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孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの【孫崎享のつぶやき】 随想➃ ノルマンディー の崖 2020-07-08 07:064

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私は外務省国際情報局長の時、月一回位の頻度で、米国情報機関の東京支局長とホテルオークラで朝食を共にした。特段仕事の話はなかった。国際情勢や、日本の政治情勢を取りとめもなく語り合った。
その頃、映画「プライベート・ライアン」がヒットしていた。監督はスピルバーグ、主演はトム・ハンクス。筋は次のようなものである。
米国はノルマンディ作戦を成功させたが、まだフランスの多くはドイツ軍の支配下にある。この時期、陸軍参謀総長マーシャルの下に、戦死報告が届く。ライアン家の四兄弟のうち三人が戦死したというものだった。残る末子ジェームズ・ライアンは一兵卒でフランスのドイツ軍支配下の地域にいる。ライアン家の四人が全員死んだとなると、米国世論に悪影響を与える。マーシャルは一兵卒ライアンの救出を命ずる。命令をうけた大尉は部下6名と通訳を連れ救出に向かう。この作戦に軍事的利益は何もない。結局ライアンは救出されるが、救出に向かった一行は皆途中独軍に遭遇し次々に死んでいく。死んだ者は皆一兵卒ライアンより位が高い。
彼とこの映画の話になった。彼は四回見たという。それで私は次の質問をした。
「私達は時々、馬鹿な指示を上司から受ける。馬鹿馬鹿しいと思う。だが、せざるをえない時がある。まあ命がなくなる訳ではない。でも貴方達は違う。上司の馬鹿な命令を実施して命を落とすことがある。馬鹿な、と思う命令を受けた時、貴方はどうするか。犬死にするとわかる命令を受けた時、貴方はどうするか」
 彼はしばらく考えていた。そして彼は「孫崎、一度ノルマンディに行け。そして上陸した崖を見ろ。そして墓地に行け」
 彼は説明を始めた。
「ノルマンディー上陸作戦はヨーロッパ戦線の転機となった大作戦である。しかし、それは決して容易な戦闘ではなかった。崖の上には機関銃を持つドイツ兵が待ち構えている。縄をかけ、よじ登っても撃たれる。撃ち合いで死ぬのならまだいいが、よじ登っている兵士は撃ち返すこともできずに死んでいく。多分君の言う犬死だ。無数の人が犬死した。その犬死を越えて、誰かが崖を登りきる。そしてドイツ兵と戦った。君の言う犬死した人々の墓標がノルマンディの墓地にある」
 英国諜報部員であったジョン・ル・カレは、1963年組織の持つ正義のために、組織に利用され死んでいく主人公を描いた『寒い国から帰ってきたスパイ』を出版した。ル・カレはこの時期、組織の非情さは痛感しているが、組織の持つ正義にまでは疑問を持っていない。だが2001年の『ナイロビの蜂』(アフリカで製薬会社が薬の人体実験。それを追求するところから始まる)や『我等が背きし者』になると、組織は腐敗しきってっている。主人公の「犬死」は敵との戦いではない。正義を追求していくと、戦う相手は。自分達に属するはずの組織である。闘い、そして「犬死」する。
 「あなたは物の見方として今日の世界を“プライベート・ライアン”の視点で見るか、“ナイロビの蜂”の視点で見るかかといわれると、残念ながら『ナイロビの蜂』だ。今日、世界中、権力は善を行う機関とは思えない。毅然と「プライベート・ライアン」を取ると言ったアメリカ人が懐かしい。

コメント(4)

河井夫妻は「プライベートライアン」だったのか?
日本の検察では、巨悪(権力の悪用)までは、追及できまい。
>>[1]

日本の検察が田中角栄総理を逮捕した時も、背後の某国CIAの力がありました。
アメリカCIAも、そろそろ、安倍さんをあきらめたのですね。
でも、田中角栄までは、追及しない。中途半端で終わるね。
>>[3]

ポスト安倍は、麻生氏あたりだと失望は続きます。

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