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孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの社民党、憲法第96条「改正」問題についての見解

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憲法第96条「改正」問題についての見解


社会民主党憲法改悪阻止闘争本部

1、昨年末の総選挙の結果によって政権が交代し、タカ派色の強い安倍晋三氏が再び総理大臣の座についた。安倍首相は2月末の施政方針演説で「憲法審査会の議論を促進し、憲法改正に向けた国民的な議論を深めよう」とよびかけるなど、改憲の意図を露わにしている。衆院の代表質問では「まずは多くの党派が主張している96条改正に取り組む」と、第96条を突破口として憲法「改正」に取り組む方針を明確にした。菅義偉官房長官も記者会見で「政府としては96条の改正に全力をあげて取り組みたい」と延べるなど、第96条の「改正」が政府の方針として政治日程にのぼりつつある。

2、安倍首相が会長を務める超党派の議員連盟「創生『日本』」は96条改正を視野に入れて活動を活発化させ、休眠状態にあった超党派の「憲法96条改正を目指す議員連盟」(代表:古屋圭司国家公安委員長)も活動を再開した。野党側も、民主党・日本維新の会・みんなの党の有志議員による「96条研究会」が発足するなど、第96条改正への動きが活発化している。慎重姿勢とされる公明党も、漆原良夫国対委員長がテレビ番組で「96条だけであれば改正してもいい」と発言するなど態度は不透明だ。国会内の護憲勢力が弱体化する中で、憲法「改正」の可能性がかつてなく高まっている。

3、政府が目指す「第96条改憲」は、現行憲法で「各議院の総議員の3分の2以上の賛成」とされている憲法改正の発議要件を「各議院の総議員の過半数」に変更するものだ。国民投票は残るものの、改憲の発議を3分の2の特別多数から2分の1の単純多数に切り下げ、国会の改正発議を容易にするものだ。55年体制以降の国会で与党が衆参両院で3分の2の議席を得たことはないが、2分の1を超えていることはむしろ普通であり、衆参の「ねじれ」状態にない政権与党であれば容易に「改正」の発議が出来ることになる。

4、改憲勢力がいま「第96条改憲」に的を絞っているのは、自民党圧勝の勢いに乗って具体的に憲法問題を動かすためと考えられる。憲法第9条など国民の支持が厚い条項を争点とせずに、表面的な手続きの問題と見せかけて改憲を実現してしまうのが狙いであろう。第96条を変えるだけでは、平和主義の理念や国民の権利等に係わる原則は変わらないが、これによって国会の多数派が容易に改憲の発議を出来るようになれば、自民党が狙う憲法の基本原則の破壊に向けた「外堀」が埋まることとなる。

5、「第96条改憲」の第一の問題点は、表面的な手続きの改正を装いながら、国会の多数派に改憲の発議に関するフリーハンドを与えてしまうことである。自民党はすでに「日本国憲法改正草案」(12年4月27日決定)を公表しているが、日本国憲法の平和主義、国民主権主義、基本的人権尊重主義の三原則を大幅に変更する内容であり、第96条「改正」の後にこうした全面改憲が控えていることは明らかだ。第96条改憲は「蟻の一穴」であり、憲法理念の大崩壊に直結しているのである。

6、「第96条改憲」の第二の問題点は、立憲主義に対する根本認識が欠如していることだ。立憲主義における憲法とは、為政者・国家権力の暴走や恣意的な統治から国民を保護するために課す国家に対する規範=縛りであり、多数者の横暴から少数派の人権を保障するためのものである。憲法制定権力はあくまで国民にあり、議会の立法権と同一視することはできない。「第96条改憲」は、この違いをあいまいにし同一視しているという重大な問題がある。国家機関である立法府に憲法制定能力を与えることは、泥棒に自らを縛る縄をなわせるのと同じである。

7、「第96条改憲」の第三の問題点は、憲法と法体系全体が不安定なものとなることだ。憲法は国家の存在を基礎づける基本法であり、すべての法の中の最高規範であるから、高度に安定していることが求められる。両院の過半数で発議できるということは、それを支持した過半数の国民の賛成で改正される可能性があり、ときどきの多数勢力によって憲法がたびたび書き換えられるおそれが生じる。そのようなことになれば我が国の法体系全体が不安定で信頼性を欠くものとなりかねない。

8、「第96条改憲」の第四の問題点は、政府が改憲を目指すことが憲法第99条が定める憲法尊重擁護義務に反するためである。立憲主義における憲法は、国家権力に対する縛りであり、国家権力に係わる者(天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員)に憲法を尊重し擁護する義務を課している。縛りをかけられている側から縛りの緩和を持ち出すことはそもそも許されない。内閣が政府の方針として「憲法改正」を掲げることは尋常とはいえず、首相がその旗を振ることは明確な憲法第99条違反である。

9、自民党の「日本国憲法改正草案Q&A」は、両院で3分の2以上という発議要件を「世界的に見ても、改正しにくい憲法」であり、「国民に提案される前の国会での手続を余りに厳格にするのは、国民が憲法について意を表明する機会が狭められることになることになり、かえって主権者である国民の意思を反映しないことになってしまう」(34頁)と説明している。しかし、地域の課題について住民が意思を表明するために求めた住民投票条例等に常に反対し、有権者の直接民主主義的な要望に常に敵対し続けてきたのが自民党である。突如、憲法については国民の意思を反映させるべきといっても、額面通りに受け取ることは到底できない。まさにご都合主義的主張と言わざるをえない。

10、最高法規である憲法の改正に際して、通常の立法より厳格な手続が要求されることは当然である。日本よりも厳格な改正手続でありながら、スイス憲法やアメリカ合衆国憲法などはたびたび改正が行なわれている。憲法改正が結果として行なわれたかどうかは、改正手続の厳格さによるのではなく、改正の要求の内容と経済・社会的背景によるところが大きい。つまり国民が憲法改正をどれだけ切実に求めているかが重要なのである。これまでに日本で主張されてきた改憲論のほとんどは、第9条の縛りを緩め戦争をできるようにするという指向のものであり、今日でも国民の多くはこのような改憲を求めていない。手続要件の問題以前に、国民が「改憲」の必要を認めなかったのである。

11、立憲主義の本質を踏まえれば、憲法改正のハードルを下げることには慎重でなければならない。国会の多数派が改憲を発議し、多数派の意に沿うように憲法を改正することで、少数派の人権が侵されるおそれがあるのである。現憲法が発議要件を3分の2の特別多数としているのは、国会の過半数を獲得した政権与党だけの提案によるのではなく、野党も賛同できるような合理的な内容に落ち着くまで十分な審議討論を重ねた上で、国民に提案することを予定したためだ。最高法規としての憲法は、時の政権や政治状況によって揺れ動くものであってはならない。これこそが憲法改正の要件が厳格な理由であり、憲法第96条の意味なのである。

12、憲法の硬性度を下げる第96条の「改正」は、単なる手続の問題ではなく憲法全体の性質や意味を変え、立憲主義の本質を破壊するものにほかならない。その意味では、憲法の基本原理の変更に劣らない重大な意味を持つものとして注視していく必要がある。
 社民党は「第96条改憲」の動きを近代立憲主義への挑戦ととらえ、その本質を暴きながら、憲法の基本理念を支持する多くの人々とともに、全力で闘う決意である。

以上

【参考】日本よりも厳格な改正手続でありながら、スイス憲法やアメリカ合衆国憲法などはたびたび改正が行なわれている。憲法改正が結果として行なわれたかどうかは、改正手続の厳格さによるのではなく、改正の要求の内容と経済・社会的背景によるところが大きい。

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