孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの森田実：砂川闘争：権力との闘争で、市民が勝利の数少ない事例、学生の頑張り

孫崎享のつぶやき

森田実：砂川闘争：権力との闘争で、市民が勝利の数少ない事例、学生の頑張り
2014-12-26 06:4610

　

『一期一縁』より

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　一九五六年１０月、現在昭和記念公園がある当時の北多摩郡砂川町に私はいた。

　戦前の陸軍飛行場を接収した米軍立川基地の拡張に反対した「砂川闘争」だった。当時の宮崎町長を始め、砂川町の住民たちがこぞって反対し、安保条約に基づく土地収用特別法による収用手続きのための測量に対し、体を張った闘争だった。

　当初、砂川のお母さんや娘さんたちが、反対運動を展開し、デモを行い、座り込みで抵抗したが、すぐ警察機動隊に駆逐された。基地拡張に共鳴する労働組合や各種団体が加わったが、実際測量が始まると。それらの努力は雲散霧消して抵抗は微弱なものとなった。
　砂川の婦人たちの間か「学生さんに応援してもらうことはできないものか」という声があがった。
　そして、私に白羽の矢が立ち、学生達の総指揮官として砂川闘争の第一線に立つことになった。
　当初東大駒場で呼応してくれたのは三名だけだった。
　最終的には各大学から、３千名以上の学生が砂川に結集した。

　十月十三日、地元農民、労働者、学生たちと機動隊との衝突は激烈だった。この闘争にあたって、【学生たちも武装すべきだ】という強い意見があった。「せめて角棒ぐらいは持たせるべし」というものだった。

　しかし私は断固拒否した。
「非武装、非暴力で戦う。そうでなければ、こちらに大義があっても、真の勝利はない」と強く主張し、反対意見を押し切って、一切の武器を手にすることはしなかった。
　その代わり、頭に手ぬぐいをまくように指示した。また棍棒で胸部や腹部を突かれると外傷はなくとも内臓をいためる。これが一番恐ろしい。農家の方がわらで編んだ俵を提供してくれ、これを上着の下にまきつけた。
　機動隊に圧倒された、多くの者たちが、機動隊の棍棒によってけがをした。気が付くと前線に残っているのは、学生だけ。頭から血を出し、凄惨な光景だった、

　砂川のお母さんたちから、声があがった。
「もうやめてください。私達は、もう十分です。将来ある学生さんたちにけがをさせ、血をながしているのを見るのは耐えられません。森田さん、あなたが責任者だ。中止の指示を出してください。」
　何人ものお母さんからの訴えは続いた。
　最後に向かい合っていたのは、学生が数十人、対する機動隊が百五十人ほどだった。雨が降った後で、足もとはぬかるんでいた。「もう少しだ。頑張ってくれ」

　疲労の極にいる時、大きな支えとなるのが「歌」である。
　「なんでもいい、歌を歌ってくれ」と懇願した。
　すると誰かが歌いはじめたのが、「赤トンボ」だった。
　夕暮れの砂川に「赤トンボ」の歌は響きわたった。
　日没までの三十分以上、何度も繰り返した。
　学生たちと機動隊は対峙したままだった。機動隊は一歩前にでさえすれば、疲弊しきった学生たちを蹴散らすことは容易だった。が、動かず、突撃してはこなかった。

　機動隊の中に同じ年代の若者も多くいた。「赤とんぼ」に心が動かされる気持ちがあったに違いない。
　結局、日没のため測量は完了せず、米軍基地拡張を阻止することができた。
　権力との闘争において、市民が勝利した数少ない事例だといわれている。

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