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ちるワールドコミュの冬の夜

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三ヶ月前に、俺はここに引っ越してきた。
ちょっと古いちっこい一軒家だったけど、風呂トイレ付き、家電家具インターネット完備で、格安一ヶ月二万の部屋。
大家が言うには、家の真横に線路が通っていてうるさいから、その値段でいいらしい。
けっこう線路の横に建っているうちが安いことがあるのを知ってる俺としても、こんな破格な値段は、ラッキーだった。
あの夜までは…。


俺は、ネットサーフィンをして暇を潰してた。
時計を見ると11時半。

「腹減ったなぁ。」

買い置きのものがないのは承知済み。
仕方なく俺は線路の向かいのコンビニに行くことにした。
ゲーム雑誌を立ち読みしていると、店員の声がする。

「いらっしゃいませ。」

見ると、女が入ってきた。
そいつは、俺の横に立つと雑誌を読み始めた。
そのことで気がなえた俺は、そこを立ち去りて店内を物色し始めた。
カゴの中に色々いれて、最後にデザートコーナーに行った。

「んーと、ヨーグルト買っとこ。」

棚に一つしかないそれに手を伸ばした。
ふと、誰かと手が当たり、そっちを見るとさっきの女だった。
よく見ると、綺麗な顔立ちをしていたが、驚いたようにキョトンとしている。

「なに?これ、くいたいん?」

あわてたようにはにかんだ顔がなんだか似つかわしくなくて、ちょっとかわいいかなって思ったから、俺はそれを譲ることにした。

「どうぞ。俺は、いいや。」

彼女は、ちょっと頭を下げて笑った。

”ちょっと俺ってかっこいいかも?”
とか思いながらレジに向かい、コンビニを後にした。

線路を渡ると、視線を感じた。
後ろを振り返ると、さっきの女が立っていた。

“なに、そんなに俺ってかっこいい?”
なんて、馬鹿なことを考えていた。


次の日。

やっと終わった残業から開放されたのは、午後九時を回っていた。
一時間かかる帰り道を、チャリで走っていく。

「やっぱヨーグルトくいてぇ。」

俺は、コンビニに自転車をつけた。
鍵をはずしていると、後ろから声をかけられた。

「あの、昨日は、ありがとね。」

そっちを見ると昨日の女で、手にはヨーグルトや菓子が入った袋を持っていた。

「ん?何?」
「うん。昨日、あれ貰っちゃったから、お礼したくて。」
「え?まじで、らっきー!んじゃ、そのお礼に俺んちでそれ、食おうぜ!」

下心はなかったけど、その気持ちが嬉しくてうちに誘ってみた。
女は微笑んでうなづいた。
俺は荷物を籠に押し込み自転車を押して、女はそのままついてきた。
踏み切に差し掛かると、女は立ち止まってしまった。

「どうしたん?」
「うん。」
「ん?」
「私、踏切が怖くて…。」
「分かった、待ってて。」

俺は、自転車を家に置くと、女のところに走った。

「大丈夫、俺がいるから。」

女の手をとって、踏切を渡りだした。
女の手は緊張のためか、とても冷たかったのをおぼえてる。
そして、俺達は自転車のところで少し立ち話しをしていた。

その時に隣のおばはんができたから、俺はあいさつした。
しかし、奇妙な顔をして隠れるようにおばはんはうちのなかに入っていった。
俺達もうちの中に入ってく。

俺達は朝まで話をしていた気がするが、いつのまにか眠ってしまったようで、おきたときには女の姿は無くなっていた。
いつものようにケイタイの目覚ましがなった。
眠い目をこすりながら俺はおきた。

「あれ?あの子は?」

寝ぼけながら、野菜ジュースのペットを開け半分飲んだ。
冷蔵庫にそれをつっこむと、とりあえず会社に行く仕度をして、外に出た。
昨日のおばはんがそとにいた。

「おはよう。昨日考えたんだけど、あなた、ケイタイイヤフォンでお話してたんでしょ?ごめんなさいね、ちょっと変にみえたから。」
「ん?別にケイタイで話なんてしてませんよ?」
「え?あ、あらそう?」
「ええ。んじゃ、会社に遅れますんで。」

俺はチャリに乗って走り出した。

「…ん?なんかおかしくね?」

違和感を覚えながらも、眠気に押されてはっきりと分からなかった。
とにかく、眠いけど会社に行かなければいけないのは、事実だった。


その夜、なんとか仕事を終えて、俺は帰宅し眠った。

どれくらいだろう、喉の渇きを覚えてほの暗い部屋の中のシンクの前に立った。
グラスに水を入れると、一気に飲み干そうとした。
口をつけてからグラスを見ると、水が赤黒くなっている。
急いで吐き出した。

しかし、吐いた水は、いつもどおり透明だっだ。
見間違いかと思ってグラスをみたが透明のままだった。
飲む気の失せたグラスをおくと、冷蔵庫から野菜ジュースを出した。
冷蔵庫の明かりで、このジュースが変な色だとわかった。
この部屋、物が腐ることが良くある。

「チッ。」

仕方がないから、風呂にはいることにした。
浴槽に湯を入れると、いつもよりか音が響いているような気がした。
脱衣所にはいり、服を脱ぐ。
いつもよりひんやりしている浴室。

「さっきの水、なんだったんだろうなぁ。」

浴槽の縁に腰掛けて考えた。
取り合えず体を洗うため、シャワーに切り替えた。
なんだか湯が温い気がしたが、かまわず体をながした。

「つかれてるのかなぁ。」

そう言って再びシャワーを切り替えて体をあらいだした。
ゆっくり体を洗うと、浴槽にあるていど湯がはったため蛇口をとめた。
シャワーを出すと、今度は湯が出なくなっていた。

「なんだ?」

とりあえず、冷たい水でながすと、浴槽の中に入った。
かなりぬるいお湯になっていた。

「くっそう。湯沸かし器もだめか?安いといろんなことが起こるなぁ。」

仕方なく、設定温度を40度にして湯釜のスイッチをいれた。
縁にあたまを乗せて目を閉じた。

なんだか湯がねっとりと絡みついてくるようだった。

気持ち悪くて目をあけると、足元に何か黒いものがある。
ゆっくりと浴槽に広がっていく。
次第にそれが何か分かってきた。
長い髪の毛の束だった。
足元からからだに這い上がってくる。
俺は硬直して動けなかった。

瞬間、浴槽の中に引きづりこまれた。

”死にたくない!”

俺は必死にもがいた。
はっと気がつくと、どうやら居眠りしていたみたいだった。
毛等、髪の毛なんかどこにもなかった。
浴槽の縁(へり)に腰掛けると、頭を流しシャンプーをつけた。
一通り洗って再び頭を流すと、どこからか冷たい風が吹いてきた。

背中に何かつめたいものがあたった。
そして、順番にそれが背中を伝って上ってくる。
俺は片目を開けて、それが何か見ようとした。
横目で見えたのは、女の手だった。
即行、俺は風呂から出た。
着替えてから、恐る恐る風呂の中を確認したが、何もなかった。

温い風呂と短時間のシャワーで体が冷えたのか、震えが止まらない。
ふと、尿意を催した。
しかし、さっきの今でトイレにいくのも気が引ける。
我慢していたが、尿意を抑えることも出来ず、結局行くことにした。
警戒していたが別に何もなかった。
用をたしてから何気なく窓の外を見ると、月明かりに照らされた踏切が見える。

「そういえば、昨日の彼女、どうしたんだろう…。」

つぶやいたとたん、“ドン!”と窓になにかぶつかる音がした。
見ると、手形が着いてた。
何がおこったか分からず、そのまま見ていると、窓を叩く連続的な音とともに、手形がついていった。
そして、俺は思った。

”この窓、スリガラスじゃなかったっけ?
なんで外が見えるんだ?
なんで?なんで?”

だんだん訳が分からなくなっていた。
ガラッと窓が開く音がした。
俺はあわてて外にでて、トイレのドアの前をいろんなものでふさいだ。
その時、今まで気がつかなかったけれど、トイレのドアの周りに釘でさした痕が無数にあった。
もしかして、ここ、ふさがれてた?
そう思うのもつかの間、今度はトイレのドアが叩かれている。
怖くなって壁にくっついて状況を見ようとした。

そのうち、トイレのドアは静かになった。
何気なく気配がする。
見たくはないけど、ついそちらに目をやってしまう。
シンクと冷蔵庫の2センチくらいの隙間から、誰かか覗いている。

目が…目がみえたんだ。

ふっと笑うとそれは消えた。


ベッドから布団を引き摺り下ろし、布団を引っかぶり何も見ないようにした。
布団の周りを何かが足摺りしているような音がする。
心臓が早鐘のようになっていて、血の気が引いていくのがわかる。
しかし、それ以上に布団が氷のように冷たくなっていく。
たまらず顔を出してしまった。
テレビの反射で自分の姿が見える。
後ろから昨日の女が布団をかかえこんでいるのがみえた。

「やっと捕まえた。」

そんな声が聞こえた。
俺は布団を投げつけて、反対の壁に跳ね飛んだ。
今度は、床のしたから叩きつける音がしだした。
泣きそうなのを我慢して壁にくっついた。
とたんに、机の上のケイタイが鳴り出した。

”だれでもいい。助けてくれ。”

ケイタイをすばやくとると、通話ボタンを押した。

「おい、たすけてれ!」
「…。」
「おい、おい!」
「…いや。」
「!!!!」

あの女の声だった。

「ここから助けてくれたら、許してあげる。」

そう言って通話が切れたあと、さらに激しく床がたたかれた。
俺はそのままケイタイを握り、財布だけを引っつかむと外に飛び出した。

「くっそう!大家め!だましてやがったのか!」

俺は、一キロ先の大家の家まで走った。
途中、後ろから、何かが気配だけで追いかけてくる。

”捕まったら最期!”
そんな気がしていた。

走っても走っても、なかなか大家のうちに着かない。
耳の奥でずっと女のクスクス笑いが聞こえる。
それでも死ぬ気で走ってると、大家のうちに着いた。
が、大家のうちの前は人だかりになっていた。
俺は、息を整えてそのうちの一人に声をかけた。

「あの…、おおや…芝さんて、どうかされたんですか?」

声をかけた人はこちらを向かずに答えた。

「ええ。心臓麻痺で、さっき死んだそうですよ。」
「は?うそでしょ?」
「ほんとよ。信じなくてもいいけど。」
「そんな…。」
「だって、私が殺したもの。」
「?」

顔をあげたのは、女だった。
そして、俺は、気絶した。

朝、目覚めると、病院だった。

「おい、一樹、起きたか?俺は、呼び出されて大変だったぞ。」

それは、友達の弘司だった。

「うん。ごめん。いろいろあってさ。」
「うん、まー、いーけど。」

そう言って彼はナースコールをした。

「一樹、おきましたよ。」

そして、俺に言った。

「お前、心臓、とまってたんだぞ。一歩遅かったら死んでたってさ。」
「そうなんか。」

俺は事情を説明した。
友は、黙って聞いていた。

「疲れてんだよ。とりあえず、もう一回寝てろ。」

俺は目を閉じた。
うとうとしていたら、だれか入ってきたみたいだった。
薄目を開けて友達を見ると、一人で話をしているようだった。
俺は飛び起きて、友達に言った。

「おい!そいつだ!その女がやばいんだ!」

しかし、友人は取り合ってくれなかった。

「信じてくれ!そいつだよ!」

俺は、怒鳴って叫んだ!
それを聞きつけた看護婦達がやってきて、俺は薬でねむらされた。

それ後、その友達とは一切連絡が取れなくなった。
どうやらうわさでは、死んだみたいだった。
それからは、俺のところには出てこない。
まぁ、あの部屋は引越したんだがね…。

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