中村先生に最初にお目にかかったのは、2000年だった。当時、私はプライマリー・ヘルスケアの手引書『Where There Is No Doctor』(デビッド・ワーナー著、1968年)の翻訳に取り組んでいた(邦題: 『医者のいないところで』 国際保健協力市民の会)。世界を見渡せば、医療資源の乏しい地域で、多くの子どもや母親たちがマラリアや下痢、栄養失調、妊娠・出産の合併症やエイズなど、予防可能な病気のために生命を落としていた。
『Where There Is No Doctor』には、そのような医者のいない地域でも可能な限り予防し、治すための方法が記述されている。すでに世界80カ国以上の言語に訳され、何百万人という途上国で働く保健ボランティアや看護師、助産師、住民自身から圧倒的な支持を集めていた。何とか日本語訳もと思い、どこへ行くにも、この本を持ち歩いていた。