孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの「助言-若い世代へ②“太郎を呼べば太郎が来る。花子は来ない”時実新子」

【孫崎享のつぶやき】
「助言-若い世代へ②“太郎を呼べば太郎が来る。花子は来ない”時実新子」
2016-01-26 07:483

「助言-若い世代へ②“太郎を呼べば太郎が来る。花子は来ない”時実新子」

時実新子は1929年1月から 2007年まで生存した川柳作家である。俳句は自然を詠み、優雅な雰囲気を出すが、川柳は人々の動きを切り捨てる、川柳には賛否両論が付きまとう。

時実新子は男女関係をよくテーマにした。彼女の代表作が『有夫恋』。「夫ある女の恋」というのだからすごい。本の帯が「妻をころして　ゆらりゆらりと　訪ね来よ」だった。「今があるのみいちどきに花降れよ」とか「ふたたびの男女となりぬ春の泥」「血の中に今百匹のキリギリス」とか、作品は激しい。

PHP社が２０１４年『心を豊かにする１００の言葉』を出版したが、その中に時実新子の言葉も入っている。

「祖母からの口移しなので、出典は明らかでありません。祖母が言うには“呼べば呼んだ人が来るじゃろう？太郎サーンに花子はこないわな。じゃからいい事を呼びんさいや」

私達は漠然といいものを望む。しかし、望むものを曖昧にしておく。

大学進学は望む。しかしどの大学かはできるだけ曖昧なことにしておく。結婚は望む、しかし誰との結婚かはできるだけ曖昧にしておく。夢が破れた時の保険だ。

だが、目標を具体化しなければ、その対応策が曖昧になる。若い世代が通ってきた大学受験を例にしてみよう。もし特定の大学を高校一年の時に選択したとしよう。たとえば入試科目の世界史や日本史で、参考書に過去１０年間の穴埋め問題は赤線、記述式を青線で引けば、大体問題が想定できる。準備することが明確ならその実現は難しくない。

私は『日本人のための戦略的思考入門』という本を書いた。そこで、戦略とは「人、組織が死活的に重要だと思うことに目標を明確に認識する。そしてその実現の道筋を考える。かつ、相手の動きに応じ、自分に最適な道を選択する手段」と定義した。

「あの人と結婚をしたい」という戦略を立てたとする。結婚は、「人が死活的に重要だと思うことに目標」である。そこで相手Aを明確化したとしよう。

「Aは今結婚する意志があるのか」、「Aが交際している相手がいないのか」「Aの現在の最優先課題は何か。部活や受験や就職などが最優先になっていないか」などを知る必要がある。「外的環境の把握」（ステップ１）だ。次にAに対し、「自分が結婚相手にふさわしいと訴えられるものかは何か」を考える。「自己の能力、状況の把握」（ステップ２）だ。

次にAが現在部活や就職や受験が一番の関心事になっているとして、「それがどう変化するか」を考える。将来環境の変化」（ステップ３）だ。こうして目標設定を明確にする（ステップ４）だ。

Aが駄目だった時、BやCはどうなのかを考える。「代替戦略低減とその比較（ステップ４）だ。そして何をするかの選択を決定する（ステップ５）。それに向かって時間とエネルギーを割く（ステップ６）

このステップ１からステップ６まで順を追って進めていくことを示したのがマクナマラで「マクナマラ戦略」と呼ぶ。この過程を「人、組織が死活的に重要だと思うこと」に当てはめて考えられれば、あなたはもう立派な戦略家だ。