孫崎享のつぶやき
集団的自衛権とアフガニスタン戦争（福田首相に如何なる圧力があったか）
2014-06-07 07:159
日本が集団的自衛権と言う制度を持っていれば確実に自衛隊がアフガニスタンで戦っていた。
犠牲者は次のとおりである。
米国―２３２５名、英国―４５３名、カナダ１５８名、仏―８６名、独―５４名等。
これらの犠牲で何を達成したか。何の成果もなく、混乱をもたらしただけで米軍等は撤退する。
アフガニスタンでの参加は架空の話ではない。
福田首相の時に米国から激しい要求があった。
私は福田首相の突然の辞任は、この要求と関連しているとみている。
『戦後史の正体』での関連部分。
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福田首相については、特別の理由でふれておきたいと思います。それは「ウィキリークス」が、福田首相と米国のあいだで起きた軋轢を暴露したからです。
外交文書の公開は、基本的に三〇年後です。それまでなかなか実態はわかりません。しかし二〇〇六年に設立された「ウィキリークス」というウェブサイトが、二〇一〇年一一月、米国の外交機密文書約二五万点を公開しました。そのなかには在日米国大使館から米国国務省への大量の電報がふくまれていました。ここで福田首相と米国のあいだにあった軋轢が暴露されたのです。いくつかの内容を見てみましょう。
「米ブッシュ大統領、洞爺湖サミット時にアフガンへ陸上自衛隊の派遣要求」
「ブッシュ氏は首脳会談で福田氏に『アフガンに中身のある支援をする必要がある』と強い調子で要求。『陸上自衛隊によるＣＨ４７〔大型輸送用ヘリコプター〕の派遣か、軍民一体の地域復興チームの担当』のどちらかをと具体的に提示した。しかし福田氏は『陸上自衛隊の大規模派遣は不可能』と返答した」。
洞爺湖サミットは二〇〇八年七月七日から九日まで開かれています。このとき、ブッシュ大統領と福田首相のあいだには相当の緊張が存在していたのです。
その後、どうなったでしょう。米側は福田首相の返答に理解を示し、あきらめたでしょうか。あるいは、引きつづき圧力をかけたでしょうか。もちろん後者です。
サミット後の七月一五日と一六日、東アジア担当国防次官補が来日し、関係者に日本が行なうべきアフガニスタン支援を示しました。
米側は「福田首相はＣＨ４７大型輸送機の派遣などを拒否したが、米国は依然としてこれを重視している。よって米国は次の案を提示する」とのべています。そして次の要求をしました。
�� Ｃ１３０（戦術輸送機）およびＣＨ４７（大型輸送用ヘリコプター）の派遣
�� 地域復興チームへの自衛隊員などの派遣
�� 四〇床からなる医療ネットワーク（複数）の設置
�� アフガン選挙資金への二億ドルの拠出
�� アフガン軍、司法機関強化へ二〇〇億ドルの貢献
加えて日本の指導者および国民がアフガニスタン支援の重要性にコミットすること
福田首相が米国の要求を受け入れなかったのは、アフガニスタン問題だけではありません。金融問題でも、米国の要請を拒否していた可能性が高いのです。
二〇〇八年、米国で金融危機が発生します。米政府系の住宅金融機関二社が経営危機をむかえていました。このうち、ファニーメイ社は巨額の損失を出し、二〇一〇年七月にはニューヨーク証券取引所への上場が廃止されています。このファニーメイ社が経営危機をむかえたとき、日本に融資の依頼がきていたのです。（以下省略）
福田首相は辞任会見で、「国民生活のために新しい布陣で政策実現を期してもらいたい」とのべています。多くの日本人には、この説明は意味不明でした。ですからみな、急に政権を投げだした福田首相を非難しました。記者の質問に対してやや感情的に言い返したという、本当につまらない出来事が、新聞やテレビでは大きく報道されました。しかし、おそらく福田首相は自分の首と、自衛隊の海外派遣および数兆円の資金提供を引きかえにしたのでしょう。
二〇一一年一二月、私の家に何人かの大学生が遊びにきました。そのなかに福田氏の母校である麻布高校の卒業生がいて、貴重な話をしてくれました。
「福田氏が首相を辞任して一カ月後、麻布の同窓会がありました。そこで福田氏は『自分は正しい決断をした』と胸をはって話されていたそうです」
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集団的自衛権とアフガニスタン戦争（福田首相に如何なる圧力があったか）
2014-06-07 07:159
日本が集団的自衛権と言う制度を持っていれば確実に自衛隊がアフガニスタンで戦っていた。
犠牲者は次のとおりである。
米国―２３２５名、英国―４５３名、カナダ１５８名、仏―８６名、独―５４名等。
これらの犠牲で何を達成したか。何の成果もなく、混乱をもたらしただけで米軍等は撤退する。
アフガニスタンでの参加は架空の話ではない。
福田首相の時に米国から激しい要求があった。
私は福田首相の突然の辞任は、この要求と関連しているとみている。
『戦後史の正体』での関連部分。
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福田首相については、特別の理由でふれておきたいと思います。それは「ウィキリークス」が、福田首相と米国のあいだで起きた軋轢を暴露したからです。
外交文書の公開は、基本的に三〇年後です。それまでなかなか実態はわかりません。しかし二〇〇六年に設立された「ウィキリークス」というウェブサイトが、二〇一〇年一一月、米国の外交機密文書約二五万点を公開しました。そのなかには在日米国大使館から米国国務省への大量の電報がふくまれていました。ここで福田首相と米国のあいだにあった軋轢が暴露されたのです。いくつかの内容を見てみましょう。
「米ブッシュ大統領、洞爺湖サミット時にアフガンへ陸上自衛隊の派遣要求」
「ブッシュ氏は首脳会談で福田氏に『アフガンに中身のある支援をする必要がある』と強い調子で要求。『陸上自衛隊によるＣＨ４７〔大型輸送用ヘリコプター〕の派遣か、軍民一体の地域復興チームの担当』のどちらかをと具体的に提示した。しかし福田氏は『陸上自衛隊の大規模派遣は不可能』と返答した」。
洞爺湖サミットは二〇〇八年七月七日から九日まで開かれています。このとき、ブッシュ大統領と福田首相のあいだには相当の緊張が存在していたのです。
その後、どうなったでしょう。米側は福田首相の返答に理解を示し、あきらめたでしょうか。あるいは、引きつづき圧力をかけたでしょうか。もちろん後者です。
サミット後の七月一五日と一六日、東アジア担当国防次官補が来日し、関係者に日本が行なうべきアフガニスタン支援を示しました。
米側は「福田首相はＣＨ４７大型輸送機の派遣などを拒否したが、米国は依然としてこれを重視している。よって米国は次の案を提示する」とのべています。そして次の要求をしました。
�� Ｃ１３０（戦術輸送機）およびＣＨ４７（大型輸送用ヘリコプター）の派遣
�� 地域復興チームへの自衛隊員などの派遣
�� 四〇床からなる医療ネットワーク（複数）の設置
�� アフガン選挙資金への二億ドルの拠出
�� アフガン軍、司法機関強化へ二〇〇億ドルの貢献
加えて日本の指導者および国民がアフガニスタン支援の重要性にコミットすること
福田首相が米国の要求を受け入れなかったのは、アフガニスタン問題だけではありません。金融問題でも、米国の要請を拒否していた可能性が高いのです。
二〇〇八年、米国で金融危機が発生します。米政府系の住宅金融機関二社が経営危機をむかえていました。このうち、ファニーメイ社は巨額の損失を出し、二〇一〇年七月にはニューヨーク証券取引所への上場が廃止されています。このファニーメイ社が経営危機をむかえたとき、日本に融資の依頼がきていたのです。（以下省略）
福田首相は辞任会見で、「国民生活のために新しい布陣で政策実現を期してもらいたい」とのべています。多くの日本人には、この説明は意味不明でした。ですからみな、急に政権を投げだした福田首相を非難しました。記者の質問に対してやや感情的に言い返したという、本当につまらない出来事が、新聞やテレビでは大きく報道されました。しかし、おそらく福田首相は自分の首と、自衛隊の海外派遣および数兆円の資金提供を引きかえにしたのでしょう。
二〇一一年一二月、私の家に何人かの大学生が遊びにきました。そのなかに福田氏の母校である麻布高校の卒業生がいて、貴重な話をしてくれました。
「福田氏が首相を辞任して一カ月後、麻布の同窓会がありました。そこで福田氏は『自分は正しい決断をした』と胸をはって話されていたそうです」
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コメント(9)
>>[2]
田中も小沢も橋本もアメリカに抵抗し、アメリカに政治生命を絶たれましたが、「アメリカにやられた」とは言いませんでしたね（国民は知っていましたが）。もっとも、直接、かれらを追い詰めたのは、アメリカの力（外圧）を利用した、日本の政治家、官僚、検察、マスコミでしたね。
アメリカによる「日本の支配」（近代化）は、明治以来ずっと続いています。「対米従属」からr離脱」すれば、それで解決するという問題ではないこと。日本自身による「近代化」「自由化」が必要なこと。これが、「日本の課題」ですね。
その点で、戦後の「日本の政治」が、アメリカ（自由主義）でもなく、ソ連（共産主義）でもない、「福祉国家」を目指してきた点は、高く評価していいのではないでしょうか。現状は、「新自由主義」が、その「福祉国家」を破壊しつつあるということですね。
Q 「日本人は、自国をどんな国にしたいのか」？
それが、「日本の進むべき道」「国のかたち」という問題ですね。
A 「自由国家」（自由民主主義）
B 「福祉国家」（社会民主主義）
「国民的な合意」は、「B」に近いような気がしますけどね。
それを受け止める「政党」がないのが現状ですね。
その隙間に生まれたのが、「安倍政権」という、「理念なき政権」ということではないでしょうか。
田中も小沢も橋本もアメリカに抵抗し、アメリカに政治生命を絶たれましたが、「アメリカにやられた」とは言いませんでしたね（国民は知っていましたが）。もっとも、直接、かれらを追い詰めたのは、アメリカの力（外圧）を利用した、日本の政治家、官僚、検察、マスコミでしたね。
アメリカによる「日本の支配」（近代化）は、明治以来ずっと続いています。「対米従属」からr離脱」すれば、それで解決するという問題ではないこと。日本自身による「近代化」「自由化」が必要なこと。これが、「日本の課題」ですね。
その点で、戦後の「日本の政治」が、アメリカ（自由主義）でもなく、ソ連（共産主義）でもない、「福祉国家」を目指してきた点は、高く評価していいのではないでしょうか。現状は、「新自由主義」が、その「福祉国家」を破壊しつつあるということですね。
Q 「日本人は、自国をどんな国にしたいのか」？
それが、「日本の進むべき道」「国のかたち」という問題ですね。
A 「自由国家」（自由民主主義）
B 「福祉国家」（社会民主主義）
「国民的な合意」は、「B」に近いような気がしますけどね。
それを受け止める「政党」がないのが現状ですね。
その隙間に生まれたのが、「安倍政権」という、「理念なき政権」ということではないでしょうか。
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