、行政職員やワクチン開発者、死線をさまよった感染者など、さまざまな当事者の記録が必要になると思ったからだ。

東京の永寿総合病院の集団感染の検証を振り出しに、日本初のコロナ院内感染を論理的な対応で抑え込んだ和歌山県、クルーズ船(ダイヤモンド・プリンセス号)の患者搬送に始まる医療体制の構築、GoToトラベル開始に前後して感染爆発した沖縄、置き去りにされる精神科の患者、集中治療室(ICU)の運用と病床確保の実態、、、と、全国の現場をめぐり、取材をした。

一連のしごとは、私にとって、かつて評伝を著した医師出身の政治家、後藤新平(1857から1929)の系譜を継ぐ者を見出す行為でもあった。後藤は、日清戦争後、大陸から帰還する23万人余の将兵への大検疫事業を成し遂げたことで知られる。下関沖の彦島、広島沖の似島、大阪沖の桜島の3カ所に巨大な検疫施設を建設し、一刻も早く上陸しようと猛(たけ)る軍人を押しとどめ、現場を指揮した。

その胸奥には、感染症の前に権力者も貧乏人もない、ともに救われねばならないという「公共の思想」が脈打つ。コロナの大流行に直面し、県レベルで病院長会議を設けて病床を増やした医師や、地域完結型の対策を確立した保健所長と職員、修羅場に飛び込んだ技官、患者を懸命にケアする看護師と救急医、、、
ご本人たちには失礼かもしれないが、そこに後藤の現代的たたずまいを感じていた、、、

小池は、都知事選で再選をはたすと、パフォーマンス色の濃い策を連発するが、東京は一向にエピセンター(感染震源地)を脱せられない。国も都も迷走し、現場の知が届かなかった。

政府迷走の帰結が菅の退陣である。が、しかし、失政を菅個人の資質で片づけてはなるまい。
菅の次に岸田文雄が権力の座についたところでウイルスが消えるわけではない。日本の統治機構で政策を立案し、執行するのは官僚や閣僚であり、政府の諮問を受ける専門家の責任も重い。
司令塔が機能せず、大本営の失策を前線の将兵が必死で補って、たたかう。そのような古くさい比喩が、いまだにこの国を覆っているのはどうしてなのだろうか。

この問いを出発点として、医療現場と政治の700日を追って行こう。


上、まえがき  より抜粋 岩波書店「コロナ戦記」 山岡淳一郎  2021年11月
下、あとがきにかえて 敗北と「公」の支え  より抜粋 岩波書店「コロナ戦記」 




9年に及ぶ安倍・菅政権が、新型コロナウイルスとのたたかいに敗れた。政治主導を掲げ、敵と味方を峻別する戦法は、永田町・霞が関界隈を震え上がらせても、ウイルスには通じなかった。
コロナは、アベノマスクも、五輪を利用した政権延命策も撃破する。とてつもない破壊力だった。

9月9日、自民党総裁選挙への不出馬を表明した菅義偉首相は、記者会見でワクチンの普及を自賛しつつ、「医療体制をなかなか確保することができなかったのは大きな反省点」と敗北を認めた。

医療体制が整わない要因について、「病床や医療関係者の確保に時間がかかる、治療薬やワクチンの治験や承認が遅く、海外よりも遅れてしまう、緊急時でも厚労省を始め省庁間の縦割りや、国と自治体の壁があって柔軟な対応が難しい」と菅は簡単に触れた。

それらの課題は、いまに始まったことではない。そうした構造的問題が露わになったのは、平時は「国民皆保険」でどうにか回っていた医療がパンデミックの圧力に耐えられなかったからだ。
危機にしなやかに適応し、復元する力、レジリエンスが欠如していたのである。
そこに敗北の本質が隠れている、、、

邉見(へんみ公雄)は開口一番、「医療や教育に効率化は合わない。余裕が必要」と言った。

「もともと医療には緊急時のための余裕が必要です。
しかし国は効率至上主義で、常に病院のベッドが満杯でなくてはいけない診療報酬体系にしてしまった。ハイリスク・ローリターンやね。病院は病床が9割以上埋まらんと黒字にならない。
いつも全力疾走させられているような状態です。

感染症に対して国は、結核患者が減って「感染症はもう終わった」と思い、感染症対応の病床をどんどん減らした。急にがんばれ、コロナ専用のベッドを増やせと言われても容易ではありません。

医療にはゆとりがいる。阪神淡路大震災で身をもって知りました」

「医療は国民の安全保障です。公がきちんと支えるべきもの、、、災害への対応も考えれば、イージス艦よりも病院船。日本は海岸線が長いから太平洋側と日本海側に一隻ずつあってもいい、、、」

「名指しされた436病院のうち約200がコロナ患者を受け入れています。これを縮小、合併していたらどうなっていたでしょうか。国は、4年も前の6月、たったひと月のデータで、すべて都会型の指標で診療実績を分析して病院をふるいにかけた。地方の実態が反映されていません。

再編・統合リストには、北海道の利尻島国保中央病院(42床)のように小さいけれど、救急患者を1年365日受け入れて地域を支える医療機関も含まれている。
邉見は「三現主義」を国に求める、、、

いずれにしても、政府と、その周辺の専門家が仕切るコロナ政策は、今後「歴史の審判」を受けることになるだろう。権力中枢の「内輪の事情」や「駆け引き」で下された判断が的確だったのかどうかは、最前線でたたかった人たちの「現場・現物・現実」のリアリティで洗い直さなくてはならない。ささやかながら、この本が、その一助になればと願っている。

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コメント(1)

医療や教育を、経済合理性だけで運営するのは、無理がある愚策。
パンデミックは、いつ起こるかわからない。教育も、先行投資。

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