永田寿康・伊丹十三・矢野暢

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詳細 2014年11月27日 16:17更新: 永田寿康・伊丹十三・矢野暢

「永田寿康元衆議院議員の死を悼む

3月 28th, 2009 by admin

一昨日の夜、テレビを見ていたら、衝撃的なニュースがテロップで流れた。永田寿康元衆議院議員の飛び降り自殺である。ああ、ついにやってしまったか、が最初の感想である。この人の動静はしばらく不明であったが、昨年末、やはり自殺未遂の記事を週刊誌で読み、例の事件による傷の深さを認識したばかりである。私たちは一人の輝かしい成功者の、恐るべき没落と破滅を目の当たりに見届けたことになる。人生には何と恐ろしい事態がありうるものだろう！あれほど有能な人物が３９歳の若さで、自らの人生の幕を引かなくてはならないとは、何と傷ましいことだろう！置かれた状況はかなり違うが、ある程度似通った経歴で、やはり男盛りの若さで、非業の自殺を遂げた新井将敬元衆議院議員を私は思い出した。あの一件には新井元議員の、生きて辱めは受けないといった、矜持と美学が感じられたものだ。元来、私は永田元議員にあまりいい印象を抱いてはいなかった。この人は東大工学部、大蔵省、衆議院議員という超エリートコースを歩んできた、人も羨む経歴の持主である。過去にあまり挫折の経験がないのか、自信に満ち、尊大で、傲慢、さらに歌舞伎役者ばりのはっきり、大作りな目鼻立ち、要するに、ある種の嫌らしい人間の典型のような人物だったのである。加えて、この人は、当時国会で、一番えげつない野次を飛ばす人として、同僚議員の顰蹙を買っていたと記憶する。まさにやりたい放題、恐れというものを知らぬ、罰当たりな人間だったのである。したがって、この人の失脚は多くの日本人の溜飲を下げた、つまり、われわれの精神衛生には、悪くはなかったのである。しかし、だれも死刑までは、望んでいなかったろう。ここまで来ると、お灸と言うには、やりすぎである。どうして、こんなことになってしまったのか。あの時、同様の罪で責任を取った前原誠司元民主党委員長も、虎視眈々と次の機会を窺っているであろうし、あの辻元清美氏も、今はテレビに復帰して、大きな顔をして発言している。政治家と書いて、コウガンムチないしはカエルノツラニションベンと読む。彼らは本来、打たれ強い人種のはずなのである。それを、あれだけ厚かましい、態度のデカい人間だったはずの元議員が、何故、ああも脆く崩壊してしまったのか。われわれはここで、シェイクスピアの「マクベス」を参照すべきであろうか。シェイクスピアの四大悲劇最後の、この最も難解な作品の意図は、恐らく、彼の世界観、運命観の表現である。冒頭の魔女の「きれいは汚い、汚いはきれい」という言葉が象徴しているように、世界も運命も混沌たる二重性と両義性に支配されているという根本的なビジョンの形象化である。その人間への表れ方は、物語の最初で弱気な夫をけしかけて、王の殺害を決行させる、強いマクベス夫人が、後になると、罪責の思いに耐えきれず、精神変調を来たすのとは対照的に、最初弱気だったマクベスは、一旦ことを始めるや、毒を食らわば、皿までとばかりに、断固初志を貫徹する、鉄のような男に変貌を遂げることである。つまり、人間は最初の見かけだけでは分からない、奥深い、複雑な存在だということである。永田元議員もまた、表面の強気の裏に、マクベス夫人のような弱さを秘めていたのだろうか。この事件には、一つの特殊な要因が考えられる。時々、有能なエリート官僚が、実に思いがけない、突拍子もない自殺を遂げるケースがある。その人の、人も羨む境涯といい、恵まれた能力といい、全く自殺する理由が思い当たらない。こういう不可解な事実を解き明かす、最も有望な鍵が、しばしばうつ病である。元議員も、確かに功をあせって、取り返しのつかない一世一代の大失策を犯しはしたが、まだ年も若く、才能もあり、道は色々あったはずだ。そのまんま東氏のような、驚くべき、奇蹟の挽回劇を果たした例だってある。人間万事塞翁が馬であり、諦めたら終りなのだ。しかし、彼はそういう気持の切りかえをすることができなかった。彼が抗うつ薬をのんでいた、あるいは精神疾患で入院していたという話も出ているが、真相はどうなのだろう。彼が挫折を経て、恐れというものを知る、謙虚で、才能豊かな人間に生まれ変わる機会は、永遠に断たれてしまった！合掌。（１月５日）」 http://www.idaimae-mental.com/2009/03/%E6%B0%B8%E7%94%B0%E5%AF%BF%E5%BA%B7%E5%85%83%E8%A1%86%E8%AD%B0%E9%99%A2%E8%AD%B0%E5%93%A1%E3%81%AE%E6%AD%BB%E3%82%92%E6%82%BC%E3%82%80/より