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孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの【色平哲郎氏のご紹介】 アジアで初めて人権例外を認めた今回の韓国判決

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【週刊金曜日 2021年2月12日 1316号 掲載】

「主権免除」vs「人権例外」

人権を侵害された個人と国家の対立

国際法の未来を切り拓く画期的判決 

山本晴太 弁護士


韓国の元日本軍「慰安婦」被害当事者12人の訴えを認め、日本政府に賠償を命じたソウル中央地方裁判所の判決。
本誌では今号より、同判決文の全文を緊急連載する。
判決文の読み方について、翻訳した山本晴太弁護士が解説する。

ソウル中央地裁「慰安婦」判決を読み解く


今年1月8日、韓国のソウル中央地方裁判所が元日本軍「慰安婦」の原告らの訴えを認め、
日本国に一人当たり1億ウォン(約950万円)の賠償を命じた。
日本政府は期限までに控訴せず、判決は確定した。


原告のうち7人が亡くなる

原告らは2013年に日本政府との話し合いを求めて調停を申し立てた。
裁判所は調停に応ずるかを照会する文書を日本に繰り返し送ったが、外務省が受け取らずに返送したため、調停不成立の決定をした。
これにより調停は自動的に訴訟に移行した。
手続が遅延する間に12人の原告のうち7人が亡くなった。
裁判所は書面を公示送達(裁判所やネットで一定期間公開し、届いたものとみなす)して訴訟手続を進め、判決を宣告した。

民事訴訟は、当事者の主張によって判断される(弁論主義)。
たとえば、日韓請求権協定や日韓合意で解決済みという主張は、被告の日本国が主張しなければ判決に反映されない。

ただし、その裁判所に裁判権があるかという管轄権の問題は、当事者の主張と関係なく裁判所が法に照らして判断する。
日本政府は訴訟手続を無視したので、管轄権の問題である「主権免除」がほぼ唯一の争点になった。

主権免除とは、主権国家は他国の裁判権に服することはないという慣習国際法上の規則である。
 
しかし、国家のどのような行為にも主権免除が適用されるという絶対免除主義が支配的だったのは19世紀である。

国家の行為が多様化すると一般人も行なうことのできる売買など私法行為については主権免除を否定する、という制限免除主義による判決が19世紀末ころからヨーロッパの国内裁判所に現れるようになった。

続いて、外交官による交通事故のような不法行為に対する損害賠償請求訴訟も主権免除の例外とする国内判決がヨーロッパに現れた。
これも数十年かけて世界に広まった。


「人権例外」という考え方

今世紀の初めころ、第2次世界大戦末期の虐殺や強制労働の被害者と遺族がドイツに賠償を求めた裁判で、ギリシャとイタリアの裁判所がドイツの主権免除を否定して賠償を命じた。
重大な国際法違反による深刻な人権侵害の被害者の最後の救済手段が国内裁判である場合には主権免除を適用しない、「人権例外」という考え方によるものだ。

これは新しい考え方であり、否定する判決も多い。

クウェートによる拷問に関する裁判で、2001年に欧州人権裁判所は人権例外を否定した。
しかしこの評決は9対8の僅差だった。

前記のギリシャ・イタリアの事件でも、12年の国際司法裁判所(ICJ)判決はドイツの主張を
認めて人権例外を否定した。
ただし、人権例外を認める判決や立法例はまだ少数なので、現在のところ慣習国際法とは認められないとして、将来の国際法の発展に含みを残した。
イタリア国会はICJ判決を受け入れるための法律を制定したが、憲法裁判所はこの法律は裁判を受ける権利を侵害して違憲であると宣言した。

このように国際法の世界で人権例外への賛否は拮抗(きっこう)し、せめぎあっている。
この対立は、国家中心の古い国際法と人権中心の新しい国際法の対立の反映である。
人権例外が認められれば、難民が避難先の国の裁判所に自分を迫害した国家を提訴することができるかもしれない。

被爆者が日本の裁判所で米国に損害賠償を求めたり、ベトナムの戦争被害者がベトナムの裁判所に、ベトナム戦争に参戦した韓国を訴える可能性もある。
つまり、これは日韓の対立ではなく、人権を侵害された個人と国家の対立の問題なのである。

このせめぎあいの中で、アジアで初めて人権例外を認めた今回の韓国判決が現れた。
人権中心の新しい国際法への強力な後押しである。


判決の白眉は第3章

判決理由は下記の6章で構成されている。

1 基礎事実
2 原告らの主張
3 裁判権の有無(国家免除の適用可否)に対する判断
4 国際裁判管轄権の有無に関する判断
5 本案に関する判断
6 結論

第1章には、日本軍「慰安婦」の動員の歴史、各原告の被害、当時日本が加入していた国際条約、日韓請求権協定、河野談話、15年日韓合意、多くの原告が死去した事実などが詳細に記載されている。
事実関係では争点ではないが、人権例外の判断のため、国際法への重大な違反や深刻な人権侵害の事実を認定しているのである。

第2章は原告の主張の要約、そして第3章は「裁判権の有無(国家免除の適用可否)に対する判断」がこの判決の白眉である。
判決はまず主権免除をめぐる国際法の動向を概観し、本件が私法行為として制限免除主義によって主権免除の例外とされる可能性を検討して、これを否定する。
さらにギリシャ・イタリアの訴訟、ICJ判決、イタリアの憲法裁判所判決などを概観した後に
人権例外について判断を示す。
判決は、

1 裁判を受ける権利の重要性
2 手続法によって実体法上の権利が形骸化されてはならない
3 国際法が個人の権利保護に向かう中で主権免除も変容した
4 当時の朝鮮半島は戦場ではなかった
5 国際強行規範の存在
6 主権免除を適用した場合の不当な結果
7 主権免除は強行規範に違反して他国の個人に重大な損害を与えた国家の隠れ蓑ではない

ことなどを指摘し、日本によって計画的・組織的に行なわれた反人道的犯罪行為である本件には主権免除を適用できないと判断した。
2 はICJ判決への批判、4 はICJ判決の論理によっても本件は主権免除の対象外との趣旨だ。

第4章で、すでに大法院が判断した国際裁判管轄権問題を再確認、
第5章で、不法行為責任の発生と損害額を認定して第6章の結論にいたる。
日韓請求権協定は日韓合意は争点ではないので第5章の「補論」として言及している。

以上のように、この判決の要点は1章と3章、とりわけ3章である。
熟読し、国際法の未来を切り拓く画期的判決であることを感じ取っていただきたい。

==

今回の判決に対し、菅義偉首相は1月8日、
「国際法上、主権国家は他国の裁判に服さない(主権免除原則)のが決まりだ」として、外務省も「極めて遺憾であり、断じて受け入れられない」と韓国政府に抗議している。

さらに外務省はホームページで「慰安婦問題を含め、日韓間の財産・請求権の問題は、1965年の日韓請求権・経済協力協定で『完全かつ最終的に解決』済み。
また、慰安婦問題については、2015年の日韓合意において『最終的かつ不可逆な解決』が日韓両政府の間で確認されています。
韓国政府に対して国際法違反を是正するために適切な措置を講じることを強く求めます」(要旨)と表明している。


コメント(2)

そもそも、日本国って、主権国家なの?対米関係をみていると、とてもそうは思えない。
>>[1]

孫崎亨氏の著作では、日本の国家主権は、アメリカによって戦後侵害されてきました。アメリカ側が要求以上の隷属さを示すのでしだいに、アメリカは日本政府を愚弄するようになってきました。植民地と宗主国の関係に類似しているようです。

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