園田隆二監督ＬＯＶＥ・女子柔道コミュの吉村和郎インタビュー

バルセロナオリンピックで金メダルを獲得した古賀稔彦氏を 育て、現在、全日本柔道連盟強化委員長の吉村和郎氏に、指 導者として、また、日本代表を選考する苦労や、オリンピッ ク代表選手へのメッセージをお伺いしました。

吉村和郎のプロフィール

チャンスは二度来ない

強化選手に入 るような選手 の、オリン ピックに対す る気持ちとい うのは今も昔 も変わらんと 思うよ。オリ ンピックに出 たいという気 持ちがあった から厳しい練習も頑張れた。

俺の場合、1973年のローザンヌ世界柔道選手権大会で は、優勝は堅いと思われながら油断によりまさかの敗退、 1976年のモントリオールオリンピックは、直前のケガも あって最終選考会で、旗判定で負けて、1977年のバルセ ロナ世界柔道選手権大会は代表になったものの、台湾問題 で中止になった。人生は思うようにはならないなというの を痛感したよ。

だから、俺の人生訓は「チャンスは一度。そのときにつか まなければ、二度と来ない」。選手には自分の体験から、 「チャンスがあるのならそのときにつかめ、4年後には何 があるか分からない」と言っているんだよ。

指導者としての目標

現役を引退してから講道学舎で指導をするようになったわ けだが、最初のうちは選手をオリンピックに行かせようみ たいな欲はなかった。週に3日の指導でいいという話だっ たしな。

でも、やり始めたら土日も休めないわけだよ。横地治男理 事長には「子供たちが土日も休まずに頑張っているのに、 君は休むのか」と言われて。それで、毎日指導するように なったんだな。まぁ騙されたようなもんだ（笑）。

俺が講道学舎の指導を始めたのは古賀稔彦が中学に入って きた年。稔彦を指導するようになってすぐ、「こいつを大 学4年までに世界チャンピオンにしよう」と思ったのが、 指導者としての最初の目標だった。

中学（全国中学校柔道大会）を獲って、高校（全国高等学 校総合体育大会（インターハイ）柔道競技大会）を獲り、 高校のときに講道館杯全日本柔道体重別選手権大会で決勝 まで行ったんだ。俺の考えよりデビューが早かったな。 フィンランド国際大会で、オール一本で優勝したときに、 「こいつは世界で通用する」というのを確信した。

ただ、そこに落とし穴があって、1987年のエッセン世界 柔道選手権大会と1988年のソウルオリンピックでは優勝 できなかった。そういう中で稔彦が「今までは先生のロ ボットだった。自分で考えなければ世界では勝てない」と 言ってきたんだな。それで勝ったのが1989年のベオグ ラード世界柔道選手権大会だった。

やはり「自分でつかみに行く」という気持ち、図太さや貪 欲さがなくては勝てないんだよ。それは指導していてもす ごく感じるね。

古賀、吉田秀彦が優勝したときは、自分が優勝したときと は比べ物にならないくらいうれしかった。自分が休みもな く、子供の頃から一生懸命作り上げた、いわば作品みたい なもんだからな。

日本代表の選考について

古賀稔彦、吉 田秀彦をオリ ンピックで優 勝させたあ と、全日本女 子の監督の話 が来たんだ が、一度は 断ったんだ。 それまで女子 を指導したこ となんてな かったしな。

結局、監督を引き受けることにしたんだが、当時の日本女 子柔道の目標は、金メダルではなく、メダルを獲ること だった。それを「やる以上は金メダルを獲れ」ということ で意識改革から始めたわけだ。

最初にやったことは「使える選手、使えない選手」を分け ること。「使える」というのは、金メダルを狙う気持ちが あるかということ。その気持ちがあって努力する選手、も のになりそうな選手は、負けても使い続けた。

だから、周りからはよくたたかれたよ「なんで負けた選手 を使うんだ」って。でも「最後に勝ちゃいいんだろ」と 思って無視し続けたけどな。そのいい例が、上野雅恵や谷 本歩実。あいつらは国内ではよく負けたけど、外国人には 強かった。

だから、国内での結果が悪くても、世界柔道選手権大会、 オリンピックに選んだ。優勝したわけだから、結果的に間 違った判断ではなかったと思っているが、そこで選ばな かった選手に対して申し訳ないと思ったこともあったよ。 その選手が出ていても優勝できたかもしれないわけだから な。

アテネオリンピック柔道競技大会成績（女子63kg・70kg超級） 北京オリンピック柔道競技大会成績（女子63kg・70kg超級）

でも、そこは自分を信じるしかないんだ。後悔しないため には自分で決めて、それを通すしかない。ある意味、非情 になるしかないんだな。ずっと一緒に遠征したり合宿した りして気心も知れているし、どちらかを選ばなくてはいけ ないというのは本当につらかったよ。

代表選手に言いたいのは、「自分のために頑張れ」という こと。親のためとか、会社のためとか考えたらプレッ シャーになって動けなくなる。勝てば結果的にみんな喜ぶ わけだから、自分のことだけを考えて戦ってほしいね。

柔道チャンネルでは、日本柔道・国際柔道・世界柔道・柔 道整復師・柔整専門学校・接骨院の関連情報がご覧頂けま す。また、柔道大会情報や柔道家・選手紹介、柔道組織情 報、柔道お役立ち情報など柔道にに関する情報を満載しています。