【孫崎享のつぶやき】
『欧州に拡がるナショナリズム:多数派が少数派を圧迫し正当性を主張』
2016-05-31 06:243
核武装、集団的自衛権、安保法制――。このような議論をはじめると、「それは難しい問題で、私とあまり関係がない」と感じる人が多いと思います。実はそうでないのです。これらは私たちの生活と直結しています。
私は 二〇一六年三月四日付の日刊ゲンダイに「軍国主義化は国民生活を犠牲にする」という論評を寄稿しました。
日本は今、集団的自衛権で自衛隊を米国戦略に奉仕させるシステムを作り、防衛費を増大させ、ひたすら軍国主義の道を進んでいる。だが、私たちは「軍国主義化の道は国民生活の犠牲の上に成立する」と言う重要な点を忘れている。
社民党副党首の福島瑞穂・参院議員が２月、ツイッターでこうつぶやいていた。
〈大学無償化のためにかかるお金は、国公立大学で四一六八億円（内訳は国立大学三三一五億円、公立大学八五三億円）、私立大学で二兆六八〇八億円。全大学合計で三兆九七六億円です。文部科学省高等教育局高等企画課が、二〇一四年度の大学授業料と入学金、学生数をもとに試算。無償化をめざすべき！〉
この中で、とりわけ注目したのは国立大学の無償化に必要な経費である。軍国化を進める安倍政権の予算編成で、三〇〇〇億円に近い金額がいくつも思い浮かぶからだ。
例えば、米国が日本に売却する垂直離着陸輸送機オスプレイの総額は推定で計三〇億ドル（三六〇〇億円）と報じられていた。災害救助には、小回りの利くヘリの方がオスプレイより圧倒的に使い勝手がいい。軍事衝突が起きた場合でも、戦闘機に迎撃される可能性が高いオスプレイは実戦には向いていない。そんな�猝鯲�たず�瓩鯒磴錣覆韻譴弌�国立大学の無償化は実現可能なのだ。
防衛費をめぐるムダな支出はまだある。
「在日米軍駐留経費の日本側負担」（思いやり予算）である。昨年一二月に日米間で合意された一六〜二〇年度の総額は九四六五億円。日本に駐留する米軍の法的地位などを定めた日米地位協定二四条は、合衆国軍隊の維持に伴うすべての経費について〈日本国に負担をかけないで合衆国が負担する〉と規定している。思いやり予算は、明らかに協定違反だし、廃止が当然だろう。
国民は何となく「国防強化はいいこと」と考え、必要以上の防衛費の増大を安易に見逃してきた。「国立大学の無償化」と「オスプレイ購入」のどちらに国費を投じるべきか。答えは言うまでもない。
別の問題を見てみましょう。
二〇一六年、保育園の待機児童問題が起こりました。
年功序列型の賃金制度が崩れたり、非正規雇用が増えたりと、夫婦で共働きせざるをえない家庭が増えています。共働きのためには、子どもを預ける場所が当然必要です。二〇一四年四月一日時点の待機児童数は、厚生労働省のまとめによると全国で二万一三七一人でした。言い換えると、二万一三七一人の親たちが働くための環境が整っていないということです。
第一八〇回国会（二〇一二年一月二四日〜九月八日）における、次の決定を見てください。
幼児教育・保育・子育て支援の質・量の充実を図るためには、一兆円超程度の財源が必要であり、今回の消費税率の引上げにより確保する〇・七兆円程度以外の〇・三兆円超について、速やかに確保の道筋を示すとともに、今後の各年度の予算編成において、財源の確保に最大限力するものとすること。
（参議院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会、平成二四年八月一〇日）
ここでも必要な財源が三〇〇〇億円です。不必要な防衛予算を削れば、捻出できる金額なのです。
集団的自衛権（当然自衛隊の海外派遣の費用が増えます）や米軍基地問題などの適性を求めることは、私たちの生活を充実させることとつながっているのです。これらは決して一部の安全保障関係者で議論していれば済む問題ではありません。すべての有権者が当事者として精査すべき問題なのです。
『欧州に拡がるナショナリズム:多数派が少数派を圧迫し正当性を主張』
2016-05-31 06:243
核武装、集団的自衛権、安保法制――。このような議論をはじめると、「それは難しい問題で、私とあまり関係がない」と感じる人が多いと思います。実はそうでないのです。これらは私たちの生活と直結しています。
私は 二〇一六年三月四日付の日刊ゲンダイに「軍国主義化は国民生活を犠牲にする」という論評を寄稿しました。
日本は今、集団的自衛権で自衛隊を米国戦略に奉仕させるシステムを作り、防衛費を増大させ、ひたすら軍国主義の道を進んでいる。だが、私たちは「軍国主義化の道は国民生活の犠牲の上に成立する」と言う重要な点を忘れている。
社民党副党首の福島瑞穂・参院議員が２月、ツイッターでこうつぶやいていた。
〈大学無償化のためにかかるお金は、国公立大学で四一六八億円（内訳は国立大学三三一五億円、公立大学八五三億円）、私立大学で二兆六八〇八億円。全大学合計で三兆九七六億円です。文部科学省高等教育局高等企画課が、二〇一四年度の大学授業料と入学金、学生数をもとに試算。無償化をめざすべき！〉
この中で、とりわけ注目したのは国立大学の無償化に必要な経費である。軍国化を進める安倍政権の予算編成で、三〇〇〇億円に近い金額がいくつも思い浮かぶからだ。
例えば、米国が日本に売却する垂直離着陸輸送機オスプレイの総額は推定で計三〇億ドル（三六〇〇億円）と報じられていた。災害救助には、小回りの利くヘリの方がオスプレイより圧倒的に使い勝手がいい。軍事衝突が起きた場合でも、戦闘機に迎撃される可能性が高いオスプレイは実戦には向いていない。そんな�猝鯲�たず�瓩鯒磴錣覆韻譴弌�国立大学の無償化は実現可能なのだ。
防衛費をめぐるムダな支出はまだある。
「在日米軍駐留経費の日本側負担」（思いやり予算）である。昨年一二月に日米間で合意された一六〜二〇年度の総額は九四六五億円。日本に駐留する米軍の法的地位などを定めた日米地位協定二四条は、合衆国軍隊の維持に伴うすべての経費について〈日本国に負担をかけないで合衆国が負担する〉と規定している。思いやり予算は、明らかに協定違反だし、廃止が当然だろう。
国民は何となく「国防強化はいいこと」と考え、必要以上の防衛費の増大を安易に見逃してきた。「国立大学の無償化」と「オスプレイ購入」のどちらに国費を投じるべきか。答えは言うまでもない。
別の問題を見てみましょう。
二〇一六年、保育園の待機児童問題が起こりました。
年功序列型の賃金制度が崩れたり、非正規雇用が増えたりと、夫婦で共働きせざるをえない家庭が増えています。共働きのためには、子どもを預ける場所が当然必要です。二〇一四年四月一日時点の待機児童数は、厚生労働省のまとめによると全国で二万一三七一人でした。言い換えると、二万一三七一人の親たちが働くための環境が整っていないということです。
第一八〇回国会（二〇一二年一月二四日〜九月八日）における、次の決定を見てください。
幼児教育・保育・子育て支援の質・量の充実を図るためには、一兆円超程度の財源が必要であり、今回の消費税率の引上げにより確保する〇・七兆円程度以外の〇・三兆円超について、速やかに確保の道筋を示すとともに、今後の各年度の予算編成において、財源の確保に最大限力するものとすること。
（参議院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会、平成二四年八月一〇日）
ここでも必要な財源が三〇〇〇億円です。不必要な防衛予算を削れば、捻出できる金額なのです。
集団的自衛権（当然自衛隊の海外派遣の費用が増えます）や米軍基地問題などの適性を求めることは、私たちの生活を充実させることとつながっているのです。これらは決して一部の安全保障関係者で議論していれば済む問題ではありません。すべての有権者が当事者として精査すべき問題なのです。
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